出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/03/01 23:19:51」(JST)
接合菌 | ||||||
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接合菌門(せつごうきんもん)は菌界の中の分類群で、接合胞子嚢を形成するのを特徴としている。古くから認められた分類群ではあるが、現時点では解体されることが提案されている。従って、以下の記述はそれ以前の体系によるものである。
もっとも身近に見られるのは、ケカビとクモノスカビである。いずれもカビとしては大柄で、太い菌糸からなり、基質中に菌糸をのばして栄養を摂取する。菌糸には隔壁がなく、多核体である。菌糸のあちこちから、細く分枝した仮根状菌糸をのばす。
基質上の菌糸体から生じて空中にのびた柄の先にふくらみが生じて、その内部が多数の胞子となる。これを胞子のうと呼び、胞子が成熟すると、外壁が破れて胞子のう胞子が散布される。
その他の接合菌では、菌糸体は多核体のものから、規則正しい隔壁を持つものまで様々である。ハエカビ目のものは菌糸体の発達が良くない。トリモチカビ目のものは、非常に細い菌糸を形成する。特に菌寄生のものは、相手菌糸内に吸器を侵入させる。
胞子のうの形にはいろいろあり、仲間によっては少数の胞子のみを含み、胞子のう全体が散布体として働く小胞子のう、細長い袋に1列に胞子が入り、胞子のう全体が節に分かれるようにして散布される分節胞子のうなどがある。小胞子のう内の胞子が一つだけのものでは、不完全菌の分生子との区別が難しい場合がある。また、ハエカビ目のものなどは分生子と考える見方もある。
アツギケカビ(エンドゴーン)目とグロムス目のものは、胞子のう胞子や厚膜胞子などを菌糸が包んで、肉眼的な大きさの球形の子実体を地下に生じる。
無性生殖は胞子嚢胞子などによる。胞子のう胞子は発芽して、菌糸体を形成する。
胞子嚢は菌糸の先端がふくらんで、内部が体細胞分裂によって細分されたもので、表面の胞子嚢壁が崩れるか割れることで胞子の分散が行われる。多くのものでは胞子嚢柄の形などに様々な特殊化が見られ、また、ごく少数の胞子を含んでそのまま分散体となる小胞子嚢や、内部に一列に並んだ胞子を含み、胞子一個ずつに折れて分散する分節胞子嚢など、特殊な形になった例もある。胞子一個だけを含むものは時に分生子と言われた。真性の分生子を持つ群もある。
有性生殖は、接合胞子のうが形成されることで行われる。ケカビの場合、好適な菌と出会った場所で、両者の菌糸が接近し、菌糸の先端がふくらみ、その両者が接合して、中間に球形の接合胞子のうが作られる。接合胞子のうは成熟すると黒っぽくなり、堅くでこぼこした壁を持つが、その内部には1つの接合胞子を含む。
減数分裂は、接合胞子の中で行われる。接合胞子は発芽すると、直接に胞子のう柄をのばし、胞子のう胞子を形成する。菌糸体は単相で、世代交代はない。
なお、多くの種では、互いに接合できる株が決まっていて、通常+-と表現されるが、符号が同じもの同士では接合できない。これを自家不和合性 (Heterothallic) という。自家和合性 (Homothallic) のものでは、同一株内でも接合胞子が形成される。
なお、接合胞子のう形成に際して、ケカビの場合には平行した2本の菌糸から、互いに配偶子のうをのばして接合するため、全体としてはH字型になる。これに対し、コウガイケカビやトリモチカビ目では両菌糸がいったん接触を持ち、それから配偶子のうが一度離れて再び接触をとる形になって、そこに接合子のうができる。全体としてはやっとこで接合子のうを挟んだような形になる。キクセラ目やハエカビ目では通常の菌糸が接合して、接合部の側面に出芽する形で、接合胞子のうが形成される。
また、ケカビでは配偶子のうに性的な分化が見られないが、ツガイケカビ(Zygorhynchus)などでは大小の分化を生じている。
伝統的にはケカビのような菌類を中心に立てられた門である。後にトリコミケス類がこれに含められた。2000年代までは、以下の二綱を含む体系が取られた。
一部の菌が発酵食品に用いられる。紹興酒の麹には普通コウジカビを使わず接合菌類(クモノスカビ(Rhizopus) 属、ケカビ(Mucor) 属)を使う。またテンペ(インドネシアの納豆風の食品)もRhizopus oligosporus で発酵させる。Rhizomucor miehei からはチーズ製造に用いるレンニンが得られる。
2007年、英国菌学会報に提案された菌類全体の分類体系の見直し [1]では、接合菌門そのものが認められていない。これは、ここに含まれていた個々の群が、それぞれに独立性が強い上に、それらの間の類縁関係が確定できない、との判断によっている。そのために、それらは門を指定しないままに亜門としてある。おおよそは以下のようなものである。
この体系は、門不明の亜門を置くなど、暫定的な措置のような部分もあり、また周辺には未だに所属不明の群も存在することから、さらに大きな変更がある可能性は大きい。ただし、2011年現在においても専門分野でこの名(Zygomycota)が使われている事例もあり[2]、今後もしばらくは見るものと思われる。
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リンク元 | 「リゾプス属」「接合菌類」 |
関連記事 | 「門」 |
テンプレート:生物分類表 クモノスカビは、菌界・接合菌門・接合菌綱・ケカビ目・ケカビ科(あるいはユミケカビ科)に属するカビ(Rhizopus)の和名である。基質表面をはう菌糸の様子がクモの巣を思わせることから、その名がある。
クモノスカビは、湿った有機物表面に出現する、ごく普通のカビである。空中雑菌として出現することも多い。
体制はケカビに似ている。菌糸体は多核体の菌糸からなり、基質中に菌糸をのばすが、基質表面から気中へと匍匐菌糸をのばすのが特徴である。匍匐菌糸は基質の上をはい、基質につくとそこから菌糸をのばす。そのため、ケカビに比べると、コロニーの成長が早く、あっというまに広がる。基質の表面に広がる気中菌糸は、その表面に水滴がつき、きらきらと輝き、クモの網のように見える。
無性生殖は、胞子のう胞子による。胞子嚢柄は匍匐菌糸が基質に付着したところから出て、その下には仮根状菌糸が伸びる。胞子のう柄はほとんど分枝せず、先端に大きな胞子のうを1つつける。胞子のうは、ケカビのものによく似ているが、胞子のう柄の先端がすこし広がって胞子のうに続き、胞子のう内部の柱軸になめらかに続いている(ケカビでは、胞子のう柄は胞子のうのところでくびれる)。このような胞子のう直下のふくらみをアポフィシスと呼び、ケカビ目の属の分類では重要な特徴とされる。ただし、ユミケカビ(Absidia)ほど明瞭ではないので、見分けにくい場合もある。
胞子は、胞子嚢の壁が溶けることで放出される。はじめは壁がとろけてできた液粒の中に胞子が入った状態だが、すぐに乾燥し、柱軸も乾いて傘状に反り返り、その表面に胞子が乗った状態になる。クモノスカビの胞子はケカビなどにくらべて乾燥に強そうな、丈夫な表面を持ち、条模様が見られるのが普通である。
有性生殖は、ケカビと同じように、配偶子のう接合によって接合胞子のうを形成する。一部の種をのぞいては自家不和合性なので、接合胞子のうを見掛けることは少ない。接合胞子のう柄はH字型で、丸くふくらむ。接合胞子のうは黒褐色に着色し、その表面は凹凸がある。
クモノスカビは、基本的には腐生であるが、弱い寄生菌として、植物の病原体になる場合がある。食物の上に出現することも多い。モモなどの柔らかい果実について、その腐敗を早めることもある。
極めて成長が早いので、微生物の培養時にコンタミとしてこれが侵入すると、一夜にして全てを覆いつくす。胞子もよく飛ぶのでいやがられる。
他方、コウジカビを使う日本以外のアジア全域において、紹興酒などの酒の醸造で麹に用いられたり、インドネシアでは茹でた大豆に生やしてテンペ(Tempeh)という食品にする例がある。
100を越える種が記載されている。形態が単純で分類が難しい類でもある。実際の種数は十数種といわれる。
-クモノスカビ属
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