- 英
- intravenous anesthesia
- 関
- 静脈麻酔薬
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/08 06:03:15」(JST)
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静脈麻酔薬(じょうみゃくますいやく)とは静脈から投与する麻酔薬のことである。
分類
- オピオイド
- オピオイド受容体に作用するもの。主に鎮痛薬として用いる。フェンタニルが有名である。
- ベンゾジアゼピン系
- γ-アミノ酪酸 (GABA) の特異的受容体に結合し、クロールチャネルを調節し、主に鎮静作用を示す。当初はマイナートランキライザーとして開発されたもので基本的に鎮静薬、睡眠薬であり鎮痛作用がない。基本的に経口剤が多く、静脈投与が可能な薬物としてはジアゼパム(セルシン®,ホリゾン®)、フルニトラゼパム(サイレース®)、ミダゾラム(ドルミカム®)が有名である。抗痙攣薬として用いることもある薬であるので急性局所麻酔中毒で用いることがある。急性緑内障、重症筋無力症、ショック、HIVプロテアーゼ阻害薬投与中の患者、また胎盤移行性が高いため妊婦でも使用は禁忌である。
-
- ミダゾラム(ドルミカム®)
- ジアゼパムの3倍ほどの鎮静効果をもち、特に健忘作用が強い。作用が発現するのに2分ほどかかるため鎮静薬としては作用発現は遅い方である。短期手術では他剤と併用で0.05~0.1mg/kgで十分な効果を得る。持続投与では0.6mg/kg/時間で導入し0.15mg/kg/時間で維持する方法がよく知られている。内視鏡検査で用いられる場合は1~4mgを静脈からボーラス投与する。(日本では保険適応外使用。海外では標準的な使用とされる。)
-
- フルマゼニル(アネキセート®)
- ベンゾジアゼピン受容体の拮抗薬である。短時間作用型であるので、投与後2時間ほどの経過観察が必要である、拮抗薬の方が早く体内から排出しベンゾジアゼピンの効果が再出現するからである。拮抗が必要な場合とは、呼吸抑制やParadoxical reaction、すなわち少量投与で逆に興奮状態になった場合である。0.2mg投与し必要に応じて0.1mgずつ増量する、0.5mgでも効果がないときは他の理由を考えるべきである。
- バルビツール酸系
- 上行性脳幹網様体に働き、中枢抑制作用を持つ薬物。細胞膜に作用しGABAがそのレセプターとの結合から離反するのを抑制し鎮静作用を示すと考えられている。超短時間作用型としてチオペンタール(ラボナール)、チアラミール(イソゾール)などが有名である。基本的に副交感神経刺激症状が出現する。
-
- チオペンタール
- 主に鎮静薬として用いられる。超短時間作用型のバルビツール酸系である。通常は20秒位で意識が消失し、5~7分程度維持され、15分程度で覚醒する。鎮痛作用はなく、むしろ痛覚刺激に対して敏感になる。ヒスタミン遊離作用があり、気管支喘息やアレルギー性疾患で用いないほうがよい。
- プロポフォール
- バルビツール酸系に代わって現在主流になっている静脈麻酔薬である。短時間作用型のフェノール誘導体であり導入覚醒が極めて早いのが特徴である。商品名はディプリバン®である。本剤はあくまでも鎮静薬であり鎮痛作用はないと考えられている。胎盤通過と乳汁移行が極めて高いため妊婦や授乳中の患者には禁忌である。混濁液であるため静脈投与の場合、血管痛が生じることが多い。そのため予めキシロカイン(静脈注射用、2%液で3mlほど)を投与する場合もある。通常は投与後、5~15分で覚醒する。他の麻酔薬とことなり突然覚醒するので注意が必要である。急速投与を行うと強い呼吸抑制が起こることが知られている。麻酔導入には約2~2.5mg/kgを用いる。鎮痛効果はないためオピオイドの併用が不可欠である。多くの手術では導入のときのみ用い、吸入麻酔薬によって維持をすることが多いがTCIを用いて持続投与し、麻酔維持を行うこともできる。導入後は素早く減量をしないと循環抑制が強く出ることが知られている。麻酔維持に用いる場合は3~10mg/kg/時間で持続投与する方法がよく知られている。プロポフォール自体には気管支拡張作用があるがディプリバンは溶媒の性質上気管支攣縮をおこすことが知られている。気管支喘息、アレルギーの患者には注意が必要である。
- ケタミン
- NMDAレセプターに結合しアンタゴニストとして作用する。視床皮質系を抑制、大脳辺縁系を賦活化することから解離性麻酔薬ともいう。交感神経を賦活すること、静脈麻酔薬でありながら鎮静と鎮痛の両方の作用をもつことから注目されている。商品名はケタラールである。
病棟での使用
手術室やICUでは、人工呼吸器下の鎮静としてはプロポフォールを用いることが多い。具体的な鎮静の処方としては
というものが有名である。麻酔導入、完全静脈麻酔(TIVA)ではより大量に用いることが多い。しかし、病棟ではプロポフォールが使えないことが多く、人工呼吸器管理の患者の鎮静には他の鎮静薬を用いることが多い。以下代表的な処方を述べる。
- ドルミカム10A(20ml)を1ml/hから開始 。体動を認めたら1mlフラッシュする。
- ドルミカム5A+生食40mlを3ml/hで開始 。体動を認めたら3mlフラッシュする。
- ドルミカム8A+ケタラール(筋注用)2000mg(2A)+生食14mlを2ml/hから開始 。体動を認めたら2mlフラッシュする。
ドルミカムのみの場合は、鎮痛が不十分になることが多く、挿管チューブの喉の刺激で覚醒してしまうことが多い。そのため鎮痛薬としてはレペタン2Aを24時間持続投与とすることが多い。鎮静、鎮痛コントロールは個体によって差が多いので十分な注意が必要である。
参考文献
- 病態生理に基づく臨床薬理学 ISBN 4895924610
- 麻酔科レジデントマニュアル ISBN 4906472443
- 麻酔科研修チェックノート 改訂第2版 ISBN 9784758105682
- 麻酔科研修の素朴な疑問に答えます ISBN 4895924440
- 麻酔の研修ハンドブック ISBN 4765309762
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Japanese Journal
- 実践で役立つTIVA投与時のトラブル例と解決法 (サブ特集 実践で役立つ! 全静脈麻酔(TIVA)の基礎知識と注意ポイント)
- 木山 秀哉
- OPE nursing : The Japanese journal of operating room nursing 27(5), 559-565, 2012-05
- NAID 40019236903
- TIVAの基礎ポイント (サブ特集 実践で役立つ! 全静脈麻酔(TIVA)の基礎知識と注意ポイント)
- 木山 秀哉
- OPE nursing : The Japanese journal of operating room nursing 27(5), 556-558, 2012-05
- NAID 40019236899
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- 2004年8月30日 ... 静脈麻酔をしたことのあるかたお願いですが体験談を教えて下さい。できれば手順とか 細かく・・・。痛みはあったかどうかなどもお願いします。また、静脈麻酔をしたらあ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- propofol
- 商
- ディプリバン、Diprivan
- 関
- 麻酔、麻酔薬、静脈麻酔、静脈麻酔薬
特徴
構造
作用機序
薬理作用
- 鎮痛:× → 麻酔性鎮痛薬などと組み合わせて用いる。
- 意識消失:○
- 筋弛緩:△
- 反射抑制:○
効能又は効果
- 1%ディプリバン注
- 全身麻酔の導入及び維持
- 集中治療における人工呼吸中の鎮静
動態
- 1%ディプリバン注
- 日本人健康成人男子6例に1.0、2.0及び2.5mg/kgを単回静脈内ボーラス投与したとき、プロポフォールの体内動態は3-コンパートメントモデルに適合し、全血中濃度は3相性に減衰した。各相の半減期は2.6分(t1/2α)、51.0分(t1/2β)及び365分(t1/2γ)であった。中央コンパートメントにおける分布容積及び定常状態時の分布容積はそれぞれ26L及び317Lであった。全身クリアランス(CLTB)値は1.62L/分であった。1~2.5mg/kgの用量範囲で、血漿中薬物濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)が用量に比例して増加することが示された。また、薬物動態パラメータに明らかな性差はみられなかった(外国人の成績)。
- 成人患者8例に平均2.6mg/kgを単回静脈内ボーラス投与した場合、投与後24時間までにプロポフォール及び1,4キノール体のグルクロン酸抱合体ならびに1,4キノール体の硫酸抱合体として投与量の68.3%が尿中に排泄された。
- 外国人患者にプロポフォールを2.5mg/kg用量で単回静脈内ボーラス投与したとき、投与後10及び120分後の蛋白結合率は約97~99%であった。
適応
注意
- 妊婦、授乳婦 → 母乳に移行する。ただし、その量は微々たるものらしい。しかし、できるだけ回避。
禁忌
- 1%ディプリバン注
- 1. 本剤又は本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 2. 妊産婦(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
副作用
- 注射時の痛み、呼吸抑制、無呼吸、低血圧(麻酔導入時に起こる低血圧はバルビツレートに比べて高頻度に起こる)
- 徐脈-アシドーシス(プロポフォール注入症候群):稀であるが致命的。
参考
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1119402A1022_1_15/1119402A1022_1_15?view=body
[★]
- 英
- intravenous anesthetics
- 関
- 麻酔薬、吸入麻酔薬
静脈麻酔薬
静脈麻酔薬の中での興奮性麻酔薬と抑制性麻酔薬
- SAN.45
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興奮性麻酔薬
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抑制性麻酔薬
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例
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ケタミン
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バルビツレート プロポフォール
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脳自発的活動
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↑
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↓
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血圧
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↑
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↓
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交感神経活動
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→↑
|
↓
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脳酸素消費量
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↑
|
↓
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脳血流
|
↑
|
↓
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頭蓋内圧
|
↑
|
↓
|
鎮痛作用
|
強い
|
弱い
|
半減期
バルビツール酸系薬
麻酔導入が早い、全麻の導入、ごく短時間の痛みの少ない手術、検査
抗麻痺や、脳保護薬としても使われる
鎮痛、筋弛緩作用がないため併用が必要
急性間欠性ポルフィリン症は禁忌
ヘム合成系路の酵素欠損によって起こる
気管支喘息の患者には使用禁忌
サイトカインが出るから
○:強力な催眠作用
×:組織刺激性あり。静脈注射のみ
細胞膜にはGABA依存性のCl-チャネル(GABAA受容体=イオンチャネル共役型受容体)が存在し、バルビツール酸結合部位、ベンゾジアゼピン結合部位、GABA結合部位を有している。
3つの部位が独立に作用がある。相加的に働く。
GABAB受容体は7回膜貫通タンパク質である。
作用は バルビツール酸>ベンゾジアゼピン
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[★]
- 英
- total intravenous anesthesia, TIVA
- 同
- 完全静脈麻酔 ← あまりよくない邦訳
- 関
- バランス麻酔
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[★]
- 英
- anesthesia
- 関
- 麻酔機、術前準備
全身麻酔
1. Semi-rapid induction (成人の場合の基本)
目的別の麻酔方法
- 心臓手術:on-pump CAB, off-pump CAB
- 肺手術:一側肺換気
- 産科麻酔:筋弛緩薬以外は胎盤を通過すると考えて良いと思われる。硬膜外麻酔でオピオイドを投与するのは分娩後。
参考
- 1. 研修医用のマニュアル - 神戸大学大学院医学系研究科 外科系講座 麻酔科学分野
- http://www.med.kobe-u.ac.jp/anes/manual.html
- 2. 麻酔科レジデントマニュアル 麻酔応用編 筑波大学附属病院麻酔科 2011 年ver.1.4
- http://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/anesthesiology/tsukuba_new_anesthesiology/pdf/manual3advanced110325.pdf
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- 英
- vein (Z)
- ラ
- vena
- 毛細血管から発生した静脈血を心臓に送るために使われる血管。