出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2019/02/18 21:35:56」(JST)
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
民生委員(みんせいいいん、Welfare commissioner)とは、主にソーシャルワークに従事するために日本の市町村の区域に配置されている奉仕者である。民生委員法(昭和23年法律第198号)に規定され、地方公務員法第3条第3項第2号に規定する非常勤の地方公務員である。
民生委員は児童委員を兼ねる。
民生委員は、その市町村の区域内で、担当の区域又は事項を定め、以下の職務を行う(民生委員法第14条第1項)。
また、民生委員は児童福祉法(第16条第2項)に基づき児童委員を兼ねるとされている。
民生委員はその職務に関して、都道府県知事などの指揮監督を受ける。市町村長は、民生委員に対し、援助を必要とするものに関する必要な資料の作成を依頼し、その他民生委員の職務に関して必要な指導をすることができる。
また、民生委員は、都道府県知事が市町村長の意見を聞いて定める区域ごとに、民生委員協議会を組織し、その協議会は民生委員の職務に関する連絡調整その他の任務を行う。
民生委員は「当該市町村の議会の議員の選挙権を有する者」「人格識見高く、広く社会の実情に通じ、且つ、社会福祉の増進に熱意のある者」の中から都道府県知事又は政令指定都市若しくは中核市の長の推薦し、厚生労働大臣が委嘱することによって決定される。法により「当該市町村の議会の議員の選挙権を有する者であって成年に達した者[1]」と定められていることから法律で事実上の国籍条項が規定され、「日本国籍を持つ成年者」であることが要件となっている。
公職の兼職は、事実上公職としての活動と民生委員・児童委員としての活動を区分し得ない場合が生じるため適当でない。
公務員の選任は、職務専念義務があるため原則として適当でないとされているが、地域の事情によりやむを得ず推薦する場合は、民生委員・児童委員としての活動時間を十分確保できるか否かの確認と、任命権者の承諾書の提出が求められる。(新潟県民生委員・児童委員選任要領参照)
年齢要件及び在住期間の要件については、地域の事情を踏まえた弾力的な運用が可能である。
都道府県知事の推薦は、市町村に設置された民生委員推薦会が推薦した者について、地方社会福祉審議会の意見を聞いて行われる。都道府県知事は、民生委員推薦会の推薦した者が民生委員として適当でないと認める時は、地方社会福祉審議会の意見を聴いて、当該民生委員推薦会に対し、民生委員の再推薦を命ずることができる。再推薦命令から20日以内に民生委員推薦会が再推薦をしない時は、都道府県知事は、当該市町村長及び地方社会福祉審議会の意見を聴いて、民生委員として適当と認める者を厚生労働大臣に推薦することができる。
民生委員の任期は3年で、その改選日は12月1日であり全国統一されている。直近の改選日は2016年12月1日であった。民生委員の改選が12月1日となっているのは、1953年の民生委員法の改正時にその任期を1953年11月30日までとして改選時期を統一したことが起因である[2]。
なお、厚生労働大臣は以下に該当する民生委員について、地方社会福祉審議会の同意を経たうえで都道府県知事の具申に基いて、民生委員を解嘱することができる。
地方社会福祉審議会は同意の前に当該民生委員に解嘱する旨を通告しなければならず、通告を受けた民生委員は通告を受けた日から2週間以内に地方社会福祉審議会に対して意見を述べることができ、当該民生委員が意見を述べた場合には、地方社会福祉審議会はその意見を聴いた後でなければ審査をなすことができない。
給与は支給されない(第10条)。奉仕者となるため無報酬ではあるが、民生委員個人に対し交通費や通信費等相当分として自治体から活動費が交付される。各自治体が交付する民生委員・児童委員の1人あたり活動費用弁償費(2012年度)は「4万円以上6万円未満」が23.0%、「6万円以上8万円未満」が19.3%、「8万円以上10万円未満」が17.3%と上位3ランクで全体の6割程度を占めており、全体の平均は78,234円となり[2]、求められている活動に対して交付額が少ないなど、その妥当性が課題となっている。その他に民生委員の選出地区単位で設立されている協議会に対し、研修活動費が自治体から交付されているが、その金額は多いとは言えない状況である。
個人情報保護法は、民生委員の活動に大きな影響を与えている[3]。例えば、お年寄りの安否確認も満足に行えないなど職務へ弊害が発生している[4]。また、民生委員は業務の性質上、個人や世帯の情報が必要となる。しかし、個人情報保護法の施行により地方自治体が民生委員への個人情報提供に慎重になり、個人が個人情報保護法を盾に名簿作成のための情報提供を拒否したり、マンション等の管理人が居住者の情報の提供を拒む事例が増えたという[3][5]。
なお、民生委員は民生委員法第15条で守秘義務が課せられており、民生委員法第14条に定められた範囲での個人情報の取扱いを行うことになっている。しかし、一般職の地方公務員とは異なり、刑事罰の規定は無い。その為、地域の民生委員と付き合いのある各種販売業者への情報漏洩が行われるという懸念が付きまとうことになる。ただし、守秘義務が守られなかった場合、民生委員法ではなく、憲法上の基本的人権侵害(プライバシーの侵害)、民法上の不法行為、刑法上の名誉毀損罪等の個別法により裁かれるが、その際、民生委員法の守秘義務が課せられていることが考慮される。また、近所づきあいなどコミュニティーの中で社会的制裁を受けることとなる。
各都道府県や政令指定都市、中核市それぞれの世帯数等に応じて民生委員の定数を定めている。しかし、なり手不足、職務の多様化から、民生委員は不足が常態化している[6]。
幼児虐待から高齢者の安否確認まで、自治体から期待される職務範囲は広がっているが、職務範囲が広がるほど求められる能力も高くなり、民生委員推薦のハードルを上げるかたちとなっている[6]。加えて、そもそもなり手が不足している。住民の意識の変化により地域活動への参加が消極的となり、その影響で民生委員を推薦する自治会自体も減少している[6]。
こうした状況に対応するため、参加要件の緩和や、個人情報の取り扱いガイドラインの検討などが行われている[6]。民生委員と同様に奉仕者として無報酬で活動している人権擁護委員や保護司などを含め、社会として必要なを活動を行う者に対し、特別職公務員として一定の身分保障を行うなど、制度そのものの在り方の再検討を求める意見も多くなっている。
2010年7月29日、東京都足立区に住民登録をしていた都内男性最高齢(111歳)の白骨化遺体が発見され、刑事事件(死亡後約32年経過とされる、年金給付の不正受給容疑)となった。その後東京都は、100歳以上を対象にした調査を開始。その結果、都内最高齢の113歳の女性が所在不明であった。これらがきっかけで、全国各地で100歳以上を対象にした調査を開始した結果、多くの所在不明の高齢者が発覚した。これも民生委員の人手不足が原因の一つである。
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第五節 児童委員
第二款 子育て支援事業
三 地域の児童の養育に関する各般の問題につき、保護者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行う事業
(民生委員・児童委員、主任児童委員の推薦)
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