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- artificial heart AH
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/05/13 17:31:31」(JST)
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人工心臓(じんこうしんぞう)とは、心臓の機能の代替もしくは補助を行うために用いられる人工臓器である。
国際的に見て、日本の医療機器の承認には制度上諸外国で承認された機器との時間的なラグが生じるが(デバイス・ラグ)、特に人工心臓では、承認の遅れにより本来ならば助かるはずの患者の生命が失われることもありうるので、学会等でも日本の承認の遅れの問題は大きな問題として取り上げられている[1]。
種類
人工心臓には、患者自身の心臓を摘出して埋め込まれる「全置換型人工心臓」と、患者の心臓を温存して心機能を補助する「補助人工心臓」が存在する。
全置換型人工心臓
全置換型人工心臓としては、ロバート・ジャーヴィックによる空気圧駆動型のJarvik-7が1982年にアメリカで臨床応用されたが、ポンプ内の血栓形成が原因で起こる脳卒中などの合併症で使われなくなった。2000年代に入り、米アビオメド社が開発した電磁駆動のアビオコアが臨床使用されるようになったが、これは余命がわずかであることが判明している患者に対し、数ヶ月延命させることを目的としたものであった。現在アビオコアの使用は倫理的な問題から中断している。
症例数から計算すると、補助人工心臓だけで救命できる症例数のほうが多く、全置換型人工心臓は開発しても採算が取れないと言う試算もある[要出典]ことから、現在は開発プロジェクト自体が多くない。その中において、東京大学の研究チーム[2]は、デザイナーの川崎和男とともに全置換型を目指して共同開発を進めている[3]。
従来の人工心臓は、拍動を再現することが必要だと考えられていたために複雑な構造が必要だったが、近年では簡単な構造の無拍動型の人工心臓が実績を上げつつあり、各国の研究チームが開発を競っている[4]。
小型の補助心臓を2つ使い、全置換型人工心臓とさせる技術もある。 体の大きい人には有利な全置換型人工心臓は複数あるが、体の小さい日本人や子供などには 合致しないケースも多く、小型化がすすめられている。
補助人工心臓
詳細は「補助人工心臓」を参照
補助人工心臓は、患者自身の心機能を補助するものである。日本では、内科的治療抵抗性の重症心不全症例に対して心臓移植までの生命を維持するために用いられる。現在は「体外設置型」と「体内植込型」に大別される。
- 体外設置型
- ニプロVAD:日本東洋紡・ニプロ NCBC(小型駆動装置)型もある。
- 体内植込型:日本で使用できる機器は以下の通り。
- Heart Mate Ⅱ:アメリカThoratec社
- EVAHEART:日本サンメディカル(東京女子医科大学・早稲田大学・東京大学)
- Dura Heart:日本テルモ
- JARVIK 2000 Flowmaker:アメリカJarvic Heart社
- HEARTWARE HVAD
2012年には東北大学の研究チームが、磁気を利用することで電源をワイヤレス化した、完全に埋め込める人工心臓用のポンプを開発したと発表した[5]。完全に埋め込み出来るサイズではあるが、人間の心臓とほぼ同等の流量と圧力を実現しており、動物実験でも動作が確認されている。ワイヤレス技術を担当する石山和志らのグループは、カプセル内視鏡を磁気で移動させる技術などを開発しており、その技術が導入されている。研究チームではこのポンプを利用した、完全埋め込み型の補助人工心臓の開発を目指している。
脚注
- ^ 人工臓器33,No.1, 2004
- ^ 東京大学 大学院医学系研究科 生体物理医学専攻 医用生体工学講座 生体機能制御学分野
- ^ 人工心臓コンセプトモデル”KAWASAKI G5-model”の理論的背景, 人工心臓コンセプトモデル”KAWASAKI G5-model”の設計
- ^ 「拍動しない人工心臓」で生きた人、WIRED、2011年6月16日
- ^ 東北大、体内に完全埋め込み可能なワイヤレス型人工心臓用ポンプを開発
関連項目
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II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
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利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン系 (ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬(en)) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 胸部外科の指針 体外式補助人工心臓装着患者のポンプ内血栓に対する一時的遠心ポンプ
- 木村 光利,木下 修,縄田 寛 [他]
- 胸部外科 = The Japanese journal of thoracic surgery 68(5), 323-331, 2015-05
- NAID 40020458512
- 心筋症に対する左心補助循環装置 (第1土曜特集 心筋症Update) -- (心筋症非薬物療法の進歩)
- 人工心臓弁の流体力学的評価と課題 : 機械的人工弁の歴史的進展と流れを視る流体力学的評価 (特集 医用機械システムの設計と課題)
- 阿久津 敏乃介
- 設計工学 = Journal of Japan Society for Design Engineering : 日本設計工学会誌 50(3), 105-111, 2015-03
- NAID 40020386267
Related Links
- もくじ はじめに 人工心臓には二つのタイプ ポンプもいろいろな方式 人工心臓を動かすには 人工心臓開発の歩み 補助人工心臓 拍動流型補助人工心臓 拍動流型補助人工心臓の臨床応用 補助人工心臓の成績 補助人工心臓で治療したケース
- 人工心臓って何? 我々の心臓は主に血液循環を司るポンプの役割を果たしています。全身から心臓に戻ってきた血液は肺循環に送り出された後、再び心臓に戻り、最後に全身へと送り出されています。この機能はまさに“ポンプ”です。
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★リンクテーブル★
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- 英
- assistant artificial heart, ventricular assist device VAD, ventricular assist system VAS
- 同
- 心室補助人工心臓
- 関
- 左心バイパス法、人工心臓、補助循環法
[★]
- 英
- total artificial heart, TAH
- 同
- 置換型人工心臓 replacement artificial heart
- 関
- 人工心臓
[★]
- 英
- left ventricular assist system, LVAS
- 同
- 左心補助装置、左室補助装置、左室補助人工心臓
<toggledisplay>
左心補助人工心臓 : 約 77,500 件
左心補助装置 : 71 件
左室補助装置 : 96 件
左室補助人工心臓 : 約 36,000 件
左心補助人工心臓 LVAS : 92 件
左心補助装置 LVAS : 43 件
左室補助装置 LVAS : 61 件
左室補助人工心臓 LVAS : 71 件
</toggledisplay
参考
- http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/treatment/vas.html
[★]
- 英
- ventricular assist device, VAD
- 関
- 補助人工心臓
[★]
- 英
- pivoting disc prosthesic heart valve
[★]
- 英
- heart
- ラ
- cor
- 関
- 肺、循環器
性状
体表解剖
- 心臓の上縁:左の第2肋軟骨の下縁と右の第3肋軟骨を結ぶ線上
- 心臓の右縁:右の第3肋軟骨から右の第6軟骨に向かう線。この線は外側に向かって弓状をなす。
- 心臓の下縁:右縁の下端から第5肋間隙で左鎖骨中線の近くに向かう線
- 心臓の左縁:上縁と下縁を外側に凸となる曲線で結んだ線
機能血管
動脈
静脈
心臓の栄養動脈 (M.92)
-
- 洞房結節枝
- 右縁枝
- 後下行枝 = 後室間枝
- 房室結節枝
-
心臓の栄養静脈 (M.95)
心臓の静脈の特徴
- 酸素供給能 = 心臓の送血能 x 血液のHb量 x (動脈の酸素飽和度(肺) - 静脈の酸素飽和度(末梢))
- 心臓の酸素消費量と仕事
[★]
- 英
- artificial
- 関
- 人為的、人工的