出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/05/16 11:11:06」(JST)
無段変速機(むだんへんそくき)、または連続可変トランスミッション(れんぞくかへんトランスミッション、Continuously Variable Transmission、CVT)とは、歯車以外の機構を用い変速比を連続的に変化させる動力伝達機構(トランスミッション)である。多くはオートバイや自動車用を指すが、それらに限らず工作機械の軸回転速度を変える機構や発電機の出力を変える機構[1]などにも広く使われている。
この項では自動車用摩擦式無段変速機を中心に述べ、摩擦によらない無段変速機についても触れる。
変速の原理は摩擦伝達で減速比を連続可変することであり、高効率のカギは潤滑を維持し摩擦係数を上げながら摩擦損失と摩耗を減らすことである[2]。潤滑油でぬれた金属間の摩擦係数は0.1程度と低く、自動車への応用には潤滑油、添加剤[3]、金属材料、表面加工、制御システム、生産管理等、多方面での技術開発が必要とされた。定常時の伝達効率向上には伝達要素間の摩擦係数を高くする必要がある一方、変速時には要素同士を滑らす必要がある。両者は相反する要求であり、潤滑油には特に高い技術が求められた。
古くは摩擦によって大きな力を伝達することが難しく、原付自転車や小型自動二輪車(特にスクーター)に普及した。自動車用でも受容トルクの制限のため小型車から採用され、金属ベルトとプーリ間の摩擦係数を大きくする改良により1990年代後半以降は排気量2,000 cc超の中型車に採用されるようになり、2010年(平成22年)以降は3,500 ccまたは300 ps級の4WDにも使われている。日本メーカー車が大半[4][5]で、日本国内向けと北米向け中心に販売されている。欧州向けはAMTが設定されるケースが多く [6][7]、新興国向けは耐久性と整備性に優れるMTが中心である。日本の国土交通省が2013年(平成25年)3月以降カタログ燃費として義務づけているJC08モード燃費値では、CVT搭載車の燃費は、MTやステップAT等の他方式に比べて良い車種が多い。
21世紀初頭に自動車用として実用化されているCVTはベルト式CVTとチェーン式CVT、トロイダルCVTの3種類に大別できる。ベルト式CVTは比較的低トルクのエンジンで軽量車に、チェーン式CVTとトロイダルCVTは高トルクのエンジン又はハイブリッドの重量車に用いられた。
変速機そのもので逆回転できないため、後進を行うときは遊星歯車等を組み合わせて逆転する。そのため前進と同等の速度で後進できるが、危険防止のためリミッターで制限される。
古典的な無段変速機としては2枚の円盤を直角に組み合わせその円盤の摩擦力により駆動を伝えるフリクションドライブが存在し、20世紀初頭から定置工作機械や小型の自動車やガソリン機関車などに用いられた。構造は簡単で、逆転ギアを要さないメリットがあったが、反面で体積が大きく空転による動力損失が多いことから、大きな出力を伝達するには適さず、第二次世界大戦以前に廃れた。
ベルトと2つの可変径プーリーを組み合わせ無段階に変速を行う機構のCVTで、ベルトの材質や構造で区別される。
エンジン側プーリーに内蔵されたウエイトローラーという錘が、回転数により生じる遠心力の大小でその位置を変えることで径を変える機構[21]。 ゴム製ベルトの張力により駆動を伝える無段変速機は20世紀初頭から存在していたが、当初は伝達できるトルクが小さくゴムベルトの耐久性も不十分であったためスクーターや小型車などの低出力エンジンの車両にしか使用できなかった。
自動車でこの方式を本格的に採用した最初はオランダのDAF(のちのDAFトラックス)で、1958年に発売した小型車「DAF 600(英語版)」に、自社開発のゴムベルト式無段変速システム「ヴァリオマチック(英語版)」を遠心式クラッチと組み合わせ搭載した。ドライブ側のプーリー幅は内部の遠心ウェイトおよび吸気マニホールドの負圧で制御され、ドリブン側はそれには追従する形となっていた。変速機構はディファレンシャルで両輪へ分割された後に置かれるため、現在の一般的なベルト式CVTのような1つのベルトと一対のプーリーという構成ではなく、左右の後輪それぞれに機構が存在する[注 1]。しかし上述のゴムベルトの弱点の他に構造上スペースを大きくとられる、デリケートな変速機構が外部に晒されているなど課題も多かった。
スクーターの駆動方式では、現代に至るまでこの手法が主流を占めている。Vベルトは曲げ抵抗と発熱が少なく耐久性の高い、コグベルトが用いられる。
その後1970年代に、DAF社出身のオランダ人、ヨーゼフ・ファン・ドールネ(Joseph Josephus Hubert van Doorne 1900-1979)[注 2]が耐久性の高いスチールベルト式CVTを開発した。最初に採用したのは、DAFを買収したボルボがオランダ(旧・DAF)工場で生産した66(英語版)である。[要出典]
ファン・ドールネ式CVTは1980年代以降、フィアット、ローバーをはじめとした欧州メーカーや日本の富士重工業(スバル)のECVT(Electro Continuously Variable Transmission)や日産のNCVTに採用されて小型車に普及しCVTの代表的方式となった。
ファン・ドールネ式のCVTベルトは、強靱な特殊鋼数枚を重ね合わせて形成したスチールベルトにやはり金属製の「コマ」をびっしりと填め込んだものである。プーリーからの駆動力は隣り合ったコマからコマへの圧力として伝達され、スチールベルトは従属的な位置決めガイドとして動作する。ゴムベルト式CVTと決定的に違うのは、ベルトの張力ではなくコマを押すことによる押力により動力を伝えることである。
スチールベルト式CVTの登場によって受容トルクは向上したものの、当初はその信頼性や操作性においてやや難があった。しかしファン・ドールネの特許期限が切れて以降は他メーカーの独自技術開発が一気に進み、さらなる大排気量・大トルクに対応できるようになり現在の主流となった。
エクストロニックCVT(XTRONIC CVT)とは、日産自動車の中容量スチールベルト式CVTの商標である[23]。プーリー比を変える油圧を車速や負荷に応じ微細に電子制御するもので、単純な油圧制御に比べCVTの欠点であるドライバビリティー(運転性)の悪さを払拭した。
このCVTにはトルクコンバーター式クラッチが組み込まれており坂道発進や車庫入れなどの微速走行が容易になっている。日産はこのシステムでトルクコンバータ式クラッチのCVTの普及に業界での先鞭をつけ、少排気量のモデルから比較的大排気量のモデルにもCVTを採用する実績を挙げている。「ABSの作動」を伴い「3速以上のギヤ比」で停止した場合3速に固定される。解除方法は、発進し時速20km位まで加速すると解除される。
エクストロニックCVTの商標に変わる前までは、ハイパーCVTの商標で呼ばれていた。なお日産には後述するエクストロイドCVTもあり、名称が似ているため混同されやすい。
なお、デイズシリーズでは三菱自動車工業の「INVECS-III CVT」を「副変速機付エクストロニックCVT」と呼ぶ(eKシリーズとの共同開発だが製造自体は三菱のため)。
副変速機付CVTとは、日産とジヤトコが共同開発したCVTである[24][25]。この副変速機付CVTはセカンダリープーリー(出力側ドリブンプーリ)の後に遊星歯車式の副変速機を設置している。この遊星歯車は前進2段の変速機能と後退切替機能を共有している。
ステップATと同様に発進時には前進Loで作動し、速度が上がるとに前進Hiに自動変速される。これにより従来のCVTに比べて変速比幅が拡大されて、発進加速と高速走行時の燃費の向上が図られている。また前進Hi状態から前進Lo領域まで減速した場合や中速域での高負荷走行時には自動的に前進Loへシフトダウンを行うため、CVTでありながらキックダウンが発生する。
小型CVTユニットはプーリー径の制約から、変速比幅が6.0までと狭いため、その改善を目的に開発された。副変速機付CVTは7速ATをしのぐ変速比幅7.3を実現している。このときのバリエータの変速比幅は4であるため、理論上は変速比幅を11程度まで拡大することも可能であるが、そこまで広い可変性はかえって過大となる。このため副変速機装備で生じた構造面のマージンは、変速ユニット自体の小型化へ振り向けている[26]。
変速比幅拡大目的で単純に歯車を追加すると、伝達段数が増え、伝達効率を悪化させる。そこで、Jatco CVT7は元々装備されていた後退用遊星歯車機構に2段変速機を統合し、伝達段数を変えずに合理的な機能追加を実現した。クラッチの数だけ増やし、遊星歯車の数は増えていない(遊星歯車機構の位置は入力側から出力側へ変更されている)。CVTとステップATの複合化によってコストが増えるが、副変速機追加によりCVTの変速比を4.1と通常より小さくしているため、トータルコストは従来通りとメーカーは主張している[27]。
小型機なので軽自動車から1.5Lクラスまでをカバーする。まず(スズキ・パレット/パレットSW)用として採用され、2017年2月現在は下記の車種に採用されている(絶版車除く)。
スズキと愛知機械工業が共同開発した無段変速機。
ベルト素材はアラミド繊維の芯線を特殊耐熱エラストマーで挟み耐熱帆布でコーティングしたものである。コマはアルミニウム合金をアラミド繊維と炭素繊維で補強した特殊耐熱樹脂で包んだもの。樹脂素材に自己潤滑性があるため金属ベルトCVTのようなフルードは不要となっている。動力の接続には電磁クラッチが採用され、低速域ではベルト式変速ではなくギア駆動となっているのが特徴。
A-CVTとしてスズキとダイハツの軽自動車に採用され小排気量用CVTとして期待されたが、結局この2社以外での採用例はなくこのCVTを採用した両社とも現在はトルクコンバータを組み合わせたCVTを採用している。
チェーンの張力によって2個の可変径プーリー間で動力を伝達するCVT。押力で作動するスチールベルト式に外観が似て見えるが、力学的には同じく張力で動力を伝達するゴムベルト式に近い。
スチールベルト式よりも、低速側・高速側の変速比における伝達効率が良い。またプーリー巻きかけ半径を小さく出来るため、プーリー径を小型化したり、同じ体積で変速比を拡大できる。欠点はピンとプーリーが点接触して動力を伝達するため、面で接触するスチールベルト式よりも更に騒音が大きくなりがちなことである。
自動車用としては富士重工業(スバル)が「リニアトロニック(Lineartronic)」と呼ぶ、シェフラーグループのLuK製チェーンを使ったCVTを5代目レガシィ、エクシーガの一部グレード、4代目インプレッサ、4代目フォレスター、レヴォーグ、WRX S4などに搭載している[28]。過去にアウディ・A4のFF車に採用されていたチェーン式CVT「Multitronic(マルチトロニック)」も同じくLuk製チェーンを使用している。なお、いずれも許容最大トルクは400N・mとなっている[28]。
このほか、過去に大手自動変速機メーカーのボルグ・ワーナーがサイレント・チェーン式CVTを開発した。しかしスズキ・カルタス・コンバーチブルにSCVTという名称で搭載されたのみで、こちらは一般化せずに終わっている(クラッチ機構には、湿式多板クラッチを採用している)。
チェーン式CVT
スバル・リニアトロニック
フリクションドライブを高度に発展させた形態である。入力側と出力側の2枚のディスクが平行に配置され、その間に複数のパワーローラー(コマのようなもの)が強い力で挟まれている。パワーローラーの傾斜角を変化させるとそれに応じて2枚のディスクの回転数の比も変化し、可変変速比が得られる。着想自体は古くから存在したが、非常に高い圧力の下で摩擦と潤滑を両立させての精密作動が要求されるため、実用化は極めて困難であった。
実用化に至った事例では、日産がジヤトコ・トランステクノロジー(ジヤトコ)、日本精工(NSK)、出光興産と共に開発、1999年に発表した「ハーフトロイダル式」とイギリスのトロトラックが光洋精工と共に開発し2003年に発表した「フルトロイダル式」とがある。両者の違いは入・出力ディスクの形状とそれに挟まれたパワーローラーの接し方の違いであり、各ローラー間に強制スリップがほとんど発生しないほぼ「点」で接する球形パワーローラーのハーフトロイダル式が伝達効率が高く、理想に近いとされる。対するフルトロイダル式は「線」で接する円盤形パワーローラーを用いており、円盤の両端で半径に差ができるため、強制スリップの発生は避けられない。円盤の厚みを抑えることでジレンマを軽減してはいるが、製品化はされていない[29] 。しかし、ハーフトロイダルCVTも有望視されながら、コスト面で自動車用としては生産を終了している。自動車以外の用途では、固定翼哨戒機P-1に搭載される川崎重工業ガスタービン・機械カンパニー製の一定周波数発電装置「T-IDG」に使用されている[30][31]。
日産がジヤトコ、NSK、出光興産と共に開発したハーフトロイダル式トロイダルCVT。NSKがローラーと軸受けの開発に成功し、出光興産が高圧下でのせん断力と潤滑・冷却力を兼ね備えた専用オイルを開発、ジヤトコがトランスミッションとして組み上げた。1999年(平成11年)、日産はこのトロイダルCVTをY34型セドリック、グロリアに採用し販売、世界初のトロイダルCVT搭載市販車となった。その後V35型スカイライン350GT-8にも搭載し販売した。日産はこのCVTをエクストロイドCVTと呼んでいる。しかしエクストロイドCVTは日産以外のメーカーには供給されることはなかった。販売においても同じ車種の通常型AT搭載車より価格が約50万円高い上に故障も多く、修理費も100万円を超える高額となることから、2005年(平成17年)に生産が終了している。なお、日産は生産終了したエクストロイドCVTの技術をメルセデス・ベンツに提供した。
エクストロイドCVTの内部構成を示す展示
鉄道車両や船舶などにおいて、電動機が停止状態(起動時)から強力な駆動トルクを発生させることや、電気的回路による制御が容易な特徴を利用し、動力源から最終出力部までの間に発電機と電動機を介在させ、トルクと回転数を制御するシステム。原動力がディーゼルエンジンの場合は「ディーゼル・エレクトリック」、ガソリンエンジンの場合はガス・エレクトリック、蒸気タービンやガスタービンの場合は「ターボ・エレクトリック」と呼ばれる。広義の無段変速機構ではあるが、いわゆる変速機に当たるものは基本的には不要である。ただしモーター特性を生かすために変速機構を設ける場合もある。鉄道車両の場合は電気機関車や電車と同様、ほとんどの場合減速機は一段固定である。
トルクコンバータを用いた液体式変速機が未熟だった1930年代から、総括制御も可能なディーゼル機関車や気動車の変速システムとして各国で広く利用され、世界的にはディーゼル機関車の動力伝達システムの主流である。また船舶においては、スクリュープロペラを駆動する動力としては高回転過ぎた初期の蒸気タービン動力(減速機が未発達だった)の減速・伝達手段としてアメリカ合衆国海軍の軍艦やヨーロッパの一部の商船などで用いられた。 WW2のドイツにおいてはVK4501(P)いわゆるポルシェティーガー、さらにはそれを流用したエレファント重駆逐戦車においても採用された。
直流発電機の重量ゆえ、日本では線路規格に対して軸重が過大となり、国鉄DF50形が短期間量産された以外はごく少数の採用に留まっていたが、1970年代以降、ヨーロッパではブラシレス交流発電機、可変電圧可変周波数制御、誘導電動機の組み合わせにより、体積や重量も軽減されたディーゼル機関車が出現、かつての欠点が克服されるようになった。液体式変速機のような多大な部品点数や、手間のかかる整備の必要もなく、国鉄分割民営化後には日本国内でもメリット十分享受できるとして、DF200形にこのシステムが採用されている。
鉱山用の超大型ダンプカーなど、少数ながら自動車にも採用例がある。
モーターのみで駆動する点からシリーズ・ハイブリッドとも混同される事も多いが、バッテリー等の別途のエネルギー源は存在しないためハイブリッドとはなり得ず形式としては区別すべきである。自動車用においては日産自動車が生産するNOTEのe-Powerグレードがシリーズハイブリットとして量産されているが、ガス・エレクトリック方式とは一般的には扱われない。バッテリーの有無以外にもエレクトリック方式ではモーター出力に対して相応の出力のエンジンが必要となるが、シリーズハイブリッドではモーター出力よりも低い出力のエンジンでも成立するなどの違いがある。
プリウスを始めとするトヨタ自動車のハイブリッドカーに搭載されているトヨタ・ハイブリッド・システム(Toyota Hybrid System、THS)、およびそのマツダ向けライセンス版であるSKYACTIV-HYBRID(スカイアクティブ・ハイブリッド)[注 3]はE-CVTまたはECVT(Electronically-controlled:CVT、電気式無段変速機)と呼ばれ、それぞれの商標名はトヨタが「エレクトロシフトマチック」、マツダが「エレクトリックシフト」である[注 4]。変速機としてのTHSは「エンジンを効率の良い回転数に保ってハイブリッド走行するための動力分割機構に付随する変速機能」であり、機械駆動の変速だけを実現できず、必ず電力駆動と併用しなければ機能しない。
変速機は機械的には1段の遊星歯車のみであり、サンギアの発電機とリングギアの電動機の回転数を同時に変化させることでプラネタリーキャリアから見た変速比を連続可変にしている。
通常の遊星歯車機構は3軸のうち、1つを固定し、残りの2つを入力と出力にして固定歯車比で使い、組み合わせを替えて3つ(入力軸と出力軸を逆にできれば6つ)の固定歯車比を作る。これに対しTHSでは入出力軸の切り替えをしない代わりに3軸全てを回転させることもできるため無段変速機となる。
エンジンはプラネタリーキャリアに、発電機(M2)はサンギアに、車輪はリングギアおよび駆動用モーター(兼回生発電機、M1)にそれぞれ接続されている。更に無段変速機にできる前提は回転数に関わらず発電機の負荷を自由に設定できることにある。例えば発電機を「空回り」させることができる。
これでプラネタリーキャリアを停止して他の2軸を動かせばEVモードになる。歯車比は一定でM1とM2は逆回転で互いに比例的に増速する。M2は無負荷状態=空回りさせることでM1だけが回っているのと同じ状態を作り出せる。
ハイブリッド走行では3軸全てが動き出す。同じ走行速度でプラネタリーキャリアを回しエンジンを起動すればM2の回転数が低下するか、場合によってエンジンと逆転する。M2が負荷を吸収して発電する。更にクルマを加速させるとエンジン回転数をほぼ一定に保ったまま、やはりM1とM2が比例的に増加する。すなわちエンジンから見れば無段変速していることになる。ハイブリッド走行時にエンジンから機械的に車輪に伝達される駆動力はほぼ一定で、負荷変動分はM2経由でM1に伝達される。
M2の電気的負荷を変化させながらサンギアの回転数を制御することで「プラネタリキャリアからの見かけの変速比」が連続的に変化する原理であり、発電機、エンジン、モーターの回転数は共線図上では直線で表される。「機械的な歯車比」はほぼ変化しないため、諸元表には変速比が記載されていない[注 5]。
走行の際は下記のように制御する。
2代目プリウス(NHW20型)までに搭載されていた原型「THS」および「THS-II」では動力分割機構のリングギアに直接モーターが接続されていたため、M1に強いトルクが要求された。
その後のハリアー・クルーガー、3代目プリウス(ZVW30型)・アクアなどはM1の回転を遊星歯車固定減速機で減速して動力分割機構のリングギアに伝える「リダクション機構付THS-II」が搭載され、2013年現在ではこちらが主流となっている。
最高速度が高いクラウン・レクサスGS・LSでは動力分割機構のリングギアの後(出力軸)に2段変速機を追加し変速比を拡大している。
静油圧式無段変速機、または単にHST(Hydraulic Static Transmission)とも呼ばれ、エンジンで油圧ポンプを駆動して発生させた油圧を油圧モーターで再び回転力に変換する方式。油圧ポンプのピストンの作動ストロークをそのピストンに接する斜板の角度を変化させることによって、作動油の流量を連続的に増減させて速度の調節を行う。
操作レバーで斜板の角度を操作することによって正転、停止、逆転まで無段変速で制御することができる上、斜板を中立にするとピストンのストロークが停止し、その状態では出力軸から入力軸にタイヤなどからの回転力が逆方向に伝達されずにブレーキをかけたのと同じ効果を生むなど変速機としての操作性は高い。しかしベルト式CVTに比較すると伝達効率が悪く、手荒に操作すると加減速のショックが大きい他、油圧作動油が内部の潤滑と冷却も同時に担うために常に一定以上のエンジン回転数を保たなければならないという欠点がある。また、HSTを備えた農耕用トラクタでは牽引作業には向かないとされている。
一般的にはギヤによる副変速機を別に備えて作業に適する回転速度を得るが、使用速度域が狭い場合は副変速機を省略することもできる。油圧ポンプと油圧モーターを一体としてコンパクトに設計することができる他に、それぞれを油圧ホースで接続して離れた場所に設置することも可能であり、設計自由度が大きくスペース効率にも優れる。また静油圧式無段変速機が伝達できる動力の大きさは、内部での油圧に制限され、過大なトルクが加わるとリリーフバルブで油圧をバイパスすることによって変速機の破損を防いでいる。
静油圧式無段変速機はメルセデス・ベンツ・ウニモグUX100に使われているほか無限軌道式を含む建設機械、ラフテレーンクレーン、除雪車など、農業機械ではほぼ全てのコンバイン、芝刈り用途などの牽引力をそれほど要求されないトラクター、乗用田植機など、もともと作業用に油圧装置を備えていて低速な車両に採用例が多い。また乗用型の芝刈り機や歩行型の除雪機など、小型の機械にも一般的に採用されるようになった。
走行用変速機ではないが、鉄道車両では、ディーゼル機関車や気動車、客室冷暖房と厨房調理機器などのサービス電源用発電機に内燃機関を備える電源車のラジエターファンに静油圧駆動を用いているものが多い。
油圧機械式無段変速機はHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)とも呼ばれ、駆動する動力の全てを一旦油圧に変換するHSTとは異なり、何かしらの機械的な伝達も同時に行う。HSTよりも高効率を狙えるが油圧以外の伝達経路が必要となるため設計の自由度は下がる。HMT方式は大きく分けてると遊星歯車とHSTを組み合わせる方式と、流体の反トルクによる伝達(機械的な伝達)と油圧伝達を組み合わせた方式の2つに分けられる。[32]
遊星歯車機構を用いる方式の一例としてはサンギヤを入力軸、プラネタリギヤを出力軸とし、リングギヤの回転をHSTで無段階にコントロールすることによって自在に減速比を制御することができ、HSTの無段変速のメリットを生かしつつも変速機全体での伝達効率を高める事が可能となる。 この組み合わせはあくまで一例であり、どのギヤをどの要素に使うかは設計によって異なるがHSTと遊星歯車機構の関係から2つの方式、即ち遊星歯車機構からの出力をHSTへ入力する入力分割型(出力結合型)とHSTからの出力を遊星歯車に入力する出力分割型(入力結合型)に分けられる。前述の例でいえばリングギヤがHST(ポンプ)に入力しているなら入力分割型となり、HST(モーター)より出力を受けていれば出力分割型となる。一般的に低速運用では出力分割型、高速運用では入力分割型が効率が良いとされそれぞれに一長一短がある。遊星歯車機構を用いたHMTは既存のHSTの技術やポンプ/モーターを流用する事もでき、さらに機械伝達も行うため同規模のHSTよりもポンプ/モーターを小型化も可能となる。大きなトルクにも対応しやすいため重量のある車両に用いられる事が多い。反面、機構として大掛かりとなるためサイズや重量、コストなどに制限がある用途ではあまり用いられない。また遊星歯車機構による損失が存在する。
遊星歯車機構を用いない方式は流体の反トルク作用による伝達(機械的な伝達)と油圧よるトルク伝達を合成して出力する。一般的な形態においてはポンプ/モーターは斜板式のアキシャルピストンとなりモーター側は可変容量となる。このモーターの容量を可変する事で変速比を可変させる。ポンプとモーターは同軸上または同円周上に配されポンプ/モーター両ピストンのシリンダーは一体化した形状として出力軸に繋がる。歯車等が無いため機械的な伝達はイメージしにくいが、エンジンから入力され回転する斜板がポンプのピストンを押そうとした場合、流体(オイル)を介してモーターからの反トルクがあるためピストンは簡単には押されない。しかし斜板からピストンには斜め方向の力がかかっているためピストンを押す以外にピストンを覆うシリンダー(出力軸)を回そうとする力も発生する。このシリンダーを回した分の力は油圧を発生せずに出力軸へ伝達されるため機械的な伝達として扱われる。そしてピストンが押された分は油圧となりモーターに伝達され、これが油圧伝達となる。 後述のホンダのHMTなどはこちらに属する。あまり大きなトルクには対応しにくいが、遊星歯車機構がなくサイズ、重量、コストなどの面で有利であり軽量コンパクトに仕上げられるため二輪車といったサイズと重量に制限のある用途にも採用可能となる。
ホンダでは、1962年にはイタリア・バダリーニ社の特許をベースにHMTとなる「HRD」を採用した革新的なスクーター、ジュノオで量産化。この原理を独自に発展させ、二輪車用に小型・高圧化したものを開発、HFTと名づけ自社のモトクロッサー・RC250MAに採用し参戦2年目にあたる1991年にモトクロス全日本選手権でシリーズチャンピオンを獲得している。2001年にはATVと呼ばれる4輪バギーで、honda maticという商標のこのCVT機構をアメリカで量産車に採用。さらに、世界初のロックアップ機構を備えて商標を「HFT」(Human-Friendly Transmission)とし、2008年3月7日発売のDN-01に搭載した。
農業機械においてはヤンマー(初代、現・ヤンマーホールディングス)が2002年に実用化、同社の乗用田植機「VPシリーズ」(4条植のVP4を除く[33]全機種)に先行搭載され、2005年にはトラクター「EG700シリーズ」にも搭載したがこれは100馬力以下のトラクターとしては世界初としている。その後も2009年には小型・軽量・高効率化を目指した改良型のI-HMTをトラクター「EG400シリーズ」に先行搭載、後にそれ以外のトラクターにも順次搭載され、乗用田植機「RGシリーズ」(4条植のRG4を除く[34]全機種)にも順次搭載された。 日本国外ではマッセイ・ファーガソン社のトラクタのトランスミッションにDyna-VTという名称で搭載されている。
特殊な用途として、陸上自衛隊の10式戦車に採用されている。方式としては合成部(遊星歯車機構)が出力側に配置される出力分割型(入力統合型)となる。遊星歯車機構はプラネタリギアが出力、リングギヤがHSTからの入力を受け、サンギヤがエンジンよりの入力を受けるが直接ではなく3段変速機構を介することで広い変速比幅を確保している。 これによりエンジンを出力の大きい回転数付近で使用できるため、現有戦車に比べてエンジンが小型になったにもかかわらず運動性は向上しているとされる。
初期のベルト式CVT車両には、発進・停止時の動力断続に遠心式や電磁式の自動クラッチが使われていた。これによりトルクコンバータ式におけるクリープ現象のデメリットを排除できるという特徴が生じた。しかし流体継手やトルクコンバータを使用しない代償としてクリープ現象のメリットも失われ、これらの自動クラッチにはマニュアルトランスミッション車の運転技術である「半クラッチ」に相当する機能・機構を必要とした。
クリープ現象を伴わないタイプのクラッチを持つCVT車は、ことに発進時、繊細なアクセル操作を行なわなければ、ぎくしゃくして円滑さに欠ける車両挙動を示した。富士重工業ではより滑らかな作動を求め、オランダのVDT社との共同開発で密閉容器内の鉄粉の流動性を磁力でコントロールする電子制御式電磁クラッチを使うECVTを開発したが、それでもこの問題の解決には至らなかった。富士重工の初期のECVT車では、特に商用モデルでの過負荷状態で電磁クラッチを破損させる事態が頻出し、クレーム扱いの保証修理を多発させてもいる。本田技研工業は変速機の出力側に湿式多板クラッチを配置し、これを電子制御することで疑似クリープ現象を得るというシステムを開発したが、同社の独自技術で広く普及するまでには至らなかった。
自動クラッチ式は普及せず、1990年代後半以降は発進・停止時の動力断続をロックアップ付のトルクコンバータに委ねる手法が主流になった。トルクコンバータを採用することでクリープ現象を得ることができ、おなじくトルクコンバータを採用する他のオートマチックトランスミッション車に運転感覚が近づいた。クリープ現象を得ることに着目すれば流体継手でも事足りるが、トルクコンバーターにはスリップ時のトルク増幅作用があり、スターティングデバイスとしてのメリットが大きい。トルク増幅作用を前提とすることで、発進に必要な駆動力を発生するためのトランスミッションの最大変速比を小さくすることができる。ギアレシオをハイレシオ化することで、巡航時のエンジン回転数を低くすることができ、低燃費化に有効である。[35]但し小型自動二輪車では、遠心式自動クラッチが今日でも常用されている。
スチールベルト式CVTにおいて車速が高く、プーリー回転数が高い場合、ベルト自重の遠心力によりベルトとプーリーの密着力が低下し、滑りによる破損の危険が生じる。これを防ぐために大きな油圧が必要となり、高速域で特に伝達効率が低下する問題がある。例として日産マイクラ(マーチ)K13型の場合、欧州複合モード燃費において、MT:65.7MPG, CVT:56.5MPG[36]となり、MTのほうが14%公称燃費が良い。日本のJC08モードと比較し、欧州複合モードは一定負荷の連続運転や高速度の比重が多く、燃費に影響しやすい。この問題の対策としては、2006年に入力側で減速するCVT、2009年に副変速機付きのCVTなどの改良が進み、2013年現在の最新機種ではステップATに並ぶ効率が得られている。
これらの特徴は、低速走行の多い日本ではCVTの比率が多く、高速走行の多いドイツではMTとDCTの比率が多いという市場シェアの違いとして表れている。
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