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労働時間(ろうどうじかん)とは、使用者または監督者の下で労働に服しなければならない時間。日本の公務員については勤務時間を参照。
労働者が使用者の下で労働に服するにあたり、労働者は使用者の指揮命令下におかれ、その間の時間を労働のために費やすこととなる。つまり、労働者はこの時間において使用者によって拘束され、労働者の行動は大きく制限される。
「資本論」においては、資本家に対して労働者が己の労働力そして時間を売り、その対価として資本家から賃金を得るものとされている。
国際労働機関において、第1号条約[1]で工業の労働時間は8時間/日、48時間/週を超えてはならないと決められており、また第30号条約[2]などにより商業および他の業種も同じ程度の労働時間が決められている。時間外労働(残業)は厳しく制限されており、時間外労働を毎日させることは出来ないことになっている。
世界の労働時間は1980年以降それまでの減少傾向が止まり、再び増大に転じつつある。2004年度のOECDの報告において、OECD加盟諸国のうちで労働者の就労時間が最も長いのは、年間2390時間を計上した大韓民国であった。次点が1984時間のポーランド、更にメキシコ、チェコ、日本、ギリシャ、アメリカ合衆国と続く。
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日本では、日本国憲法第27条2項の規定を受け、労働基準法(昭和22年4月7日法律49号)等により、労働時間の上限やその計算方法が定められている。
労働基準法に定められた労働時間を法定労働時間、就業規則などに決められた労働時間から休憩時間を除いた時間を所定労働時間という。法定労働時間または所定労働時間のいずれか長い時間を越えた時間外労働の時間を法定外労働時間、所定労働時間を越え法定労働時間未満を所定外労働時間ということがある。また、就業時間は、労働時間、特に所定労働時間の意味でもちいられる。なお、労働時間を1日あたりに割り振った場合の1日単位を労働日という。
始業及び終業の時刻、休憩時間に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項となっているため、使用者は就業規則にこれらに関する事項を必ず記載しなければならない(第89条)。
別表第一第1号から第3号まで、第6号及び第7号に掲げる事業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、労働時間及び休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。この定めは、労働基準法で定める基準に近いものであって、労働者の健康及び福祉を害しないものでなければならない(第40条)。また第41条各号に列挙されている者については、労働時間及び休憩に関する規定は適用しない。
一方で、日本は国際労働機関の労働時間に関する条約(1号、30号、153号など)を1つも批准していない。法定労働時間は例外が規定されており、三六協定などを用いれば労働時間に上限は無い。深夜12時を過ぎる残業や翌朝までの残業が行われているケースもあり、長すぎる労働時間は労働者の健康を害し、うつ病などの精神疾患や過労死、自殺の原因となっている。こうしたことから、 事業主は、労働時間等[3]の設定の改善を図るため、必要な措置を講ずるよう努めなければならない とする「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(時限立法であった「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を改正し、恒久化して成立)が平成18年4月1日から施行されている。同法により、事業主は、労働時間等の設定に当たっては、その雇用する労働者のうち、その心身の状況及びその労働時間等に関する実情に照らして、健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与その他の必要な措置を講ずるように努めるほか、その雇用する労働者のうち、その子の養育又は家族の介護を行う労働者、単身赴任者、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者その他の特に配慮を必要とする労働者について、その事情を考慮してこれを行う等その改善に努めなければならないとされる(同法第2条)。
第32条(労働時間)
昭和63年の法改正で上の原則を打ち立て、移行措置を設けながら平成9年に例外を除き完全実施となった。一方、各種の変形労働時間制をあわせて導入し、柔軟な労働時間の枠組みを定めることで変則的な業務形態に対応させ、もって所定労働時間の短縮を促した。
「1週間」は、就業規則等に特段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいう。「1日」は、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいう。ただし継続勤務が2暦日にわたる場合は、たとえ暦日を異にする場合であっても1勤務として扱い、始業時刻の属する日の労働としての「1日」となる。
常時10人未満の労働者を使用する事業場であって次の業種については、平成13年(2001年)3月31日までは1週間の労働時間が46時間、平成13年4月1日からは1週44時間の特例として認められている(第131条)。ただし、最低の基準を定めるべき労働基準が、事業場の規模により最低基準に差異があるのは極めて問題があるとされる。これら特例であっても変形労働時間制は1箇月単位または、フレックスタイム制に限り認められる。1年単位、1週間単位の変形労働時間制においては、特例事業であっても週40時間となる。
満18歳未満の年少者については、特例事業であっても週40時間となり、変形労働時間制も適用しない(第60条、61条)。代わりに、満15歳以上(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除く)の者については、週40時間を超えない範囲内において、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を10時間まで延長することは認められる(第60条3項)。
第34条(休憩)
労働時間中に与えられる休憩時間については、第34条において、以下の3原則が示されている。
労働時間が6時間以下の者については休憩を与えなくてもよい。また時間外労働が何時間であっても、1時間の休憩を与えれば違法ではない(昭和26年10月23日基収5058号)。
以下の者については、休憩を付与しなくてもよい。
第38条(時間計算)
「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合も含む(昭和23年5月14日基発769号)。
第32条の労働時間とは、労働者が使用者の明示または黙示の指示によって、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう(最一小判平成12年3月9日[4]、最一小判昭和56年10月18日[5])。労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたと評価することができるかどうかによって客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。労働者が使用者によって直接的に強制されている、つまり使用者の指揮監督下にある行動に要する時間は基本的に全て労働時間に該当する[4][5]。
就業前の準備や清掃のほか朝礼に要する時間、就業後の終礼や後片付けの時間、指定されたの制服や作業服への着替え(あるいは終業後の通勤着への着替え)のほか装備品着脱に要する時間、更衣室等から作業所までの往復の移動時間も、使用者の指揮命令下に労働者が置かれている限り労働時間に含まれる[4]。就業規則に、始業時刻と同時に業務を開始すべき旨の定めがある場合には、業務(更衣等を含む)の開始時点が労働時間の起算点となり、会社への入門から始業時刻までの時間は、労働時間には該当しない(東京高判昭和59年10月31日)。
朝礼や終礼への参加が労働者の任意であったり、ボランティアで清掃を行うような場合は、直接の強制を伴っておらず使用者の指揮命令下に置かれていないと解されるので、労働時間には含まれない。ただし、たとえそれらの行動が労働者の任意としていても、不参加の労働者に対し使用者が不利な取り扱いをする場合は事実上直接強制しているのであり使用者の指揮命令下に置かれていると解されるため、労働時間に含まれることになる(昭和23年7月13日基発第1018号・第1019号)。
休憩時間は労働時間に含まれない。ただし、事実上の休憩時間であっても労働者が使用者の一定の指揮命令下に置かれている場合は休憩時間とは見なされず労働時間に含まれる。休憩時間中に来客対応や電話対応をさせる場合[6]、使用者または監督者のもとで労働はしていないがいつでも労働できる待機状態である時間(手待ち時間 例:タクシーの客待ち時間。昭和22年9月13日基発17号)は、出勤を命ぜられ、一定の場所に拘束されている以上、そのような時間も労働時間に含まれる。
労働安全衛生法に規定する特殊健康診断の実施に要する時間、安全衛生教育の実施に要する時間、安全委員会・衛生委員会の実施に要する時間は、労働時間として扱われる(昭和47年9月18日、旧労働省労働基準局長名通達602号)。一方、同法による一般健康診断の時間や、その後の面接指導については当然には労働時間とはならず、労働時間として扱うか否かは労使の協議に委ねられる。
宿直勤務などの仮眠時間も、その時間内に何かあれば対応しなければならない義務がある場合などは「指揮命令下に置かれている」とされ、労働時間とされる(大星ビル管理事件、最判平成14年2月28日)。ただし、労働基準監督署から「監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外(待機のある仕事で待機時間に仕事をする頻度が極めて低く、その仕事の内容も簡単である業務等)」の許可を受けた事業所では、通常の労働時間法規が適用されなくなり、仮眠時間は法規上の労働時間とはならない[7]。
実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かによって客観的に定まる。不活動時間であっても労働からの解放が保障されている場合は労働時間には該当しないが、労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たる。労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているとはいえないのである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下というべきであり、この場合は労働時間に該当する。
事業主は、その雇用する労働者(日々雇用される者を除く)のうち、その3歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないもの(1日の所定労働時間が6時間以下の労働者を除く)に関して、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置を講じなければならない(育児介護休業法第23条1項)。ただし労使協定に定めることにより以下の労働者については短縮措置の申出を認めないことができる。
事業主は、その雇用する労働者(日々雇用される者を除く)のうち、その要介護状態にある対象家族を介護する労働者に関して、労働者の申出に基づく連続する93日以上の期間における所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ当該対象家族を介護することを容易にするための措置を講じなければならない(育児介護休業法第23条3項)。なお労働者がその対象家族について介護休業をしたことがある場合は、93日から介護休業をした期間の日数を差し引いた日数以上の期間について短縮措置を講ずればよい。
事業主は、労働者が所定労働時間の短縮措置等の申出をし、又は短縮措置が講じられたことを理由として、当該労働者に解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない(育児介護休業法第23条の2)。
長期的には、昭和35年(2,432時間)ごろをピークとして高度経済成長期に労働時間の短縮が進み、昭和50年(2,064時間)以降は横ばい、平成期以降に再度短縮傾向という流れで推移している。平成4年に成立した時限立法の「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」とその延長により、閣議決定で目標としていた年間総実労働時間1,800時間をほぼ達成できた。その一方で、労働時間分布の長短二極分化の進展や、年次有給休暇の取得率の低下傾向といった問題も発生しているため、一律目標による時短促進ではなく、労使による自主的な改善を目指す法改正(「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」として恒久化)が行われた。
厚生労働省「毎月勤労統計調査」によれば、平成25年の年間総実労働時間は、事業所規模30人以上では1,792時間、事業所規模5人以上では1,746時間となっていて、前年より微減となっている。ここ数年、1,800時間程度での横ばいが続いている。
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