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コンピュータ断層撮影(コンピュータだんそうさつえい、英語 Computed Tomography、略称:CT)は、放射線などを利用して物体を走査しコンピュータを用いて処理することで、物体の内部画像を構成する技術、あるいはそれを行うための機器。
「断層撮影」の名前のとおり、本来は物体の(輪切りなどの)断面画像を得る技術であるが、これらの検査技術は単に断面画像として用いられるのみでなく、画像処理技術向上によって3次元グラフィックスとして表示されることも多くなってきている。
広義の「CT」はポジトロン断層法(PET)や単一光子放射断層撮影(SPECT)等を含むが、一般的に「CT」と言った場合、ほぼ常に最初に実用化されたX線を利用したCTのことを指すようになっている。本項ではそのX線CT検査について記述する。
目次
- 1 歴史
- 2 原理
- 3 構造
- 4 撮影
- 5 画像
- 6 副作用と問題点
- 7 MRIとの比較
- 8 製造企業
- 9 医療目的以外のCT
- 10 脚注
- 11 参考文献
- 12 関連項目
- 13 外部リンク
歴史
コンピュータ誕生以前の断層撮影方式では、1930年代にイタリアの放射線科医師のアレッサンドロ・ヴァッレボーナ(イタリア語版)によってトモグラフィーの原理が発明された。これはX線撮影フィルムに体を輪切り状に投影するものであった。
1953年には、弘前大学の高橋信次が「エックス線回転横断撮影装置」を開発した[1][2][3]。これは、コンピュータを用いないアナログな機械的装置によって断層を撮影するものであった。
最初の商業的なCTは、Thorn EMI中央研究所で英国人のゴッドフリー・ハウンズフィールドによって発明された。これは、コンピュータによる装置の制御や画像処理を行うことができるもので、1967年に考案、1972年に発表した。ハウンズフィールドの研究はマサチューセッツ州のタフス大学のアラン・コーマックの理論を基にしており、彼らは1979年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
1971年に作成された原型は、1°刻みで160の並列読み出し走査を行っており、180°にわたって走査するのに5分以上かかっていた。画像は走査後、大型計算機で2.5時間かけてラドン変換及びその逆変換を繰り返すトモグラフィック復元(英語版)によって得られた。
最初に生産されたX線CT(EMIスキャナーと呼ばれた)は脳の断層撮影に用いられた。2つの断層データを得るのに約4分かかった。そして、断層画像を得るのにデータゼネラル社のミニコンピュータを使用して画像一枚あたり約7分かかった。
なお、EMI社に所属していたビートルズの記録的なレコードの売上が、CTスキャナーを含めたEMI社の科学研究資金の供給元だったとも考えられるため、CTスキャナーは「ビートルズによる最も偉大な遺産」とも言われている。
日本におけるCTの導入は、EMIとレコード事業(東芝EMI)で提携関係のあった東芝が1975年8月に輸入し、東京女子医科大学病院に設置されて脳腫瘍を捉えたのがはじまりである。ただし、このスキャナはニクソンショックによる変動為替相場制導入後でも1億円(現在[いつ?]の概算で10億円単位)を下らない費用を要する代物で、日本政府側の自賠責保険の運用益から交通事故時の頭部外傷に役立てるような研究的意味合いで資金拠出されることになった。
その後東芝メディカルにより国内生産が開始され、一方日立製作所で、自社開発による初の国産機を1975年10月に藤田学園保健衛生大学に設置している。
その後、1986年にヘリカルCT(ヘリカルスキャン)が開発され、1998年には4列MDCTが登場してきた。
原理
CT機器の内部構造
(T : X線管球、X : X線、D : X線検出器、R : 台の回転)
検査対象の周囲を線源と検出器が回転し、検査対象はX線を全方位から受け、照射されたX線は検査対象を通過し、対象に一部吸収されて減衰した後、線源の反対側に位置するX線検出装置に到達し記録される。それぞれの方向でどの程度吸収されたかを記録したのち、コンピュータで画像をフーリエ変換で再構成する。
1断面を格子状に分割し、各部位の吸収率を未知数とし、その合計が実際の吸収量と等しくなるように連立方程式を立て、これを解くのである。巨大な行列演算である。一般に1断面を512ピクセル四方の格子に分割する機種が多く、1,024ピクセル四方に分割し処理できる空間解像度の高い機種も存在する。
構造
撮影構造
- ノンヘリカルスキャン
- 1スライス毎に寝台の移動と停止を逐次繰り返しながら行う撮影構造。旧来よりの方法という意味でコンベンショナルスキャン(conventional scan)と呼ぶこともあるが、最近ではヘリカルCTに対する言葉として、ノンヘリカルCTと言うことが多い。撮影時間が長くなるが、アーティファクトが少なくなる利点を活かし、微妙な濃度差を検出する必要のある脳のルーチン撮影では、引き続き厚いスライスでのノンヘリカルスキャンが一般的に行われている。
- ヘリカルスキャン
- 連続回転する線源の中を、寝台を一定速度で動かし続けながら行う撮影構造。患者から見ると線源がらせん状に動くことになる。「スパイラル(螺旋)スキャン」とも言われる。ノンヘリカルスキャン(コンベンショナルスキャン)に比べて走査時間を短縮でき、一度の息止めで体幹部全体を撮像することも可能である。現在[いつ?]市販されているCTスキャナはすべてこの撮影方法に対応している。ただし骨周囲などX線の散乱が多い状況では画質的に不利になることがある。頚部から下の撮影では、特殊な検査以外ではほとんどこちらが用いられる。
検出器
- 単列検出器CT(旧来のCT)
- 初期の頃のCTは検出器が1列しかなく、1回の回転で1枚の画像しか得られず、撮影時間が長いことが難点であった。
- 多列検出器CT(MDCT:multi detector-row CT)
- X線を扇状にやや広い角度に照射し、対側の検出器自体を細分割して多列化したCTであり、1回の線源の回転でより多くの範囲の撮影が行える。1998年に4列以上の検出器を備えたCTが開発され、2002年には16列以上の検出器を備えたCTが開発され、広く普及していった。2012年[4]には最大320列の検出器を備えたMDCTが販売されており、1回転で心臓や脳のほぼ全体を撮影することが可能となっている。
撮影
単純CT
造影剤を使わずに撮影を行うものを単純CTと呼ぶ。一般的なスクリーニングとして用いられる場合が多い。検査の目的によっては造影が逆効果であるため、積極的に単純CTが選択されることもある。
造影CT
造影剤を投与後に撮影を行うものを造影CT(contrast enhanced CT:CECT)と呼ぶ。CTにおいては、X線吸収率の高いヨード造影剤を血管内(通常は四肢の静脈内)に注射して撮影を行うものが一般的である。通常は造影CTといえばこれを指し、他の造影剤を使用する場合、別の特殊な名前で呼ぶことが多い(後述)。
造影剤は注入された後、血流に沿って全身の血管に分布し、さらに毛細血管からの拡散によりゆっくりと血管外の細胞外液にも移行し、各種臓器の実質を染める。血管内や、血流が豊富な組織が濃く(白く)描出され、画像のコントラストが明瞭になり、より詳細な観察が可能となる。
撮影の目的によって、造影後いずれのタイミングで撮影するべきかが異なる。大まかにいえば、血管の評価が主な目的であれば早期相(注入開始後15秒 - 30秒)での撮影が、臓器の評価が目的であれば門脈相ないし遅延相(注入開始後80秒以降)での撮影が適する。造影剤の注入速度や造影剤のヨード濃度も検査の目的によって様々に選択される。
CT用ヨード造影剤として、イオヘキソール (オムニパーク)、イオパミドール (イオパミロン)、イオメプロール (イオメロン)、イオペルソール (オプチレイ)などが用いられる(かっこ内は日本国内での商品名)。
特殊な造影CT撮影法
特殊な造影CT撮影法を以下に示す。
- ダイナミックCT
- 造影剤を急速静注(毎秒3mL以上)し、各時間ごと(多くは動脈相、平衡相、静脈相)のタイミングで同じ部位を反復撮影する方法。病変の検出がしやすくなり、質的診断にも寄与するが、被曝も増える。
- Perfusion CT
- Dynamic CTと同じように造影剤の急速静注施行の後に、多数の時相を撮影し、造影剤濃度の時間変化をカラー画像化する方法。
- CT血管撮影(CT angiography:CTA)
- 造影剤を急速静注し、動脈内の造影剤濃度が最も高くなるようなタイミング(動脈相)でCTを撮影することで、冠動脈等の血管走行を明瞭に描出する撮影方法。動脈瘤等の動脈疾患の診断に用いられる。特に3次元レンダリングとの親和性が高い検査方法である。
- IVR-CT
- カテーテル検査の最中に行うCTのこと。カテーテル位置の確認に使用するほか、特定の動脈や静脈に直接造影剤を注入しながらCT撮影を行えば、狙った血管や臓器のみを強く造影することができ、正診率が高まることが期待される。施設によってはIVR-CT専用のCT装置がカテーテル検査室内に併設されていることもある。
- 点滴静注胆嚢造影CT(DIC CT)
- 胆汁中に排泄される特殊な造影剤を投与後に上腹部を撮影し、胆道系を描出する造影検査。
- キセノンCT
- 主に脳血流評価において行われており、非放射性キセノンを吸入しながら撮影する。
画像
画像構成
CTで得られる基本的な画像は、体の断面を表すモノクロ画像である。画像上の白い部分(CT値が高い部分)がX線の吸収度の高い部分であり、黒い部分(CT値が低い部分)がX線吸収の低い部分に対応する。前者は「高吸収域」「高濃度域」「透過性低下域」、後者は「低吸収域」「低濃度」「透過性亢進域」とも表現する。
吸収率の単位としては、「空気」をマイナス1000HU、「水」を0HUと定義したHU(Hounsfield unit)という単位が利用され、これによる透過率の表現を特に「CT値(CT number)」と呼び、他の物質はこれらとのX線吸収度の相対値で示される。体内や体外の金属(義歯など)は非常に高いCT値(数千HU)を呈する。骨も金属元素(カルシウム)を多く含んでいることから、数百HU程度の高吸収値を示す。それ以外の筋肉、脳、肝臓など体内のほとんどの臓器は、造影剤を使用しない場合、20HUから70HU程度の比較的狭い吸収値領域に密集して分布しており、この濃度域は一括して「軟部組織濃度」と総称される。特徴的なのは脂肪であり、体内の主要な構成成分の中で唯一負のCT値(マイナス20HU前後)を示すことから、CTで容易に検出可能である。
このように、CTの画素値のダイナミックレンジは広いが、同時に臓器の観察ではわずか数HU程度の濃度差も問題となる。人間の目の濃度分解能には限りがあり、仮に-1000HUから5000HUまでを均等に白黒画像に割り付けてしまうと、主要な臓器のほとんどはコントラスト不良でほとんど観察できなくなってしまう。人間が観察する場合は、画像の真っ黒から真っ白までの範囲(一般的なモニタであれば輝度0から255の範囲)の中に、自分が観察したい臓器に合わせたCT値を割り振って観察しており、この割り振り方を「条件」と呼んでいる。
例えば肺の内部構造を観察したい場合、肺胞中の空気と気管支や血管が区別できるような条件で画像を観察する必要があるが、このような条件で観察した場合、脂肪や心臓、食道などの臓器は画像上は真っ白になってしまう。逆に肝臓の細かい濃度変化を観察する場合、肺は真っ黒となってしまう。
このような事情のため、画像をフィルムに焼き付ける際は、場合によっては同じ断面を複数の異なる条件で焼き付けなければ、十分な診断ができない。コンピュータのモニタ上で観察することが普及してからは、診断医はリアルタイムに複数の条件を切り替えながらCT画像を観察することができるようになっている。
画像構築
撮影画像の連続表示
(13ヵ月の患者の右腎に生じた腎芽腫)
CTで得られるのは基本的に平面上の画像(スライス)の集合である。以前はこれらの画像は、単にフィルムに焼き付け、シャウカステン等によって蛍光灯の光にかざして観察していた。
ヘリカルスキャンや多列検出器CTといった撮像技術の発達により、0.5mm(500µm)厚といった非常に薄いスライスでの撮像が、日常的に多くの施設で可能となると、膨大な枚数の断面画像が出力されるようになった。現在[いつ?]では多くの施設で、フィルムではなくモニター上で、画像を動画のようにページングしながら観察できるようになっている。
また、スライス厚が充分に薄くなったため、「輪切り」のCT画像を3次元画像として再構築することも可能になった。1度の撮影で得られたすべての画素を、CT値の3次元行列として捉えるのである。この3次元上のピクセルのことを、特に3次元であることを強調してボクセル(voxel)と呼ぶ(volume pixelに由来する)。
任意の方向に十分な解像度を持った3次元のボクセルデータが取得できるようになり、それを記憶・処理できるメモリや処理装置も安価となったため、以下に挙げるような、様々なCTの観察方法が利用されている。
- 任意断面再構成
- 対象物の任意の方向の断面を再構成して表示することを任意断面再構成(multiplanar reconstruction:MPR)と呼ぶ。細かい血管の走行や腫瘍の進展などについては1断面のみからでは把握しづらいため、MPRは診断に大きく寄与した。変法として円柱面やベジェ曲面上にボクセルデータを投影する方法もあり、変形した脊椎の病変の診断などで応用されている。
- 3次元レンダリング
- 十分に解像度の高いボクセルデータは、コンピュータで適切な陰影付け・遠近感を施すことで、人間が直感的に把握できる3次元グラフィックスとして表示できる。主な3次元レンダリング方法は、一定の閾値以上の塊の表面を見る「サーフェスレンダリング」と、不透明度を変えて中身も見える「ボリュームレンダリング」の2種類がある。ある程度再構成時に人手を介するため、厳密な測定目的には向かないが、断面では認識しづらい複雑な脈管構造や、立体的な構造把握の難しい部位(頭蓋骨など)での全体像の把握には有用である。また術前の計画、患者への説明用にも利用できる。視点を気管内や大腸内に置き、これら臓器の内面を立体的に表示する、バーチャル内視鏡も実用化されている。コンピューターのスペックが乏しい時代では、3次元化レンダリングが困難だった。しかし2000年以降に著しくコンピューターが進歩し、3次元レンダリング法が進歩した。
- 心臓CT・4次元CT
- 常に高速に動き続ける心臓は、CTが最も苦手としてきた臓器の一つであるが、多列検出器CTを用いて高速に広範囲の撮影が可能となり、心電図同期技術や線源高速回転技術も発達したことで、心臓分野でもCTが威力を発揮するようになった。現在では心臓表面の直径2mmの血管の狭窄までも描出し、一部の血管カテーテル検査を置き換えられるようになってきている。しかも動き続ける心臓の3次元映像をアニメーションで表示することすら作成可能になってきている。近年[いつ?]脳動脈瘤の拍動を調べることにより、未破裂脳動脈瘤の破裂リスクを予想しようとする研究にも用いられはじめている。
副作用と問題点
「放射線医学#医療被曝」も参照
CTは先進国の大病院のほとんどに普及し日常的に施行されているが、以下のような人体への副作用がある。
- 放射線被曝
- CTによる被曝線量は各種放射線検査のうちで、多い方に属する[5]。被曝量は検査部位や検査方法、機器の性能や設定によって異なるが、検査によっては1回で数十mSv - 100mSvを超えるX線被曝を受けることもある。ただし血管撮影をはじめとするX線透視下に行う各種手技(IVR)に比較すればCTの被曝量は総じて少なく、また放射線治療目的で使用される線量と比較すると、数十 - 数百分の1にとどまる。一般的に、放射線による健康被害のうち、確定的影響(ある閾値を超えれば誰にでも起き、逆にある閾値未満では決して起こらない影響)とされる急性期の放射線障害がCTで起こる可能性は皆無である(つまり白血球減少・脱毛・吐き気などが数週間のうちに起こる可能性はない)。CTで問題となるのは、数か月から数十年後に初めて顕在化してくる発ガンリスクの増加[5]、あるいは子孫への遺伝的影響である。これらは確率的影響と呼ばれ、どんなに少量の被曝であってもリスクはゼロにはならず、少量の被曝なりに少量のリスクが存在するものと“仮定”されている(直線しきい値無し仮説)。従って放射線検査は必要最小限のみ行い無駄な被曝をしないようとどめることが原則である。
- CT被曝による具体的な健康被害を統計的に見積もることは難しい。最低でも数年にわたる追跡が必要になるし、CTを受ける人は通常既に癌であるなど何らかの症状がある。健康な成人をCTを施行する/しない群に分けて追跡するのは倫理的問題もあり、またCTを施行するほど無症状の早期悪性腫瘍は余分に見つかるので、見かけ上の癌発生率は高まる。
- ベリントンとダービーはイギリス、アメリカ合衆国、日本など14か国[6]の発癌の0.6%から3.2%がCTなど診断用放射線によるものと評価している[5]。しかしこれらは日本の原子爆弾被爆者追跡結果との対照で推定されていることや[5]、直線しきい値無し仮説を採用しているため[5]、これらに依拠した評価に疑問を呈する声もあり、専門家の間でも意見が分かれている。また、特に若年者で放射線感受性の高い部位(生殖器や乳房など)の撮影を繰り返す場合は影響を受けやすい。
- なお妊婦の場合は発癌以外に胎児奇形発生が問題となりうるが、国際放射線防護委員会は100mGy(=100mSv)以下の胎児被曝では統計上有意となる奇形増加がないと結論づけていて、骨盤部を直接CTで撮影した場合でも、胎児がこの量の被曝を受けることはまずないとされている[7]。
- 医療機器への悪影響
- 従来、心臓ペースメーカーへの影響はないとされていたが、2005年に一部の心臓ペースメーカーにおいて、CT検査中にリセットを引き起こす稀な事象が確認された。植え込み型除細動器の誤作動も報告されている。これらは生命に危険を及ぼす可能性があり、機器にX線を照射しないようにしたり、照射時間を減らしたりするなど、各病院で対応策が採られている。
- 閉所恐怖症者への心理的作用
- CTはMRIと比較すると短時間で検査が済み、検査機器による圧迫感も少ないが、重度の閉所恐怖症患者においては恐怖やパニックを惹起し、施行困難となることがある。
- 造影検査時のヨード造影剤による副作用
- 軽度の場合は、一時的な吐き気や皮膚のかゆみなどで、造影剤を使用する患者の数%に生じる。治療を要する呼吸困難やアレルギー反応も1%未満に生じる。ごく稀にヨード造影剤によるアナフィラキシーショックや急性腎不全などの重篤な副作用が生じることがあり、造影数十万件に1件程度の頻度では死亡に至る例がある[8]。急速に注射を行うため注射の皮下漏れを起こすと強く腫れてしまうことがある。
また、CTは救急領域でも威力を発揮する価値ある検査である一方、装置は巨大であり、撮影時には被曝防止のため患者から医療従事者が離れ、生命維持のための装備も最小限とする必要がある。ショック状態などの重篤な患者では、CT撮影そのものが十数人のスタッフを要する命がけの検査となることがある。
MRIとの比較
X線CTとMRIの原理は全く異なるものの、同じ輪切り画像検査として、よく比較の対象となる。X線CTはMRIに対して以下のような利点と欠点を持っていると言える。
- 利点
- 検査が短時間
- 空間分解能が高い
- 磁気を使用しないので金属(心臓ペースメーカー等)使用者にも施行可能(ただしペースメーカーについては副作用の欄も参照)
- アーティファクト(画像の乱れ)が少なく、広範囲の撮影が可能
- 騒音や閉塞感が少ない
- 普及率が高く、相対的に安価である
- 欠点
- 放射線被曝がある
- 軟部組織の組織学的変化があまり反映されない
- 脳底、下顎などの骨に囲まれた部位でアーティファクトが出やすい(近年[いつ?]の機種では改善されてきている)
- 造影剤副作用の頻度はCT用のヨード造影剤において高い
非常に大まかには、骨疾患や肺疾患、消化管疾患、あるいは出血などの救急疾患の場合には、MRIよりもCTが有用なことが多い。一方で、脳腫瘍や子宮・卵巣・筋肉などの疾患において、MRIの軟部組織分解能が威力を発揮する場面が多い。
製造企業
現在[いつ?]CT機器は主に以下の企業によって開発・販売されている。
- 医療用CT装置
- シーメンス
- GEヘルスケア
- 東芝
- フィリップス
- 日立製作所
- 島津製作所
- 産業用CT装置
医療目的以外のCT
「en:Industrial computed tomography」も参照
放射線被曝による健康の影響や、生命体を扱うことによる避けられない動き制限などがなくなれば、CTの解像度は更に上げていくことができる。
現在[いつ?]では、CTによって、対象物体の顕微鏡レベルの微細な構造を描き出すことができる。
脚注
- ^ 『エックス線回転横断撮影装置(座位)- CT の概念構築のさきがけ -』 (PDF, 200.48KB) - 産業技術史資料情報センター(国立科学博物館)
- ^ 高橋信次「X線回転撮影法の研究」、『日本放射線学会宿題報告』1951年。
- ^ Takahashi S (March 1957). Rotation Radio1ogy. Japan Society for the Promotion of Science.
- ^ 320列検出器搭載Aquilion ONEの国内すべてのシステムに低線量撮影技術を提供 ~最大で75%の被ばく低減を実現~ - 東芝メディカルシステムズ、2012年3月29日(JST)
- ^ a b c d e Berrington, Darby(2004)
- ^ オーストラリア、カナダ、クロアチア、チェコ、フィンランド、ドイツ、日本、クウェート、オランダ、ノルウェー、ポーランド、スウェーデン、スイス、アメリカ合衆国
- ^ ICRP: Pregnancy and Medical Radiation. ICRP Publication 84, 2000, pp15-17
- ^ 鳴海善文・中村仁信「非イオン性ヨード造影剤およびガドリニウム造影剤の重症副作用および死亡例の頻度調査」『日本医学放射線学会雑誌』65巻3号、2005年、300-301頁。
参考文献
- Berrington, Amy; Darby, Sara (2004年). “Risk of cancer from diagnostic X-rays: estimates for the UK and 14 other countries (PDF)” (英語). Lancet. 2011年6月13日閲覧。
- R.ゴードン、S.A.ジョンソン「医療用X線像の立体的再生」、『サイエンス』、日本経済新聞社、1975年12月、 54頁。
- Richard Gordon; Gabor T. Herman; Steven A. Johnson (1975年10月). “Image Reconstruction from Projections”. サイエンティフィック・アメリカン (Nature Publishing Group) 233 (4): 56-68.
関連項目
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- アラン・コーマック、ゴッドフリー・ハウンズフィールド - CT開発者。1979年、ノーベル生理学・医学賞受賞。
- 辻岡勝美 -日本国内におけるヘリカルスキャンCT開発者。藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科准教授。
- DICOM
- 医用画像処理
- 斜めCT
- OsiriX
外部リンク
- X線CT(X線コンピュータ断層撮影)(原子力百科事典 ATOMICA)
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