ラニチジン
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本来の表記は「ヒスタミンH2受容体拮抗薬」です。この記事に付けられた題名は記事名の制約から不正確なものとなっています。 |
原型的なH
2受容体拮抗薬、シメチジンの球棒モデル。
ヒスタミンH2受容体拮抗薬(ヒスタミンエイチツーじゅようたいきっこうやく、Histamine H2-receptor antagonist)とはH2ブロッカーとも呼ばれ、胃潰瘍・十二指腸潰瘍といった消化性潰瘍の治療に用いられる薬品である。その作用機序は胃の壁細胞に存在し胃酸分泌を促進するヒスタミンH2受容体を競合的に拮抗することである。
目次
- 1 開発の経緯
- 2 薬理作用
- 3 臨床応用
- 4 ヒスタミンH2受容体拮抗薬の例
- 5 副作用
- 6 参考文献
- 7 関連項目
開発の経緯[編集]
ヒスタミンH2受容体拮抗薬の原型となっているシメチジンはアメリカのスミスクライン&フレンチ・ラボラトリーズ(SK&F、現在のグラクソ・スミスクライン)でジェームス・ブラックらの研究によって合成された。1964年当時、ヒスタミンが胃酸分泌を促進することは知られていたが旧来のヒスタミンの拮抗薬では胃酸分泌を抑制することはできなかった。この研究過程で彼らはヒスタミン受容体にH1とH2の2つのタイプがあることを明らかにした。彼らはH2受容体について何も判っていなかったので、まずヒスタミンの構造を少し変えた薬品を合成し作用を確かめてみた。
最初の進歩はNα-グアニルヒスタミンだった。この薬品はH2受容体を部分的に拮抗した。この延長線でH2受容体の詳しい構造が判り、最初のH2受容体拮抗薬であるブリマミドの合成に至った。ブリマミドはH2受容体に特異的な競合拮抗薬で作用はNαグアニルヒスタミンの100倍であった。ここにH2受容体の存在は確立した。ブリマミドは経口投与した場合の作用が弱かったのでこれを改良したメチアミド(Metiamide)が開発された。ところがメチアミドには腎毒性と顆粒球の抑制作用が明らかになったのでさらに改良し、ついにシメチジンの開発に至った。
薬理作用[編集]
ヒスタミンH2受容体拮抗薬は胃の壁細胞にあるヒスタミンH2受容体を競合的に拮抗する。これにより平時の胃酸の分泌および食物による胃酸の分泌の双方を抑制する。これには2通りのしくみがあると考えられている。ヒスタミンがH2受容体に結合するのを妨げるのと、ガストリンやアセチルコリンの持つ胃酸分泌刺激作用が弱まるということである。
臨床応用[編集]
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎(胃食道逆流症)
- ゾリンジャー・エリスン(Zollinger-Ellison)症候群
- 胸焼け(英: heartburn & acid indigestion)
ヒスタミンH2受容体拮抗薬の例[編集]
- シメチジン(商品名:タガメット、アルサメック錠など)
- 塩酸ラニチジン(商品名:ザンタック、アバロンZ、三共Z胃腸薬など)
- ファモチジン(商品名:ガスター、ガスター10など)
- ニザチジン(商品名:アシノン、アシノンZなど)
- 塩酸ロキサチジンアセタート(商品名:アルタット、アルタットA・イノセアワンブロックなど)
- ラフチジン(商品名:プロテカジン、ストガー)
上記はいずれも日本国内での販売名
副作用[編集]
ヒスタミンH2受容体は人間の場合、胃壁の他、心筋等にも存在する。ヒスタミンH2受容体拮抗薬は心筋の受容体にも影響を与えるため、不整脈等の心臓の異常を起こすことがある。特に心臓病の患者が摂取することは禁忌とされる。ファモチジンを含む市販薬では死亡例も確認されている。
その他、低血圧、下痢、めまい、頭痛、発赤がみられることがある。シメチジンは抗アンドロゲン作用(性欲の低下、インポテンツ)がみられることがあるが中止すると回復する。
参考文献[編集]
- ISBN 4524209182 南江堂 NEW薬理学 改訂第3版(1996年)
- Wikipedia英語版 H₂-receptor antagonistの項
関連項目[編集]
薬理学:医薬品の分類 |
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消化器/代謝(A) |
胃酸中和剤(制酸薬、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬) • 制吐薬 • 瀉下薬 • 止瀉薬/止痢薬 • 抗肥満薬 • 経口血糖降下薬 • ビタミン • ミネラル
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血液、血液生成器官(B) |
抗血栓薬(抗血小板剤、抗凝固薬、血栓溶解薬) • 抗出血(血小板、凝固・線溶系、抗線維素溶解性)
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循環器系(C) |
心臓療法/狭心症治療薬(強心配糖体、抗不整脈薬、強心剤) • 高血圧治療薬 • 利尿薬 • 血管拡張薬 • 交感神経β受容体遮断薬 • カルシウム拮抗剤 • レニン-アンジオテンシン系(ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬) • 脂質降下薬(スタチン、フィブラート、胆汁酸捕捉因子)
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皮膚(D) |
皮膚軟化薬 • 瘢痕形成剤 • 鎮痒薬 • 乾癬治療薬 • 他の皮膚薬
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泌尿生殖器系(G) |
ホルモン避妊薬 • 排卵誘発治療 • SERM • 性ホルモン
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内分泌器(H) |
視床下部脳下垂体ホルモン • 副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド、ミネラルコルチコイド) • 性ホルモン • 甲状腺ホルモン/抗甲状腺薬
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感染(J、P、QI) |
抗菌薬 (抗生物質) • 抗真菌薬 • 抗ウイルス薬 • 抗寄生虫薬(抗原虫薬、駆虫薬) • 外部寄生虫駆除剤 • 静注用免疫グロブリン • ワクチン
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悪性腫瘍(L01-L02) |
抗がん剤(代謝拮抗薬、抗腫瘍性アルキル化薬、紡錘体毒、抗悪性腫瘍薬、トポイソメラーゼ阻害薬)
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免疫系(L03-L04) |
免疫調節薬(免疫賦活薬、免疫抑制剤)
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筋肉、骨、関節(M) |
アナボリックステロイド • 抗炎症薬(NSAIDs) • 抗リウマチ • 副腎皮質ホルモン • 筋弛緩剤 • ビスホスホネート
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脳、神経(N) |
鎮痛剤 • 麻酔剤(一般、局所・静脈) • 食欲低下薬 • ADHD治療 • 中毒医学 • 抗てんかん薬 • アルツハイマー治療 • 抗うつ薬 • 片頭痛治療 • 抗パーキンソン病薬 • 抗精神病薬 • 抗不安薬 • 抑制剤 • エンタクトゲン • エンセオジェン • 陶酔薬 • 幻覚剤(精神展開薬、解離性麻酔薬、デリリアント) • 睡眠導入剤/鎮静薬 • 気分安定薬 • 神経保護 • スマートドラッグ • 神経毒 • 食欲促進 • セレニック • 覚醒剤 • 覚醒促進物質
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呼吸器(R) |
鬱血除去薬 • 気管支拡張薬 • 鎮咳去痰薬 • 抗ヒスタミン薬
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感覚器(S) |
眼科学 • 耳科学
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その他ATC(V) |
解毒剤 • 造影剤 • 放射性薬理学 • 湿潤療法
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- P2-27-3 化学療法前投薬でもアナフィラキシーは起こりうる : 塩酸ラニチジン(ザンタック),リン酸デキサメタゾンナトリウム(デカドロン)によってアナフィラキシーショックを呈した3症例(Group129 婦人科悪性腫瘍・症例3,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 高岡 亜妃,小山 瑠梨子,平尾 明日香,大竹 紀子,北村 幸子,須賀 真美,宮本 和尚,今村 裕子,山田 曜子,星野 達二,北 正人
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 885, 2011-02-01
- NAID 110008510077
- Collagenous colitis を合併した血液透析患者の1例
- 若杉 三奈子,市川 紘将,本間 照 [他],若木 邦彦,本間 則行
- 日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy 43(12), 999-1003, 2010-12-28
- … 整腸剤,塩酸ロペラミド,バンコマイシンなどの内服を行ったが,下痢は慢性再発性に出現を繰り返していた.下痢に伴う低アルブミン血症,浮腫を認めた.それまで服用していたランソプラゾールを塩酸ラニチジンに変更したが,下痢は出現を繰り返し,大腸内視鏡検査を行った.肉眼では異常所見を認めずほぼ正常の粘膜所見であり,横行結腸からの粘膜生検で粘膜表層部上皮直下にエオシン好性で,マッソント …
- NAID 10027725144
- 29-P2-76 HPLC法による脱PTPシートされた塩酸ラニチジンの一般家庭における品質管理(医薬品管理,社会の期待に応える医療薬学を)
- 宮前 文明,山嵜 弘男,小田 正範,河野 卓子,吉井 美智子,小澤 孝一郎
- 日本医療薬学会年会講演要旨集 17, 261, 2007-09-01
- NAID 110006962972
Related Links
- 成分(一般名) : ラニチジン塩酸塩 製品例 : ザンタック錠75、ザンタック錠150 ・・その他(ジェネリック) & 薬価 ... 概説 胃酸の分泌をおさえるお薬です。胃炎や胃潰瘍の治療に用います。 作用 【働き】 胃酸は、本来、胃腸に侵入 ...
- 塩酸ラニチジン 『塩酸ラニチジン』は何の薬? 宣伝でもよく見かけると思います。H2ブロッカーです。ヒスタミン-2型の受容体-拮抗剤のことです。ヒスタミンは胃酸の分泌を促進するので促進させるボタンのようなもの(受容体)を ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
※※ ラニチジン錠75mg「ツルハラ」
組成
組 成
- ラニチジン錠75mg「ツルハラ」は1錠中ラニチジン塩酸塩84mg(ラニチジンとして75mg)および添加物として結晶セルロース、トウモロコシデンプン、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク、カルナウバロウを含有する。
禁忌
本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
・胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、急性胃粘膜病変による)
・下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期
・麻酔前投薬
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、急性胃粘膜病変による)
- 通常、成人には、ラニチジン塩酸塩をラニチジンとして1回150mgを1日2回(朝食後、就寝前)経口投与する。また、1回300mgを1日1回(就寝前)経口投与することもできる。なお、症状により適宜増減する。
上部消化管出血に対しては、通常注射剤で治療を開始し、内服可能となった後、経口投与に切りかえる。
下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期
- 通常、成人には、ラニチジン塩酸塩をラニチジンとして1回75mgを1日2回(朝食後、就寝前)経口投与する。また、1回150mgを1日1回(就寝前)経口投与することもできる。なお、症状により適宜増減する。
麻酔前投薬
- 通常、成人には、ラニチジン塩酸塩をラニチジンとして1回150mgを手術前日就寝前及び手術当日麻酔導入2時間前の2回経口投与する。
- 腎機能低下患者では血中濃度半減期が延長し、血中濃度が増大するので、腎機能の低下に応じて次のような投与量、投与間隔の調節が必要である。
慎重投与
1)腎障害のある患者
- 〔血中濃度が持続するので、投与量を減ずるか投与間隔をあけて使用すること。〕(《用法・用量に関連する使用上の注意》の項参照)
2)肝障害のある患者
- 〔本剤は主として肝臓で代謝されるので、血中濃度が上昇するおそれがある。〕
3)薬物過敏症の既往歴のある患者
4)高齢者
重大な副作用
※ 1.ショック、アナフィラキシーを起こすことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。
2.再生不良性貧血、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少があらわれることがあるので、初期症状として全身倦怠感、脱力、皮下・粘膜下出血、発熱等がみられたら、その時点で血液検査を実施し、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し適切な処置を行うこと。
3.肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止すること。
4.横紋筋融解症:筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止すること。
5.意識障害、痙攣、ミオクローヌス:意識障害、痙攣(強直性等)、ミオクローヌスがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。特に腎機能障害を有する患者においてあらわれやすいので、注意すること。
6.間質性腎炎:間質性腎炎があらわれることがあるので、初期症状として発熱、皮疹、腎機能検査値異常(BUN・クレアチニン上昇等)等が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
※ 7.中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群):中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- ラット、イヌで、ヒスタミン、ペンタガストリン、カルバコール刺激による胃液及び胃酸分泌を抑制する。ラットで幽門結紮、ストレスあるいはアスピリン、インドメタシン、ヒスタミン投与による胃潰瘍の発生やシステアミンによる十二指腸潰瘍の発生を抑制し、また、酢酸潰瘍の治癒を促進する。
これらの作用機序は主として、胃粘膜壁細胞においてH2受容体でのヒスタミンに対する拮抗作用によると考えられている。
有効成分に関する理化学的知見
- ラニチジン塩酸塩は白色〜微黄色の結晶性又は細粒状の粉末である。水に極めて溶けやすく、メタノールに溶けやすく、エタノール(99.5)に溶けにくい。
本品は吸湿性である。本品は光によって徐々に着色する。
融 点:約140℃(分解)
★リンクテーブル★
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- 関
- ranitidine
[★]
- 英
- ranitidine
- 化
- 塩酸ラニチジン ranitidine hydrochloride
- 商
- ザンタック Zantac、ツルデック、ブラウリベラ、ラデン、ラニザック、ラニタック、ラニチザン
-
[★]
- 英
- acid
- 関
- 塩基
ブランステッド-ローリーの定義
ルイスの定義
[★]
- 英
- hydrogen chloride
- 同
- 塩化水素
- 関