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クズ |
Pueraria lobata
(2005年9月、兵庫県川西市)
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分類(APG III) |
界 |
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植物界 Plantae |
階級なし |
: |
被子植物 angiosperms |
階級なし |
: |
真正双子葉類 eudicots |
階級なし |
: |
コア真正双子葉類 core eudicots |
階級なし |
: |
バラ類 rosids |
階級なし |
: |
マメ類 fabids |
目 |
: |
マメ目 Fabales |
科 |
: |
マメ科 Fabaceae |
亜科 |
: |
マメ亜科 Faboideae |
連 |
: |
インゲンマメ連 Phaseoleae |
亜連 |
: |
ダイズ亜連 Glycininae |
属 |
: |
クズ属 Pueraria |
種 |
: |
クズ P. lobata |
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学名 |
Pueraria lobata
(Willd.) Ohwi (1947)[1] |
シノニム |
- Pueraria hirsuta (Thunb.) Matsum.
- Pueraria montana (Lour.) Merr. var. lobata (Willd.) Maesen et S.M.Almeida
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英名 |
kudzu |
亜種・変種・品種[2] |
- シナクズ P. l. subsp. thomsonii
- フシゲクズ P. l. var. insularis
- トキイロクズ P. l. f. alborosea
- シロバナクズ P. l. f. leucostachya
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クズ(葛、学名: Pueraria lobata または Pueraria montana var. lobata)は、マメ科クズ属のつる性の多年草である[3]。日本では、根を用いて食材の葛粉や漢方薬が作られ、万葉の昔から秋の七草の一つに数えられている[3]。
和名は、かつて大和国(現:奈良県)吉野川(紀の川)上流の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。漢字は葛を当てる(「葛」で表記する場合もある)。
目次
- 1 形態
- 2 生態
- 3 分布
- 4 人間との関わり
- 4.1 食用
- 4.2 薬用
- 4.3 材料
- 4.4 文化
- 5 近縁種
- 6 脚注
- 7 参考文献
- 8 関連項目
- 9 外部リンク
形態
地面を這うつるは、他のものに巻きついて10メートル以上に伸び、全体に褐色の細かい毛が生えている[3]。
根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の塊根となり、長さは1.5メートル、径は20センチに達する[3]。
葉は三出複葉、小葉は草質で幅広く大きい[3]。葉の裏面は白い毛を密生して白色を帯びている[3]。
花は8-9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせる[3]。花色には変異がみられ、白いものをシロバナクズ、淡桃色のものをトキイロクズと呼ぶ[3]。
花後に剛毛に被われた枝豆に似ている扁平な果実を結ぶ[3]。
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葛の花穂は下から上へと咲いていく。写真は下部の花は終わって既に落ち、中間部が咲いているところ。上部のつぼみはまだ固い。
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生態
つるを伸ばして広い範囲で根を下ろし、繁茂力が高い。かつての農村では、田畑の周辺に育つクズのつるを作業用の材料に用いたため、定期的に刈り取られていたが、刈り取りを行わない場合は短期間で低木林を覆い尽くすほど成長が早い。伸び始めたばかりの樹木の枝に巻き付くと、それによって樹木の枝が曲がってしまうこともあるため、人工林においては、若木の生長を妨げる有害植物と見なされている。
クズは根茎により増殖するため、地上部のつるを刈り取っても地下に根茎が残り、すぐにつるが再生する。抜本的に除去する方法として、除草剤のイマザピルを使う手法がある。薬剤を染みこませた楊枝状の製品であり、根株に打ち込むことにより効果を発揮する。
様々な昆虫のつく植物でもある。たとえば、黒と白のはっきりした模様のオジロアシナガゾウムシ、マルカメムシはよくクズで見かける。また、クズの葉に細かい虫食いがある場合、クズノチビタマムシであることが多い。
分布
温帯および暖帯に分布し、北海道から九州までの日本各地のほか、中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布している[3]。世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000) 選定種の一つである。荒れ地に多く、人手の入った薮によく繁茂する。
北アメリカでは、1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に日本から運ばれて飼料作物および庭園装飾用として展示されたのをきっかけとして、東屋やポーチの飾りとして使われるようになった[4]。さらに緑化・土壌流失防止用として政府によって推奨され、20世紀前半は持てはやされた。しかし、繁茂力の高さや拡散の早さから、有害植物ならびに侵略的外来種として指定され、駆除が続けられている。現在ではクズの成育する面積は3万km2と推定されている[5](en:Kudzu in the United States も参照)。
人間との関わり
日本では古くから食用や薬用、材料として用いられていたが、2008年に宮崎大学により、クズ属植物からバイオマスエタノールを抽出する技術が開発された。現在はあまり利用されることはないが、かつては飼料としても重宝された[6]。ウマノオコワ、ウマノボタモチといった地方名があるが、馬だけではなく牛、ヤギ、ウサギなど多くの草食動物が喜んで食べる。
食用
詳細は「葛粉」を参照
古来から大きく肥大した塊根に含まれるデンプンをとり、「葛粉」として利用されてきた[3]。秋から冬にかけて掘り起こしたものを砕いて洗い、精製する[3]。葛粉を湯で溶かしたものを葛湯と言い、熱を加えて溶かしたものは固まると透明もしくは半透明になり、葛切りや葛餅などの和菓子材料や料理のとろみ付けに古くから用いられている。
薬用
- 葛根
- 根を乾燥させたものを生薬名葛根(かっこん)と呼ぶ[6]。日本薬局方に収録されている生薬である。発汗作用・鎮痛作用があるとされ、漢方方剤の葛根湯、参蘇飲、独活葛根湯などの原料になる[6]。風邪や胃腸不良(下痢)の時の民間治療薬として古くから用いられてきた。薬用として用いる場合の採集時期は、初夏が望ましい[7]。
- 葛花
- 花を乾燥させたものを生薬名葛花(かっか)と呼ぶ。開花初期の頃、房になった花すべてを採取し、風通しのよい場所で速やかに乾燥[8]。有効成分は、イソフラボン[9]。
材料
クズのつるは長いことから、切り取ったつるが乾燥して固くなる前に編むことで、籠などの生活用品を作ることができる。
詳細は「葛布」を参照
また、つるを煮てから発酵させ、取りだした繊維で編んだ布は葛布と呼ばれる[6]。平安時代ごろから作られていたとされる。江戸時代には『和漢三才図会』でも紹介された。かつては衣服・壁紙などに幅広く使われたが、現在では生活雑貨や土産物として、数少ない専門店によって小規模ながら生産が続けられている。遠州、現在の静岡県掛川市の特産品である。
文化
酒井抱一『風雨草花図』(左隻)。和歌や日本美術の世界において、葛は主要な秋草のひとつであった。
日本においては古くから文化的題材として扱われ、クズ固有の小さな葉を意匠的に図案化した家紋が数多く存在する。また、秋の七草のひとつに数えられるとともに、秋の季語として多くの俳句に詠われている。落語に『葛根湯医者』がある。
近縁種
沖縄には同属のタイワンクズ(英語版) (Pueraria montana) がある。全体にクズに似るが、葉の形や花の姿などに若干の差がある。なお、沖縄ではほぼ同様な姿でナタマメ属(英語版)のタカナタマメ(英語版) (Canavalia cathartica) も路傍によく出現する。
脚注
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Pueraria lobata (Willd.) Ohwi”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年11月18日閲覧。
- ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants簡易検索結果表示”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 千葉大学. 2013年11月18日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l 浅井 (1993) 74頁。
- ^ 浅井 (1993) 77頁。
- ^ Irwin N. Forsetha; Anne F. Innisa (2004). "Kudzu (Pueraria montana): History, Physiology, and Ecology Combine to Make a Major Ecosystem Threat". Critical Reviews in Plant Sciences 23 (5): 401–413. doi:10.1080/07352680490505150. ISSN 0735-2689.
- ^ a b c d 浅井 (1993) 76頁。
- ^ 松村光重、御影雅幸「葛根の研究 (I) 採集時期に関する史的考察」、『日本東洋医学雑誌』第52巻4-5、日本東洋医学会、2002年、 493-499頁、 doi:10.3937/kampomed.52.493、 ISSN 0287-4857、 NAID 110004003706。
- ^ 久保道徳ほか「漢薬・葛花の生薬学的研究(第1報)」、『生薬学雑誌』第31巻第2号、日本生薬学会、1977年、 136-144頁、 ISSN 0037-4377、 NAID 110008907815。
- ^ 栗原藤三郎、菊地正雄「花の成分研究(第5報)葛花の成分についてその2,新イソフラボン配糖体の単離」、『藥學雜誌』第95巻第11号、日本薬学会、1975年、 1283-1285頁、 ISSN 0031-6903、 NAID 110003651975、 PMID 1240926、 JOI:JST.Journalarchive/yakushi1947/95.1283。
参考文献
- 浅井康宏 『緑の侵入者たち : 帰化植物のはなし』 朝日新聞社〈朝日選書〉、1993年。ISBN 4-02-259574-4。
- 平野隆久写真 『野に咲く花 : 写真検索』 林弥栄監修、門田裕一改訂版監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、増補改訂新版、374頁。ISBN 978-4-635-07019-5。
- 新甫勇次郎ほか「葛花の薬理学的研究(第1報)葛花のアルコール代謝並びにマウス自発運動に対する影響」、『藥學雜誌』第109巻第6号、日本薬学会、1989年、 424-431頁、 ISSN 0031-6903、 NAID 110003649907、 PMID 2810061、 JOI:JST.Journalarchive/yakushi1947/109.424。
- 新甫勇次郎ほか「葛花の薬理学的研究(第2報)アルコール誘発性の代謝異常並びに実験的肝障害に対する葛花の影響」、『藥學雜誌』第110巻第8号、日本薬学会、1990年、 604-611頁、 ISSN 0031-6903、 NAID 110003650046、 PMID 2273452、 JOI:JST.Journalarchive/yakushi1947/110.604。
関連項目
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ウィキスピーシーズにPueraria montana var. lobataに関する情報があります。 |
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ウィキメディア・コモンズには、Pueraria montana var. lobataに関連するカテゴリがあります。 |
- 葛粉
- 葛切り
- 葛餅
- 葛湯
- 葛鰹
- 葛根湯
- 秋の七草
- 救荒植物
- 生薬一覧
- イソフラボン
- マクロビオティック
- 『食道楽』 - 1903年に書かれた小説だが、クズにジャガイモやカタクリがよく混ぜられていることが記されている。
外部リンク
- “Pueraria montana (Lour.) Merr. var. lobata (Willd.) Maesen & S. M. Almeida ex Sanjappa & Predeep”. Germplasm Resources Information Network (GRIN) online database. 2013年11月18日閲覧。 (英語)
- Pueraria montana var. lobata (Willd.) Maesen & S.M. Almeida ex Sanjappa & Predeep, ITIS, http://www.itis.gov/servlet/SingleRpt/SingleRpt?search_topic=TSN&search_value=529930 2013年11月18日閲覧。 (英語)
- Pueraria montana var. lobata - National Center for Biotechnology Information (NCBI) (英語)
- Pueraria montana var. lobata - Encyclopedia of Life (英語)
- 波田善夫. “クズ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学生物地球学部. 2013年11月18日閲覧。
- 国立健康・栄養研究所. “クズ”. 「健康食品」の安全性・有効性情報. 2013年11月18日閲覧。
- “The Amazing Story of Kudzu” (英語). Max Shores (2013年5月29日). 2013年11月18日閲覧。