出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/11/17 20:39:54」(JST)
軟骨(なんこつ)は、軟骨細胞とそれを取り囲む基質からなる支持器官であり、軟骨組織は血管、神経、リンパ管を欠く。弾力性があり、脊椎動物に比較的発達している。
系統進化的には、かつては初期の脊椎動物は軟骨構造の骨格を持ち(軟骨魚類)、後に硬骨構造の骨格へと発展(硬骨魚類)していったと考えられた。
しかしながらその後の研究で、軟骨魚類よりも原始的な脊椎動物である板皮類において、既に硬骨の皮骨を獲得しており、それが頭蓋骨へと進化したと考えられるようになった。従って現在、軟骨魚綱として繁栄しているサメやエイなどは、硬骨が軟骨に置き換わった生物という見方が主流である。ただしこれは、硬骨魚類が軟骨魚類から分岐して進化した事とは無関係であり、軟骨魚類は骨格以外では硬骨魚類よりも原始的な特徴を持つ。
軟骨は、結合組織に分類され、豊富な細胞外基質と、その中に点在する軟骨細胞が特徴的である。
軟骨における細胞外基質を、軟骨基質という。軟骨基質の主成分は、コンドロイチン硫酸などのプロテオグリカンである。コンドロイチン硫酸は大量の陰電荷を持っており、ナトリウムイオンを引きつける。この時、ナトリウムの水和水が一緒に寄ってくる。このような仕組みで、軟骨は豊富な水分を含んでいる。
軟骨細胞は、軟骨基質の中の軟骨小腔と呼ばれる穴の中に入っている。軟骨細胞は、線維芽細胞系の軟骨芽細胞から分化する。分裂直後の軟骨細胞は密集しているが、周囲に軟骨基質を分泌するにつれて隙間が開いていく。そのため、完成した軟骨では、一つの軟骨小腔には多くとも 2、3個の細胞しか入っていない。
軟骨全体は、軟骨膜によって包まれている。血管は軟骨の中には侵入せず、軟骨細胞は、組織液を介した拡散によって酸素や養分を受け取り不要物を排出する。
軟骨は、軟骨基質の成分によっていくつかの種類に分けられ、それぞれ力学的特性が異なる。
硝子軟骨には、関節面を覆う関節軟骨、気管を潰れないように囲っている気管軟骨、甲状軟骨などが該当し、最も一般的に見られる軟骨である。均質無構造であり、半透明である。また、軟骨性骨化においては、硝子軟骨が骨の大まかな形をつくり、これが骨に置換される。
線維軟骨は、椎間円板、恥骨結合、関節半月および関節円板などに見られる。軟骨基質には、コラーゲンが多く含まれる。固く、強い圧力に耐えることができる。
弾性軟骨には、耳介軟骨や、嚥下時に食物が気管に入らないように蓋をする喉頭蓋の軟骨などが該当する。軟骨基質は、弾性線維を多く含み、硝子軟骨に比べ、弾力がある。
ニワトリの胸(やげん)やひざの軟骨、ブタの耳(ミミガー)やあばらの軟骨(パイカ)、ウシの喉の軟骨、イカの軟骨などは食用に供される。いずれもコリコリとした食感が特徴で、酒のつまみに好まれる。
鹿児島県の郷土料理「とんこつ」のように、煮込んで軟らかくしたものが食べられることもある。
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