粥腫
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2021/09/04 19:17:30」(JST)
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「アテローマ」は上皮組織に発生する病変について説明しているこの項目へ転送されています。血管内に発生する粥腫については「アテローム」をご覧ください。
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粉瘤腫(ふんりゅうしゅ)、粉瘤とは、本来ならば新陳代謝によって表皮から剥がれ落ちる垢などの老廃物が、皮膚内部(真皮)や皮下に溜まることによってできる良性の嚢胞性病変の総称である。なお、国内ではアテローマ(atheroma)、アテロームの呼称も一般的だが、英語では正式には表皮嚢胞(epidermal cyst)あるいは類表皮嚢胞(epidermoid cyst)と呼ばれる。atheromaは「-oma」という接尾語を持つが、新生物とは考えられていない。
概要
粉瘤腫の組織像
角質層が垢となって腫内に溜まっている
体表の上皮組織すなわち表皮の細胞は基底層で細胞分裂し、表層に押し出されたものは徐々に細胞質内にケラチンを貯留し(=角化)、最後にはほとんどケラチンのみから成る扁平な死細胞が層板状に積み重なったもの、すなわち角質となり、垢として剥がれる。しかし、本来は上皮組織が存在しない皮膚内部に表皮と同様の重層扁平上皮(英語版)が出現すると、周りの結合組織から遠い側=組織の中心部にこの角質を生じる。皮膚表面に開口部(「臍」と呼ばれる)を持つことが多い。ただし、この開口部は固化した老廃物などによってふさがれており、老廃物は体外へ排泄されず、重層扁平上皮が薄く老廃物を取り囲む。よって、手術によって摘出した粉瘤腫は老廃物を納めた袋状を呈する。新陳代謝に伴い腫大する。
原因
多くの粉瘤腫は、毛根を形成する組織の1つ、毛漏斗(infundibular portion of the hair follicle)に由来するという説が有力である。同じ場所への刺激などにより、毛包全体が毛漏斗の細胞に化生してしまったものと言われている。この立場からはこの病変を毛漏斗嚢胞(infundibular cyst)と呼ぶ。
皮膚に外傷を負った際に、表皮や皮膚付属器の基底細胞が真皮内に封入されて生じる場合もあり、これを外傷性粉瘤あるいは表皮封入嚢胞と呼ぶ。この場合、できる場所は手のひらや足の裏が挙げられる[1]。
症状
初期の状態では皮膚の下にしこりが見られるにとどまり、皮膚表面上は症状が現れないことが多いため、自覚することは少ないが、経過すると次第に肥大化する。この時点で、老廃物を無理やり皮膚外へ搾り出す行為は、感染症を引き起こす恐れがあるため、望ましくない。腫瘍内の老廃物に細菌が感染した場合は皮膚下で炎症を起こすために痛みを伴うようになり、化膿する場合もある。
また、内側に向かって破裂し、体内に膿が入った場合、場所によっては腹膜炎や胸膜炎、リンパ管炎を引き起こし、最悪の場合は死に至るケースもあるため不用意につぶすのは危険が伴う。
しかしその進行度合には個人差があり、肥大化が極めて緩徐で何十年経っても外見的にほぼ変化がない場合や、肥大化が進行しても全く炎症を起こさないこともある。そのため、しこりが確認できてから10-20年近く経って、炎症が発生し痛みを生ずるようになった、あるいはしこりが何十センチの大きさになった、などから初めて医療機関を受診するといった場合も少なくない。
腫瘤(こぶ)ができやすい場所としては顔や首、背中、耳の裏があるものの、皮膚ならどこでもできる可能性があり、女性の性器(小陰唇)生じる例[2]や、多発する場合もある[3]。
粉瘤に似ている病気には皮様嚢腫や側頸嚢腫、正中頸嚢腫、耳前瘻孔などがあり、腫瘍がどこの皮膚に現れるかで鑑別すべき病気が異なる[4]。
また、数カ月で急に大きくなった粉瘤の中から基底細胞癌が発見された例もある[5]。
治療法
受診に適しているのは皮膚科、形成外科、外科等。
粉瘤自体は良性の疾患であり、もっぱら感染時の抗菌薬投与による炎症の抑止に重点が置かれ、特に緊急性もないため生活上支障を来たさなければ切除の是非は本人の意志に委ねられることが多い。体質上できやすい人もおり、炎症が起きない限り気づかず放置している患者も多い一方で、再発の煩わしさを避けるため進んで切除を求める患者もいる。
根本的解決には、局所麻酔を施しメスで切開して袋ごと切除する手術が行われるのが一般的である。腫瘤が小さい場合は、円筒状メスや電気メスなどで数mmほどの穴を開口し、溜まった老廃物を圧迫することで外に掻き出し袋を取り出す、くりぬき法(へそ抜き法)と呼ばれる施術を行うことがある。低侵襲で施術時間が短く、切開手術に比べて完治後の痕が残りにくいが、完治までの時間は長くなることや、足の裏には適さないといった欠点がある[6]。袋の除去が完全であれば、ほぼ再発しない。
すでに感染症を起こしている場合には、局所麻酔または全身麻酔を施しメスで切開を行い、袋の中の老廃物を排出し洗浄する処置や、抗菌薬の投薬等を行う(一方のみの場合や、併用する場合もある)。患部の炎症が落ち着いた後に袋の切除が試みられる。
出典
- ^ 粉瘤の症状・原因・治療 - MEDLEY(メドレー)病気事典
- ^ 皮膚のどこにでもできる「粉瘤」、こんなところにも - 海外の最新医療情報を届けるMEDLEYニュース
- ^ 粉瘤の症状・原因・治療 - MEDLEY(メドレー)病気事典
- ^ 大きなこぶができる、「粉瘤(アテローム)」と似ている病気とは?(鑑別するべき病気) - MEDLEY(メドレー)
- ^ Liau JL, Altamura D, Ratynska M, Verdolini R (2015). “Basal cell carcinoma arising from an epidermal cyst: when a cyst is not a cyst.”. Case Rep Dermatol 7 (1): 75-8. doi:10.1159/000381393. PMC PMC4448066. PMID 26034477. http://www.karger.com/Article/FullText/381393.
- ^ くりぬき法、ヘソ抜き法とは?粉瘤(アテローム)の手術治療について解説 - MEDLEY(メドレー)
関連項目
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- 1. 皮膚の良性病変の概要overview of benign lesions of the skin [show details]
…daily for several weeks. Recurrence is uncommon . Epidermoid cysts, also called epidermal cysts, epidermal inclusion cysts, or, improperly, "sebaceous cysts," are the most common cutaneous cysts. They can …
- 2. 皮膚科で行う処置や軽微な手術minor dermatologic procedures [show details]
…several approaches for removal of epidermoid cysts, including conventional incision technique, milia excision technique, punch technique, and elliptical excision. Epidermoid cysts are ideally removed when noninflamed …
- 3. 外陰病変:赤色病変の鑑別診断vulvar lesions differential diagnosis of red lesions [show details]
…one single base. An epidermal/epidermoid cyst (also called sebaceous cyst) is a keratin-filled, subcutaneous cyst originating from a hair follicle. Epidermoid cysts are the most common cysts on the …
- 4. 新生児や乳児の皮膚結節skin nodules in newborns and infants [show details]
…branchial cleft cysts are found at the head of the clavicles. Epidermoid cysts, also called epidermal inclusion cysts or epidermal cysts, result when epidermal cells located within the dermis proliferate …
- 5. 皮膚疾患の診断法approach to the clinical dermatologic diagnosis [show details]
…benign tumors, contact dermatitis, seborrheic keratosis, viral warts, psoriasis, rosacea, and epidermoid cyst . The examination of patients with moderately to highly pigmented skin (Fitzpatrick skin types…
Japanese Journal
- 粉瘤に対する処置 (特集 皮膚科処置 基本の「キ」)
- 当初粉瘤が疑われたMycobacteroides abscessus subsp. massiliense皮膚感染症の1例 (特集 抗酸菌感染症)
- 宮﨑 駿,帆足 俊彦,田中 真百合,岩井 麻里子,水野 真希,山﨑 香里,山田 麻以,井渕 善聖,安齋 眞一,船坂 陽子,佐伯 秀久
- 皮膚科の臨床 63(3), 365-368, 2021-03
- NAID 40022524081
Related Links
- 粉瘤(ふんりゅう)とは、何らかの理由により皮膚に袋状の構造物ができてしまい、袋の中に脱落した角質や皮脂がたまって徐々に大きくなってしまったものです。良性の皮膚腫瘍(ひふしゅよう)の一種であり、アテローム、表皮嚢腫(のうしゅ)とも呼ばれ...
- アテローム(粉瘤・ふんりゅう、アテローマ)とは、一般的に“しぼうのかたまり”と呼ばれることがありますが、実は本当の脂肪の塊ではありません。皮膚の下に袋状の構造物ができ、本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)と皮膚の脂(皮脂)が、剥げ落ちずに袋の中にたまってしまって ...
- 粉瘤:皮膚下に袋状構造物が生成され、その袋の中に本来は皮膚から剥がれ落ちるべきあかや皮脂がたまってしまうことでできた腫瘍の総称。粉瘤は一般的に「しぼうのかたまり」と呼ばれることもあるが、実際には脂肪の塊で…
Related Pictures
★リンクテーブル★
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- 32歳の男性。左大腿の腫瘤を主訴に来院した。3か月前に径6cmの左大腿の腫瘤に気付き様子をみていたところ、増大して径10cmとなったため受診した。これまでの健診で異常は指摘されていない。意識は清明。身長 172cm、体重 78kg。体温 36.3℃。脈拍 72/分、整。血圧 126/78mmHg。胸腹部に異常を認めない。左大腿近位内側に弾性硬の腫瘤を触知するが、発赤、腫脹および圧痛はない。皮膚との可動性は良好だが、深部との可動性は不良である。血液生化学所見に異常を認めない。左大腿近位MRIのT1強調像(別冊No. 24A)とT2強調像(別冊No. 24B)とを別に示す。
- 最も可能性が高いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112A053]←[国試_112]→[112A055]
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- 68歳の男性。手背の結節を主訴に来院した。3週間前に右手背の3mm大の皮疹に気付いた。皮疹が最近2週間で急速に増大してきたため受診した。右手背に径12mmの褐色調の腫瘤を認め、中央に角栓を伴う。波動はなく弾性硬に触知する。腫瘤の部分生検では、中央が陥凹して角質が充満し、有棘細胞の腫瘍性増殖を認めた。腫瘤は生検1か月後にピーク時の25%以下に縮小した。右手背の写真(別冊No.4A)及び生検組織のH-E染色標本(別冊No.4B)を別に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113D019]←[国試_113]→[113D021]
[★]
- 45歳の男性。3年前から自覚している頚部の腫瘤が徐々に増大してきたため来院した。頚部の写真と頚部単純CTとを以下に示す。考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102A044]←[国試_102]→[102A046]
[★]
- 英
- atheromas, atheroma
- 同
- アテローム、粉瘤
- 関
- 粥状硬化症
- calcificationの引き金となる
- the calcification is virtually inevitable in the atheromas of advanced atherosclerosis (BPT.26)