出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/02/08 21:47:58」(JST)
病院 | 一般診療所 | 歯科診療所 | |
---|---|---|---|
国 | 274 | 585 | 3 |
公的医療機関 | 1,258 | 3,632 | 280 |
保険者 | 121 | 581 | 12 |
医療法人 | 5,172 | 36,859 | 11,074 |
個人 | 373 | 46,227 | 56,481 |
その他 | 867 | 11,663 | 306 |
計 | 8,605 | 99,547 | 68,156 |
医療法人(いりょうほうじん)とは、病院、医師や歯科医師が常勤する診療所、または介護老人保健施設の開設・所有を目的とする法人である。
根拠規定は医療法第6章(旧第4章)であり、その冒頭の39条において社団と財団の2種類が認められている。銀行振込などで使用する略称は「イ」。医療法人社団、医療法人財団、社会医療法人の区別はされていない。
全国の病院の 約60%(病院分類中1位)、全国の診療所の 約30%(診療所分類中2位。最多は「個人」の約50%)、全国の歯科診療所の 約13%(歯科診療所分類中2位。最多は「個人」の約85%)が医療法人であり、数的には医療の根幹を支えている。(病院#制度も参照)
- 医療法第三十九条
- 病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。
- 第四十条の二
- 医療法人は、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすよう努めなければならない。
1950年(昭和25年)8月に、前年に行なわれた医療法改正に伴い、医療法人制度が施行。2016年現在、施行後60年を越えている制度である。
日本全国では51,958の医療法人があり(2016年3月末)、持分の定めのある社団がそのうち約98%を占め、持分の定めのない社団と財団は約1%ずつ存在している。また、常勤医師を一人しか持たない「一人医師医療法人」は43,237件で、医療法人全体の約80%に達している。
設立には都道府県知事の認可を必要とする(医療法44条)。認可判断にあたっては、都道府県医療審議会の意見を聞かなければならない(45条の2)。
なお2つ以上の都道府県において病院等を開設する医療法人については、広域医療法人(厚生労働大臣所管の医療法人)と呼ばれ、認可権限が厚生労働大臣となる(第68条の2)。認可判断にあたっては社会保障審議会の意見を聞かなければならない(第68条の2)。他県の事業者と合併した場合にも広域医療法人への移行が必要となる。
財団 | 社団 | 計 | ||
---|---|---|---|---|
総数 | 386 | 50,480 | 50,866 | |
うち、特定医療法人 | 48 | 328 | 376 | |
うち、社会医療法人 | 34 | 205 | 239 | |
うち、厚労大臣所管医療法人 | 32 | 1,049 | 1,081 |
医療法人社団においては、社員と呼ばれる株主に似た構成員からなる社員総会が、形式上、最高意思決定機関となり、理事の選任等を行う。実際に法人経営の最終的な意思決定を行うのは理事会であり、理事会で選任された理事長が法人代表者となり、経営を行う。
財団の場合、社員総会はなく、理事会が最高意思決定機関となる。評議員会なる監督機関が置かれることもある。
医療法人には、理事3人以上および監事1人以上を置かなければならない(46条の2)。理事長は原則として医師又は歯科医師でなければならない(46条の3)。また、開設する病院の管理者(いわゆる院長)を原則として理事に加えなければならず(47条)、この院長たる理事が理事長を務めることが多い。法制度上は、医療法人の理事に親族・血縁者を50%以上入れてはならない、となっている。
医療法人は剰余金の配当ができない点(医療法54条)で通常の営利法人とは区分されているが、残余財産分配(みなし配当)もできないために原則非課税となる公益法人等とはされていない。そのため社会医療法人を除く医療法人は、法人税等の税制面では原則的に営利法人と同じ扱い(法人税において30%)が適用される。更におこなえる事業の種類が非常に限定されていることから、比較的近い目的を持ち、税法上は公益法人等に当たる社会福祉法人(剰余金配当も残余財産分配も出来ないため法人税などは収益事業を行わないかぎり0%)とは法人資質が異なっている。
なお、旧医療法では、持分を定めた社団医療法人は出資持分を定めることが可能である。この場合、旧厚生省が通達したモデル定款によれば、出資割合に応じてその払い戻しが可能と解釈されていた。
したがって、その法人の社員が死亡等の事由により退社した際、その相続人が、その出資持分を承継した場合、課税庁により、純資産価額方式(又は純資産価額方式及び類似業種比準価額方式)により払戻し時の時価により評価が行われる(財産評価通達194-2)。この場合、その相続人等が、持分を定めた社団医療法人の多額の相続税の返還請求を求めるケースがある。このため、多額の払戻しを請求された法人が解散に至ることもあり、課税庁と医療法人側がその出資評価をめぐって昭和50年代から60年代にかけて訴訟が提起されていた(東京地裁昭和53年4月17日判決, 行集29巻4号538頁参照)。
現在は、医療法人の出資評価は、時価評価することが妥当であると説示されているため、課税実務では、依然として時価評価が行われている。
なお、現在の改正医療法下(平成18年6月21日改正)においては、新たに医療法人を設立しようとする者は、社団形態は選択できるが、社員に対して持分の定めることはできない[3]。ただし、既に設立された持分を定めた社団医療法人については、改正医療法附則10条2項により「当分の間」存置されることとなった。この「当分の間」の解釈については、期限が設けられていないため、依然不透明である。
また、改正医療法が施行される2007年4月以降に医療法人を設立する際、解散時の残余財産の帰属先は「国、地方公共団体、公的医療機関の開設者、財団または持ち分の定めのない社団の医療法人」の中から選ぶことになる。
そのため、財団・持分の定めのない社団については、一定の要件を満たすことで、医療法42条の2が規定する社会医療法人(旧医療法の特別医療法人は廃止され、社会医療法人に移行することになるが、2012年3月31日までは存続可能)、あるいは、租税特別措置法67条の2に規定される特定医療法人(医療法の規定には存在せず税法の制度であるので留意する。)となることができる。特別医療法人になった場合には、医療法人の目的は医療に専念することが基本ではあるが、付帯事業について制限を大幅に緩和した制度である。但し、通常の医療法人についても最近では老人ホームの運営など緩和される傾向にある。特定医療法人となった場合には、相続税や法人税の減免を受けることもできる。但しどちらの場合にも収入要件や役員の給与要件、残余財産の原則国庫への帰属など公益法人等と同一視することとなっている。
今後、上記社会医療法人については、公益法人制度改革(公益法人関連法令については、平成20年度施行)と併せて課税上の何らかの優遇措置が予定されているが、公益法人制度改革においても、税制の優遇措置は長期課題とされているため、未だその措置については、不透明である。
私法上の建前からいうと、法人格を有するのはあくまで医療法人であり、病院はその所有の客体となる資産にすぎないが、行政法規等ではあたかも病院そのものが法人格を有するかのように扱われることが多い点、注意を要する。
個人経営の病院や診療所に比べて、医療法人の資産が個人の資産と分離ができて効率よく経営ができるメリットがある。また税制にも有利になるといわれていたが、この近年の個人の所得税率の低下・医療法人化による事務コストの増加を精査すると、税務以外も考慮した総コストでは医療法人のメリットは大きく減殺されている。
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