出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/11/02 20:43:23」(JST)
安全データシート(あんぜんデータシート、英: Safety Data Sheet、略称 SDS)とは、有害性のおそれがある化学物質を含む製品を他の事業者に譲渡又は、提供する際に、対象化学物質等の性状や取り扱いに関する情報を提供するための文書。
国際的には国際連合の化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)や ISO1104-1 で標準化されている。
化学物質等を適正に使用、管理するには、その人体や環境への有害性、危険性について認識し、適切な取り扱いをすることが必要であるが、そのためには情報が不可欠である。化学物質を製造や輸入する業者は、中身が分かっていて情報を入手しやすいが、取引によって受け取り[1]、使用する業者や輸送、保管する業者は情報を入手しづらい。このため、有害性のおそれがある化学物質等については、自主管理に必要となる情報が確実に伝えられるようにすることを目的に、統一した様式で提供するように法令で義務付けられている。
日本では、導入当初は化学物質等安全データシート(かがくぶっしつとうあんぜんデータシート、英: Material Safety Data Sheet、略称 MSDS)と呼ばれていたが、2012年4月に、国連 GHS化学品の分類および表示に関する世界調和システム で規定されている略称のSDSに統一された[2]。JIS Z 7250が改訂され、JIS Z 7253:2012 で標準化されている[3]。
日本では、毒物及び劇物取締法及び施行令で指定されている毒物や劇物(日本の毒物一覧、日本の劇物一覧を参照。)の全て[4]、労働安全衛生法で指定された名称公表化学物質等、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法、PRTR法、化管法とも呼ばれる)の指定化学物質を1%以上(ただし、特定第一種指定化学物質は0.1%以上)含有する製品を事業者間で譲渡・提供するときに、事前または同時にSDSの提供が義務化されている。媒体は紙の文書、磁気ディスクによるものとし、受領者側の承諾があれば、ファクシミリ、電子メール、Webページへの掲載で代替も可能である。また、内容に変更が生じた場合も速やかに変更後の内容で提供するように努めるよう規定されている。
また、あわせて化学物質の容器にもGHSに対応した絵表示や注意喚起語、措置の概略が記載されたラベルの貼付が規定されている。
労働安全衛生法(第57条)に基づく名称公表化学物質等は、2014年12月26日現在で、通し番号で23830までが告示されており[5]、同省のWebサイトで検索ができる。
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく政令で定められている物質は、2014年末現在、第一種指定化学物質が462物質[2]、第二種指定化学物質が100物質[3]、合計562物質である。この第一種と第二種は有害性ではなく、流通量の違いによっている。扱い数量に関わらずSDSの提供が必要。
なお、上述の法でSDSの提供が義務付けられないケースは各法律で異なっており、注意が必要である。例えば、PRTR法では次のような場合は対象とならない(施行令第5条、第6条参照)。
2006年12月からは、GHSに従って危険有害性が一目で分かる絵表示(包装ラベルに示すものと同じもの)を付ける事が求められるようになった(危険有害性の要約)。なお、約3000物質については、GHSに基づく政府分類をドイツ製品評価技術基盤機構(NITE)が公表しており、厚生労働省・環境省、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)でも公開している[6]。
欧州連合(EU)では欧州化学物質庁(ECHA)のREACH規則でSDSを規定している。
米国では労働安全衛生標準の連邦規則CRF1920:1200 App D[7]でSDSを規定している。
アメリカ国家規格(ANSI Z400、1/Z 129.1-2010)「職場の危険有害化学品における危険有害性評価、安全性データシート及び安全ラベルの作成」を参照。
中国では1998年に国家規格GB/T 17519-1998『化学品安全資料集』で作成が標準化され、MSDSまたはCSDSと称されていたが、2003年に「化学品安全技術説明書(SDS)」に統一され、2008年にはGHS対応となった。現在、作成方法や記載内容は、欧米日本の規格を参照して2013年に作成、改訂された、GB/T 17519-2013『化学品安全技術説明書編写指南』により規定されている。
台湾では、従来『物質安全資料表(MSDS)』と称していたが、2014年12月11日より改正『毒性化学物質標示及び安全資料表管理弁法』によって『安全資料表(SDS)』と改称された。
日本のアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)が推奨する製品含有化学物質情報を伝達するための基本的な情報伝達シート。製品中に含有される成分が規定を受ける「法規等の名称」、管理対象物質の「含有有無」、「物質名」、「CAS番号」、「濃度」などの情報に関して、SDSの作成規定から外れる微量含有物質の情報についても補足、伝達するための資料[8]。作成のためのソフトウェアが用意されている。
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リンク元 | 「MSDS」「material safety data sheet」 |
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