- 英
- fundic gland polyp, FGP
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/21 19:38:28」(JST)
[Wiki ja表示]
胃底腺ポリープ(いていせん-, Fundic gland polyp; FGP)とは、胃粘膜に発生する代表的な無茎性ポリープであり、胃酸分泌細胞(壁細胞)の分布する胃底部から胃体部に単発または多発する。人間ドックなどの際の胃透視検査でポリープを指摘され発見される場合もあれば、内視鏡検査で偶然発見される機会もある。診断には病変の一部を生検し、病理組織学的検査を行うことが必要である。
概要
Abraham SCらの報告によれば、内視鏡検査を実施したヒトの0.9-1.9%に胃底腺ポリープが認められる。男女差が歴然としてあり、圧倒的に成人女性に多い病変である。単発例より多発例が多い。偶然の検査をきっかけに発見されることが多く、無症状の患者がほとんどである。慢性萎縮性胃炎の原因となるHelicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)の感染の合併がほとんどないことも特記される。このようなケースは「散発性胃底腺ポリープ(sporadic FGP)」と呼ばれることが多い。
一方、常染色体優性遺伝性疾患である家族性大腸ポリポーシス(familial adenomatous polyposis; FAP)の患者に生ずる多発性胃底腺ポリープは「症候性胃底腺ポリープ(syndromic FGP)」と呼ばれている。FAP患者の胃のポリープとしては腺腫よりも高頻度に認められ、若い年齢層に発生し男女とも同率である。胃体部粘膜(胃酸分泌域)に密在して分布する傾向がある。
胃底腺ポリープの病因は議論が続いている。FGPはHelicobacter pylori感染との関連はない。プロトンポンプ阻害剤(PPI)による制酸剤治療との関連を指摘する報告もあるが、研究者によっては否定的な見解を表明している。最もホットな話題は,胃底腺ポリープが過形成病変か腫瘍かの議論である。従来の病理学者は胃底腺ポリープを胃底腺細胞(壁細胞、主細胞、腺頚部粘液細胞)の過形成または過誤腫であると主張していた。しかし、近年のAbraham SCらの研究グループは、散発性または症候性の胃底腺ポリープ病変に分子遺伝学的解析に基づいて、Wnt signaling pathwayでの体細胞変異が生じていることを指摘し、過形成というよりは胃腺細胞のクローナルな増殖であることを証明している.すなわち通常型の胃腺腫とは形態は異なるが分子遺伝学的背景は同じで、腫瘍性病変に近いことを提唱している。散発性FGPと症候性FGPではそれぞれ異なる分子に遺伝子レベルの変異が生じていることも同じ研究者らにより指摘されている。詳細は下記の文献を参照されたい。
引用文献:
- Abraham SC, Park SJ, Cruz-Correa M, Houlihan PS, Half EE, Lynch PM, Wu TT. Frequent CpG island methylation in sporadic and syndromic gastric fundic gland polyps. Am J Clin Pathol 2004;122:740-746.
- Abraham SC, Nobukawa B, Giardiello FM, et al. Fundic gland polyps in familial adenomatous polyposis: neoplasms with frequent somatic APC gene alterations. Am J Pathol 2000;157:747-754.
関連項目
- 腺腫性ポリープ(腺腫)
- 過形成ポリープ
- 若年性ポリープ
- Peutz-Jeghersポリープ
- ポリポーシス
- 粘膜逸脱症候群
- cap polyposis
- 乳頭腫(扁平上皮乳頭腫)
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 質疑応答 内科 胃底腺ポリープの消失機序・大腸内視鏡検査施行の要否
- GERD維持療法におけるPPIの光と影--抗炎症作用と胃底腺ポリープを中心に (特集 GERDの維持療法のあり方)
- プロトンポンプ阻害薬長期投与中に増大した胃底腺ポリープの検討
- 菅原 通子,今井 幸紀,齊藤 詠子,藤盛 健二,新井 晋,稲生 実枝,中山 伸朗,名越 澄子,伴 慎一,持田 智
- 日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy 51(8), 1686-1691, 2009-08-20
- 【目的と方法】プロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor:PPI)の長期投与によって胃底腺ポリープが増大することが報告されている.その病態や機序を明らかにするため,PPI長期投与中に胃底腺ポリープが増大した13症例(男3例,女10例,年齢(平均±2SE)70.5±6.3歳)の臨床的,組織学的特徴を検討した.【結果】ポリープ増大が確認されるまでの内服期間(平均±2SE)は29. …
- NAID 10025171251
Related Links
- Q4.胃ポリープについて、過形成性ポリープと胃底腺ポリープの違いは何ですか? 過形成性ポリープと胃底腺ポリープ 胃ポリープとは胃に発生する上皮性、良性、隆起性病変のことをいいます。
- 胃ポリープ 胃ポリープとは、胃の粘膜上皮に局所的に隆起(りゅうき)した病変です。 ポリープには最も多い過形成(かけいせい) 性ポリープをはじめ、胃底腺ポリープ、特殊なポリープとして腺腫(せんしゅ)、家族性大腸腺腫症 ...
- 18 【胃ポリープ、胃底腺ポリープ】 <病態> 胃の粘膜の一部が隆起したものです。半球形やキノコ状に隆起しているものや平坦な形で隆起しているものな ど色々な形状が見られます。以下の3種のポリープがあります。
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、67~69の問いに答えよ。
- 62歳の女性。胃病変の精査と内視鏡治療とを希望して来院した。
- 現病歴:3年前に胸やけがあり、自宅近くの医療機関で上部消化管内視鏡検査を施行され、逆流性食道炎と診断された。その後、近くの診療所でプロトンポンプ阻害薬を投与されていた。1か月前から再度、食後や就寝後に胸やけが生じるようになったため、同じ医療機関で上部消化管内視鏡検査を受けたところ、逆流性食道炎は治っているが胃に異常があると言われた。胃病変が心配になりインターネットで検索した結果、早期の癌は内視鏡で治療できると記載があったため、胃病変の精査と内視鏡治療とを希望して受診した。
- 既往歴:5年前から高血圧症で治療中。
- 生活歴:喫煙歴と飲酒歴とはない。
- 家族歴:父親が糖尿病。
- 現 症:意識は清明。身長 156cm、体重 48kg。体温 36.2℃。脈拍 68/分、整。血圧 114/76mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、心窩部に圧痛を認めるが腫瘤は触知しない。
- 検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 400万、Hb 12.1g/dL、Ht 40%、白血球 8,200、血小板 30万。心電図と胸部エックス線写真とに異常を認めない。上部消化管内視鏡像(別冊No. 8A、B)を別に示す。
- 考えられる診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109G066]←[国試_109]→[109G068]
[★]
胃底腺ポリープ FGP
[★]
- 英
- fundus glands
- 同
- 固有胃腺 proper gastric glands glandulae gastricae propriae
- 関
- 噴門腺、幽門腺、胃腺 gastric glands
[★]
- 英
- polyp
- 同
- 茸腫、隆起性病変 protruded lesion
- 関
- ポリポーシス、消化管ポリポーシス
- 平坦な表皮や粘膜表面より突出する形で局所的に増殖する病変
[★]
- 英
- gland
- ラ
- glandula
- 関
- 腺細胞、分泌
[★]
- 英
- fundus of stomach (Z)
- 関
- 胃