CT | MRI | ||
T1 | T2 | ||
灰白質 | high | low | high |
白質 | low | high | low |
CSF | low | low | high |
血液 | high | void | void |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/08/10 19:33:00」(JST)
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コンピュータ断層撮影(コンピュータだんそうさつえい、英語 Computed Tomography、略称:CT)は、放射線などを利用して物体を走査しコンピュータを用いて処理することで、物体の内部画像を構成する技術、あるいはそれを行うための機器。
「断層撮影」の名前のとおり、本来は物体の(輪切りなどの)断面画像を得る技術であるが、これらの検査技術は単に断面画像として用いられるのみでなく、画像処理技術向上によって3次元グラフィックスとして表示されることも多くなってきている。
広義の「CT」はポジトロン断層法(PET)や単一光子放射断層撮影(SPECT)等を含むが、一般的に「CT」と言った場合、ほぼ常に最初に実用化されたX線を利用したCTのことを指すようになっている。本項ではそのX線CT検査について記述する。
コンピュータ誕生以前の断層撮影方式では、1930年代にイタリアの放射線科医師のアレッサンドロ・ヴァッレボーナ(イタリア語版)によってトモグラフィーの原理が発明された。これはX線撮影フィルムに体を輪切り状に投影するものであった。
1953年には、弘前大学の高橋信次が「エックス線回転横断撮影装置」を開発した[1][2][3]。これは、コンピュータを用いないアナログな機械的装置によって断層を撮影するものであった。
最初の商業的なCTは、Thorn EMI中央研究所で英国人のゴッドフリー・ハウンズフィールドによって発明された。これは、コンピュータによる装置の制御や画像処理を行うことができるもので、1967年に考案、1972年に発表した。ハウンズフィールドの研究はマサチューセッツ州のタフス大学のアラン・コーマックの理論を基にしており、彼らは1979年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
1971年に作成された原型は、1°刻みで160の並列読み出し走査を行っており、180°にわたって走査するのに5分以上かかっていた。画像は走査後、大型計算機で2.5時間かけてラドン変換及びその逆変換を繰り返すトモグラフィック復元(英語版)によって得られた。
最初に生産されたX線CT(EMIスキャナーと呼ばれた)は脳の断層撮影に用いられた。2つの断層データを得るのに約4分かかった。そして、断層画像を得るのにデータゼネラル社のミニコンピュータを使用して画像一枚あたり約7分かかった。
なお、EMI社に所属していたビートルズの記録的なレコードの売上が、CTスキャナーを含めたEMI社の科学研究資金の供給元だったとも考えられるため、CTスキャナーは「ビートルズによる最も偉大な遺産」とも言われている。
日本におけるCTの導入は、EMIとレコード事業(東芝EMI)で提携関係のあった東芝が1975年8月に輸入し、東京女子医科大学病院に設置されて脳腫瘍を捉えたのがはじまりである。ただし、このスキャナはニクソンショックによる変動為替相場制導入後でも1億円(現在[いつ?]の概算で10億円単位)を下らない費用を要する代物で、日本政府側の自賠責保険の運用益から交通事故時の頭部外傷に役立てるような研究的意味合いで資金拠出されることになった。
その後東芝メディカルにより国内生産が開始され、一方日立製作所で、自社開発による初の国産機を1975年10月に藤田学園保健衛生大学に設置している。
その後、1986年にヘリカルCT(ヘリカルスキャン)が開発され、1998年には4列MDCTが登場してきた。
検査対象の周囲を線源と検出器が回転し、検査対象はX線を全方位から受け、照射されたX線は検査対象を通過し、対象に一部吸収されて減衰した後、線源の反対側に位置するX線検出装置に到達し記録される。それぞれの方向でどの程度吸収されたかを記録したのち、コンピュータで画像をフーリエ変換で再構成する。
1断面を格子状に分割し、各部位の吸収率を未知数とし、その合計が実際の吸収量と等しくなるように連立方程式を立て、これを解くのである。巨大な行列演算である。一般に1断面を512ピクセル四方の格子に分割する機種が多く、1,024ピクセル四方に分割し処理できる空間解像度の高い機種も存在する。
造影剤を使わずに撮影を行うものを単純CTと呼ぶ。一般的なスクリーニングとして用いられる場合が多い。検査の目的によっては造影が逆効果であるため、積極的に単純CTが選択されることもある。
造影剤を投与後に撮影を行うものを造影CT(contrast enhanced CT:CECT)と呼ぶ。CTにおいては、X線吸収率の高いヨード造影剤を血管内(通常は四肢の静脈内)に注射して撮影を行うものが一般的である。通常は造影CTといえばこれを指し、他の造影剤を使用する場合、別の特殊な名前で呼ぶことが多い(後述)。
造影剤は注入された後、血流に沿って全身の血管に分布し、さらに毛細血管からの拡散によりゆっくりと血管外の細胞外液にも移行し、各種臓器の実質を染める。血管内や、血流が豊富な組織が濃く(白く)描出され、画像のコントラストが明瞭になり、より詳細な観察が可能となる。
撮影の目的によって、造影後いずれのタイミングで撮影するべきかが異なる。大まかにいえば、血管の評価が主な目的であれば早期相(注入開始後15秒 - 30秒)での撮影が、臓器の評価が目的であれば門脈相ないし遅延相(注入開始後80秒以降)での撮影が適する。造影剤の注入速度や造影剤のヨード濃度も検査の目的によって様々に選択される。
CT用ヨード造影剤として、イオヘキソール (オムニパーク)、イオパミドール (イオパミロン)、イオメプロール (イオメロン)、イオペルソール (オプチレイ)などが用いられる(かっこ内は日本国内での商品名)。
特殊な造影CT撮影法を以下に示す。
CTで得られる基本的な画像は、体の断面を表すモノクロ画像である。画像上の白い部分(CT値が高い部分)がX線の吸収度の高い部分であり、黒い部分(CT値が低い部分)がX線吸収の低い部分に対応する。前者は「高吸収域」「高濃度域」「透過性低下域」、後者は「低吸収域」「低濃度」「透過性亢進域」とも表現する。
吸収率の単位としては、「空気」をマイナス1000HU、「水」を0HUと定義したHU(Hounsfield unit)という単位が利用され、これによる透過率の表現を特に「CT値(CT number)」と呼び、他の物質はこれらとのX線吸収度の相対値で示される。体内や体外の金属(義歯など)は非常に高いCT値(数千HU)を呈する。骨も金属元素(カルシウム)を多く含んでいることから、数百HU程度の高吸収値を示す。それ以外の筋肉、脳、肝臓など体内のほとんどの臓器は、造影剤を使用しない場合、20HUから70HU程度の比較的狭い吸収値領域に密集して分布しており、この濃度域は一括して「軟部組織濃度」と総称される。特徴的なのは脂肪であり、体内の主要な構成成分の中で唯一負のCT値(マイナス20HU前後)を示すことから、CTで容易に検出可能である。
このように、CTの画素値のダイナミックレンジは広いが、同時に臓器の観察ではわずか数HU程度の濃度差も問題となる。人間の目の濃度分解能には限りがあり、仮に-1000HUから5000HUまでを均等に白黒画像に割り付けてしまうと、主要な臓器のほとんどはコントラスト不良でほとんど観察できなくなってしまう。人間が観察する場合は、画像の真っ黒から真っ白までの範囲(一般的なモニタであれば輝度0から255の範囲)の中に、自分が観察したい臓器に合わせたCT値を割り振って観察しており、この割り振り方を「条件」と呼んでいる。
例えば肺の内部構造を観察したい場合、肺胞中の空気と気管支や血管が区別できるような条件で画像を観察する必要があるが、このような条件で観察した場合、脂肪や心臓、食道などの臓器は画像上は真っ白になってしまう。逆に肝臓の細かい濃度変化を観察する場合、肺は真っ黒となってしまう。
このような事情のため、画像をフィルムに焼き付ける際は、場合によっては同じ断面を複数の異なる条件で焼き付けなければ、十分な診断ができない。コンピュータのモニタ上で観察することが普及してからは、診断医はリアルタイムに複数の条件を切り替えながらCT画像を観察することができるようになっている。
CTで得られるのは基本的に平面上の画像(スライス)の集合である。以前はこれらの画像は、単にフィルムに焼き付け、シャウカステン等によって蛍光灯の光にかざして観察していた。
ヘリカルスキャンや多列検出器CTといった撮像技術の発達により、0.5mm(500µm)厚といった非常に薄いスライスでの撮像が、日常的に多くの施設で可能となると、膨大な枚数の断面画像が出力されるようになった。現在[いつ?]では多くの施設で、フィルムではなくモニター上で、画像を動画のようにページングしながら観察できるようになっている。
また、スライス厚が充分に薄くなったため、「輪切り」のCT画像を3次元画像として再構築することも可能になった。1度の撮影で得られたすべての画素を、CT値の3次元行列として捉えるのである。この3次元上のピクセルのことを、特に3次元であることを強調してボクセル(voxel)と呼ぶ(volume pixelに由来する)。
任意の方向に十分な解像度を持った3次元のボクセルデータが取得できるようになり、それを記憶・処理できるメモリや処理装置も安価となったため、以下に挙げるような、様々なCTの観察方法が利用されている。
CTは先進国の大病院のほとんどに普及し日常的に施行されているが、以下のような人体への副作用がある。
また、CTは救急領域でも威力を発揮する価値ある検査である一方、装置は巨大であり、撮影時には被曝防止のため患者から医療従事者が離れ、生命維持のための装備も最小限とする必要がある。ショック状態などの重篤な患者では、CT撮影そのものが十数人のスタッフを要する命がけの検査となることがある。
X線CTとMRIの原理は全く異なるものの、同じ輪切り画像検査として、よく比較の対象となる。X線CTはMRIに対して以下のような利点と欠点を持っていると言える。
非常に大まかには、骨疾患や肺疾患、消化管疾患、あるいは出血などの救急疾患の場合には、MRIよりもCTが有用なことが多い。一方で、脳腫瘍や子宮・卵巣・筋肉などの疾患において、MRIの軟部組織分解能が威力を発揮する場面が多い。
現在[いつ?]CT機器は主に以下の企業によって開発・販売されている。
放射線被曝による健康の影響や、生命体を扱うことによる避けられない動き制限などがなくなれば、CTの解像度は更に上げていくことができる。
現在[いつ?]では、CTによって、対象物体の顕微鏡レベルの微細な構造を描き出すことができる。
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