- 英
- hemagglutinin, HA
- 関
- 赤血球凝集素
- 16種類存在する
- 人にはH1N1,H2N2,H3N2の流行が認められているが、散発的にH5N1,H7N7,H9N2の肝炎も報告されている。
- インフルエンザウイルスのHAは最初HA0で産生される。
- 気道粘膜上皮にあるクララ細胞から分泌されるトリプターゼ・クララによってHA1とHA2に切断される。これによりHA1が宿主細胞のシアル酸に結合できる。
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2019/06/26 19:52:05」(JST)
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ヘマグルチニン(hemagglutinin、haemagglutinin、HA)とは、インフルエンザウイルス、およびその他多くの細菌、ウイルスの表面上に存在する抗原性糖タンパク質である。ヘムアグルチニンとも表記される。
ウイルスはこのヘマグルチニンの働きによって細胞に感染する。
ヘマグルチニンという単語は、in vitroにおいて赤血球(hem)を固まらせて凝集体(agglutinate)を作ることから名付けられた[1]。
サブタイプ
ヘマグルチニン(以下HA)は少なくとも16種類が存在する。これらのサブタイプはH1からH16の種類に分けられる。インフルエンザウイルスの亜型名(例:H5N1など)のHはこのHAの種類を表している(Nはノイラミニダーゼの種類を表す)。最後に発見されたH16は、最近スウェーデンとノルウェーからのユリカモメから分離された例のみである[2]。また、グアテマラにおいてコウモリから発見されたヘマグルチニンは今まで知られているものいずれとも構造が異なるため、これをH17とすることが提案されている[3]。H1、H2、H3の3種類はヒトインフルエンザウイルスに存在する。
H5N1(トリインフルエンザ:avian flu)は極まれにヒトにも感染する可能性がある。ヒトの患者から発見されたトリインフルエンザウイルスのH5はアミノ酸配列が1つ変異していた。そのため、H5N1ウイルスのレセプター特性が変化してヒトにも感染するようになったということが発表された[4][5]。この発見は通常ヒトには感染しないH5N1ウイルスがどのようにしてヒトの細胞に感染するのかを的確に説明できる。
また、このH5N1ウイルスのHA抗原の変異が高い病原性の原因にもなっていることがわかった。これはプロテアーゼによる活性型への転換が容易になったためである。
機能とメカニズム
機能
インフルエンザウイルス表面の
HAが標的細胞膜のシアル酸に結合し、細胞内に取り込まれる。
HAには重要な機能が2つある。
- 目標の動物細胞表面にあるシアル酸を認識して結合することにより細胞に感染する。
- 宿主細胞のエンドソーム膜とウイルス膜を融合させることにより、ウイルスのゲノムを細胞内に挿入する。
メカニズム
HAは標的細胞表面のシアル酸に結合する。そのため、ウイルスが細胞表面から離れなくなる。ウイルスはそのまま細胞膜に包み込まれ、ウイルスを入れたままエンドソームの形で細胞内に取り込まれる。
次に細胞はエンドソーム内部を酸化させ、ウイルスをリソソームに送り込んで消化しようとする。しかし、エンドソームのpHが6.0まで低下するとHAの構造は不安定になり、折りたたまれたペプチド構造が部分的に展開する。するとタンパク質で隠されていた強疎水性の部位が開放される。
この融合ペプチド(fusion peptide)を、あたかも鉤のようにエンドソーム膜に挿入して固定する。さらに、HA分子の残りの部分は新しい構造(より低いpHでも安定な構造)に折りたたみ直され、融合ペプチドを引き寄せる。するとウイルス自身もエンドソーム膜に引き寄せられ、膜と融合する。
その後、ウイルスのRNAは細胞質に挿入されて増殖を開始する。(PDB molecule of the month: Hemagglutinin (April 2006)も参照)
構造
(a)3つのモノマーが赤、青、緑によって示されている。
(b)1つのモノマーはHA1(青)とHA2(緑)で出来ている。
(c)赤は結合ペプチド、黄色はSS結合を表す。
HAはホモ3量体の重要な膜糖タンパク質である。シリンダーのような形をしており、長さはおよそ135 Åである。
HAを構成する同一の3つのモノマーは中心部にαヘリックスを持っており、この頭部にシアル酸結合部位がある。HAのモノマーはまず前駆体が合成される。この前駆体は後にグリコシル化されて分裂され、HA1とHA2の2つのサブユニットになる。
それぞれのHAモノマーは、膜にくっ付いた長いヘリックス鎖で構成されている。
参考
- ^ Nelson DL and Cox MM, 2005. Lehninger's Principles of Biochemistry, 4th edition, WH Freeman, New York, NY.
- ^ Fouchier RAM, Munster V, Wallensten A, et al, 2005. Characterization of a novel influenza A virus hemagglutinin subtype (H16) obtained from black-headed gulls. J Virol vol 79, issue 5, pp2814-22
- ^ Suxiang T. et al. 2012. A distinct lineage of influenza A virus from bats. Proc Natl Acad Sci USA 109 : 4269–4274
- ^ Suzuki, Y, 2005. Sialobiology of Influenza: Molecular Mechanism of Host Range Variation of Influenza Viruses in Biological and Pharmaceutical Bulletin, (2005) vol 28, No.3, pp399-408
- ^ Gambaryan A, Tuzikov A, Pazynina G, Bovin N, Balish A, Klimov A, 2006. Evolution of the receptor binding phenotype of influenza A (H5) viruses in Virology vol 344, issue 2, pp432-8
- Yamada S, Suzuki Y, Suzuki T, et al, 2006 Haemagglutinin mutations responsible for the binding of H5N1 influenza A viruses to human-type receptors. Nature vol 444, issue 7117, pp378-82.
- Hatta M, Gao P, Halfmann P, Kawaoka Y, 2001. Molecular Basis for High Virulence of Hong Kong H5N1 Influenza A Viruses in Science vol 293, pp1840-1842.
- Senne DA, Panigrahy B, Kawaoka Y, Pearson JE, Suss J, Lipkind M, Kida H, Webster RG, 1996. Survey of the hemagglutinin (HA) cleavage site sequence of H5 and H7 avian influenza viruses: amino acid sequence at the HA cleavage site as a marker of pathogenicity potential in Avian Disease vol 40, pp425-437.
- Weis WI, Brünger AT, Skehel JJ, et al, 1990. Refinement of the influenza virus hemagglutinin by simulated annealing. J Mol Biol vol 212, pp737-761.
- White JM, Hoffman LR, Arevalo JH, et al, 1997. Attachment and entry of influenza virus into host cells. Pivotal roles of hemagglutinin. In Structural Biology of Viruses. Chiu W, Burnett RM, and Garcea RL, editors. Oxford University Press, NY. pp80-104.
関連項目
- 糖タンパク質
- インフルエンザウイルス
- ウイルス・ノイラミニダーゼ
外部リンク
- RCSB PDB-101 Hemagglutinin(英語)
- Jmol tutorial of influenza hemagglutinin structure and activity.(英語)
- PDB Molecule of the Month pdb76_1(英語)
UpToDate Contents
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- 1. インフルエンザの疫学epidemiology of influenza [show details]
…characteristics of their envelope glycoproteins, the hemagglutinin and the neuraminidase. Among influenza A viruses that infect humans, three major subtypes of hemagglutinins (H1, H2, and H3) and two subtypes of neuraminidases …
- 2. 成人における季節性インフルエンザワクチンseasonal influenza vaccination in adults [show details]
…envelope glycoproteins, the hemagglutinin and the neuraminidase . Among the large number of influenza A viruses that infect mammals, three major subtypes of hemagglutinins (H1, H2, and H3) and two subtypes …
- 3. 鳥インフルエンザワクチンavian influenza vaccines [show details]
…vaccines , a DNA vaccine that encodes virus-like particles (VLPs) , and a computationally optimized hemagglutinin VLP vaccine that was designed to elicit broadly reactive immune responses . In addition, strategies …
- 4. 鳥インフルエンザA(H7N9):疫学、臨床症状、および診断avian influenza a h7n9 epidemiology clinical manifestations and diagnosis [show details]
…begins with attachment of hemagglutinin to the cellular receptor and subsequent fusion of viral envelope and cellular endosomal membrane . Post-translational cleavage of hemagglutinin by host protease is a …
- 5. 鳥インフルエンザA(H7N9):治療および予防avian influenza a h7n9 treatment and prevention [show details]
…influenza A H7N9 vaccine at one of four doses of hemagglutinin with or without MF59 adjuvant . In those who received the non-adjuvanted vaccine, hemagglutinin inhibition antibodies were minimal. After receiving …
Japanese Journal
- 鳥インフルエンザウイルスヘマグルチニンのレセプター特異性と宿主伝播 (第1土曜特集 レクチン医学最前線) -- (レクチンの臨床に向けたアプローチ)
- 水素ガスを含む蒸気混合ガス吸入後のインフルエンザウイルス由来のhemagglutinin抗原に対する唾液中IgA抗体価の増強
- 池脇 信直,園田 徹,東 和弘,いけわき のぶなお,そのだ とおる,あずま かずひろ,Nobunao IKEWAKI,Tohru SONODA,Kazuhiro AZUMA
- 九州保健福祉大学研究紀要 = Journal of Kyushu University of Health and Welfare (20), 69-74, 2019-03-25
- 水素発生装置(スイソニア)から発生する水素ガス(濃度0.1%~ 0.3%)を含む蒸気混合ガスXENを鼻カニューラで吸入した。吸入後、A型およびB型インフルエンザウイルス由来のhemagglutinin(HA)抗原に対する唾液中IgA2抗体価を自主開発の酵素免疫測定法で解析した。その結果、XEN吸入15分後、A型インフルエンザウイルス株(A/California/7/2009/H1N1とA/Hong …
- NAID 120006643097
- 水素ガスを含む蒸気混合ガス吸入後のインフルエンザウイルス由来のhemagglutinin抗原に対する唾液中IgA抗体価の増強
- 池脇 信直,園田 徹,東 和弘
- 九州保健福祉大学研究紀要 = Journal of Kyushu University of Health and Welfare (20), 69-74, 2019-03
- NAID 40021851970
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Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- neur-aminidase, NA
- 同
- シアリダーゼ
- 関
- インフルエンザウイルス
- 複合糖質糖鎖を切断し、シアル酸(ノイラミン酸のアシル誘導体の総称)を遊離させる酵素。
- インフルエンザウイルスの出芽から遊離にかけて、宿主の複合糖鎖とインフルエンザウイルスのHAとの接着を切り離すために、ノイラミニダーゼが作用し複合糖鎖のシアル酸の部分を切断する。
- sialic acidと隣接するオリゴ糖間の結合, α(2,6)-ケトシド結合, α(2-3)-ケトシド結合を切断する
- ヘマグルチニンが結合している受容体のシアル酸と隣接糖類との結合を切断し、ウイルスを宿主細胞から遊離させる
- 遊離後のウイルスの自己凝縮を阻害する
- 気道内に分泌された粘液のシアル酸関連部位を切断し、ウイルス核酸を促進する
- ヘマグルチニンの糖鎖を直接分解・修飾し、ウイルスの病原性に影響を及ぼす
- 潜在型TGF-βの糖鎖部分を分解し、宿主細胞に細胞死を引き起こす活性化TGF-βに転換する。
- α(2,6)結合:ニワトリ、カモ
- α(2-3)結合:人の呼吸器上皮細胞
[★]
- 英
- Clara cell
- 関
- 呼吸器の上皮の移行、気管支の分岐、肺
概念
- 細気管支レベル(細気管支、終末細気管支、呼吸細気管支)の上皮に存在。
- ドーム状の頂部を有する。円柱形。微絨毛を持ち、頂部細胞質に糖タンパク質を含んだ分泌顆粒が存在する。線毛細胞より背が高い。 (HIS.302)
- 分裂能を有する (HIS.302)
機能 (HIS.302)
[★]
- 英
- hemagglutinin HA
- 同
- 血球凝集素、ヘマグルチニン、ヘムアグルチニン、インフルエンザ血球凝集素
- 関
- 赤血球凝集能
[★]
- 英
- phytohemagglutinin phytohaemagglutinin PHA
- 同
- 植物性凝集素、植物性血球凝集素
- 関
- レクチン、マイトジェン、リンパ球幼若化試験
[★]
- 英
- viral hemagglutinin
- 関
- ウイルス血球凝集素