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頭蓋内圧(ずがいないあつ、英: intracranial pressure; ICP)とは、特殊な医療機器によって測定される頭蓋骨内部の圧力である。脳圧、脳髄液圧とも言う。その圧はホメオスタシスによって極めて一定に保たれており、その大きな変動は、重大な疾患の表徴であると共に、それ自体が死或いは致死的な合併症をもたらす。
臥位での成人に於いて60~150mmH2Oである。
中枢神経系は、頭蓋骨はもちろん、脊椎によっても(正確にはそれらを内張りする硬膜によって)ほぼ密閉された状態が保たれている。その内容物は大きく分けて脳実質・脳脊髄液・血管であるが、どれかの容積が増えればそれ以外の容積を減らすことによって、その内圧は一定に保たれる。しかしそうしたホメオスタシスが限度を超えたとき、或いはホメオスタシスが機能しなくなったとき、頭蓋内圧の変動が起こる。
原発性低髄圧症や、頭部外傷・脊髄損傷後の後遺症など。医原性のものも決して少なくはなく、腰椎穿刺や脊髄麻酔後の髄液漏出による低髄圧症などがあるが、これは万全を尽くしても一定の確率で確実に起こる。ドレナージ(後述)の管理ミスによる急激な低髄圧は死に至ることもある。
臨床的意義としてはこちらの方が重要である。頭蓋内圧の上昇は、各種脳出血、頭部外傷、脳腫瘍、髄膜炎、神経毒の中毒症など、いずれも放置すれば致死的な疾患を意味する。そしてそれらの疾患がもたらす脳圧の亢進自体が、ある一点を超えれば致死的となる(後述#脳潅流圧を参照)。
頭蓋内圧の亢進による死は、
によってもたらされる。特に尿崩症は対処に限界があり、病院内での死因はこれが多い。
頭蓋骨の直下に圧電センサーを入れる方法と、側脳室に直接チューブを差し込んでそこから立ち上がる水柱の圧を測る方法(脳室ドレナージ、英: extraventricular drainage; EVD)がある。頭蓋内圧にSI国際単位系が使われないのは後者における利便性を考えてのことであり、臨床現場に於いての測定し易さを最優先にするためである。腰椎穿刺の際に立ち上がる水柱圧も頭蓋内圧を反映しているが、継続的に測定することは出来ない。
留意すべきはいずれの測定方法も侵襲度が高く、患者の絶対安静を要する。やむを得ない場合以外は、上述の神経学的所見によって頭蓋内圧を推測するのが通常である。
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脳実質の容積の増大である。他のどの臓器とも同じく、脳も侵襲を受ければ浮腫を起こす。その機序には3つの異なる経路があるが、多くの疾患に於いて3つの経路が同時に起こっている。
高血圧が長時間持続することにより、血管内から脳実質への水分移動による浮腫。高血圧性緊急症による中枢神経症状はこれによる。
頭蓋内での細胞死により、サイトカインを介した免疫反応による浮腫。脳梗塞、頭部外傷による浮腫の主要な病態はこれである。
血液脳関門の破綻により、血清成分が脳実質に浸透しやすくなることによる浮腫。破綻の原因は、後述の占拠性病変や髄膜炎などによりクモ膜や軟膜が破れる事にある。
炭酸ガス分圧の上昇による脳循環血液量の増加など。
吸収障害、過剰分泌による脳脊髄液の貯留など。
髄液はクモ膜顆粒と側脳室の脈絡叢から産生され、脊髄を経て腹腔内に放出される。この流路のどれかが閉塞すれば水頭症となり、頭蓋内圧が亢進する。特にモンロー孔と中脳水道は、頭蓋内出血による血腫や脳実質浮腫によって閉塞を来しやすく、頭部CTによってその危険性を判断することが肝要である。
頭蓋内の空間は、硬膜によって右脳・左脳・小脳の3つにパーティション状に分けられている。頭蓋内圧が緩徐に亢進した場合には脳ヘルニアが見られないこともあるが、急激に亢進すればその原因病変のあるパーティションから脳実質が押し出されて脳ヘルニアを生じる。大脳鎌によって生じる物を帯状回ヘルニア、小脳テントによって起きる物をテント切痕ヘルニアと言い、呼吸麻痺や尿崩症による死の原因となる。
腫瘍、血腫、膿瘍など。血腫の場合は意識レベルの低下という兆候で現れることもあるが、3つともてんかん発作を起こしうる。それ自体が遷延すれば呼吸停止により生命に関わる。特に側頭葉に生じた場合にてんかん発作を起こしやすい。脳腫瘍の場合は逆に、それが腫瘍の早期発見につながるとして予後改善の指標とすることもある。
頭蓋内圧亢進はそれ自体が致命的であるため、原疾患の治療と平行して、時には優先してでも、それに対する治療を行わなくてはならない。
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