出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/11/25 16:34:45」(JST)
この項目では、生物の歯について記述しています。その他の用法については「歯 (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
歯 | |
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成年男性の歯
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内側からのCG画像
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歯(は、英: tooth)は、口腔内にある咀嚼するための一番目の器官。人体でもっとも硬く、遺体ではその治療状況によって人物の特定の重要な手掛かりとなる。人工歯と区別する意味で天然歯と言うこともある。多くの種類の構造を持ち、それぞれが異なる目的を果たす。歯学では、過去には歯牙(しが)と言ったが、現在は使わない傾向にある。
また、それに似たものを歯ということがある。例えば歯車、鋸歯など。
歯の部位を示すために、歯の内側を舌側、口蓋側、外側を唇側、頬側、正中に近い方を近心、反対側を遠心、上端[1]を切縁、咬合面という。
多くの高等動物が持つ。人間は乳歯と永久歯の二組を持つが(二生歯性)、ネズミ目のように一組の歯が伸び続ける動物もいれば(一生歯性)、サメのように、二週間に一組ずつ新しい歯が作られていく動物もいる。化石化した哺乳類においてもっとも特徴的な部位であり、古生物学者達は化石の種類や関係を鑑別するのにしばしば歯を使う。 歯は摂食の際の重要な構造であり、その形は餌のタイプと強く結びついている。
目次
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動物一般における歯は、口周辺、あるいは内部にある構造で、小さくて硬く、その表面に突き出ていて、その動物の摂食の際に役立つと考えられるものである。細長いものは棘などと言われ、歯として扱わない。脊椎動物以外で歯と言われる部位を持つ例としては、多毛類、ヤムシ類などがある。
また、顎を持つ動物では、その顎の硬化部分にギザギザした突起がある場合、これを歯という例もある。クモ類や昆虫などに例がある。
その他、軟体動物では舌状の構造の上に歯が並ぶ歯舌を持っている。
「牙」も参照
脊椎動物では、歯を持つものは数多い。人間の歯は顎の骨に強く固定されているが、両者の結びつきはそれほど古いことではない。このように強く結びついているのは、ほぼほ乳類の特徴である。
サメ類においては歯は何列にも並んでおり、欠けるとすぐさま次の列から補充される。これはほぼそのままに皮膚に繋がっており、鱗から歯が進化したことが伺える。このような歯は皮膚に軽く埋もれているだけで、たやすく剥がれる。また、そのためにこのような歯は噛む動作だけでは噛みつぶしたり切り裂いたりという用途には使いがたい。この歯を持って餌に引っかかり、全身の運動で食いちぎるようにする、あるいは丸飲みにするのが普通である。一部の動物(鳥・亀など)では口の縁が硬化して嘴を形成し、歯を失っている。
は虫類の一部で歯根を持ち、よりしっかりと固定された歯を見ることが出来るが、は虫類の歯は単一の形態しか持っていない。歯に多形を生じるのもほ乳類の特徴である。しかしながら、このような強固な歯を持つ代償として、ほ乳類の大部分のものは、永久歯を失うと再度歯が生えることがない。例外としてネズミ目やウサギ目は一組の歯が生涯伸び続ける。
以下、原則として人間の歯について述べる。
歯 |
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A-歯冠 |
1-エナメル質 2-象牙質 3-歯髄 4-歯肉 |
B-歯根 |
5-セメント質 6-骨 7-血管 8-神経 |
また、歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質を歯周組織という[4]。
詳細は「歯の発生」を参照
エナメル器の辺縁部(内エナメル上皮・外エナメル上皮の移行部)の上皮からヘルトウィッヒ上皮鞘が形成される。ヘルトウィッヒ上皮鞘は根尖方向へと進み象牙質形成を促し、歯根を形成する[5]。
ある程度歯根の象牙質が作られた頃、ヘルトウィッヒ上皮鞘が分断される。その隙間から歯小嚢の細胞が移動しセメント芽細胞となりセメント質を形成していく。分断されたヘルトウィッヒ上皮鞘は歯小嚢から分化した歯周靱帯の中に残りマラッセの上皮遺残(残存上皮)となる。
萌出時にはまだ歯根は未完成であり、これが完成するのは萌出後しばらく経過してからである。また、萌出時にはこのときにはすでにエナメル芽細胞は存在しないが、象牙芽細胞はかつて歯乳頭であった歯髄の中に存在し、象牙質を作り続けている。
人間の子供の頃にある歯は合わせて20本であり乳歯(脱落歯、第一生歯)と呼ぶ。前方から順に乳中切歯、乳側切歯、乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯と呼ばれる。乳歯は生後6~8ヶ月ごろより多くの場合は下顎の前歯から生えてくる。3歳頃には全て生えそろう事が多い。乳歯は永久歯と比べてエナメル質と象牙質の厚みが薄く柔らかい。全体的に歯は小さく、青白や乳白色を示す。石灰化度が低いため、う蝕になりやすい。また、乳歯には骨髄や臍帯血に比べて高密度で幹細胞が含まれており、近親者へ移植できる可能性もあることから、骨などの再生の実用化に向けた研究が進められている。
6歳頃から永久歯が生え始める。人間の永久歯は大きく切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯の4種類に分ける事が出来る。現代人の歯は上下合わせて28本。親知らずを含めると32本である。切歯は中切歯、側切歯の2種類上下計8本ある。犬歯は上下計4本。臼歯は計20本存在し、小臼歯(第1小臼歯、第2小臼歯)と大臼歯(第1大臼歯、第2大臼歯、第3大臼歯)に分けられる。乳歯の脱落後に生えてくる、中切歯~第二小臼歯までを代生歯、第二生歯とよび、乳歯の存在しない大臼歯を加生歯と呼ぶ。まず、第1大臼歯(6歳臼歯とも呼ばれる)から生え始め、その後徐々に生え替わっていく。大体13歳頃には前歯から第2大臼歯までの28本が生えそろっている。第3大臼歯は生えてくるのが遅く、また、生えてこない事もあり「親知らず」(知歯/智歯)ともよばれる。
永久歯はきちんとケアをすれば死ぬまで使うことができる。また、高齢者への調査で、歯が多く存続しているほど活動的である事がわかっている。
歯の異常としては以下の物が知られている。
成長線とは、肉眼または顕微鏡学的に歯の表面に見える線状痕である。主に、歯の形成の良し悪し(例えば石灰化)で線状になることが多い。また、歯の種類や年齢によりできる成長線も違う。
人間にとって歯の最も身近な利用方法は、食事である。食物を口中で細かく噛み砕いてから飲み下すことで、消化の助けを行う。また、そのままでは飲み込めない食物も細かく噛んで、喉の直径よりも小さくすることで摂取できるようになる。
他の利用方法として、かつての人類は毛皮などをなめす際には歯で噛んで柔らかくしていた。現在でも、伝統芸能などではこの方法で毛皮をなめす人が存在する。また、裁縫では糸を切るときに鋭い犬歯を用いたり、伸びた爪をかみ切る利用方法もある。ただし、爪を噛むのは文化によっては行儀が悪いとされることもある。
また変わったところでは、歯はかなり堅く、さらに人間の顎の力もかなりのものであるため、腕力などが弱い女性に対しては護身術として「噛みつき」が奨励されることもある。
道具を用いない動物、特に肉食動物にとって、歯は食事以外にも狩りのための重要な道具となる。鋭く発達した歯は食らいつくことで獲物を傷付け、時に失血死にさえ追いやることが可能である。サーベルタイガーなどの異常に発達した歯は、獲物を失血死させることを目的とした物である。
牙と呼ばれるほどに発達した歯は雄の強さの象徴ともなり、牙の大きさを強弱を決める指標とする種も珍しくない。
また、護身の道具ともなりうる。例として、一部の鹿では角ではなく牙を発達させた種類が存在し、護身や雄同士の争いに利用している。
蛇の仲間のうち、毒を持つものは歯で噛みつくことによって敵に毒を注入する。
かつての人類は、狩りで捕らえたマンモスなど大型動物の歯を槍や鏃、斧などに加工して利用していた。また、鋭い歯は加工しなくてもそのままナイフとして用いられるケースもあったようである。
現在では、象牙などが工芸品に利用されているが、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)により取引が現在中止されている。
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