- 英
- lethal dose, fatal dose, LD
- 同
- 致死用量
- 関
- 用量反応関係
- 有効治療量を超えた薬物投与により、ヒトまたは動物が死に至るときの薬物量。
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- lethal dose(薬の)最小致死量
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/01/18 12:17:52」(JST)
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物質や電磁波の致死量(ちしりょう)とは摂取・被曝すると死に至る量。急性毒性試験や、中毒事例などにより求められる。
目次
- 1 概要
- 2 各物質における致死量
- 3 脚注
- 4 関連項目
- 5 関連文献
概要
ある物質についての致死量は、動物の種類、成長段階、健康状態、摂取方法(経口・皮下注射・ガスやエアロゾルとしての吸引・皮膚接触、静脈注射、腹腔内投与など)によって極めて多様に変化する。極論をいえば、致死量は個体・物質の摂取時期によって異なるため確定した値を求めることは厳密には不可能である。
そこで、目安として、半数致死量という概念が一般的に用いられている。これは、「ある物質を-ある状態の動物に与えた場合-その半数が死に至る量」を示す。なお、半数致死量はしばしばLD50(50% Lethal Doseの略)と簡略化して書かれる。対象がガス体などである場合や水中生物に対する影響を評価する場合には半数致死濃度LC50(50% Lethal Concentration)などを用いる。
急性毒性の強さを表す方法としては、他に最小致死量・最小中毒量などがある。
特に、安全性を評価する場合については、最小致死量LDLo (Lowest published lethal dose) や最低致死濃度LCLo (Lowest Published Lethal Concentration) および最小中毒量(TDLo; Toxic Dose Lowest もしくはMTL; Minimum Toxic Level)などを用いる。
放射線被曝の場合の致死量は、吸収線量値を利用して評価する場合が多い。単位はシーベルトである。
半数致死量の表記例を以下に示した
シアン化カリウム LD50=7 mg/kg(ハムスター・成体・経口)
この例は、「シアン化カリウム(青酸カリ)を複数のハムスター成体に体重1 kgあたり7 mgを経口投与すると半数が死に至る」ことを示す。
これらのデータは動物実験の他、中毒事故の事例・人体実験の結果(ナチス・ドイツのものなどが存在)などから得られたものである。既に挙げたように致死量はコンディションによって大きく変動するため、安全性を確保するためには既知の致死量に対して1-3桁程度のマージンを確保する必要がある。化学物質を薬剤として用いる場合には、薬効量と致死量の間に大きな差があることが望ましい。
毒物及び劇物取締法における毒物、劇物の指定審査過程では、経口投与の半数致死量を基準とし、LD50=50 mg/kg以下程度を毒物、LD50=300 mg/kg以下程度を劇物としている(毒物及び劇物取締法#判定基準に詳細な記述がある)。
なお、現在では正確な半数致死量を求めることは行われておらず、概算値を求めるのみになっている。これは、正確な値を求めることに学術上の意義が無いことと、動物福祉の観点から使用動物数を削減したことによる。
各物質における致死量
名称 |
半数致死量(mg/kg) |
含有するもの・用途 |
出典・備考等 |
ボツリヌストキシン(A) |
0.00000037 |
ボツリヌス菌 |
[1]より。資料により非常に幅が大きい。 |
テタヌストキシン |
0.000002 |
破傷風菌 |
|
マイトトキシン |
0.00005 |
有毒渦鞭毛藻 |
|
パリトキシン |
0.00025 |
スナギンチャク類 |
|
ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD) |
0.0006~0.002 |
産業副産物 |
[2]などより。種による特異性などを含め緒論あり。 |
ベロ毒素 |
0.001 |
病原性大腸菌・赤痢菌等 |
|
テトロドトキシン |
0.01 |
フグ他 |
|
VX |
0.02 |
化学兵器 |
下の濃度の項も参照 |
リシン |
0.03 |
トウゴマ |
|
ミクロシスチン |
0.05 |
藍藻類 |
[3] |
アコニチン |
0.05~0.1 |
トリカブト |
|
α-アマニチン |
0.1 |
毒キノコ(ドクツルタケ等) |
[4] |
モノフルオロ酢酸 |
0.1 |
殺鼠剤 |
[5] |
サリン |
0.35 |
化学兵器 |
[6] |
d-ツボクラリン |
0.6 |
クラーレ、矢毒 |
|
コルヒチン |
0.6 |
イヌサフラン他・医薬 |
[7] |
ストリキニーネ |
0.6~2 |
マチン、殺鼠剤 |
|
ニコチン |
1~7 |
タバコ |
|
シアン化カリウム |
3~7 |
試薬(いわゆる「青酸カリ」) |
|
亜砒酸ナトリウム |
10 |
試薬(いわゆる「ヒ素」) |
|
パラチオン |
10 |
農薬(有機リン系) |
|
黄リン |
10 |
試薬 |
[8] |
メタミドホス |
10~30 |
農薬(有機リン系) |
|
塩化スキサメトニウム |
10~50 |
筋弛緩剤 |
[9] |
酢酸タリウム |
30~40 |
試薬 |
[10] |
アジ化ナトリウム |
46 |
試薬 |
[11] |
DDT |
110 |
農薬(有機塩素系) |
[12] |
モルヒネ |
120~500 |
ケシ、麻薬 |
|
メタンフェタミン |
135 |
覚醒剤 |
|
カフェイン |
200 |
茶・コーヒー等 |
|
トリフルオロ酢酸 |
200 |
試薬 |
[13] |
パラコート |
250 |
除草剤(ピリジニウム系) |
[14] |
マラチオン |
250~600 |
農薬(有機リン系) |
[15] |
2,4-D |
375~666 |
除草剤(有機塩素系) |
|
アセチルサリチル酸 |
400 |
医薬(アスピリンなど) |
|
スコポラミン |
1200 |
チョウセンアサガオ等・医薬 |
|
ホウ酸 |
2000~4000 |
試薬・医薬 |
[16] |
塩化マグネシウム |
2800~4700 |
にがりの主成分 |
[17] |
塩化ナトリウム |
3000~3500 |
食塩 |
|
エタノール |
5000~14000 |
酒類 |
非常に個人差が大きい |
ビタミンC |
12000 |
栄養素 |
|
名称 |
半数致死濃度(ppm) |
含有するもの・用途 |
出典・備考等 |
VX |
0.2~0.3 |
化学兵器 |
|
サリン |
1.2 |
化学兵器 |
|
イペリット |
23 |
化学兵器 |
|
ジボラン |
29, 40 |
半導体製造用 |
マウス・4 h, ラット・4 h[18] |
ホスゲン |
79 |
工業原料・化学兵器 |
[19] |
シアン化水素 |
180 |
工業原料・化学兵器 |
|
アルシン |
250 mg/m3, 600 mg/m3 |
半導体製造用 |
マウス・10 min、サル・10 min[20] |
塩素 |
655 |
工業原料・化学兵器 |
|
クロロアセトフェノン |
1400 |
催涙ガス |
1 h |
一酸化炭素 |
1500 |
有機物の不完全燃焼 |
1 h |
シラン |
9600 |
半導体製造用 |
マウス・4 h[21] |
- 選定にあたっては、毒として著名であったり社会的な事件で話題になったもの、日常生活で接触する機会がある身近なもの、化学構造の差異による作用の相違を比較する意義があるものなどを考慮して行った。
- 致死量は基本的に経口投与による急性毒性のLD50 mg/kgで示した。実験動物種はマウス・ラット・ウサギのものを用い、複数ある場合には主にラットの値と人間の例を用いた。また、化学名より通称名の方が明らかに有名なものは通称名で示した。なお、腹腔内投与や静脈注射投与の場合は、より強く毒性が現れる傾向にある。
- データ元としては、注釈で示した出典元の他、毒物雑学辞典 (ISBN 978-4061181694)、へんな毒すごい毒 (ISBN 978-4774128580) や各物質のWikipedia上の項目を参考にした。
- 毒性ガスの濃度については、資料によって大幅な値の相違がみられた。毒性の強弱を適切に評価するため、表の表記にあたっては兵器関係について遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて 平成13年7月23日 日本学術会議・産業用ガスについて富山県高圧ガス安全協会の資料を参考とした。他の信頼のおける文献としては次をあげておく。[22][23][24]
脚注
- ^ JAMA 2001;285:1059-1070・http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/venoms.htm
- ^ http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/venoms.htm
- ^ http://www.avis.ne.jp/~serp/microcy-m/microcy-m2.html
- ^ http://www.j-poison-ic.or.jp/tebiki20070907.nsf/SchHyodai/5C399549BA56D770492567DE002B8967/$FILE/M70009.pdf
- ^ http://www.jaish.gr.jp/anzen/mms/datasheet/mms-48700.html ・人間ではLDL0 =0.714 mg/kgのデータあり。
- ^ 0.01 mg/kgとの資料(小林靖奈ほか、救急医学19: 1793-1802, 1995)や28 mg/kgとの資料(http://www.jissi.jp/~aeml/data/phc/kasumi/kasumi08_3.html)など、諸説ある模様。サリン参照
- ^ http://www.nacalai.co.jp/MSDS/09305.pdf
- ^ RTECS (en:Registry of Toxic Effects of Chemical Substances) による値 - http://www.jaish.gr.jp/anzen/mms/datasheet/mms-10800.html に掲載
- ^ http://cache.healthcope.com/cache/www.bms.co.jp/medical/if/IF_ST0104.PDF(静脈注射による)
- ^ http://www.invitrogen.co.jp/msds/jp/j18042.pdf
- ^ http://www.tokyo-eiken.go.jp/topics/echudoku/sazide.html
- ^ http://www.umin.ac.jp/chudoku/chudokuinfo/s/s111.txt
- ^ http://www.sceti.co.jp/isotope/datasheet/D022_MSDS.pdf
- ^ http://japr.or.jp/kaisetu/seibun/22/
- ^ http://www.k-erc.pref.kanagawa.jp/kisnet/code.asp?code=121-75-5
- ^ http://www.maruishi-pharm.co.jp/topics/data/k019/
- ^ http://www.kishida.co.jp/product/catalog/msds/id/7448/code/900-02005j.pdf
- ^ http://po6.nsk.ne.jp/toyama-kak/1hoanjoho/MSDSshu/MSDS/28.pdf
- ^ http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/circle/h523gaku.html
- ^ http://po6.nsk.ne.jp/toyama-kak/1hoanjoho/MSDSshu/MSDS/26.pdf
- ^ http://po6.nsk.ne.jp/toyama-kak/1hoanjoho/MSDSshu/MSDS/28.pdf
- ^ http://www.city.ube.yamaguchi.jp/bousai/4/shiryou/(165)k032001.pdf
- ^ http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/circle/h523gaku.html
- ^ http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/circle/h523gaku.html
関連項目
- 毒
- 薬
- 服毒
- 毒性学
- 薬事法
- 毒物及び劇物取締法
- 化学物質安全性データシート - 化学物質の安全な取り扱いのためにしばしば致死量が記載される
- マウスユニット - ネズミを用いた毒素の影響量の指標
- 一日摂取許容量
関連文献
- 1990年 『エッセンシャル毒性学』川俣順一・近藤雅臣 監修:小井田雅夫 他・編 医歯薬出版
- 1984年 『毒物雑学辞典』大木幸介 講談社
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Japanese Journal
- 遊離脂肪酸による下痢性貝毒マウス試験偽陽性の発生評価
- 橋本 諭,西村 一彦,高橋 健一,板橋 豊
- 食品衛生学雑誌 52(3), 194-198, 2011
- … を比毒性の高い20 : 5が占めており,偽陽性を起こす可能性を有していた.しかし,検出された遊離脂肪酸量は総脂質の3.3〜4.2 wt% であり,マウス毒性が報告されているものは総脂質の1.3〜1.8 wt% であった.いずれも致死量相当量を下回ることから,生きた貝を用い,ホモジナイズ後速やかに抽出を行えば,ホタテガイ肥大中腸腺試料であっても,貝毒下痢性検査において偽陽性が発生する可能性は低いと考えられる. …
- NAID 130000909927
- 微細藻類由来フコキサンチンオイルのラットを用いた単回投与毒性試験および13週間反復経口投与毒性試験
- 飯尾 久美子,岡田 裕実春,石倉 正治
- 食品衛生学雑誌 52(3), 183-189, 2011
- … 単回経口投与毒性試験および13週間反復経口投与毒性試験を実施した.フコキサンチンオイルを2,000 mg/kg体重,単回経口投与した結果,雌雄とも死亡例,毒性変化は認められず,フコキサンチンオイルの最小致死量は2,000 mg/kg体重を上回ると考えられた.また,フコキサンチンオイルを0,20,200 mg/kg体重,13週間投与した結果,フコキサンチンオイル投与による毒性変化は認められなかった.本条件下では微細藻類由来フ …
- NAID 130000909925
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- 英
- effective dose ED
- 同
- 治療量 therapeutic dose
- 関
- 致死量、治療係数
- 薬物の投与量と有効率の間の関係を考えるとき、有効率に対する薬物の量を「有効量」と言うと思われる。有効量は最小有効量と最大有効量の間に存在する。
[★]
- 英
- therapeutic index, TI
- 関
- 治療指数
- 治療係数S
- S=LD50/ED50
[★]
- 英
- dose-response relationship
- 同
- 薬物用量反応関係 drug dose-response relationship、用量反応曲線 dose-response curve
- 関
- 濃度反応関係、効力検定、致死量
[★]
- 英
- virulence
- 同
- ビルレンス、毒力、菌力
- 関
- 致死量
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- 英
- lethal dose
- 関
- 致死量
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- 英
- 50% lethal dose median lethal dose LD50
- 関
- 50%有効量、致死量、治療係数
[★]
- 英
- median lethal dose、50% lethal dose、LD50
- 関
- 50%致死量、半致死線量
[★]
- 英
- minimum lethal dose、MLD
- 関
- 平均致死線量、致死量
[★]
- 英
- amount、volume、content、quantity
- 関
- 巻、含有量、含量、体積、達する、容積、内容物、内容、ボリューム
[★]
- 英
- lethal, mortal
- 関
- 致死的、致命的、致死性