出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/05/02 18:46:09」(JST)
ABO式血液型(ABOしき けつえきがた)とは、血液型の分類法の一種。A、B、O、ABの4型に分類する。
血液の種類を表す型ではない。 赤血球の表面には250種以上の表面抗原があるが、A/B型抗原はその代表的な抗原である。 赤血球の表面にA抗原があるとA型、B抗原があるとB型、AとB,両方の抗原があるとAB型、両抗原が無いとO型とする[1]。 逆に血漿中には各抗原に反応する抗体があり、通常A型の血漿中には抗B抗体があり、B型の血漿中には抗A抗体があり、AB型の血漿中には抗A抗体も抗B抗体のどちらも無し、O型の血漿には抗A抗体と抗B抗体両方が存在する[1]。
血漿中の抗体を調べることで血液型を判定することを裏試験ともいう[1]。表面抗原に、それぞれ対応する抗体が反応すると赤血球は凝集してしまう。
最も初期に発見された血液型分類である。1900年にオーストリア・ハンガリーのユダヤ人の医学者カール・ラントシュタイナー(Karl Landsteiner, 1868年 - 1943年)により発見され、翌年の1901年11月14日に論文発表された[2]。
ラントシュタイナーはまず自身の血液型をA型と名付け、残りの血液型をそれぞれB型、C型と名付けた。1902年にアルフレッド・フォン・デカステロとアドリアノ・シュテュルリによって第4の型が追加発表された[3]。さらに、1910年にエミール・フォン・デュンゲルンとルドヴィク・ヒルシュフェルトにより、第4の型にはAB型という名称が与えられ、C型の名称はO型に変更された[4]。なお、C型をO型に変更した理由は、数字の「0」(ゼロ)ではなく、ドイツ語の「ohne」(「 - ない」などの意味)の頭文字である可能性が指摘されている[1]。
A型はA抗原を発現する遺伝子(A型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、B型はB抗原を発現する遺伝子(B型転移酵素をコードする遺伝子)を、AB型は両方の抗原を発現する遺伝子を持っている。A抗原、B抗原はH抗原からそれぞれA型転移酵素、B型転移酵素によって化学的に変換される。
3種の遺伝子の組み合わせによる表現型、ABO式血液型を決定する遺伝子は第9染色体に存在する。H物質発現をコードする遺伝子は第19染色体に位置し、H前駆物質をH物質へ変換させる。この遺伝子が発現しない場合はボンベイ型となる(後述)。
A抗原とB抗原は、持っていないとそれに対する自然抗体が形成されることが多く、この場合、型違い輸血により即時拒絶が起こる。自然抗体がなくとも型違い輸血により1週間程度で新しいIgM抗体が生産されこれが拒絶反応をおこす。そのため、基本的には型違い輸血は行われない。輸血される血液は受血者の血液より少量のため、血漿によって希釈されて抗原抗体反応が起こらなくなる。そのため、かつてはO型は全能供血者、AB型は全能受血者と呼ばれていたが、ABO以外の型物質(Rh因子やMN式血液型など)が存在することもあり現在では緊急時を除いては通常行われない。2010年4月には大阪大学医学部附属病院で治療を受けた60代の患者が同型の赤血球製剤とO型の新鮮凍結血漿の輸血後に死亡する事故が発生している(但し、この患者は搬送当時すでに意識がなかったことから輸血が原因でない可能性もある)[5]。
なお、自然抗体を持っている理由は、細菌やウイルスが唾液や性的接触などにより人間間で感染するように、人間の細胞や細胞の断片も人間間を移動するからであり、移動した断片はマクロファージによりファゴサイトーシスされ、これがT細胞に提示され抗体が作られる。主にIgMが作られるが、IgG抗体も作られることもある。
これらの抗原が最初に血液から発見されたために「血液型」という名称を冠するもので、血液以外にも唾液・精液など、すべての体液にも存在する。ただし1/4の人は抗原が出ないもしくは微量(Se酵素欠損による非分泌型→Lewis式血液型参照)のため、この場合は検出が難しい。
日本人のABO式血液型の分布は大まかに、A型が40%、B型が20%、O型が30%、AB型が10%である。ただし、ABO式血液型の分布は母集団(地域や人種)によって差が大きく、アメリカ大陸の原住民であるインディアン及びインディオの場合は共に70%以上がO型で、部族によっては100%を記録していた。また、世界的にはA型はヨーロッパ、B型はアジア、O型はアフリカに多く分布している[6]。
稀血(まれけつ)などとも呼ばれる亜種がある。検査については亜型検査を参照。
Rh-型も稀血扱いされる事があるが、その存在率はABO式の稀血よりずっと高い。また、判別方法として異なるので重複(Aint-やシスAB-型など)することがある。シスAB-型は非常に少ない。以下には簡潔な説明を記すが、実際はより複雑である。
亜型 | 抗A血清との反応 | 抗B血清との反応 | 血清中の抗A | 血清中の抗B | 型物質 | A型転移酵素 | 適切な追加検査 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
A1 | + | 0 | 0 | + | A、H | あり | なし |
A2 | + | 0 | +/0 | + | A、H | あり | Hレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、A血球との間接抗グロブリン試験 |
A3 | mf(部分凝集) | 0 | 0 | + | A、H | あり | Hレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離 |
Ax | +/0 | 0 | + | + | H | なし | Hレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、A血球との間接抗グロブリン試験、家系調査 |
Am | 0 | 0 | 0 | + | A、H | あり | Hレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、吸着解離試験、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、家系調査 |
Ael | 0 | 0 | + | + | H | なし | Hレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、吸着解離試験、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、家系調査 |
基本的に血清中に抗Aがあると、血清を使った型物質測定はできない。
B型はあまり研究が進んでいないが、A型同様のバリエーションがあると思われる。
亜型 | 抗A血清との反応 | 抗B血清との反応 | 血清中の抗A | 血清中の抗B | 型物質 | B型転移酵素 | 適切な追加検査 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
B | 0 | + | + | 0 | B、H | あり | なし |
B3 | 0 | mf(部分凝集) | + | 0 | B、H | あり | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、血清・唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離 |
Bx | 0 | +/0 | + | + | H | なし | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
Bm | 0 | 0 | + | 0 | B、H | あり | Hレクチンとの反応、吸着解離試験、血清・唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
Bel | 0 | 0 | + | + | H | なし | Hレクチンとの反応、吸着解離試験、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
基本的に血清中に抗Bがあると、血清を使った型物質測定はできない。
他にも、上記のA型とB型が結合したA1B型やA1Bx型など多くの亜種がある。これは、A型・B型の亜種がくっついたものである。
遺伝子型 | 表現型 | 抗A血清との反応 | 抗B血清との反応 | 血清中の抗A | 血清中の抗B | 型物質 | 転移酵素 | 適切な追加検査 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AB/O | A2B3 | + | mf(部分凝集) | +/0 | + | A、(B)、H | なし | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離 |
AB/A | A1B3 | + | mf(部分凝集) | 0 | + | A、(B)、H | A | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離 |
AB/B | A2B | + | + | +/0 | 0 | A、B、H | B | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
H | Se | 表記 | 抗A血清との反応 | 抗B血清との反応 | 抗H血清との反応 | 唾液中のA型物質 | 唾液中のB型物質 | 唾液中のH型物質 | 血清中抗体 | 適切な追加検査 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
不活性 | 非分泌型 | Oh | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 抗H | Hレクチンとの反応、吸着解離試験、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
活性低下 | 非分泌型 | Ah | +/0 | 0 | +/0 | 0 | 0 | 0 | 抗H | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
活性低下 | 非分泌型 | Bh | 0 | +/0 | +/0 | 0 | 0 | 0 | 抗H | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
活性低下 | 分泌型 | Om | 0 | 0 | +/0 | 0 | 0 | + | 抗HI | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
活性低下 | 分泌型 | Am | +/0 | 0 | +/0 | + | 0 | + | 抗HI | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
活性低下 | 分泌型 | Bm | 0 | +/0 | +/0 | 0 | + | + | 抗HI | Hレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定 |
非分泌型は37℃反応性の抗Hを持つので同型の輸血を行うが、分泌型なら低温反応性の抗HIなので通常の血液製剤を使用できる。
献血などに訪れた人が特殊な血液型であることが判明した場合、赤十字社のコンピュータに情報が登録され、血液はマイナス80度以下の超低温で冷凍され長期保存(現在の基準では10年)される。特殊血液型の人が輸血などを必要とする状況になった場合には、この冷凍血液を解凍して使用するか、登録している同じ型の他の人への緊急献血協力を依頼(電話や速達便などで)、または日本国外の赤十字社へストック要請をすることになる(逆に、日本国外から要請があれば同様に冷凍パックを送る)。「Rhマイナス友の会」という登録グループが存在する。
試薬の抗A血清と抗B血清とを用いて、採取した赤血球と反応させて凝集の有無により判定する方法(おもて検査)で仮に判定される(抗H血清も使用することがある。抗H血清を使用するとボンベイ型の判定も出せる)。どちらかの血清で凝集が見られた場合はその血液型、どちらとも凝集が見られた場合はAB型、凝集が見られない場合はO型と判定される。これに加え、血液の血清を用いて判定する方法(うら検査)で判定して結果が一致した場合に、血液型が確定される。誕生時には、うら検査で判定するのに必要な血液型決定因子が不足しているので判定できず、おもて検査では、凝集が起きにくいタイプの場合や凝集の有無を間違って、誤って仮判定されるケースがある。そのため、成長してから正しい血液型が確定された場合に、ABO型の血液型が変わったかのように見える場合がある。なお、おもて検査とうら検査の判定が一致しなかった場合は再検査する。それでも一致しなかった場合は稀血の可能性も考慮する。おもて検査とうら検査には優劣がないため、どちらかの判定を優先して血液型を決定するということはしない。 血液ではなく、遺伝子から判定するという手法もあり、血清による判定に比べ、誤判定が生じにくいことが特徴である。
反応強度 | スコア | 特徴と外観 | 背景の色調 |
---|---|---|---|
4+ | 12 | 一個の大きな凝集塊 | 透明 |
3+ | 10 | 数個の大きな凝集塊 | 透明 |
2+ | 8 | 中程度の凝集塊 | 透明 |
1+ | 5 | 小さな凝集塊 | 赤く濁る |
w+ | 2 | ごくわずかな微小凝集 | 赤く濁る |
0 | 0 | 凝集も溶血もみられない | 赤く濁る |
mf | 部分凝集 | 赤く濁る | |
H(PH) | 完全溶血(部分溶血) | 赤く透明(濁る) |
また、亜型検査は、輸血検査の中でも血液型を確定するのに非常に重要である。
赤血球沈渣(6回洗浄済)と生食を1容量:1容量混和。
56℃で10分加温後、900 - 1000G(3400rpm)で2分遠心し、上清を解離液とする。
!目的 | 方法 | 解離液(性状) | 反応温度 | 反応時間 | 解離液(色) | 解離後血球の利用 | 試薬 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
解離 | 熱解離 | IgM | 50 - 56 | 5 - 10分 | 淡赤色 | 不可 | 生食 |
主にAm、Ax、Ael、Bm、Bx、Belなどの亜型に対し、抗原の存在を証明する吸着解離試験で実施。処理血球の検査はできない。
赤血球沈渣(3回洗浄済)と生食、DT液を1容量:1容量:2容量混和。
37℃で5分反応後、900 - 1000G(3400rpm)で5分遠心し、上清を解離液とする。
赤血球沈渣(6回洗浄済)と生食を1:9混和。
0.5%ジキトニン液0.5mlを加え1分転倒混和し、900 - 1000G(3400rpm)で5分遠心。赤血球残渣が白くなるまで5回以上洗浄(2分遠心)。
赤血球残渣に0.1Mグリシン塩酸緩衝液2.0mlを混和し1分転倒混和。
900 - 1000Gで5分遠心し、解離液に0.8Mリン酸緩衝液0.2mlを加え、さらに2分遠心し、上清を解離液とする。
目的方法!!解離液(性状)反応温度反応時間解離液(色)解離後血球の利用試薬
解離 | エーテル解離 | IgG | 37 | 30 - 40分 | 暗赤色 | 不可 | エチルエーテル |
解離 | DT解離 | IgG | 37 | 5分 | 暗赤色 | 不可 | ジクロロメタン・ジクロロプロパン |
解離 | ジキトニン酸解離 | IgG | 室温 | 1分 | 無色 | 不可 | ジキトニン液、グリシン塩酸、リン酸緩衝液 |
主に直接クームス陽性血球から、抗体が含まれる解離液を入手するために実施。処理血球の検査はできない。酸解離では酵素法で検出するはずの抗体は検出できない。
0.1Mグリシン塩酸緩衝液とEDTA溶液を20容量:5容量混和。
赤血球沈渣(6回洗浄済)とグリシン塩酸/EDTA液を10容量:20容量混和。
室温で2 - 3分反応後、1Mトリス/NaClを1容量混和。
900 - 1000G(3400rpm)で2分遠心し、上清を解離液とする。処理血球は生食で4回洗浄し使用。
目的 | 方法 | 解離液(性状) | 反応温度 | 反応時間 | 解離液(色) | 解離後血球の利用 | 試薬 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
解離 | グリシン塩酸・EDTA解離 | IgG | 室温 | 2 - 3分 | 無色 | 可 | グリシン塩酸・EDTA、1Mトリス/NaCl |
抗体解離液が得られ、処理血球の検査も可能。
赤血球沈渣(6回洗浄済)と20%クロロキン2リン酸を1:4混和。
室温で30分反応後、3回以上洗浄し血液型検査に用いる。
感作抗体だけでなく、Bg抗原を破壊できる。
目的 | 方法 | 解離液(性状) | 反応温度 | 反応時間 | 解離液(色) | 解離後血球の利用 | 試薬 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
解離 | クロロキン解離 | 解離液なし | 37 | 30分 | 解離液なし | 可 | クロロキン2リン酸 |
血液型検査を目的とした抗体解離法(抗体解離液は得られない)
赤血球沈渣とZZAPを1:2で混和し37℃30分間反応。生食で3回洗浄。
目的 | 方法 | 解離液(性状) | 反応温度 | 反応時間 | 解離液(色) | 解離後血球の利用 | 試薬 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
解離 | ZZAP処理 | 解離液なし | 室温 | 30分 | 解離液なし | 可 | DTT・フィシン |
自己抗体があると疑われた際、行われる自己抗体吸着のための抗体解離法
自己血球:自己血清:PEG = 1:1:2で37℃15分間反応させ、900 - 1000G(3400rpm)で5分遠心し、上清を吸収液とする。
目的 | 方法 | 解離液(性状) | 反応温度 | 反応時間 | 解離液(色) | 解離後血球の利用 | 試薬 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
吸収 | PEG吸収 | 解離液なし | 37 | 解離液なし | 解離液なし | 解離液なし | ポリエチレングリコール |
自己抗体があると疑われた際に直接、自己抗体を吸着させる方法。ZZAPを使うより簡単だが、自己抗体以外の同種抗体を吸着させてしまうこともある。
また、寒冷凝集の場合は試薬は要らず、全血で4℃に1時間保冷すれば自己吸着できる。
感染症などによってTなどの内在性抗原が露出した血球は、どんな血清・血漿とも反応するようになる。これを汎血球凝集といい、血漿成分を含む製剤の輸血は避ける。
種類 | T | Tk | Th | Tx | Tn | Cad | HEMPAS | 正常 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
原因 | 感染症 | 感染症 | 感染症・血液疾患 | 感染症 | 血液疾患 | 遺伝 | 遺伝 | |
発現期間 | 一過性 | 一過性 | 一過性・長期 | 一過性 | 長期 | 永久 | 永久 | |
Arachis hypogaea(ラッカセイ) | + | +(酵素処理で強化) | +(酵素処理で減弱) | + | 0 | 0 | 0 | 0 |
Salvia sclarea | 0 | 0 | 0 | 0 | + | 0 | 0 | 0 |
Salvia horminum | 0 | 0 | 0 | 0 | + | + | 0 | 0 |
Glycine soja(ツルマメ) | + | 0 | 0 | 0 | + | +/0 | + | 0 |
Vicia cretica | + | 0 | + | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
Griffonia simplifolia | 0 | + | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
Dolichos biflorus | 0 | 0 | 0 | 0 | + | + | 0 | 0 |
ポリブレン | 0 | + | + | + | +/0 | + | + | + |
※あくまでも、メンデルの法則に基づいた、単純化した理論による血液型および確率である。現実には亜型等による例外が存在する。(例・シスAB型とO型によるAB型やO型の子供など)
ABO式血液型は、人の第9番染色体に存在する複対立遺伝子によって決定する。通常、存在する遺伝子の遺伝子型はA、B、Oの3種類であって、AとBとはOに対して優性に遺伝し、AとBとの間には優性劣性の差異は存在しない。すなわち、2本の第9番染色体のうち少なくとも一方にA遺伝子が存在しいずれにもB遺伝子が存在しなければ表現型はA型、少なくとも一方にB遺伝子が存在しいずれにもA遺伝子が存在しなければ表現型はB型、A遺伝子・B遺伝子の双方が存在すれば表現型はAB型、2本の染色体の双方にO遺伝子が含まれる場合は劣性遺伝するO型が表現型となる。
下の表のように、表現型がA型とB型の場合は複数の遺伝子型が存在する。
A型 | B型 | O型 | AB型 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
AA | AO | BB | BO | ||||
A型 | AA | A型 (AA) 100% | A型 100% (AA 50%、AO 50%) |
AB型 100% | A型 (AO) 50%、 AB型 50% |
A型 (AO) 100% | A型 (AA) 50%、 AB型 50% |
AO | A型 100% (AA 50%、AO 50%) |
A型 75% (AA 25%、AO 50%)、 |
B型 (BO) 50%、 AB型 50% |
A型 (AO) 25%、 O型 25%、 |
A型 (AO) 50%、 O型 50% |
A型 50% (AA 25%、AO 25%)、 |
|
B型 | BB | AB型 100% | B型 (BO) 50%、 AB型 50% |
B型 (BB) 100% | B型 100% (BB 50%、BO 50%) |
B型 (BO) 100% | B型 (BB) 50%、 AB型 50% |
BO | A型 (AO) 50%、 AB型 50% |
A型 (AO) 25%、 O型 25%、 |
B型 100% (BB 50%、BO 50%) |
B型 75% (BB 25%、BO 50%)、 |
B型 (BO) 50%、 O型 50% |
B型 50% (BB 25%、BO 25%)、 |
|
O型 | A型 (AO) 100% | A型 (AO) 50%、 O型 50% |
B型 (BO) 100% | B型 (BO) 50%、 O型 50% |
O型 100% | A型 (AO) 50%、 B型 (BO) 50% |
|
AB型 | A型 (AA) 50%、 AB型 50% |
A型 50% (AA 25%、AO 25%)、 |
B型 (BB) 50%、 AB型 50% |
B型 50% (BB 25%、BO 25%)、 |
A型 (AO) 50%、 B型 (BO) 50% |
A型 (AA) 25%、 B型 (BB) 25%、 |
日本、韓国、台湾など一部の国では血液型性格分類が存在するが、血液型と性格の関連性は科学的に証明されていない[7] 。だがテレビや雑誌の占いなどの影響で、血液型性格分類を信じる人がいまだ一定数存在している。
血液型性格分類に科学的根拠がないとされるにもかかわらず当たっているように感じる理由として、以下の心理現象が挙げられている。
血液型によって人の性格を判断し、相手を不快や不安な状態にさせる言動のことはブラッドタイプ・ハラスメント(通称ブラハラ)と呼ばれ、近年問題になっている[11]。厚生労働省は「血液型は職務能力や適性とは全く関係ない」としており、血液型を採用面接などで尋ねないよう企業に求めている[11]。
1980年代はABO式血液型と病気関係の仮説について持てはやされていたが、ヒトゲノム計画が終りつつあった2000年に、科学雑誌『Nature』にて総説が掲載され、その内容は「胃腸管に関するいくつかの形質に弱い相関が確認できるが、血液型と疾患の相関については再現性よく示されたものは無い」というものであった[12]。ただし、最近ではABO式血液型で病気や妊娠のリスクが変わるという報告もある[13][14]。
ただし、上述の病気や細菌感染症で変わることは非常に稀である。現在の知見では病気やその治療以外の原因で血液型が変化することは基本的にありえないので、病気や治療などの原因がないにも関わらず献血等で血液検査を行ったときに血液型が異なっていた場合は、本人や親の単純な思い込みや新生児での血液検査が間違っていたと考えた方が良い。
2007年4月にA型、B型、AB型の赤血球をO型に変えることのできる酵素の開発に米国のハーバード大学などの国際研究チームが成功した。O型の血液はボンベイ型を除く全ての血液型の人に輸血が可能であるため、この技術が確立すれば、輸血の際に血液型を考慮する必要がほとんどなくなることとなる[15]。
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