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酒、お酒とは、
酒(さけ)は、エチルアルコール(アルコールの一種)が含まれた飲料の総称。「お酒」という丁寧な呼び方もよく用いられ、「酒類」や「アルコール飲料」、またソフトドリンクに対して「ハードドリンク」とも呼ばれることがある。西洋ではワインに相当する語彙が総称として用いられることがある。
第一の杯は健康、 第二は喜び、 第三は眠り、 それから利口な男は家に帰る。 第四は無礼、 第五は叫声、 第六は街の中での乱暴、 第七は殴り合い、 第八は法廷への召喚だ
— アテナイオス、高津博士(訳)『食通大全』
酒は人類史において最古から存在する向精神薬の一つである。人間には普遍的に「じぶん以外の存在になりたい」という潜在的願望があり、酒による酩酊はその願望を叶える有効な手段の一つだった。しかし、酩酊は往々にして混乱や無秩序をもたらし、社会から忌避される。一方で「酒は百薬の長」と言われ、一方では「きちがい水」と言われる。古来より酒は社会にとって両価値的存在だった[1]。
酒の歴史は古く、有史以前からつくられていたと見られている(→#歴史)。種類は多く、製造方法や原料等多種多様であるが、原材料から発酵によってエチルアルコールを生成することで共通している(→#種類)。
効用としては、ストレスの解消、コミュニケーションの円滑化、疲労回復が挙げられる(→#効用)。その反面、ネガティブな影響も大きく、健康面ではアルコール依存、癌のリスク増加(→#健康への影響)、社会的には暴力、事故、自殺が挙げられる(→#飲酒と社会)。
このように及ぼす影響が大きいため、また政府の税収確保のため、酒の製造および流通(販売)は、多くの国において法律により規制されている(→#法律)。宗教ごとにお酒の扱いは異なっており、儀式に用いられたり、神への捧げものであったり、また身を清め神との一体感を高めるための飲み物とされている。宗教によっては、飲酒を禁じているものもある(→#宗教と酒)。
酒の歴史は非常に古く、有史(文字の歴史)以前から作られた。
南米・アジア・アフリカのごく一部で現在も行われている各種穀物を口に入れ噛み砕いた後、瓶や甕に吐き出し集め発酵を待つという原始的な酒造法が低アルコールながら有史以前に広まっており、古代日本でも巫女がその役を務め「醸す」の語源となっていると言う説がある。(口噛み酒を参照)
2004年12月、中国で紀元前7000年ごろの賈湖遺跡(かこいせき)(en)から出土した陶器片を分析したところ、米・果実・蜂蜜などで作った醸造酒の成分が検出されたという報告があった。いまのところこれが考古学的には最古の酒である。
古代オリエント世界では、紀元前5400年頃のイラン北部ザグロス山脈のハッジ・フィルズ・テペ(英語版)遺跡から出土した壺の中に、ワインの残滓が確認された。また紀元前3000年代には、シュメールの粘土板にビールのことが記録されている。シュメールの後を継いだバビロニアで、最古の成文法であるハンムラビ法典の中にビール売りに関する規定が記されている(第108条〜第110条)。
エジプトでは紀元前2700年頃までにはワインが飲まれていた。ツタンカーメン王の副葬品の壺からはワインが検出されている。またビールも広く飲まれていた。ピラミッド工事の労働者たちにはビールが支給されていたらしい。オリエント世界ではブドウの育つ場所が限られるので、ワインは高級な飲み物であり、ビールはより庶民的な飲み物だったらしい。
中国において殷・周のころ、酒は国家の重要事である祝祭において重要な意味を持っていた。非常に手の込んだ器である殷代青銅器のうち、多くのものは酒器である。
『論語』には、「郷人で酒を飲む(村の人たちで酒を飲む)」などの記述があり、紀元前5世紀頃には一般的な飲み物になっていたらしい。
ギリシア・ローマは、ブドウの産地ということもあり、ワインが多く生産された。それらはアンフォラと呼ばれる壺に入れられて、地中海世界で広く交易されていたらしい。酒の神ディオニソス(ローマではバッカス)が信仰され、酒神を讃える祭りが行われた。
古代バビロニア時代に、香水を作るための蒸留技術があったという説があるが、蒸留の技術は、3世紀頃のアレクサンドリアの錬金術師たちには既に知られていたと推測される。
ローマ帝国は、イギリスをはじめヨーロッパの各地を支配下に収め、その過程でワイン生産の技術を伝えた。フランスのボルドーやブルゴーニュなどではそのころからワインの製造が始まっている。なお、イギリスは気候の低温化によりブドウが栽培できなくなりワイン生産は廃れた。
10世紀以前には蒸留酒が発明されていた。それは錬金術師が偶然に作り出したものだといわれる。ラテン語で蒸留酒はアクア・ヴィテ(生命の水)と呼ばれた。それが変化してフランス語でオード・ヴィー、ゲール語でウシュクベーハーになり、今日の様々な蒸留酒の区分ができた。
1171年、ヘンリー2世の軍隊がアイルランドに侵攻した。その時の記録によると、住民は「アスキボー」という蒸留酒を飲んでいたという。これが「ウイスキー」の語源となる。
沖縄(当時は琉球)では、若い女性が口の中で噛み砕いた木の実を唾液とともに吐き出し、それを醗酵させた「口噛み酒」なるものを中国の使節へ供したという記録がある。
酒は大きく分けて醸造酒・蒸留酒・混成酒に分かれる。醸造酒は単発酵酒と複発酵酒に分けられ、複発酵酒は単行複発酵酒と並行複発酵酒に分けられる。
蒸留酒のうち、樽熟成を行わないものをホワイトスピリッツ、何年かの樽熟成で着色したものをブラウンスピリッツとする分類法がある。ただし、テキーラ、ラム、アクアヴィットなどではホワイトスピリッツとブラウンスピリッツの両方の製品があり、分類としては本質的なものではない。
糖分、もしくは糖分に転化されうるデンプン分があるものは、酒の原料になりうる。脂肪分やタンパク質分が多いもの(たとえば大豆などの豆類)はあまり向かない。
ブドウ、リンゴ、サクランボ、ヤシの実などの果実。米、麦、トウモロコシなどの穀物。ジャガイモ、サツマイモなどの根菜類。その他サトウキビなどが代表的な原料である。また酒造の副産物として得られる酒粕・ブドウの絞りかすなどから、二次的に酒を造り出すこともある。クリなどの堅果類、樹液や乳、蜂蜜を原料とした酒もある。
原料によって酒の種類がある程度決まる。
しかし、ジン・ウォッカ・焼酎・ビール・マッコリなどには、穀物や芋類など異なった原料のものがあり、必ずしも原料によって酒の種類が決まるわけではない。また、原産地によって名称が制限される場合がある。たとえばテキーラは産地が限定されていて、他の地域で作ったものはテキーラと呼ぶことができずメスカルと呼ばれる。
種類 | 100g中のアルコール重量 |
日本酒(純米酒) | 12.3g |
日本酒(本醸造酒) | 12.3g |
日本酒(吟醸酒) | 12.5g |
日本酒(純米吟醸酒) | 12.0g |
ビール(淡色) | 3.7g |
ビール(黒) | 4.2g |
ビール(スタウト) | 5.9g |
発泡酒 | 4.2 g |
ぶどう酒(白) | 9.1g |
ぶどう酒(赤) | 9.3g |
ぶどう酒(ロゼ) | 8.5g |
紹興酒(紹興酒) | 14.1g |
しょうちゅう(甲類) | 29.0g |
しょうちゅう(乙類) | 20.5g |
ウイスキー | 33.4g |
ブランデー | 33.4g |
ウオッカ | 33.8g |
ジン | 40.0g |
日本では、「アルコール度数」を含まれるアルコールの容量パーセントで「度」と表す。正確には、温度15℃のとき、その中に含まれるエチルアルコールの容量をパーセントで表した値に「度」をつけて表す。販売されている酒の多くは、3度(ビール等)〜50度前後(蒸留酒類)の範囲であるが、中には90度を超す商品もある。日本の酒税法では、1度未満の飲料は酒に含まれない。そのため一般的な甘酒はソフトドリンクに分類される。なお、日本酒には「日本酒度」という尺度があるが、これは日本酒の比重に基づくもので、アルコール度数とエキス分(酒類中の糖・有機酸・アミノ酸など不揮発性成分の含有量)に依存する。
英語圏では、度数のほか、アルコールプルーフも使われる。USプルーフは度数の2倍、UKプルーフは度数の約1.75倍である。英語圏で degree や ° といえばプルーフのことなので、注意が必要である。
酒に含まれるアルコール分はほとんどの場合、酵母による糖のアルコール発酵によって作られる(テキーラは例外的にザイモモナスと呼ばれる細菌をアルコール発酵に使用している)。果実から作られる酒(ワイン)は、果実中に含まれる糖分から直接アルコール発酵が起こる。しかし、麦・米・芋などの穀物類から造る酒の場合、原材料の中の炭水化物はデンプンの形で存在しているため、先にこれを糖に分解(糖化)する。糖化のためにはアミラーゼ等の酵素が必要である。酵素の供給源として、西洋では主に麦芽が、東洋では主に麹が使われる。
個人差はあるものの、少量の飲酒に限れば、胃液の分泌が盛んになり消化を助け、食欲が増進する。
ほろ酔い程度の飲酒により、行動欲求を抑圧している精神的な緊張を緩和し、気分がリラックスし、ストレスの解消につながる。
適量のアルコールが体内に入ると、思考や知覚、運動、記憶などといった機能をつかさどっている大脳皮質の抑制が解放される作用がある。抑制が取れることにより緊張がほぐれ、コミュニケーションがより陽気で快活になり、会話が活発になる。
少量の飲酒は、血管を拡張させて血液の流れを良くして血行を改善する。その結果、体を温め、疲労回復の効果があがる。また、利尿作用もあるので、体内にたまった疲労のもとになる老廃物の排出を促進する[3]。
アルコールに関しては健康への悪影響が懸念される中、ワインなどに含まれるポリフェノールについても注目されている。ポリフェノールは動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用、ホルモン促進作用などがあり、特にウィスキーは樽ポリフェノールという従来のポリフェノールの約7倍の抗酸化力を持ち、細胞内ソルビトールの蓄積を抑制するため糖尿病なども抑制する効果を持つ。その他にウィスキーにはメラニンの生成を抑制するチロシナーゼが含まれているため美白効果をもたらす可能性も期待されている。
健康日本21のまとめでは、日本人の場合全くアルコールを飲まない場合よりも、一日あたりの純アルコール摂取量として、男性の場合10〜19g、女性の場合微量〜9gのアルコールを習慣的に摂取した場合に最も死亡率が低くなるとされている。しかし同時に、これらの量を超えてアルコールを摂取し続けた場合は、全くアルコールを飲まないのと同程度か、それ以上に死亡率が高まるとしている[4]。
特に酒とともに食べる料理を肴という。[5] ソーセージとビールやキャビアとウォッカなど料理と定番の組み合わせがある。 フランス料理とワインや日本料理と日本酒のように、食事の際にも飲まれる。また食前酒や食後酒などもある。特に酒のための食事を宴会とよぶ。
料理に風味付けや肉や魚などの臭み消し等の用途でみりん、日本酒、ワイン、ブランデー、ウィスキーなどが使用され、煮切りやフランベなどの調理法がある。その他、パンの原材料としてや、漬物、饅頭やカステラなどの和菓子、チョコレートやケーキなどの洋菓子にも使われる。奈良漬けやブランデー・ケーキ、中のシロップにワインやブランデーが使われているチョコレートなどには風味のためアルコール分が残してある。
詳細は、
摂取した酒に含まれるアルコール(エタノール)は、主に胃と小腸粘膜で吸収される。吸収されたアルコールは迅速に酸化されアセトアルデヒドとなる。酒に含まれるエチルアルコールは向精神性物質であり、人間の不安感・抑うつ感を抑える効果がある。しかし、一度に大量のアルコールを摂取すると代謝が間に合わず、血中アルコール濃度が上昇を始める。血中のアルコールは中枢神経系を麻痺させ、酩酊や急性アルコール中毒を引き起こす。
アルコール依存症とは、長期にわたり多量の飲酒した事から、アルコールに対し精神的依存や身体依存をきたす、精神疾患である。アルコールを繰り返し摂取し、アルコールに対する依存を形成し、精神的に身体的に続的に障害されている状態をいう。長期間多量に飲酒を続ければ、誰でもアルコール依存症になる可能性があり、WHOの策定した国際疾病分類第10版には"精神および行動の障害"の項に分類されており、個人の性格や意志の問題ではなく、精神疾患と考えられている。
アルコール依存症の症状には精神依存と身体依存とがある。精神依存としては、飲酒への強烈な欲求をもつようになり、飲酒のコントロールがきかず節酒ができない状態となる。また精神的身体的問題が悪化しているにもかかわらず断酒できない、などが挙げられる。身体依存としては、アルコールが体から切れてくる事で、指のふるえが起きたり、発汗症状などの禁断症状が現れたり、以前と比べて酔うために必要な酒量が増大する、などが挙げられる。アルコール依存症になると他の娯楽や生活をおざなりに、飲酒をすることをすべてに優先的な行動となってしまう傾向にある。
WHO(世界保健機関)では、飲酒は口腔癌・咽頭癌・喉頭癌・食道癌・肝癌・大腸癌と女性の乳癌の原因となる[6]として注意喚起を行っている。飲酒は喫煙と同じく深刻な健康被害をもたらすため、多くの人々に問題を知らせ、極めて有害であるアルコールの真実を効果的に伝える必要があるとし呼びかけを行っている。
アルコールそのものには発癌性があり、飲酒が少量でも顔が赤くなるようなALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)の働きが弱い体質の人では、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道癌の原因となり、ガンリスクを増大させると結論づけられている。ALDH2の働きが弱い人は日本人の約40%にみられ、アセトアルデヒドの分解が遅く飲酒で顔面が酷く赤くなったり、二日酔いを起こしやすい体質を作るなどの症状をもたらす。アセトアルデヒドやアルコールには発ガン性があり、口腔・咽頭・食道の発癌リスクが特に高くなる。口腔ガン、咽頭ガン、食道ガンは一人に複数発生する傾向があり、ALDH2の働きが弱い人に多発癌が多くみられる。少量の飲酒で顔が赤くなる体質の人の中で飲酒を始めて2年以内にあった人では、約9割の確率でALDH2の働きが弱いタイプと判定される。
また逆にALDH2の活性が高い人は、大量のアルコールを摂取できる反面、同時に肝臓ではアルコールの分解と共に中性脂肪の合成が進む事で結果、肝臓は脂肪まみれになり、いわゆる脂肪肝リスクが増大する事になる。
2005年の厚生労働省多目的コホート研究では、男性に発生した癌全体の約13%が週300g以上の飲酒による原因と概算されている。口腔・咽頭と食道癌では禁酒によりリスクの低くなることが報告されており、禁煙と禁酒の両者に取り組めばさらにリスクは低下すると報告されている。
大腸癌は飲酒で約1.4倍程度のリスク増となり、日本人では欧米人よりも同じ飲酒量でも大腸癌のリスク増加は若干多い傾向にある。大腸癌は頻度が多いので飲酒量を減らすことによる予防効果は大きいと考えられている。
近年、アルコールは少量であっても、脳を萎縮させる効果があるとする研究結果が報告されている[8]。
研究によれば、以下の順で脳がより萎縮するとされている。(より下に書かれたケースの方が、より萎縮する)
「適量」と呼ばれている少量の飲酒であっても、脳の萎縮が起こり、過去の飲酒の影響も残り続けるため、脳の萎縮という観点から見れば、アルコールに適量は存在しないと言える。
なお、日本において未成年者の飲酒は法律により禁止されているが、アルコールを摂取する方法として飲酒の形態を取っていない場合であっても摂取したアルコール量に応じた化学反応が脳内物質に発生することで脳に対して相応の影響が生じる。ただし、アルコール分を飛ばした後の極微量の残存アルコールが摂取されることなどについては一般に許容されるものと考えられている。ただし、アルコールを含まない代替物質を使用するなどで同様の効果を得るといった選択はある。
精神、心理状態を変化させることなどもあって、飲酒は様々な社会、文化と関わってきた。家庭における飲酒が日常化し、晩酌(夕食時に(しばしば日常的に)飲酒すること)する習慣や、酒を提供する飲食店であるバー、パブ、居酒屋、スナックのような飲食店も存在している。
この節の加筆が望まれています。 |
日本では行事などで、なかば強制的に飲酒させる慣習が見られたが、最近は急性アルコール中毒や飲酒運転による死亡事故報道の増加や、アルコール代謝酵素の欠落症の存在が広く知られる様になった事で、酒席でのノンアルコールも認められる様になりつつある。
児童や高齢者への虐待、家庭内暴力(DV)、駅や街中での暴力、傷害、犯罪など飲酒に関連した暴力は様々な場面で起こっており、社会的に重大な問題の一つとなっている。飲酒に関連した暴力を防止するためには、その原因となっている飲酒を減らすことが大切とされる。またアルコール乱用・依存症が背景にある場合には、それらに対する適切な治療を受ける必要がある。
飲酒により暴力が増加する背景には、飲酒・酩酊により攻撃性が増すなどのアルコールによる直接的な影響と、習慣的な飲酒によるアルコール乱用やアルコール依存症などの疾病からくる間接的な影響とがある。また、飲酒に関連した暴力には様々な種類があり、暴言や身体的暴力のみならず、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力などが報告されている。
鉄道会社団体のまとめでは、駅や列車内で暴力行為をした乗客の約6割は飲酒をしていた。また酔客を降ろした駅員が突然傘で殴られたり、乗客同士のけんかの仲裁に入った駅員3人が逆上されてけがを負うなど、駅員への暴行も多数報告されている。酔って地域警察官へ暴力をふるうなどして公務執行妨害容疑で逮捕されるなど、警察官へ暴力を振るうケースも珍しくない。
日本においては、飲酒による暴言・暴力やセクシャルハラスメントなどにおよぶといった迷惑行為は、アルコールハラスメント(アルハラ)とも呼ばれている。この問題は、公共の場、職場や家庭内など、2003年の全国調査によると、アルハラを受けた成人は3,000万人にも達している。
飲酒量が増すにつれて自殺のリスクが直線的に高い結果が示された。多変量解析の結果、多量飲酒者の自殺リスクは、非現在飲酒者(非飲酒者+過去飲酒者)と比べ3.3倍高くなり、さらに、1日1合未満の少量飲酒者においても自殺リスクが1.7倍と高いリスクが示された[9]。
飲酒運転による死亡事故は、平成14年施行の改正道路交通法により罰則等が強化されたことで減少してきた。そして、18年以降の取締りの強化及び飲酒運転根絶に対する社会的機運の高まり、更には飲酒運転の厳罰化等により、大きく減少し、10年前の約3分の1となっている。しかし交通事故全般において、死亡事故数は事故から1日以内をカウントしているため、医療の発達による死亡者数減少や一時延命者数によっての縮小という面がある事も指摘されている。
飲酒と貧困 には、世界の貧困問題と不可分である。世界的に、学歴が低く、低所得、失業中などの人において飲酒率が高いことが多数の統計的研究によって裏付けられている。複数の研究では、貧しい国の中には家計の約18%が飲酒に費やされていることもあると指摘されている。そのため、少ない所得から食費・健康管理費・教育費などがさらに削られ、栄養不良・医療費増大・早死・識字率低下をもたらし、社会階層の固定化に影響している(WHOによる)。
イギリス政府は飲酒への財政負担の軽減のために規制強化に乗り出した。飲酒が原因となる犯罪、暴力事件や医療費が大きな財政負担となっており、日本円にして年間1兆2000億〜1兆9000億円が飲酒に関わる財政負担となっていると推計されている。また、成人の100万人以上がアルコールに依存しているとされ、NHS(英国国民医療制度)への負担は年間27億ポンドにも達している。イギリスではアルコール飲料の値段が安いことが過剰飲酒の引き金になっているとして厳しく非難されている。10年間で約10万人が飲酒が直接の原因となる疾病による死亡者数となっている。またこの累計には飲酒運転やガンなど、アルコールが間接的な原因と考えられるものは除かれている。2010年10月から身分証明書の確認の義務化なども実施される。その他、パブなどでの飲酒促進サービスとなる10ポンド飲み放題サービスや女性無料の日サービスのほか、早飲み競争ゲームなどの禁止が実施される。
韓国政府は、飲酒による社会経済的な損失の費用が年間20兆ウォン(約2兆6000億円)を超えるという韓国内政府統計を示した。これを切っ掛けにテレビコマーシャルなどを用いた「節酒キャンペーン」が行われた。医療費の支出や早期死亡、生産性の減少など、社会経済的に損失を与えた費用が20兆990億ウォンに及ぶなど、飲酒の弊害が深刻な水準にあると明らかにした。同部はその根拠として、18‐64歳のアルコール使用障害人口(アルコール乱用人口とアルコール依存症人口を合わせた数)が全人口の6.8%(221万人)に及ぶという2001年保健福祉部精神疾患実態疫学調査の結果を挙げた。仁済大学の金光起(キム・クァンギ)教授チームの調査の結果、過度な飲酒による疾患で死亡した人は2001年2万2000人(死亡者全体の8.7%)だった。また、2001年の殺人・暴力・強盗・強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪や交通事故の加害者など、現行犯の43.5%が犯行時に飲酒状態であったことが分かった。
日本では政府による大規模統計は示されていないが、韓国人では1人あたり年間71.1L、日本人は1人あたり年間83.5Lの飲酒量から同様の問題が懸念されている。
日本人男性では、年齢が高いほうが飲酒未経験者・禁酒者の割合が高く、若年層では飲酒量が多い傾向がみられた。結婚している人よりしていない人、および身体活動度が高い人より低い人で、飲酒未経験者・禁酒者・多量飲酒者が多かった。女性では、高齢層より若年層、教育年数の短い人より長い人、身体活動度の高い人より低い人で飲酒者の割合が高いという結果となった。その他、非飲酒者の収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、LDL-Cは飲酒者よりも高い結果がみられた[10]。
下記に一般的な例を上げる。
若者の飲酒は、中高年と比較し急性アルコール中毒やアルコール依存症等のリスクが高くなり、事件・事故の関連性が高いという特徴がある。その対策としては、飲酒禁止年齢を用いた対策が効果的といわれている。アルコールは60種以上の疾患と関連があるといわれ、その中で急性アルコール中毒と、アルコール依存症は若者の飲酒と関連も深いともいわれている。これ以外にも、脳の萎縮や第二次性徴の遅れ等、多くの領域でアルコールによる若者の健康への悪影響が懸念されている。[11]
大学コンパなどにおいて、未成年飲酒が暗黙の了解となっている場面も少なくないのが実態となっている。未成年飲酒の撲滅に盲目的に取り組むことはあまり有効ではなく、むしろ現状を認めたうえで、アルコールのモラルに関する教育・情報発信をしたほうが大学生の飲酒事故抑止には有効、という意見が学生には多い。[12]
酒には古来より、公序良俗を守るため或いは租税を公課するためにアルコールに対して、さまざまな法律が制定されてきた。
飲酒が全面的に禁止されることは少ないが、一部の厳格なイスラム教国は例外である。日本でも江戸時代に徳川綱吉が「大酒禁止令」を出し、酒の飲み過ぎ、他人への強要を戒め、酒屋への規制を試みている[13]。またアメリカには、飲料用アルコールの製造・販売等を禁止するアメリカ合衆国憲法の改正(俗に言う「禁酒法」)が行われていた時期があり、現在でも一部の郡では酒類の販売が禁じられている。
日曜日に酒類の販売を制限している自治体も多い。また、インディアン居留地ではアルコール依存症を防止するために飲酒を禁じているところがある。また、欧米などでは、屋外や公園などの公共の場所での飲酒を禁止しているところが多く、日本の花見のような光景は見られないことが多い。
ほとんどの国では、年少者の飲酒または酒の購入を禁じている。酒購入の際に身分証明書が必要な場合がある。法律で飲酒が認められる年齢を最低飲酒年齢 (minimum drinking age、MDA)、購入が認められる年齢を最低購入年齢 (minimum purchasing age、MPA) という。世界的には、16歳〜18歳を最低飲酒年齢または最低購入年齢(またはその両方)とする国が多い。酒類別に年齢を定めている国もある。
ほとんどの国では、飲酒運転を禁じている。飲酒運転とみなされる血中アルコール濃度は国によって違い、下限は0.0%(少しでも検出されれば不可)〜0.08%の範囲である。
多くの国では、酒類の生産や販売について免許が必要である。専売制を敷き、それらを国営企業や公営企業が独占している国もある。
主要国や特徴ある国の法規の概要は以下のとおり。
アルコールそのものは可燃性液体であるため、航空保安上、度数の高い酒類の持ち込みが規制される。以下は日本においての規制内容である。 [17]
酒の扱いは宗教ごとに異なっており、酒を神聖な場面で扱い、特別なものとしている場合もあり、反対に飲酒が人や社会に悪影響を及ぼすとし、酒を遠ざけている宗教・宗派もある。酒のもたらす精神変容は宗教体験や呪術と結び付けられ、非日常の宗教儀式用に摂取されるものとされていたと考えられる。今日でも様々な文化において様々な伝統宗教や祭祀習慣に酒類が欠かせないものとなっており、飲酒にまつわる儀礼にはそうした宗教・祭祀慣習とのかかわりが深い。今日においても、酒類の儀礼性、宗教性は濃密に残っており、「おとそ」のように特定の祝い事と結びついた酒がある。
ウィキクォートに酒に関する引用句集があります。 |
ウィキメディア・コモンズには、酒に関連するカテゴリがあります。 |
ウィクショナリーに酒の項目があります。 |
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国試過去問 | 「104A051」 |
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