- 英
- calcineurin, CN, CNR
- 同
- プロテインホスファターゼ2B protein phosphatase 2B、カルシニュリン、カルシノイリン
- 関
- IL-2、免疫抑制薬
[show details]
- Ca2+/カルモジュリン複合体依存性のセリン/スレオニン脱リン酸化酵素である。
- サブユニットAとサブユニットBからなるヘテロダイマー。
- 免疫抑制薬の標的分子となりえて、例えばシクロスポリンAやFK506などのカルシニューリン阻害薬によりT細胞中のカルシニューリンが阻害されることでIL-2の発現が低下し、結果としてT細胞の増殖が妨げられ免疫抑制が起こる。
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/02/15 17:28:18」(JST)
[Wiki ja表示]
カルシニューリン(Calcineurin:CN)は細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質ホスファターゼの一種。高等動物から酵母までの生物の全ての細胞にあるが、特に高等動物では一部の免疫抑制剤の標的であることが明らかにされている。初め脳から発見され、カルシウムにより調節されて神経細胞で機能することから命名された[1]。その後、一部の免疫抑制剤により阻害されることが明らかにされ[2]、これをきっかけに免疫系で重要な役割を果たすことが知られた。
目次
- 1 構造と機能
- 2 免疫系における作用機構
- 3 その他の機能
- 4 参考文献
|
構造と機能
触媒サブユニットとカルシウム結合(調節)サブユニットからなる。さらにカルモジュリンが結合しこれによる調節も受ける。調節サブユニットにカルシウムが結合すると、カルモジュリン(これもカルシウムにより活性化される)とが結合し、触媒サブユニットが活性化される。すると他のタンパク質を脱リン酸化し、これによりシグナル伝達に関与する。
免疫系における作用機構
抗原提示細胞がT細胞上のT細胞受容体に結合すると、細胞質のカルシウム濃度が上昇し[3]、カルシウムがカルシニューリンの調節サブユニットに結合し活性化する。活性化されたカルシニューリンはNFAT(Nuclear factor of activated T-cells)と呼ばれる複数の転写因子を脱リン酸化することにより核内に移動させる。NFATはインターロイキン-2(IL-2)の発現を誘導する。IL-2はヘルパーT細胞を活性化して他のサイトカインの産生を促進し、また細胞傷害性T細胞とNK細胞の機能を促進する。カルシニューリンは免疫抑制剤のうちシクロスポリン、タクロリムスなどの、カルシニューリン阻害剤と総称される薬物の標的となる。これらの阻害剤は直接の標的タンパク質(イムノフィリン)とまず結合し、このタンパク質複合体がカルシニューリンに結合してこれを阻害する。
その他の機能
カルシニューリンは中枢神経系等でも重要な役割を担うことが示唆されている。例えば、カルシニューリンを産生できないようにしたマウスで、統合失調症のヒトと似た症状が見られている[4]。
他に、ダウン症[5]、糖尿病[6]や肥大型心筋症[7]との関係を示唆する報告がされている。
参考文献
- ^ Klee CB, Crouch TH, Krinks MH. (1979) "Calcineurin: a calcium- and calmodulin-binding protein of the nervous system". Proc Natl Acad Sci USA 76(12):6270-3.
- ^ Liu J, Farmer JD Jr, et al. (1991) "Calcineurin is a common target of cyclophilin-cyclosporin A and FKBP-FK506 complexes". Cell 66(4):807-15.
- ^ Yamashita M, Katsumata M, et al. (2000) "T cell receptor-induced calcineurin activation regulates T helper type 2 cell development by modifying the interleukin 4 receptor signaling complex". J. Exp. Med. 191 (11): 1869-79.
- ^ Miyakawa T, Leiter LM, Gerber DJ, Gainetdinov RR, Sotnikova TD, Zeng H, Caron MG, Tonegawa S (July 2003) "Conditional calcineurin knockout mice exhibit multiple abnormal behaviors related to schizophrenia". Proc Natl Acad Sci USA 100 (15): 8987-92.
- ^ Fuentes JJ, Genesca L, Kingsbury TJ, et al. (2000). "DSCR1, overexpressed in Down syndrome, is an inhibitor of calcineurin-mediated signaling pathways". Hum. Mol. Genet. 9 (11): 1681-90.
- ^ Heit JJ, Apelqvist AA, Gu X, Winslow MM, Neilson JR, Crabtree GR, Kim SK (September 2006). "Calcineurin/NFAT signalling regulates pancreatic beta-cell growth and function". Nature 443 (7109): 345-9.
- ^ Sussman MA, Lim HW, et al. (1998)."Prevention of cardiac hypertrophy in mice by calcineurin inhibition". Science 281(5383):1690-3.
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- エタノールストレスはSaccharomyces cerevisiaeにおいてカルシウムイオンを介してカルシニューリン/Crz1経路を活性化する(生物工学論文賞)
- 荒木 義雄,呉 洪,北垣 浩志,赤尾 健,高木 博史,下飯 仁
- 生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi 89(2), 68, 2011-02-25
- NAID 110008460959
- カルシニューリン阻害薬による腎障害 ネフローゼ症候群維持療法の腎障害 (特集 尿細管間質性腎障害) -- (尿細管間質性腎障害の最近の話題)
- カルシニューリン阻害薬による腎障害 移植腎障害 (特集 尿細管間質性腎障害) -- (尿細管間質性腎障害の最近の話題)
Related Links
- カルシニューリン(Calcineurin:CN)は細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質 ホスファターゼの一種。高等動物から酵母までの生物の全ての細胞にあるが、特に高等 動物では一部の免疫抑制剤の標的であることが明らかにされている。初め脳から発見 され、 ...
- 2007年10月23日 ... カルシニューリンの活性制御機構 免疫応答の活性化、心臓の形成、細胞の分裂、行動 の記憶など様々な生命現象に、細胞内カルシウム情報伝達経路が関係しており、必要 な遺伝子群のスイッチを押します。このカルシウム情報伝達経路 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- nuclear factor of activated T cells, NF-AT
- 関
- NFAT family、カルシニューリン、シクロスポリンA、FK506
- 普段は細胞質にあってセリン/スレオニンキナーゼにより核移行配列がリン酸化されており核移行が妨げられている。
- 細胞質の[Ca2+]↑によりカルモジュリンがCa2+を結合しコンフォメーションが変化する。
- Ca2+を結合したカルモジュリンは、セリン/スレオニンホスファターゼであるカルシニューリンに結合する。
- カルモジュリンとの結合によりカルシニューリンは活性化され、NFATを脱リン酸化する。
- 脱リン酸化されたNFATは核に移行し遺伝子発現を行う。
- T細胞ではIL-2の転写に関わっている
[★]
- 英
- protein phosphatase 2B、PP2B
- 関
- カルシニューリン
[★]
カルシニューリン, calcineurin
[★]
- 英
- calcineurin inhibitor
- 関
- カルシニューリン
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3