- 英
- butylated hydroxyanisole、BHA
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ブチルヒドロキシアニソール |
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IUPAC名
2-tert-butyl-4-methoxyphenol; 3-tert-butyl-4-methoxyphenol
|
別称
BOA
2-tert-butyl-4-hydroxyanisole; 3-tert-butyl-4-hydroxyanisole
2-(1,1-dimethylethyl)-4-methoxyphenol; 3-(1,1-dimethylethyl)-4-methoxyphenol
antioxyne B [1]
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識別情報 |
CAS登録番号 |
25013-16-5 , 8003-24-5, 9009-68-1, 121-00-6, 88-32-4 |
PubChem |
24667 |
ChemSpider |
23068 |
UNII |
REK4960K2U |
- O(c1ccc(O)cc1C(C)(C)C)C.O(c1ccc(O)c(c1)C(C)(C)C)C
|
- InChI=1S/2C11H16O2/c1-11(2,3)9-7-8(13-4)5-6-10(9)12;1-11(2,3)9-7-8(12)5-6-10(9)13-4/h2*5-7,12H,1-4H3
Key: CZBZUDVBLSSABA-UHFFFAOYSA-N
InChI=1/2C11H16O2/c1-11(2,3)9-7-8(13-4)5-6-10(9)12;1-11(2,3)9-7-8(12)5-6-10(9)13-4/h2*5-7,12H,1-4H3
Key: CZBZUDVBLSSABA-UHFFFAOYAZ
|
特性 |
化学式 |
C11H16O2 |
モル質量 |
180.24 g/mol |
外観 |
waxy solid |
密度 |
1.0587 g/cm³ at 20°C |
融点 |
48-55 °C
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沸点 |
264-270 °C
|
水への溶解度 |
Insoluble in water; freely soluble in ethanol, methanol, propylene glycol; soluble in fats and oils |
屈折率 (nD) |
1.5303 at 589.3nm [2] |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ブチルヒドロキシアニソール(Butylated hydroxyanisole、しばしばBHAと略される)とは、脂溶性の有機化合物であり、主に酸化防止を目的として用いられる食品添加物である[3]。また、化粧品等にも使用される。
目次
- 1 使用基準
- 2 発がん性および抗がん性について
- 3 日本での扱い
- 4 脚注
- 5 関連項目
使用基準
品名:ブチルヒドロキシアニソール (BHA)
主要用途:酸化防止剤
対象食品:魚介冷凍品(生食用冷凍鮮魚介類及び生食用冷凍かきを除く)及び、鯨冷凍品(生食用鯨冷凍品を除く)の浸漬液;浸漬液に対して1.0g/kg
油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも;0.20g/kg
使用制限:ジブチルヒドロキシトルエンと併用するときはその合計量
発がん性および抗がん性について
昭和57年に名古屋市立大学の伊東信行教授ら研究グループによってラットの前胃に対しての発がん性が報告されたが、発がん性のみられた用量と、まったく影響が見られなかった用量が明確であり、かつ発がん性のみられた用量は、通常使用量の数万倍である[4]ことから通常の使用量では影響がないことが確認された。 また、低用量のBHAは既知の発がん物質による発がんを抑制するという、抗がん作用も報告されている。 オランダでのコホート研究でも食物経由での日常の摂取では胃がんとの関連性はみられないと報告されている[5]。
伊東信行教授らの研究では、発がん性のみられた用量は1,322mg/kg/日、過形成がみられた用量は109.6mg/kg/日、何も変化がみられなかった用量は54.8 mg/kg/日であり、これが最大無毒性量(NOAEL)と判断されている。 ヒトにおける1日摂取許容量(ADI)はこのNOAELのさらに約1/100の0.5mg/kg/日とされる[6]。 このADIと比較すると、ラット前胃で発がん性のみられた用量はADIの約2,600倍となる。 IARC発がん性リスク一覧では、コーヒーや漬物と並んで、ヒトに対する発がん性が疑われるGroup 2B(動物では安全性および発がん性に関するエビデンスがあるが、ヒトに対してはエビデンスや疫学的なデータがない)に分類されている[7]。
欧州食品安全委員会(EFSA)は2011年に再評価を行い、ADIを倍量の1.0mg/kg/日に引き上げている[8]。
一方、BHAには既知の発がん性物質によって誘導された病変を抑制する作用も報告されている。 1996年、WilliamsはアフラトキシンB1による肝臓発がんの抑制を報告[9]、1986年、伊東らは7,12-ジメチルベンズアントラセンで誘発された乳腺がんの抑制[10]、およびN-エチル-N-ヒドリキシエチルニトロソアミンで誘発された肝臓がんの抑制を報告している[11]。
これらの報告からもわかるように、物質のリスク評価には量の概念が不可欠である。例えば塩や醤油なども大量に摂取すれば死に至る。(食塩の推定致死量:0.5~5g/kg、または1~3g/kg、醤油の推定致死量:2.8~25mL/kg)[12] これは体重60kgの人で考えると、塩で30~300g、醤油で168~1500mLという、通常では考えられない摂取量である。逆に言えば、安全な量さえ守れば危険性はないということである。つまり、安全な物質と危険な物質とに単純に分けることはできず、どのような物質にも安全な量と危険な量があるのである。これは薬理学の基本的な概念としてよく知られている。
日本での扱い
名古屋市立大学の研究グループ(伊東教授ら)によって発がん性が確認され、発がん性が公となった1981年当時、食品衛生調査会からの意見具申を受け、厚生省が使用禁止に動き、施行期日を1982年2月1日とする規制告示に至ったが、1982年1月31日、アメリカやイギリス、カナダ等西欧諸国からの要請で再評価を行い、最終的に平成10年7月7日の食品衛生調査会毒性部会で従来の規制どおりの使用基準となった[13]。 1981年当時の経緯に関しては、サンケイ新聞 1983年8月2日と3日の「暮らしの社会学」(6:健康には影響ないBHA、7:早すぎたBHA禁止措置)に詳細が書かれている。伊東教授らが発表したBHAの発がん性報告に対し、アメリカ、イギリス、カナダの専門家が集まり、その信頼性を確認しに来たのである。なぜなら当時、BHAは世界で広く使われていた酸化防止剤であり、その安全性については世界の専門家が何度もチェックし確認されていたからである。その専門家たちが伊東教授らの試験データをくまなくチェックし、「パーフェクトだ」と研究の信頼性を確認した。その結果、各国の専門家たちは伊東教授らのレポートを十分に検討したうえで、人間の健康に影響はないと判断し、従来通りの使用を継続したのである。それに対し、当時の日本は消費者の感情を意識し、「疑わしきは使用せず。」というスタンスで使用を禁止しようとした。これは一見正しいように見えるかもしれないが、この論理で行くと、アルコール飲料もタバコも禁止、紫外線も発がん性があるので外出もできない、レントゲン線にも発がん性があるのだから健康診断も歯医者にもかかれない、成層圏を飛ぶ飛行機にも宇宙線の影響を考えると乗れなくなってしまうということになる。つまり物質の発がん性(安全性)について考えるときは、「発がん性」がどれほどの強さとどのような性質を持っているかが最重要であると結論している。BHAの発がんの強さは、わらびの3分の1、ふきのとうの2分の1以下に過ぎず、さらにその性質は、がんを引き起こす悪質なイニシエーターではなく、単なる促進役(プロモーター)であり、さらに、量によっては発がん性を抑制する性質もあるのである[14]。
脚注
- ^ “BHA and BHT”. 2009年11月20日閲覧。
- ^ “SciFinder — Experimental properties for 121-00-6”. 2009年11月20日閲覧。
- ^ [厚生労働省行政情報、添加物使用基準リストhttp://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/a11c0985ea3cb14b492567ec002041df/8aa11687a2aaf0c4492570650018d5ba?OpenDocument]
- ^ [1998/07/07 食品衛生調査毒性部会・添加物部会合同部会議事録 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s9807/txt/s0707-1.txt]
- ^ [Botterweck AAM, Vergaen H, GoldBohm RA, KleinJans J, van den Brant PA (2007). "Intake of Butylated Hydroxyanisole and Butylated Hydroxytoluene and Stomach Cancer Risk: Results from Analyses in the Netherlands Cohort Study". Food and Chemical Toxicology 38 (7): 599–605. doi:10.1016/S0278-6915(00)00042-9. PMID 10942321.]
- ^ [有害性評価書 Ver.1.0 No.32 ブチルヒドロキシアニソール(別名 BHA)]
- ^ [Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–107 http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/ClassificationsGroupOrder.pdf]
- ^ [EFSA, Scientific Opinion on the re-evaluation of butylated hydroxyanisole – BHA (E 320) as a food additive.(2011) , http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2392.htm]
- ^ [Williams GM, Iatropoulos MJ., Cancer Lett. 1996, Inhibition of the hepatocarcinogenicity of aflatoxin B1 in rats by low levels of the phenolic antioxidants butylated hydroxyanisole and butylated hydroxytoluene.]
- ^ [Ito, N., Hirose, M., Fukushima, S., Tsuda, H., Shirai, T. and Tatematsu, M., Food Chem. Toxicol., 24, 1071-1082., 1986b, Studies on antioxidants: their carcinogenic and modifying effects on chemical carcinogenesis.]
- ^ [Williams, G.M., Tanaka, T. and Maeura, Y., Carcinogenesis, 7, 1043-1050., 1986, Dose-related inhibition of aflatoxin B1 induced hepatocarcinogenesis by the phenolic antioxidants, butylated hydroxyanisole and butylated hydroxytoluene.]
- ^ [公営財団法人 日本中毒情報センター、保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 【塩、醤油】Ver. 1.00.]
- ^ [1998/07/07 食品衛生調査毒性部会・添加物部会合同部会議事録 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s9807/txt/s0707-1.txt]
- ^ [サンケイ新聞 日刊 1983(昭和58)年8月2日、3日 暮らしの社会学<6>、<7>]
関連項目
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Japanese Journal
- マーケットバスケット方式によるBHT,BHA,没食子酸プロピルの摂取量調査 : 2013年度
- マーケットバスケット方式による BHT,BHA,没食子酸プロピルの摂取量調査--2008年度
Related Links
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
シンバスタチン錠5mg「オーハラ」
組成
成分・含量
添加物
- 乳糖水和物、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、ステアリン酸マグネシウム
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 重篤な肝障害のある患者〔本剤は主に肝臓において代謝され、作用するので肝障害を悪化させるおそれがある。〕
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
- イトラコナゾール、ミコナゾール、アタザナビル、サキナビルメシル酸塩、テラプレビル、コビシスタットを含有する製剤、オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビルを投与中の患者(「相互作用」の項参照)
効能または効果
- 高脂血症、家族性高コレステロール血症
- 通常、成人にはシンバスタチンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、LDL-コレステロール値の低下が不十分な場合は1日20mgまで増量できる。
- あらかじめ高脂血症治療の基本である食事療法を行い、更に運動療法や高血圧・喫煙等の虚血性心疾患のリスクファクターの軽減等も十分考慮すること。
服用時間:
- コレステロールの生合成は夜間に亢進することが報告されており、臨床試験においても、朝食後に比べ、夕食後投与がより効果的であることが確認されている。したがって、本剤の適用にあたっては、1日1回夕食後投与とすることが望ましい。
慎重投与
- アルコール中毒者、肝障害又はその既往歴のある患者〔本剤は主に肝臓において代謝され、作用するので肝障害を悪化させるおそれがある。また、アルコール中毒者では横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある。(「副作用 重大な副作用」の項参照)〕
- 腎障害又はその既往歴のある患者〔横紋筋融解症の報告例の多くが腎機能障害を有する患者であり、また、横紋筋融解症に伴って急激な腎機能の悪化が認められている。〕
- 甲状腺機能低下症の患者、遺伝性の筋疾患(筋ジストロフィー等)又はその家族歴のある患者、薬剤性の筋障害の既往歴のある患者〔横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある。(「副作用 重大な副作用」の項参照)〕
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
重大な副作用
横紋筋融解症、ミオパチー:
(頻度不明)
- 筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれ、これに伴って急性腎不全等の重篤な腎障害があらわれることがある。また、ミオパチーがあらわれることがあるので、広範な筋肉痛、筋肉圧痛や著明なCK(CPK)上昇などに注意すること。異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
,*免疫介在性壊死性ミオパチー:
(頻度不明)
- 免疫介在性壊死性ミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肝炎、肝機能障害、黄疸:
(頻度不明)
- 肝炎、黄疸等の肝機能障害があらわれることがある。また、まれに肝不全に至ることがあるので、定期的に肝機能検査等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
末しょう神経障害:
(頻度不明)
- 四肢の感覚鈍麻、しびれ感・冷感等の感覚障害、あるいは筋力低下等の末しょう神経障害があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
血小板減少:
(頻度不明)
- 血小板減少があらわれることがあるので、血液検査等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
過敏症候群:
(頻度不明)
- ループス様症候群、血管炎等を含む過敏症候群が報告されているので、このような症状があらわれた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
間質性肺炎:
(頻度不明)
- 間質性肺炎があらわれることがあるので、長期投与であっても、発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常等が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- コレステロール生合成の律速酵素であるHMG‐CoA還元酵素を選択的に阻害することによってコレステロールの生合成を抑制する4)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
化学名:
- (1S,3R,7S,8S,8aR)‐8‐{2‐[(2R,4R)‐4‐Hydroxy‐6‐oxotetrahydro‐2H‐pyran‐2‐yl]ethyl}‐3,7‐dimethyl‐1,2,3,7,8,8a‐hexahydronaphthalen‐1‐yl 2,2‐dimethylbutanoate
- 本品は白色の結晶性の粉末である。
本品はアセトニトリル、メタノール又はエタノール(99.5)に溶けやすく、水にほとんど溶けない。
★リンクテーブル★
[★]
アスコルビン酸、エルゴカルシフェロール、シアノコバラミン、チアミン硝化物、トコフェロール酢酸エステル(トコフェロール)、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、レチノールパルミチン酸エステル(レチノール)、葉酸
組成
添加物
性状]]
[★]
ブチルヒドロキシアニソール butylated hydroxyanisole
[★]
ブチルヒドロキシアニソール BHA
[★]
- 英
- butyl、Bu
- -CH2CH2CH2CH3
[★]
- 英
- hydroxy
- 関
- 水酸化、ハイドロキシ
[★]
- 英
- hydro
- 関
- ハイドロ