ツツガムシ病
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ツツガムシ病 |
分類及び外部参照情報 |
ツツガムシリケッチア
|
ICD-10 |
A75.3 |
ICD-9 |
081.2 |
DiseasesDB |
31715 |
eMedicine |
derm/841 ped/2710 |
MeSH |
D012612 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
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ツツガムシ病(つつがむし・びょう)は、ツツガムシリケッチア(Orientia tsutsugamushi)の感染によって引き起こされる、人獣共通感染症のひとつであり、野ネズミなどに寄生するダニの一群であるツツガムシが媒介する。「新型」と「古典型」のふたつの型のツツガムシ病に分類される。日本紅斑熱と症状が酷似している。ツツガムシ病はオーストラリア、アジアにも広く存在する。刺された覚えのない発病者も多く、症状の初期はインフルエンザ様を示す事もあり、医師がリケッチア感染症を疑い早期に確定診断することが重要になる。別名、薮チフスとも呼ばれるが、病原菌は腸チフスやパラチフスを含むサルモネラ属ではなく、発疹チフスを含むリケッチア科に含まれる。
目次
- 1 名前の由来
- 2 分類
- 2.1 古典型ツツガムシ病
- 2.2 新型ツツガムシ病
- 3 媒介者
- 4 臨床所見
- 4.1 血清型
- 4.2 症状
- 4.3 検査
- 4.4 診断
- 4.5 予防
- 4.6 治療
- 5 歴史
- 6 関連法規
- 7 関連項目
- 8 脚注
- 9 外部リンク
名前の由来[編集]
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手紙などで、相手の安否などを確認する為の常套句として使われる『つつがなくお過ごしでしょうか…』の『つつがなく』とは、ツツガムシに刺されずお元気でしょうかという意味から来ているとする説が広く信じられているが、これは誤りである。
もともと「恙」(つつが)は病気や災難という意味であり、そうでない状態として「つつがない」という慣用句ができた。これと別に正体不明の虫さされのあとに発症する原因不明の致死的な病気があり、それは「恙虫」(つつがむし)という妖怪に刺されて発症すると信じられていた。これをツツガムシ病と呼んだ訳だが、後に微細なダニの一種に媒介される感染症であることが判明し、そこからこのダニをツツガムシと命名したものである。
分類[編集]
古典型ツツガムシ病[編集]
ツツガムシ病は、古くは山形県・秋田県・新潟県などの地域で夏季に河川敷(信濃川・阿賀野川・最上川等)で感染する風土病で、死に至る病として恐れられていた。これは、リケッチアを持つアカツツガムシ(Leptotrombidium akamusi)というダニに吸着されて発症する。春~夏に多い。大河津分水路建設工事において多数の作業従事者が古典的ツツガムシ病に倒れている。
新型ツツガムシ病[編集]
第二次世界大戦の後は古典型はほとんど見られなくなり、かわってタテツツガムシ(L.scutellare)やフトゲツツガムシ(L.pallidum)というダニが媒介して発症するものが出現した。北海道を除く全国で発生が見られる。古典型とは異なり、秋~初冬に発生が見られる。2つの型で発生時期が違うのは、それぞれのダニの活動時期の違いによる。
媒介者[編集]
アカツツガムシ(Leptotrombidium akamusi)、タテツツガムシ(L.scutellare)、フトゲツツガムシ(L.pallidum)などがあり、それぞれのダニの0.1~3%が菌を持っている(有毒ダニ)。ツツガムシは土壌昆虫の卵などを捕食する捕食性のダニであるが、卵から孵化した直後の第1期の幼生である幼虫のみが、生涯で1度だけネズミなどの温血動物の皮膚に吸着し、組織液や崩壊組織などを摂取する(血液は吸わない)。吸着を受けたネズミやヒトなどの動物はこの吸着時にリケッチアに感染する。吸着時間は1~2日で、ダニから動物への菌の移行にはおよそ6時間以上が必要である。菌はダニからダニへと経卵感染により受け継がれ、菌を持たないダニ(無毒ダニ)が感染動物に吸着しても菌を獲得できず、有毒ダニにならない。
臨床所見[編集]
血清型[編集]
ツツガムシリケッチアには血清型が存在し、Kato、Karp、Gilliamの3種類は標準型とよばれ、その他にもKuroki、kawasakiなど新しい型も報告されている。
- Kato型は、東北地方に分布するアカツツガムシが媒介する。古典型ツツガムシである。
- Karp型・Gilliam型は、概ね東北から九州北部までに分布する。フトゲツツガムシが媒介する。新型ツツガムシである。
- Kuroki、kawasaki型は、九州に多く関東にも分布する。タテツツガムシが媒介する。新型ツツガムシである。
症状[編集]
ツツガムシに刺されてから5-14日の潜伏期ののち、39度以上の高熱とともに発症し、2日目ころから体幹部を中心とした全身に、2-5mmの大きさの紅斑・丘疹状の発疹が出現し、5日目ころに消退する。低ナトリウム血症[1]、筋肉痛、目の充血が見られることもある。 皮膚には特徴的なダニの刺し口が見られる。刺し口は発赤と軽度の腫脹を呈し、水泡から潰瘍化して痂皮(かさぶた)を形成する。発熱・発疹・刺し口は主要3兆候とよばれ90%程度の患者にみられる。倦怠感、頭痛、刺し口近くのリンパ節あるいは全身のリンパ節の腫脹も多く見られる症状である。重症例では、播種性血管内凝固症候群や、多臓器不全で死亡することもある。
検査[編集]
- 一般検査ではCRP強陽性、肝酵素の上昇がほとんどの例に見られる。通常の細菌感染と比較して白血球の上昇が少ないのも特徴といえる。
- 血清型を血液検査で調べる。間接蛍光抗体法(IFA)または間接免疫ペルオキシダーゼ(IPA)という方法を使って測定が可能である。Kato型・Karp型・Gilliam型は保険適応だが、Kuroki型・kawasaki型は保険が効かず研究機関等でしか行えない。
診断[編集]
- 診断のポイントは、刺し口(esher)とツツガムシに対する血清抗体の測定である。ただし、刺し口は腹部・背部に多く発見しにくい。検査所見は日本紅斑熱のものと類似するため、鑑別が必要。
予防[編集]
予防ワクチンは無いため、ダニに刺されないことが唯一の予防法である。以下に例を書く。
- 汚染地域に発生時期に入らない。
- 長袖・長ズボン・長靴・手袋を着用し、肌の露出を減らす。
- 皮膚の露出部位には、ダニ忌避剤を外用する。
- 脱いだ上着やタオルは、不要意に地面や草の上に置かない。
- 草の上に座ったり、寝転んだりしない。
- 帰宅後は入浴し、脱いだ衣類はすぐに洗濯する。
- 誤ったダニの駆除方法として、「アルコールや除光液を塗る」、「ライター、マッチの火を近づける」などの方法が言われているが効果はない。症状の原因となる唾液を傷口周辺に広げることになる。[2]
治療[編集]
治療にはテトラサイクリン系の抗菌薬が第一選択。その他、クロラムフェニコールも使用される。早期に十分量・必要期間服用しないと悪化するケースがある。リケッチアの生物学的特性のため(細胞壁がペプチドグリカンをもたない)、ペニシリンをはじめとするβ-ラクタム系抗生物質は無効である。
歴史[編集]
新潟県[編集]
南魚沼地方では、江戸時代から発病が見られていたが、18世紀から19世紀にかけて発生する地域が拡大した。ツツガムシは専ら赤虫と呼ばれ、赤虫に刺されて発病することが知られていたため赤虫除けの加持祈祷が盛んに行われた。赤虫大明神を祀る石柱、石塔も現代まで伝わる。中越地方では信濃川流域を中心に島虫と呼ばれ、島虫神祠が今も残る。1906年には、愛知医学専門学校の林直助が黒津村(現長岡市黒津町)の願敬寺に研究所を置き、ツツガムシが、野ねずみの耳に寄生することを発見した[3]。1912年の発生期(7月-9月)には、浦佐村にツツガムシ病の研究所が開設され、新潟医学専門学校(新潟大学の前身)、東京医科大学のスタッフが風土病対策として研究に携わった。昭和初期までには各集落ごとに赤虫医者と呼ばれる者がおり、民間療法として、刺し口を見つけてツツガムシを針で掘り出す、切り取るなどの処置をしていたという[4]。
関連法規[編集]
感染症法の4類感染症に指定されている。
関連項目[編集]
- 感染症
- 伝染病
- リケッチア
- 皮膚科学
- 発熱と発疹を起こす病気の一覧
- 日本紅斑熱
- 新潟大学におけるツツガムシ病原菌の人体接種問題
脚注[編集]
- ^ 静岡県浜松市における過去7年間のつつが虫病 -低ナトリウム血症に関する検討も含めて-感染症学雑誌 Vol. 82 (2008) No. 4 P 335-340
- ^ ダニによるかみ傷 メルクマニュアル家庭版
- ^ 『ふるさと長岡のあゆみ』長岡市、1986年、187-188頁
- ^ 藤倉朋良『図解にいがた歴史散歩<南魚沼>』p184 新潟日報事業社出版部
外部リンク[編集]
- 感染症の話-2002年第13週号 ツツガムシ病-(国立感染症研究所)
- その他のリケッチア感染症メルクマニュアル家庭版
- ダニによるかみ傷メルクマニュアル家庭版
日本の感染症法における感染症 |
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一類感染症 |
エボラ出血熱 - クリミア・コンゴ出血熱 - 痘そう - 南米出血熱 - ペスト - マールブルグ病 - ラッサ熱
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二類感染症 |
急性灰白髄炎 - 結核 - ジフテリア - 重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る) - 鳥インフルエンザ(H5N1)
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三類感染症 |
コレラ - 細菌性赤痢 - 腸管出血性大腸菌感染症 - 腸チフス - パラチフス
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四類感染症 |
E型肝炎 - ウエストナイル熱 - A型肝炎 - エキノコックス症 - 黄熱 - オウム病 - オムスク出血熱 - 回帰熱 - キャサヌル森林病 - Q熱 - 狂犬病 - コクシジオイデス症 - サル痘 - 腎症候性出血熱 - 西部ウマ脳炎 - ダニ媒介脳炎 - 炭疽 - チクングニア熱 - つつが虫病 - デング熱 - 東部ウマ脳炎 - 鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)を除く) - ニパウイルス感染症 - 日本紅斑熱 - 日本脳炎 - ハンタウイルス - Bウイルス病 - 鼻疽 - ブルセラ症 - ベネズエラウマ脳炎 - ヘンドラウイルス感染症 - 発しんチフス - ボツリヌス症 - マラリア - 野兎病 - ライム病 - リッサウイルス感染症 - リフトバレー熱 - 類鼻疽 - レジオネラ症 - レプトスピラ症 - ロッキー山紅斑熱 - 重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る)
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五類感染症 |
アメーバ赤痢 - ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く) - 急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く) - クリプトスポリジウム症 - クロイツフェルト・ヤコブ病 - 劇症型溶血性レンサ球菌感染症 - 後天性免疫不全症候群 - ジアルジア症 - 先天性風しん症候群 - 梅毒 - 破傷風 - バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症 - バンコマイシン耐性腸球菌感染症 - 風しん - 麻しん - 侵襲性インフルエンザ菌感染症 - 侵襲性髄膜炎菌感染症 - 侵襲性肺炎球菌感染症 - RSウイルス感染症 - 咽頭結膜熱 - A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 - 感染性胃腸炎 - 水痘 - 手足口病 - 伝染性紅斑 - 突発性発しん - 百日咳 - ヘルパンギーナ - 流行性耳下腺炎 - インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く) - 急性出血性結膜炎 - 流行性角結膜炎 - 性器クラミジア感染症 - 性器ヘルペスウイルス感染症 - 尖圭コンジローマ - 淋菌感染症 - クラミジア肺炎(オウム病を除く) - 細菌性髄膜炎 - マイコプラズマ肺炎 - 無菌性髄膜炎 - ペニシリン耐性肺炎球菌感染症 - メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症 - 薬剤耐性アシネトバクター感染症 - 薬剤耐性緑膿菌感染症
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 東北地方における恙虫病の変遷と今後の課題 : ツツガムシというダニそして恙虫病, それは東北地方に始まった古くて新しい話
- 日本ダニ学会誌 = Journal of the Acarological Society of Japan 20(1), 41, 2011-05-25
- NAID 10029133219
Related Links
- 世界大百科事典 第2版 恙虫病の用語解説 - ツツガムシ(恙虫)の幼虫が媒介するリケッチアによって起こる急性発疹性の感染症。俗に〈恙無し〉はツツガムシに感染していないことから転じて,〈無病〉の状態をいうようになったとされている。
- つつがむしびょう【恙虫病】とは。意味や解説。野ネズミが保有するリケッチアの一種をツツガムシが媒介し、人が刺されたときに感染して起こる病気。高熱を発し、リンパ節が腫(は)れ、全身に発疹(ほっしん)が生じる。感染症予防法の4類 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- scrub typhus、tsutsugamushi fever、trombiculiasis、trombiculosis, tsutsugamushi disease
- 同
- 恙虫病、草原熱、(国試)つつが虫病、ツツガ虫病
- 関
- ツツガムシ、節足動物
[show details]
ツツガムシ病 : 約 147,000 件
ツツガ虫病 : 約 39,400 件
つつが虫病 : 約 36,500 件
つつがムシ病 : 約 147,000 件
つつがむし病 : 約 3,740 件
恙虫病 : 約 18,900 件
概念
疫学
- 世界ではアジアを中心として広く分布
- 北海道を除く全国で発生。毎年300-400例報告。
- 季節性
- 北陸、東北地方:春、秋
- 本州の関東以西、四国、九州:秋~冬
病原体
感染経路
潜伏期
症状
- 頭痛、発熱(弛張熱)、悪寒、戦慄
- 皮疹:麻疹、薬疹様の淡い不整形の紅斑が全身に広がる。手掌部紅斑はない
- リンパ節腫脹
- 所属リンパ節腫脹:ほぼ全例でみられる
- 全身リンパ節腫脹:半数例でみられる。
- (重症例)肺炎様症状、脳炎、播種性血管内凝固などをきたす。
三大徴候
刺咬部位
- 刺咬部位の写真
[show details]
検査
- 血小板低下
- 白血球:減少(好酸球が消失)
- AST、ALT:上昇
- LDH:上昇
- 尿検査:血尿、蛋白尿
- 免疫血清学的検査:抗ツツガムシ病リケッチア抗体の検出
- PCR法:末梢血よりリケッチアDNAの証明
鑑別疾患
- 日本紅斑熱:手掌部紅斑はツツガムシ病では見られないが、日本紅斑熱ではみられる。キノロン系薬は日本紅斑熱では有効であるが、ツツガムシ病では無効である。
- ウイルス性熱疾患(麻疹、風疹など)、薬疹
治療
- テトラサイクリン系薬
- ×ペニシリン系、セフェム系、アミドグリコシド系、キノロン系は無効。
参考
- 1. ツツガムシ病 - FORTH|厚生労働省検疫所
- http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/page_i/i04-12.html
- 2. ツツガムシ病 - 国立感染症研究所 感染症情報センター IDSC Infectious Disease Surveillance Center
- http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_13/k02_13.html
国試
[★]
- 英
- chigger、tsutsugamushi、trombiculid mite
- 関
- ツツガムシ、アカツツガムシ属、ツツガムシ類
[★]
- 英
- disease、sickness
- 関
- 疾病、不調、病害、病気、疾患