- 英
- iron hydroxide
- 関
- 酸化鉄、鉄
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/07/08 10:38:44」(JST)
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水酸化鉄(すいさんかてつ)は鉄の水酸化物である。鉄の酸化数により水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)が存在する。 ただし水酸化鉄(III)は後述の通り慣用的な名称であり、実際の構造は酸化水酸化鉄(III)などであることが判明している。
水酸化鉄(II)[編集]
水酸化鉄 |
IUPAC名
水酸化鉄(II)
Iron(II) hydroxide
|
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
18624-44-7 |
特性 |
化学式 |
Fe(OH)2 |
モル質量 |
89.860 g/mol |
外観 |
pale green crystals |
密度 |
3.40 g/cm³, |
融点 |
°C ( K) (分解)
|
水への溶解度 |
6×10−3g/dm3 (25℃) |
構造 |
結晶構造 |
六方晶系 |
熱化学 |
標準生成熱 ΔfHo |
−569.0 kJ mol−1[1] |
標準モルエントロピー So |
88 J mol−1K−1 |
特記なき場合、データは常温(25 ℃)・常圧(100 kPa)におけるものである。 |
水酸化鉄(II)は、Fe(OH)2で表される鉄の水酸化物である。 無色から淡緑色の六方晶系で水酸化カドミウム型構造(ヨウ化カドミウム型構造類似)の結晶である。 鉄(II)イオンを含む溶液に酸素が存在しない状態で水酸化ナトリウムを滴下すると沈殿が生じる。
- Fe2+(aq) + 2 OH−(aq) → Fe(OH)2
溶解度積は以下の通りであり、希酸に容易く溶解し鉄(II)イオンを生じる。
- Fe(OH)2 Fe2+(aq) + 2 OH−(aq), Ksp = 1×10−15
また幾分両性を示し、濃厚アルカリ水溶液にも溶解する[2]。
- Fe(OH)2 + 2 OH−(aq) [Fe(OH)4]2−(aq), K = 10−3
酸素が存在する状態では容易に酸化されて水酸化鉄(III)へと変化する。酸化の進行に伴い、淡緑色→灰緑色→黒褐色→赤褐色へと色相が変化する。湿気のある条件下における鉄錆の生成も、一旦2価の鉄イオンFe2+が生じ、空気酸化が進行して3価の水酸化鉄すなわち赤錆となることが知られている。塩基性条件下ではより強い還元剤として働き、硝酸イオンをアンモニアに、ニトロベンゼンをアニリンに還元する[3]。
- 4 Fe(OH)2 + O2 → 4 FeO(OH) + 2 H2O
- FeO(OH) + H2O + e− = Fe(OH)2 + OH−, E°= −0.556 V
水酸化鉄(III)[編集]
水酸化鉄 |
IUPAC名
オキシ水酸化鉄(III)
Iron(III) oxide hydroxide
|
別称
Ferric hydroxide oxide
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
20344-49-4 |
特性 |
化学式 |
FeO(OH) |
モル質量 |
88.852 g/mol |
外観 |
Red brown powder |
密度 |
4.09 g/cm³(γ) |
融点 |
°C ( K) (分解)
|
水への溶解度 |
1.5×10−4g/dm3 (25℃) |
構造 |
結晶構造 |
斜方晶系(α),(γ) |
熱化学 |
標準生成熱 ΔfHo |
−559.0 kJ mol−1(α)[1] |
特記なき場合、データは常温(25 ℃)・常圧(100 kPa)におけるものである。 |
水酸化鉄(III)は、Fe(OH)3 で表される鉄の水酸化物である。 しかし実際には鉄と水酸化物イオンが1:3の比率で含有しているような化合物は知られていない。
天然に鉄鉱石として、針鉄鉱、赤金鉱、鱗鉄鉱、褐鉄鉱などが水酸化鉄(III)の一種として発見されていたが、これらのほとんどはいずれも酸化水酸化鉄(III)(FeO(OH))の組成を持つことが判明している。これらの鉱石は多形の関係にある。なお赤金鉱の組成はFeO(OH,Cl)であり、塩素が必須だと判明したため独立種に昇格された。
針鉄鉱α-FeO(OH)に相当するものは、水酸化鉄(II)を低温で空気酸化した後、得られたアモルファスを熱処理することで生成する。 β-FeO(OH)に相当するものは、塩化鉄(III)を加水分解することで生成する。 鱗鉄鉱γ-FeO(OH)に相当するものは、水酸化鉄(II)を亜硝酸で酸化すると得られる。 これらの酸化水酸化鉄(III)は加熱するといずれも脱水して対応する酸化鉄(III)が生成する。
鉄(III)イオンを含む溶液に水酸化ナトリウムを滴下した場合に生じるゲル状の沈殿の組成は酸化水酸化鉄(III)か、あるいはさらに脱水まで進行した酸化鉄(III)と考えられているが、詳細は明らかにはされていない。
- 2 Fe3+(aq) + 6 OH−(aq) + (n−3)H2O → Fe2O3・nH2O
溶解度積は以下のような値が見積もられている。
- FeO(OH) + H2O Fe3+(aq) + 3 OH−(aq), Ksp = 1×10−38
日本の高等学校の化学教科書に、塩化鉄水溶液を沸騰水中に滴下して水酸化鉄(III)のコロイド溶液を調製することが示演実験の例として紹介されている[4]。
- 2 Fe3+(aq) + (n+3)H2O → Fe2O3・nH2O + 6 H+(aq)
- (一般的には FeCl3 + 3 H2O → Fe(OH)3 + 3 HCl と表記される)
参考文献[編集]
- ^ a b D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
- ^ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
- ^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
- ^ 渡辺 正 ほか 『新版 化学II』 大日本図書、2007年
鉄の化合物 |
|
二元化合物 |
FeBr2 · FeBr3 · Fe3C · FeCl2 · FeCl3 · FeF2 · FeF3 · FeH2 · FeH3 · FeI2 · FeI3 · FeN · Fe3N · Fe3N2 · Fe(N3)2 · FeO · Fe2O3 · Fe3O4 · FeS · FeS2 · Fe2S3 · Fe3S4 · FeSe · Fe2Se3 · FeSi2
|
|
三元化合物 |
Fe(C5H5)2 · Fe(ClO3)3 · Fe(ClO4)2 · Fe(ClO4)3 · Fe(CN)2 · Fe(CN)3 · FeCO3 · Fe(CO)5 · FeC2O4 · Fe2(CO3)3 · Fe2(CO)9 · Fe2(C2O4)3 · Fe3(CO)12 · Fe2(CrO4)3 · Fe2(Cr2O7)3 · Fe5(IO6)2 · FeMnO4 · FeMoO4 · Fe(NO3)2 · Fe(NO3)3 · Fe(OH)2 · Fe(OH)3 · FeO(OH) · FePO4 · Fe3(PO4)2 · FeSeO4 · FeSO3 · FeSO4 · Fe2(SO4)3 · H2FeO4 · BaFeO4 · K2FeO4 · Fe(IO3)2 · Fe(IO3)3 · FeWO4
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四元・五元化合物 |
[Fe(C5H5)2]BF4 · Fe(CH3COO)2 · Fe(CH3COO)3 · Fe(HCOO)2 · Fe(OCN)2 · Fe(SCN)2 · Fe(SCN)3 · H3[Fe(CN)6] · H4[Fe(CN)6] · (NH4)2Fe(SO4)2
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- チキソトロピーの教材化 : 水酸化鉄(III)コロイドのゾル-ゲル転移(ヘッドライン:市民として必要な基礎・基本の化学VI -身近な疑問と化学(なぜ○○なのか?))
- 排水中の陰イオン除去・回収をめざした多孔質水酸化鉄吸着材の開発
Related Links
- 移動: 案内、 検索. 水酸化鉄(すいさんかてつ)は鉄の水酸化物である。鉄の酸化数 により水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)が存在する。 ただし水酸化鉄(III)は後述の通り慣用的 な名称であり、実際の構造は酸化水酸化鉄(III)などであることが判明している。
- α-FeOOH – α-オキシ水酸化鉄、(針鉄鉱、goethite); β-FeOOH – β-オキシ水酸化鉄、 (赤金鉱、akaganéite); γ-FeOOH – γ-オキシ水酸化鉄、(鱗鉄鉱、 lepidocrocite ); δ- FeOOH – δ-オキシ水酸化鉄、(フェロオキシ ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- iron Fe
- 同
- scissors
- 関
- ヘモグロビン、赤血球、血清鉄、iron salts
概念
- ヘモグロビン、ミオグロビン、およびペルオキシダーゼなどの正常な働きのために必須の元素である。ヒトは一日10-15mgの鉄を摂取しており、そのうちわずか1mgが小腸で吸収される。主に十二指腸でFe2+の形で吸収されるので、胃酸、ビタミンC、クエン酸などによりFe3+→Fe2+になっていると吸収の効率が高まる。生体内には4gの鉄が存在しており、その2/3がヘム鉄(2.5g)(ほぼヘモグロビン鉄、一部ミオグロビン鉄)で存在し、残りのほとんど(1g)は貯蔵鉄(網内系の中。フェリチン・ヘモジデリンとして)として組織に貯蔵される。鉄は受動的に1mgが主に消化管から失われ、その他皮膚、尿路からも失われる。
基準値
- →血清鉄
鉄の体内分布(SP.499)
鉄の収支 (SPC.280)
- 糞、汗、脱落皮膚:1mg/day
- 月経中の女性:30mg/月経期間中
- 妊娠中:500mg/満期まで
- 月経中の女性:1.4mg/day
- 妊娠中:5-6mg/day
- 男性:0.5-1.0mg/day
-
- うち0.9mg程度しか吸収されない
鉄の吸収 (詳しくは図:SP.500)
- 十二指腸で良く吸収される。 (吸収部位:十二指腸、空腸上部(LAB.579))
- Fe2+は水溶性、Fe3+は難溶性なので、Fe2+であるほうが吸収されやすい。また、ヘム鉄、アミノ酸鉄などキレート状の鉄は吸収が容易である(SP.499)
- 鉄は摂取量の10%しか吸収されない。腸上皮中ではフェリチンと結合して存在するが、フェリチンが飽和するとそれ以上取り込まない。腸上皮のフェリチンは血清中のトランスフェリンに鉄を渡すが、トランスフェリンが飽和するとそれ以上鉄を渡せなくなる。鉄が飽和した状態の腸上皮はやがて脱落する。これで、必要以上の鉄が吸収されないように厳密に制御されている(←過剰の鉄は生体内でフリーラジカルを産生する反応を触媒するので危険)。ビタミンCは鉄の吸収を促進し、肉に含まれるヘム鉄は食物中の無機鉄より効率よく吸収される。またアルコールやフルクトースは鉄の吸収を促進するが、カルシウムは鉄の吸収を阻害する。(HBC.486)
QB.A-366
- 鉄の吸収には胃酸の分泌、十二指腸からの吸収が必要。胃全摘が施行された場合には、胃酸の分泌減少と、Billroth II法が施行された場合には食物が十二指腸を通過せず鉄の吸収が障害される。
治療薬
臨床関連
[★]
- 英
- hydroxylation
- 関
- ヒドロキシ、ヒドロキシル化、ハイドロキシ、ヒドロキシ化