チモーゲン
- 同
- zymogen
WordNet
- any of a group of compounds that are inactive precursors of enzymes and require some change (such as the hydrolysis of a fragment that masks an active enzyme) to become active (同)zymogen
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/05/23 02:37:29」(JST)
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酵素前駆体(こうそぜんくたい zymogen チモーゲン)とは、不活性な酵素前駆体のことである。
酵素前駆体が活性を持つ酵素に変化するには、加水分解や構造変化などの生化学的変化によって活性部位が働ける状態になる必要がある。 なかでも、酵素前駆体の一部がプロテアーゼによって切断される例は多く、活性化の過程で遊離したペプチド鎖は活性化ペプチドと呼ばれる。
酵素前駆体の例
酵素前駆体の例として、以下のようなものがある。
- トリプシノーゲン: 消化酵素 トリプシン の前駆体
- キモトリプシノーゲン
- 消化酵素 キモトリプシン の前駆体
- ペプシノーゲン
- 消化酵素 ペプシン の前駆体
- プロエラスターゼ
- 消化酵素 エラスターゼ の前駆体
- プロリパーゼ
- 消化酵素 リパーゼ の前駆体
- 血液凝固系の酵素の大半
- カスケード反応を形成している
- プラスミノゲン
- 線溶系の酵素 プラスミン の前駆体
- 補体系の酵素の一部
- カスパーゼ
- アポトーシスを実行するシグナルカスケードを構成している
このうち、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、凝固系酵素、プラスミン、補体系酵素はセリンプロテアーゼである。カスパーゼはシステインプロテアーゼであり、ペプシンはアスパラギン酸プロテアーゼである。
なお、活性化された酵素を、別の酵素が修飾して不活性化する過程も存在する。例えば、凝固系のプロテインCは、活性型第V因子や活性型第VIII因子を分解して不活性化する。
意義
活性型の酵素をそのまま合成するのではなく、まず不活性型の前駆体として合成しておき、後で活性化するのは、次のような意義があると考えられている。
まず、迅速な調節が可能となることである。遺伝子の転写、mRNAの翻訳 には数十分〜数時間がかかるため、出血のような緊急事態に対応するには間に合わない。活性を持たない前駆体をあらかじめ用意しておけば、必要が生じたときにすぐに活性化して使うことができる。
次に、反応を増幅できることである。凝固系・補体系・アポトーシスなどの経路は、活性化された酵素が次の段階の酵素を活性化するというカスケード反応になっている。一つの酵素は無数の基質を反応させることができるので、小さな入力から大きな出力(反応)を得ることができる。
また、酵素活性を、時間的・空間的に限定するという意味もある。つまり、必要なときに、必要な場所でのみ、酵素を活性化させるのである。例えば、消化酵素は食物を分解して吸収できるようにする上で不可欠なものだが、自己の組織をも分解しかねない危険な存在である。そこで、酵素を前駆体として合成して不活性な状態で貯蔵しておき、食事後に消化管内に分泌されて始めて活性化するようにしている。急性膵炎は、この仕組みが破綻した状態といえる。膵臓の中で消化酵素が活性化され、膵臓と周辺臓器が溶かされてしまう重篤な疾患である。播種性血管内凝固症候群 も、凝固系と線溶系の酵素活性のバランスが崩れた状態といえる。
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 酵素前駆体を用いる電気化学エンドトキシンセンサのための高感度検出法の検討
- 井上(安田) 久美,高橋 里子,児玉 隼人 [他]
- Proceedings of the Chemical Sensor Symposium 53(-) (-), 31-33, 2012-03-00
- NAID 40019318525
- 酵素前駆体(組換えFactor C)を利用するエンドトキシンの電気化学測定法の検討
- 井上(安田) 久美,伊野 浩介,珠玖 仁 [他]
- Proceedings of the Chemical Sensor Symposium 49, 136-138, 2010-03-00
- NAID 40017082327
- I216 社会性アブラムシのゴール修復過程におけるフェノール酸化酵素前駆体カスケードの活性化(一般講演)
- 沓掛 磨也子,黒須 詩子,柴尾 晴信,孟 憲英,鎌形 洋一,田村 具博,深津 武馬
- 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨 (50), 157, 2006-03-01
- NAID 110006169804
Related Links
- デジタル大辞泉 - 酵素前駆体の用語解説 - 生体内で不活性な状態で産生された酵素。何らかの生化学的変化を受けることで活性化する。ペプシンの前駆体であるペプシノーゲン、リパーゼの前駆体であるプロリパーゼなどがある。酵素 ...
- 酵素前駆体(こうそぜんくたい zymogen チモーゲン)とは、不活性な酵素 前駆体のことである。 酵素前駆体が活性を持つ酵素に変化するには、加水分解や構造変化などの生化学的変化によって活性部位が働ける状態になる必要がある。
- 2:生命維持に重要な代謝サイクルを担う酵素 酵素は、生命維持に必要な有機生体分子である核酸、アミノ酸、脂質および炭水化物などの生合成や消化・吸収・代謝から異化・排出までに関与し、あらゆる工程の触媒反応を担っている。
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★リンクテーブル★
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- 英
- zymogen
- 同
- 酵素前駆体 enzyme precursor proenzyme、プレ酵素? preenzyme?、プロ酵素?
- 関
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- 関
- enzyme precursor、zymogen
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- 英
- zymogen
- 関
- 酵素前駆体、チモーゲン
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- 英
- proenzyme
- 関
- 酵素前駆体、プロ酵素
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- 関
- proenzyme、zymogen
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- 英
- enzyme, ferment
- 関
- 酵素反応
酵素の分類
- (a)酸化還元酵素(oxydoreductase) EC1:ある物質を酸化したり、還元したりします。脱水素酵素、ペルオキシダーゼなどを含みます。
- (b)転移酵素(transferase) EC2: アミノ基やリン酸基などをある物質から別の物質に転移する酵素です。アミノ基を転移する酵素はアミノトランスフェラーゼと呼ばれます。
- (c)加水分解酵素(hydrolase) EC3:ある物質(基質)に水(H2OのうちHとOH)を加えることにより、2つに分解します。多くの蛋白分解酵素が含まれます。
- (d)リアーゼ(lyase) EC4:ある物質を2つに分解します。
- (e)イソメラーゼ(isomerase) EC5:ある基質を異性体に変換します。
- (f)リガーゼ(ligase) EC6;ATPのエネルギーを使って2つの物質を結合します。
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- 英
- precursor、progenitor
- ラ
- praecursor
- 関
- 先駆物質、前駆型、前駆細胞、前駆物質、祖先、先駆体
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- 英
- body
- ラ
- corpus、corpora
- 関
- 肉体、身体、本体、コーパス、ボディー
[★]
- 英
- precursory、premonitory、antecedent、prodromal
- 関
- 前駆的