出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/11/12 20:32:13」(JST)
血管(けっかん、Blood vessel)は、血液を身体の各所に送るための通路となる管。全身へ酸素や栄養分、老廃物、体温(恒温動物の場合)、水分を運ぶ。血管中の血液を規則的に送るための筋肉に富む構造がある場合、これを心臓という。血管中の血液の流れる方向は普通一定しており、血管には心臓から出る血液を送る動脈と心臓へ戻る血液を送る静脈がある。
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全ての血管は同様に基本的な構造を持つ。最も内側は内皮であり内皮下の結合組織に囲まれている。この周りに血管平滑筋があり、動脈に於いてよく発達している。その周りには更に外膜という結合組織層があり、筋肉層に繋がる神経がある。大きい血管であれば栄養供給用の毛細血管もある。毛細血管では内皮層は極僅かであり、稀に結合組織を含む程度である。 成人の血管をすべてまっすぐに繋げるとおよそ10万キロメートル(赤道の約2.5倍の長さ)に及ぶ。
血管は能動的に血液輸送はしない(感知できる程の蠕動運動はしない)が、動脈(ある程度なら静脈も)は自律神経による筋層収縮によってその内径を調節し、下流臓器への血量を変えることができる。血管拡張と血管狭窄は体温調節のように互いに拮抗的に働く。
酸素(赤血球のヘモグロビンに結合)は血液によって運ばれる最も重要な物質のひとつである。肺動脈を除く全ての動脈では、ヘモグロビンは殆ど(95-100%)酸素で飽和している。一方肺静脈を除く全ての静脈では約70%ほどに不飽和化するが、肺循環経由でこの値は戻される。
血管に於ける血圧は通例水銀柱ミリメートルで表される。
心臓から送り出される血液が通るのが動脈、心臓へ戻る血液が通るのが静脈である。動脈と静脈は、基本的には同じような構造であるが、動脈には心臓からの強い圧力がかかるため、壁が非常に厚くなっている。静脈では、そのような圧力がかからないので、壁が薄くなっているほか、逆流しないように弁が付いている。太い動脈には大きい圧力がかかっているため、仮に傷によって体外に開いた場合、出血量が非常に多くなり、失血死の危険が大きい。そのため、大抵の場合、静脈が体表側を通り、動脈はより内側を通る。
動脈を通る血液を動脈血、静脈を通る血液を静脈血という。例外は心臓から肺への肺動脈と肺から心臓へはいる肺静脈の場合(肺循環)であり、肺動脈は静脈血が通り、肺静脈は動脈血が通る。 陸上脊椎動物においてこの二つの違いは、おもに酸素含有量の差であり、動脈血は酸素を多く含み(酸素ヘモグロビンの率が高く)、血液は鮮やかな赤をしている。静脈血は酸素を失っているので、どす黒い色になっている。
多くの動物では、血管は全身に渡って互いに繋がり、血管系あるいは循環系をなす。血管系は動物の分類群により構成が異なり、開放血管系、閉鎖血管系の2種類がある。
動脈、静脈からなる。心臓から繋がる動脈は体の各部に伸びてそこで口を開く。動脈から流れ出た血液は、直接細胞間を経由し(毛細血管がない)、静脈へ戻る。昆虫などの節足動物、軟体動物などの動物群に見られる。 単層扁平上皮で構成される。
動脈、静脈、毛細血管からなる。動脈から流れ出た血液は、毛細血管を経て静脈へ戻る。血液は血管内に閉じこめられている。血漿やリンパ球は血管壁から出て、周囲の細胞と細胞との間を埋める組織液として、血液と細胞との間の物質の運搬などを担う。脊索動物(ただし一部の原索動物を除く)、環形動物に見られる。当然ながらヒトも閉鎖血管系である。
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動脈 | 内膜 | 中膜 | 外膜 |
弾性血管 | 内皮細胞(ワイベル・パラーデ小体を含む) 基底板 内皮下層(少数の線維芽細胞、散在する平滑筋細胞、膠原線維) 不完全な内弾性板 |
40-70層の有窓性弾性板 弾性板の間に存在する平滑筋細胞 薄い弾性板 外半分には脈管栄養細胞が分布 |
線維・弾性結合組織 脈管栄養血管 リンパ管 神経細胞 |
筋性動脈 | 内皮細胞(ワイベル・パラーデ小体を含む) 基底板 内皮下層(少数の線維芽細胞、散在する平滑筋細胞、膠原線維) 厚い内弾性板 |
40層に及ぶ平滑筋細胞層 厚い外弾性板 |
薄い線維・弾性結合組織 脈管栄養血管は著明でない リンパ管 神経線維 |
細動脈 | 内皮細胞(ワイベル・パラーデ小体を含む) 基底板 内皮下層:目立たない 内弾性板はなく、弾性線維がある |
1-2層の平滑筋細胞 | 疎性結合組織 神経線維 |
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