出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/01/12 15:23:52」(JST)
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このページのノートに、このページに関する質問があります。 質問の要約:女性の卵子の老化による不妊について |
不妊(ふにん)とは、自然な状態で妊娠に至れないか、妊娠を一定期間以上維持することができない状態を指す。この項では主に女性の不妊症について述べる。男性の不妊症については「男性不妊症」または「性機能障害」を参照。
世界保健機関による定義は「避妊をしていないのに12ヶ月以上にわたって妊娠に至れない状態」となっている[1]。なお、妊娠に至れない状態を原発性不妊、一度以上の妊娠・分娩後妊娠に至れない状態を続発性不妊と区別する場合もある。
日本では正常なカップルでは妊娠を希望し性生活を行った場合は6か月以内に65%、1年で80%、2年で90%、3年で93%が妊娠にいたるとされている。よって日本においては、妊娠を望んでいるカップルの約10%が不妊症であるとされている。なお、男性側に問題があるケースが約40%、女性側に問題があるケースが40%、両性に問題があるケースが15%、原因不明な場合が5%あるとされている。一方で妊娠するのだが、習慣性流産となってしまう場合を不育症という。不育症は広義の不妊症の一部に組み込まれることもあるが基本的には概念が異なる。
従来、不妊の原因は女性側にあるとされ、長期間妊娠できない女性は夫ないしその家族から離縁されることもあり、またそれは慣習的に認められていた。同様に女児ばかり妊娠する女性も離縁の対象になることがあった。 しかし前述の通り不妊の原因は男女ともに存在し、女児ばかり妊娠する場合は男性側に存在する場合が多い。 なお、1989年に至っても一部のフェミニストは「健康上問題が見られないのに不妊が病気であると言う考え方は、子供を設けられない女性は一人前ではないと言う考え方に至る。その上不妊治療による女性への身体的負担は非常に大きい。また、独身者の場合は問題とならないという側面からも病気とは認められない」などとして、不妊症が病気であることを否定していた例が存在する[2]。なお、2010年現在[要検証 – ノート]日本国内においての不妊症の治療は、何らかの病名がついた場合においての個別の措置に対しては健康保険が適用されるものの、人工授精、体外受精などには保険は適用されない。これを根拠として不妊は病気でないと主張する者もいる[3]。
以下のような要因が不妊の原因になると示唆されている。
半陰陽、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、先天性副腎皮質過形成、精巣性女性化症候群などは不妊となることがよく知られている。Y染色体上の異常など様々な遺伝子異常、染色体異常が知られているが、基本的に以下に述べるような女性不妊、男性不妊の概念で理解可能である。
妊娠を行うには排卵し、受精し受精卵の輸送を行い、着床をする必要がある。これらのうちどれかが障害されると女性因子による不妊症となる。内分泌・排卵因子、卵管因子、子宮因子に分けて考えると理解しやすい。頻度として最も多いのは卵管因子によるものである。
女性が妊娠し出産する能力は、最初の排卵時(一般的に11~12歳)で始まり、最後の排卵時(一般的に50歳前後)で終了する。人類の経験則として、最初の排卵時から数年(一般的に10代前半)の期間は、身体が妊娠出産に必要十分の状態に生育していないので妊娠率は低く、10代後半~30代前半までが妊娠と出産の能力の最盛期であり[4][5]、30代後半以後は卵子や子宮の能力の低下により漸減し[4][5]、40代後半になると能力が著しく低下し[4][5]、50歳以上ではゼロに近くなるが、50歳以上の出産も非常に少数の例外として存在する[4][5]。
厚生労働省と世界保健機関は、合計特殊出生率を算出する定義として15~49歳の女性を母集団としている。15歳未満と50歳以上の出産も存在するが統計の精度に影響を与えないとの考えから、合計特殊出生率を算出するための統計には含んでいない。
いくつになっても子供は産めると考えるひともいるが、妊娠には適齢期があり、女性の年齢が高くなれば妊娠は難しくなる。近時、加齢による「卵子の老化」が中年(35歳)以降の妊娠を難しくする主な原因として指摘されている。女性と男性のどちらにも疾患がなくても卵子の老化により妊娠の可能性は低くなる[6]。 男性の場合、生殖細胞(精子)を新たに作るが、女性の卵子は発生時より分化形成され、そのあと新たに作られることはない。この結果、精子の年齢は受精時には長くても生後数日であるのに対し、排卵時の卵子の歳は排卵時の女性の年齢+1となる。どれほど肉体(体細胞)が若々しく見えても、卵子(生殖細胞)の受けたダメージをはかり知ることはできない。ここでいう「卵子の老化」とは、加齢に伴う卵巣内の卵胞数の減少(37.5歳から始まるとされる[7])や、卵子の顆粒膜細胞の数の減少、核の染色体の不正確な分離、ミトコンドリアのDNAの減少、小胞体のカルシウム取り込みの能力の低下、などと考えられているが不明なことがらが多い。「卵子の老化」とはこれら卵子の機能の低下の総称である[8]。一度妊娠した女性(妊娠できた)が、その次の子供をもうけられない可能性(不妊率)は、20-24歳が5%、25-29歳が9%、30-34歳が15%、35-39歳が30%、40-44歳で64%と年齢が上がるごとに高くなっている[9]。 40代後半に至った女性以上が自然妊娠することは稀である[10]。排卵しても、すでに卵子が老化しているため、妊娠できる状態ではなくなっていることが多いためである[10]。 卵子が老化すれば、体外受精による妊娠も成功する確率は低くなる[11]。 これらの問題を回避するために、若いうちに液体窒素で卵子を凍結保存させる技術(本来は放射線治療などのために不妊になる女性に対しての保護のための治療方法)で、卵子を保存する女性もいる[6]。しかし、この牛の凍結卵子を応用した酪農の技術[12]は、まだ確立しておらず、未成熟卵や成熟していても未受精の卵子(排卵直前や直後)は耐凍性が低い[13]ため、現在の技術では確実に子どもが産まれるとは限らないという指摘がある。不妊治療に当たる医師らは、「結婚適齢期はなくなったが、妊娠適齢期は動いていない[10]」と、女性の卵子の老化と不妊について密接な相関関係が認識されていないことを指摘し、現在の不妊治療では解決できない問題があることに警鐘を鳴らしている[6]。
これまで日本の教育現場では性教育は、避妊とVD(性病)に主眼が置かれ、卵子の老化という問題は殆ど教えられてこなかった[14][6]。メディアにおいては40歳を超えて子供を出産した芸能人の事例等が報道されても、これが医学的に特異な事例であることは解説されないため、視聴者側においてはこれをむしろ高齢出産の可能性として受け取られ、卵子の老化という問題は殆ど認識されずに来た経緯がある[15][6]。
女性に対しても晩婚化の風潮に対して、人生設計において確実に子供が欲しい場合は20歳代での結婚・妊娠・出産が奨励されるようになってきており、それをサポートする社会的整備が求められている[16]。
日本において参議院事務局が参議院議員向けに発行している調査情報誌では、「医学的には35歳を過ぎると卵巣の機能が低下する」、「不妊治療のうち体外受精における妊娠率は32歳を過ぎてから急速に低下し始め、40歳以上の妊娠は困難である」、「若いうちに結婚・出産していれば不妊治療をしなくても済んだと思われる人たちが増えている」との指摘がなされている[17]。
詳細は「男性不妊症」を参照
男性不妊の原因は精子の形成や成熟ができない造精機能障害、精子の輸送経路が障害されている精路通過障害、精嚢、前立腺の炎症によって精子が影響を受ける副性器の障害、性交、射精ができない性機能障害が知られている。特に造精機能障害が多く全体の70-80%を占めるといわれている。そのため男性不妊では精液分析を行う。精液機能の分析により乏精子症、精子無力症、奇形精子症、無精子症などの診断がつく。これらの原因は染色体異常、精索静脈瘤、精巣炎、停留精巣、特発性などが知られている。精路通過障害としては先天的発育不全、精管炎、精巣上体炎が知られ、副性器の障害としては精嚢炎、前立腺炎が知られている。不妊の半数もしくはそれに近いと思われる率で男性側に原因が認められるとみられている。なお、造精機能の加齢による劣化も原因のひとつとして考えられる[18]。
不妊の診断については、一般の健康調査に加え、血液分析によるホルモン量の調査、精液の調査などが行われる。男性不妊のうち、精子の運動性不足・貧精子症・無精子症などは精液の検査によって診断が可能である。 またY遺伝子上の問題も不妊に関与していることから、PCR法による診断が試みられている。
女性不妊については、甲状腺刺激ホルモン量・女性ホルモン量の分析・女性生殖器の診断などが行われる。 性行為の嫌悪による不妊については、原因を解決することは不妊治療の専門外であることが多く、問診のみで高度不妊治療が実施されることが多い。
不妊症の原因は指摘できないことが多い。異常が治療可能な場合は原因疾患の治療を行い、異常が認められない場合はタイミング法をまず指導され、半年間試して無効ならば人工授精、ART(体外受精や顕微授精)が考慮される。
医療介入が必要な不妊症の診断のために不妊症のスクリーニング検査がある。内分泌排卵因子の検査項目としては基礎体温、ホルモン負荷試験、血中ホルモン測定などがあげられる。卵管因子としてはクラミジア検査、特に子宮頚管抗原、血中抗体価の他子宮卵管造影が知られている。子宮因子の検査としては子宮卵管造影の他超音波検査やMRIが知られている。男性因子の場合はまずは精液検査を行う。これらの異常が見られた場合はさらに精査を進めていく。
原因不明の不妊については、タイミングの不一致である可能性が高いとされる。そのため薬物や外科的手段を用いる方法は母胎への影響がないとはいえないので、はっきりした原因が不明である段階ではタイミング法を指導されることが多い。
詳細は「タイミング法」を参照
日本の場合、人工受精は主に配偶者間人工授精(AIH)を行う。非配偶者間で行う場合はAIDというが日本ではごく一部の登録医療施設でしか行われていない。オーソドックスなやり方としては数万個の精子を人工的に子宮腔内に注入し、排卵誘発法を併用する。精子は用手法で採取し精子洗浄濃縮法にて運動精子を抽出してから投与するのが一般的である。排卵誘発法によって卵巣過剰刺激症候群(OHSS)となるリスクがある。性接触の嫌悪による不妊の場合、本人達が望む最善の方法とされる。
生殖補助医療技術(ART)の一般的な手順を纏める。まずは卵子と精子の採取を行う。卵子の採取は排卵誘発法を行い、卵胞の発育を促し超音波ガイド下で卵巣を穿刺し、複数個の卵子を採取する。精子は用手法で採取する。2008年現在この後の方法は体外受精(IVF)とするか顕微授精(ICSI)にするかに大きく分かれる。一般的にはIVFで失敗した場合はICSIとする。IVFの場合は培養液中で精子と卵子を受精させる。ICSIでは顕微鏡下で卵細胞内に直接精子を注入する。受精卵を得られたら、子宮内で発育するように胚移植を行う。2008年現在、IVF-ETとするのが一般的である。その後、黄体維持療法として母体にHCGの投与を行う。
かつては精子と卵子を卵管内に移植をするGIFT、接合子を卵管内に移植をするZISTという方法がとられていたが2008年現在、施行されるのは稀である。培養技術が進歩したことにより培養液中でより成熟した受精卵を得ることができるようになった。初期胚以降を子宮腔内に移植する方法をIVF-ETという。以前は初期胚(8細胞期まで)を胚移植していたため妊娠率が低く、3個移植を行っていたため多胎妊娠が非常に多かった。近年は桑実胚や胚盤胞を1~2個移植するため多胎率も軽減された。
不妊の色々な原因の中、卵管の閉塞や狭窄が30%を占めていると言われている。 卵管鏡下卵管形成術(FT)は卵管閉塞や狭窄を対象とする不妊治療法である。バルーン付きのカテーテルを用い、子宮内に挿入し、卵管鏡という非常に細い(1mm以下)内視鏡を用い、卵管内側を観察しながら、卵管口からバルーンを少しずつ拡張して卵管に挿入し、閉塞や狭窄を物理的な原理で解除する治療法である。手術効果について、卵管開通率は9割以上で術後1年内の妊娠率は3割に達すると言われている。健康保険が効き、費用負担はかなり減軽される治療法ではあるが、手術が実施される病院が限られ、未だに普及されていない。
クロミフェン療法やゴナドトロピン療法がよく知られている。
第一度無月経や希発月経、無排卵周期症、多嚢胞性卵巣症候群の一部で用いられる治療法である。エストロゲンアナログであるクロミフェンを投与することでエストロゲン受容体複合体を減少させ、ゴナドトロピンの分泌を促進させるという原理に基づく。月経周期または消退出血の5日目よりクロミフェンクエン酸塩錠(商品名、クロミッドおよびセロフェン)50mg 1T(無効時2T)を5日間内服させる。疾患によってはクロミフェンに他の薬物を併用することもある。クロミフェン-ゲスターゲン併用療法などが知られている。
第二度無月経やクロミフェン療法無効例はゴナドトロピン療法を行い排卵を誘発させることがある。ゴナドトロピン療法は多胎妊娠、卵巣過剰刺激症候群といった命にかかわるリスクが存在するため、十分な説明の後に行うことが望ましい。hMG-hCG療法とPMS-hCG療法がよく知られている。FSH様作用をもつhMG、PMSを投与後にLH様作用をもつhCGを投与するというものである。大雑把にはパーゴグリーン150単位の筋注を月経周期または消退出血の5日目より連日投与し卵胞成熟(平均径16mm以上)となったらHCG5000単位を一回筋注をするというものである。黄体機能不全になることが多いので後療法としてHCG3000単位を一日一回、高温相の3日目より隔日で3回投与を行ったり、デュファストン5mg 2T2× 10日間投与を行うことが多い。
不妊治療については宗教上の問題など、倫理的な面からの問題が発生している。 体外受精については、有効であるものの費用が高額であることが問題視されており、公的扶助の必要性が指摘されている。また、体外受精によって起きることのある多胎も危険性が指摘されている。
不妊によって夫婦間の仲に問題が発生することがある。不妊は女性における鬱病率をガン告知や心臓病と同レベルに向上させるとされる。不妊治療は夫婦仲の改善に有効である場合と逆効果である場合の両方がある。また、不妊治療が羞恥心を刺激するとの指摘もある。
特に閉鎖的な社会制度においては、不妊であることによって社会的な圧力を受けることがあり、社会制度的な問題点であると指摘を受けることがある。特に、不妊の原因は男女ほぼ半々であるのに、社会的な圧力は女性側に向けられることが多いため、女性にとって過大なストレスの原因となっている。
一部の女子校で行われている性教育において、性的接触は不要で下劣な行為であると指導されているため、性的接触をせずに妊娠できる体外受精を望む女性が急増している。体外受精により妊娠しても、その後の夫婦間で性的接触がおこなわれず、男性の性欲処理がされずにDVや破壊的行為になることがある。体外受精で性接触をしないで妊娠できることが男性にとって過大なストレスの原因となることは、あまり取り上げられていない。
排卵誘発法(特にゴナドトロピン療法)によって多数の卵胞が発育、排卵し卵巣腫大、胸腹水の貯留、血液の濃縮が起こる病態である。治療は輸液による血液濃縮の改善と低アルブミン血症の改善のためのアルブミン投与である。乏尿に至り低用量ドパミンが必要となることもある。腫大した卵巣が茎捻転を起こし急性腹症をきたすこともある。最重症型は脳梗塞、急性肝不全、急性腎不全、ARDS、DICに陥り命にかかわることもある。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合は特に起こりやすく注意が必要である。
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