イリノテカン
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イリノテカン
|
IUPAC命名法による物質名 |
(S)-4,11-diethyl-3,4,12,14-tetrahydro-4-hydroxy-
3,14-dioxo1H-pyrano[3’,4’:6,7]-indolizino[1,2-b]quinolin-
9-yl-[1,4’bipiperidine]-1’-carboxylate |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
投与方法 |
点滴静脈注射 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
NA |
代謝 |
肝臓、グルクロン酸化 |
半減期 |
6 ~ 12 時間 |
排泄 |
胆汁、腎臓 |
識別 |
CAS番号 |
100286-90-6 |
ATCコード |
L01XX19 |
PubChem |
CID 3750 |
DrugBank |
APRD00579 |
KEGG |
D08086 |
化学的データ |
化学式 |
C33H38N4O6 |
分子量 |
586.678 g/mol
677.185 g/mol (塩酸塩) |
イリノテカン (irinotecan) は、肺癌や転移性大腸癌などに使用される。カンレンボク由来の抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンから合成された抗悪性腫瘍薬である。トポイソメラーゼI阻害作用を有する。
塩酸塩として、ヤクルト本社よりカンプト注、第一三共よりトポテシンの商品名で製造販売されている。
目次
- 1 開発
- 2 機序
- 3 適応
- 4 用法用量
- 5 副作用
- 6 関連項目
開発
機序
イリノテカンはSN-38に加水分解されて活性化され、トポイソメラーゼⅠを阻害する。この時、ウリジン2リン酸グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によって不活性化される。
適応
日本において厚生労働省に認可された保険適応疾患は以下の通り。
小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頚癌、卵巣癌、有棘細胞癌、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、胃癌、大腸癌、乳癌
上記の他にも食道癌等においての効果も報告されてきている。
用法用量
副作用
激しい下痢、吐き気が特徴的な副作用であり、そのほか骨髄抑制や、それによる白血球の減少等の副作用をきたす。
関連項目
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 卵巣癌に対する化学療法(パクリタキセル/パラプラチン)により短期間で骨髄異形成症候群を発症した一例
- 村上 雅博,井川 洋
- 日本農村医学会雑誌 57(6), 873-877, 2009-03-30
- … ドセタキセル,ブリプラチン,ゲムシダビン,トポテシンを投与したが抗腫瘍効果を認めなかった。 …
- NAID 10024939448
- 田村 孝雄
- 日本化学療法学会雑誌 54(3), 232-238, 2006
- … 消化管癌の内科的治療の最近の進歩は目覚しく, 進行大腸癌においても有効な薬剤が以前ではfluorouracil (5-FU) のみであったが, 近年になってirinotecan (CPT-11, カンブト<SUP>TM</SUP>, トポテシン<SUP>TM</SUP>) やoxaliplatin (L-OHP, エルプラット<SUP>TM</SUP>) といった新しい有効な薬剤が開発され, ここ数年は第一選択とすべき治療法が毎年のように更新されている。 …
- NAID 130004298290
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
トポテシン点滴静注40mg
組成
有効成分
添加物
禁忌
- 骨髄機能抑制のある患者[骨髄機能抑制が増悪して重症感染症等を併発し、致命的となることがある。]
- 感染症を合併している患者[感染症が増悪し、致命的となることがある。]
- 下痢(水様便)のある患者[下痢が増悪して脱水、電解質異常、循環不全を起こし、致命的となることがある。]
- 腸管麻痺、腸閉塞のある患者[腸管からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。]
- 間質性肺炎又は肺線維症の患者[症状が増悪し、致命的となることがある。]
- 多量の腹水、胸水のある患者[重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。]
- 黄疸のある患者[重篤な副作用が発現し、致命的となることがある。]
- アタザナビル硫酸塩を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- 小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌(手術不能又は再発)、結腸・直腸癌(手術不能又は再発)、乳癌(手術不能又は再発)、有棘細胞癌、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)
- 小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌(手術不能又は再発)及び有棘細胞癌はA法を、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌(手術不能又は再発)及び結腸・直腸癌(手術不能又は再発)はA法又はB法を使用する。
また、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)はC法を使用する。
A法:
- イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、100mg/m2を1週間間隔で3〜4回点滴静注し、少なくとも2週間休薬する。
これを1クールとして、投与を繰り返す。
B法:
- イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、150mg/m2を2週間間隔で2〜3回点滴静注し、少なくとも3週間休薬する。
これを1クールとして、投与を繰り返す。
C法:
- イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、40mg/m2を3日間連日点滴静注する。これを1週毎に2〜3回繰り返し、少なくとも2週間休薬する。
これを1クールとして、投与を繰り返す。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- A法・B法では、本剤投与時、投与量に応じて500mL以上の生理食塩液、ブドウ糖液又は電解質維持液に混和し、90分以上かけて点滴静注する。
C法では、本剤投与時、投与量に応じて250mL以上の生理食塩液、ブドウ糖液又は電解質維持液に混和し、60分以上かけて点滴静注する。
慎重投与
- 肝障害のある患者[肝障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。]
- 腎障害のある患者[腎障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。]
- 糖尿病の患者(十分な管理を行いながら投与すること)[高度な下痢の持続により、脱水、電解質異常を起こして糖尿病が増悪し、致命的となるおそれがある。]
- 全身衰弱が著しい患者[副作用が強く発現するおそれがある。]
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
重大な副作用
骨髄機能抑制
- 汎血球減少(頻度不明)、白血球減少(73.4%)、好中球減少(60.2%)、血小板減少(27.2%)、貧血(57.1%)等があらわれるので、末梢血液の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量、休薬等の適切な処置を行うこと。
<chr color="red">また、高度な骨髄機能抑制の持続により、次のような疾患を併発し、死亡した例も報告されているので、頻回に血液検査を実施し、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
<chr color="red"> ・ 重症感染症(敗血症、肺炎等)
- <chr color="red">重篤な白血球・好中球減少に伴い、敗血症(頻度不明)、肺炎(頻度不明) 等の重症感染症があらわれることがある。
<chr color="red"> ・ 播種性血管内凝固症候群(DIC)
- <chr color="red">重篤な感染症、血小板減少に伴い、播種性血管内凝固症候群(頻度不明)があらわれることがある。
高度な下痢、腸炎
- 下痢(44.3%)、大腸炎(0.1%)、小腸炎(0.04%)、腸炎(部位不明: 0.1%)があらわれるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量、休薬等の適切な処置を行うこと。
<chr color="red">なお、高度な下痢の持続により、脱水、電解質異常、ショック(循環不全: 頻度不明)を併発し、死亡した例も報告されているので、十分に注意すること。
腸管穿孔、消化管出血、腸閉塞
- 腸管穿孔(0.02%)、消化管出血(下血、血便を含む: 0.1%)、腸管麻痺(1.7%)、腸閉塞(0.4%) があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<chr color="red">なお、腸管麻痺・腸閉塞に引き続き腸管穿孔を併発し、死亡した例が報告されている。これらの症例の中には、腸管蠕動を抑制する薬剤(ロペラミド塩酸塩、モルヒネ硫酸塩水和物等)の併用例があるので、腸管蠕動を抑制する薬剤を併用する場合には、特に注意すること。
間質性肺炎
- 間質性肺炎(0.9%)があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
ショック、アナフィラキシー様症状
- ショック(頻度不明)、アナフィラキシー様症状(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、呼吸困難、血圧低下等の異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肝機能障害、黄疸
- 肝機能障害(1.1%)、黄疸(0.06%)があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量、休薬等の適切な処置を行うこと。
急性腎不全
- 急性腎不全(0.05%)があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量、休薬等の適切な処置を行うこと。
肺塞栓症、静脈血栓症
- 肺塞栓症(頻度不明)、静脈血栓症(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
脳梗塞
- 脳梗塞(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
心筋梗塞、狭心症発作
- 心筋梗塞(0.01%)、狭心症発作(0.02%)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
心室性期外収縮
- 心室性期外収縮(0.05%)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- イリノテカン塩酸塩水和物は、1983年に抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンから合成された抗悪性腫瘍剤である26)。本剤は生体内でカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に加水分解されるプロドラッグである27)。
抗腫瘍作用28, 29, 30)
- 移植腫瘍に対して広い抗腫瘍スペクトラムを有する。マウスS180肉腫、Meth A線維肉腫、Lewis肺癌、L1210及びP388白血病、ラットWalker 256癌肉腫ならびにヌードマウス可移植性ヒト腫瘍MX-1(乳癌)、Co-4(大腸癌)、St-15(胃癌)、QG-56(肺癌)等に強い抗腫瘍効果を示す。
作用機序27)
- I型DNAトポイソメラーゼを阻害することによって、DNA合成を阻害する。殺細胞効果は細胞周期のS期に特異的であり、制限付時間依存性に効果を示す薬剤である。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- イリノテカン塩酸塩水和物(Irinotecan Hydrochloride Hydrate)
化学名
- (+)-(4S )-4,11-diethyl-4-hydroxy-9-[(4-piperidinopiperidino)carbonyloxy]-1H -pyrano[3´,4´: 6,7]indolizino[1,2-b ]quinoline-3,14(4H ,12H )-dione hydrochloride trihydrate
分子式
分子量
性状
酢酸(100)に溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、水、無水酢酸又はエタノール(95)に溶けにくい。
融点
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- irinotecan IRT, CPT-11
- 同
- 7-ethyl-10-[4-(1-piperidino)-1-piperidino]carbonyloxycamptothecin]
- 化
- 塩酸イリノテカン irinotecan hydrochloride、イリノテカン塩酸塩
- 商
- カンプト、トポテシン
- 関
- 抗悪性腫瘍薬
- 抗腫瘍性植物成分製剤
概念
作用機序
- トポイソメラーゼの機能を阻害してDNA合成を阻害する
block topoisomerase function
- 同じグループの薬剤
[★]
商品
[★]
- 英
- topo
- 関
- 位置、場所