伝染性紅斑
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伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)とは、ヒトパルボウイルスB19による感染症である。リンゴ病という通称がよく知られている。
目次
- 1 原因
- 2 歴史
- 3 症状
- 4 鑑別診断
- 5 診断
- 6 合併症
- 6.1 一過性骨髄無形成発作
- 6.2 持続性感染
- 6.3 胎児水腫
- 7 治療・予防
- 8 脚注
- 9 関連項目
原因
ヒトパルボウイルスB19の初感染による(ウイルスについての詳細はパルボウイルスを参照のこと)。
感染経路は経気道的な飛沫感染である。ただし、ウイルスが排泄されるのは(免疫が正常の患者では)特徴的な発疹が出現するよりも1週間程度前までなので、伝染性紅斑の患者を隔離しても他者への感染予防にはならない。
歴史
1799年Robert Willanにより「非カタル性風疹」として初めて記述され、1889年、Anton Tachamerにより変異型風疹と報告されたが、1896年にTheodor Escherichによって風疹とは全く別の病態であると報告された後、1899年に伝染性紅斑と名付けられた。本邦では1912年に大多和與四郎らにより初めて報告された。
症状
- 潜伏期間5〜6日で血液中にウイルスが出現、気道分泌物への排泄が始まる。
- 成人では感染7日目ごろから発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛などの非特異的症状がみられるが、小児ではこれらの症状が欠けることが多い。数日で血液中のウイルスが消失し、非特異的症状も改善、ウイルスの排泄もみられなくなる。
- その後約1週間は無症状。
- 無症状期の期間を過ぎて後、発疹が出現する。まず両側の頬が発赤し、その後1〜4日で体幹・四肢にも紅斑(赤い、平坦な発疹)が出現する。体幹・四肢の紅斑はある程度まで大きくなると、中央から退色し、網目状の発疹(レース状皮疹と表現される)となるのが特徴的である。
- 小児では発熱などもほとんどみられず、発疹だけが出現して治癒していくことが多い。
- 一方成人では、頭痛、掻痒感、発熱、関節痛および関節炎、筋肉痛など多様な全身症状を伴う。
鑑別診断
顔面の蝶形紅斑、四肢の発疹に関節炎を伴うため、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの膠原病・膠原病類縁疾患との鑑別を要する。
診断
非特異的症状期に本症を診断することはほぼ不可能である。血中のウイルスDNAをPCRで検出できる可能性はあるが、そもそも非特異的症状期に本症を疑うこと自体が不可能なため、実用的でない。
発疹出現後は、特徴的な発疹が診断の決め手となる。経過によっては上記のような疾患を鑑別するための検査が必要になる。免疫正常者ではヒトパルボウイルスB19特異的抗体の測定を行い、IgM陽性では現在あるいは最近の感染が示唆される。一方IgG陽性は、かつてヒトパルボウイルスB19に感染し、免疫があることを意味している。
抗体産生不全を伴う免疫不全者では、抗体価測定が診断に役立たない。血中のウイルスDNAを検出する(PCRなど)必要がある。
合併症
一過性骨髄無形成発作
この症状は遺伝性球状赤血球症やサラセミアなどの溶血性貧血の患者にみられ、赤血球の産生が停止するために急激に貧血を来たす。約1週間程度で、赤血球の産生は再開され、ヘモグロビン値もその患者にとっての正常値に戻る。
持続性感染
先天性・後天性の免疫不全症や白血病患者など、免疫不全患者では慢性の貧血の原因となることがある。発疹が出ないことが多いため、診断には血中のウイルスの証明が必要である。
胎児水腫
ヒトパルボウイルスB19に免疫のない妊婦が初感染を受けた場合、胎盤を介して胎児も感染する。胎児はB19ウイルスを駆除できずに持続感染となり、非免疫性胎児水腫、心不全などの症状を来たす場合がある。時には胎児死亡に至る。特に妊娠初期・中期の感染が危険である。妊婦のB19感染が即胎児の異常に結びつくものではなく、B19感染が確認された新生児でも妊娠分娩の経過が正常・出生後の発育も正常であることが多い。さらに、生存児での先天異常は知られていない[1]。
治療・予防
- 特異的な治療方法はないが、基礎疾患がない患者では一般に予後は悪くない。関節症状が強い場合には鎮痛薬が必要となる。
- 一過性骨髄無形成発作では、濃厚赤血球の輸血が必要となることがある。
- 持続性感染による慢性貧血の場合、免疫グロブリン投与が必要となることがある。
- 胎児水腫に対する治療法はない。妊娠経過中から出生後の成長発達まで、慎重に経過を観察する。人工妊娠中絶は適応ではない。
- 2006年9月現在、ヒトパルボウイルスB19ワクチンは存在せず、能動免疫による予防は不可能。
- ヒトパルボウイルスB19の排泄時期は、特徴的な症状が出現するよりも1週間以上前であるため、隔離による伝播予防も困難である。妊婦は原因不明の発熱をしている患者に接触すべきではないが、小児ではウイルス排泄の時期に何も症状がないため、妊婦への感染予防も困難である。ワクチンの開発が望まれる。
脚注
関連項目
日本の感染症法における感染症 |
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一類感染症 |
エボラ出血熱 - クリミア・コンゴ出血熱 - 痘そう - 南米出血熱 - ペスト - マールブルグ病 - ラッサ熱
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二類感染症 |
急性灰白髄炎 - 結核 - ジフテリア - 重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る) - 中東呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る) - 鳥インフルエンザ (H5N1) - 鳥インフルエンザ (H7N9)
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三類感染症 |
コレラ - 細菌性赤痢 - 腸管出血性大腸菌感染症 - 腸チフス - パラチフス
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四類感染症 |
E型肝炎 - ウエストナイル熱 - A型肝炎 - エキノコックス症 - 黄熱 - オウム病 - オムスク出血熱 - 回帰熱 - キャサヌル森林病 - Q熱 - 狂犬病 - コクシジオイデス症 - サル痘 - ジカウイルス感染症 - 重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る) - 腎症候性出血熱 - 西部ウマ脳炎 - ダニ媒介脳炎 - 炭疽 - チクングニア熱 - つつが虫病 - デング熱 - 東部ウマ脳炎 - 鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く) - ニパウイルス感染症 - 日本紅斑熱 - 日本脳炎 - ハンタウイルス - Bウイルス病 - 鼻疽 - ブルセラ症 - ベネズエラウマ脳炎 - ヘンドラウイルス感染症 - 発しんチフス - ボツリヌス症 - マラリア - 野兎病 - ライム病 - リッサウイルス感染症 - リフトバレー熱 - 類鼻疽 - レジオネラ症 - レプトスピラ症 - ロッキー山紅斑熱
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五類感染症 |
アメーバ赤痢 - ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く) - 急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く) - クリプトスポリジウム症 - クロイツフェルト・ヤコブ病 - 劇症型溶血性レンサ球菌感染症 - 後天性免疫不全症候群 - ジアルジア症 - 先天性風しん症候群 - 梅毒 - 破傷風 - バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症 - バンコマイシン耐性腸球菌感染症 - 風しん - 麻しん - 侵襲性インフルエンザ菌感染症 - 侵襲性髄膜炎菌感染症 - 侵襲性肺炎球菌感染症 - RSウイルス感染症 - 咽頭結膜熱 - A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 - 感染性胃腸炎 - 水痘 - 手足口病 - 伝染性紅斑 - 突発性発しん - 百日咳 - ヘルパンギーナ - 流行性耳下腺炎 - インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く) - 急性出血性結膜炎 - 流行性角結膜炎 - 性器クラミジア感染症 - 性器ヘルペスウイルス感染症 - 尖圭コンジローマ - 淋菌感染症 - クラミジア肺炎(オウム病を除く) - 細菌性髄膜炎 - マイコプラズマ肺炎 - 無菌性髄膜炎 - ペニシリン耐性肺炎球菌感染症 - メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症 - 薬剤耐性アシネトバクター感染症 - 薬剤耐性緑膿菌感染症
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- 果樹病害の最近の動向と防除策(第5回)青森県におけるリンゴ病害の発生動向と防除対策
- 知っ得コーナー リンゴ病の話 : 感染すると流産・死産の恐れがある?
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- slapped cheek disease, slap cheek, infectious blushing
- ラ
- erythema infectiosum
- 同
- リンゴ病、第五病 fifth disease、
- 関
- B19ウイルス
特徴
- 発疹。骨髄赤芽球前駆体への親和性
- 発症前にウイルスが排出されるため感染予防が難しい。
- 2-7歳の幼児に多く。発熱。
- 成人では症状は出にくい:赤い紅斑はない。関節痛や関節炎が起きやすい。
疫学
病原体
潜伏期間
感染経路
症状
- 小児に多い
- 顔面に紅斑が出現し、四肢に網状紅斑が広がる
- レース状紅斑
合併症
経過
- 7-10日:発熱、カゼ様症状。鼻汁、血液、咽頭よりウイルス検出
- 9日:リンパ球減少
- 10-15日:網状赤血球現象。ヘモグロビン減少。IgM・IgG↑。カゼ様症状消失
- 18日頃:発疹。関節炎
検査
予防
- ワクチンなし
- 妊婦は、流行期には小児の多い場所へは近づかない。
- 参考2
- 経胎盤感染
- 妊娠初期(妊娠20週未満):約30%が経胎盤感染し、その1/3が胎児水腫に移行する。すなわち伝染紅斑に罹患した母の10%で胎児水腫(非免疫性胎児水腫)が見られる。
- 妊娠20週以降:母子感染はないとされる。
- 病態生理:貧血に対する心臓の代償的な心拍出量増加がおこるが、ついには代償機構が破綻し心不全(左心不全→右心不全)に至る。
- 胎児に対する検査:(超音波検査)MCA上昇、腹水・胸水・心嚢水の貯留
参考
- http://idsc.nih.go.jp/iasr/19/217/tpc217-j.html
- 2. D.産科疾患の診断・治療・管理 8.合併症妊娠の管理と治療 - 日産婦誌61巻12号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/61/6112-625.pdf
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3
[★]
- 英
- disease、sickness
- 関
- 疾病、不調、病害、病気、疾患