出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/12/17 21:01:27」(JST)
育児(いくじ、英: child care)とは、乳幼児の世話、養育をすることである[1][2]。乳幼児とは乳児と幼児を指し、小学校に入学する前の子供の総称である[3]。
育児には様々な段階があるが、学齢後は子育てを参照。
育児を大きくわけると、愛情、栄養、養護に分けることができる[4]、と澤田啓司は述べた。
育児の基本条件の中でも第一のものは、養育される小児と、養育する人との間に愛情の交流があることである[4]とされる。物理的な環境がいかに整っていようが、愛情を欠く環境では小児は健全には育たない[4]と澤田啓司は指摘している。このことは多くの研究が示している[4]と言う[6]。ボウルビーは、母と子が愛情のきずなで結ばれていることが、子供が(子供の)自己への信頼を育てることになり、それがやがては他者への信頼を育てることになり、円満な社会生活を営むことができる人格形成につながる、と指摘した[4]。子が母に対して抱く愛情のきずなをボウルビーは「attachmentアタッチメント」と呼んでいる。クラウスとケネルらは、こうした愛着の形成には、出生直後における母と子の皮膚接触(スキンシップ)や母乳哺育が大切であると指摘した[4]と言う。こうした指摘を受けて、近年の産院では、分娩直後から母子が肌を触れ合う機会を増やしたり、早期授乳を行ったり、産褥期に母と子を同室にする、などの配慮をすることが増えてきている[4]、と澤田啓司はした。
可能な限り母乳で乳児を育てるほうがよい、母乳で育てられている赤ちゃんは、人工栄養の赤ちゃんと比較してSIDS(乳幼児突然死症候群)が起こりにくいと考えられている、と日本の厚生労働省のサイトでは説明している[7]。ユニセフは金のリボン運動と称して母乳育児を推奨している。(産婦人科の)島岡昌幸、池下育子ら監修のサイト『妊娠・育児大百科』も、母乳育児はママと赤ちゃんの間に強い絆をつくりあげていく、母乳を射出するオキシトシンというホルモンには、母親に幸福感や恍惚感を与える作用が、そして、母乳を産生するプロラクチンというホルモンには母親に赤ちゃんを保護したいと思わせてくれる作用があるそうだ、とし、母乳育児は母性を育む一番の近道とする[5]。出産後、母親から最初に分泌される初乳には、IgA抗体が多く含まれ、乳児を細菌などの感染から守る働きをしている[5]。 母乳の出方には個人差があり、「必要以上に授乳の方法に関して心配はしないほうがよい」と言われることもある。母乳が不足している場合は、ミルクを足す。
母乳の出が悪い、疾病や死去、離婚、子供と母親や母親の実家との関係を遠ざけるためにわざと授乳させない、などの理由で、母親の代わりに授乳させる産婦を乳母という。産婦が、別の産婦に一時的に授乳の代行を頼むことを「もらい乳」という。
養護、すなわち身の回りの世話をしてやることについて解説すると、体温を維持すること、皮膚を清潔に保つこと、排泄物(いわゆるウンチやオシッコ)を処理することなどは、乳幼児は自分ではできないことなので[4]、大人がそれをしてやることになる[4]、という。また、健康増進のために、屋外に出て日光浴・外気浴・外遊びなどを行うことも大切だ[4]と言う。上で愛情が第一の基本条件だと指摘されているが、こうした養護行為もただ機械的に行うのではなく、愛情をこめて微笑みかけ語りかけるほうがよいし、また養育者は、子供からの笑顔や語りかけに対して積極的に応答することが大切だと、こうすることによって母と子のきずなが密となり、コミュニケーションの基礎がつくられてゆく[4]、と澤田は指摘した。また数多くの言葉を聞かせてやることによって、言語の習得の基礎がつくられる[4]という。
一般的に、乳幼児には一定期間おむつをはかせて衣服や居室の汚れを防ぐことが多い。一方で、あえておむつを使わず、乳幼児の尿意、便意を察知し、股を出して便器に排泄させる育児法を取っている親もいる。
いずれの場合でも、排泄後、尿や便をふき取り、ローション・パウダーなどでかぶれを防がなければならない。かつて乳幼児のおしりふきには、綿がよくつかわれたが、近年はウェットティッシュがよくつかわれる。
吐しゃ物、痰、鼻水も排泄物である。吐しゃ物に含まれる胃液が気管に入ると、気管支や肺の炎症の原因になることがあるため、あまり乳幼児の吐しゃを制止してはならない。かぜ、鼻炎などの原因で、乳幼児の鼻が詰まった時には、吸引して呼吸を楽にしてやらなければならない。かつては親が直接口で吸ったり、チューブで吸ったりしていたが、近年は鼻水をボトルにためることができる鼻水吸い器が開発され、乳幼児の鼻水が親の口の中に入ることが防げるようになった。
生後5か月頃から、乳に加えて半固形食を与え、次に固形食を与えるようになる[4]。この過程が「離乳」(weaning)であり、この時期に食べさせる食物を「離乳食」という[4]。
断乳の適切な時期については、育てる側にも様々な考え方があり、また赤ちゃんひとりひとりごとに事情も異なっているので、一概には言えない。「早ければ良い」というようなものではない、とされる。3食とも離乳食となり栄養が充分に摂れていることが確認できると、断乳を検討しはじめても良い時期となる。12ヶ月頃を目安に断乳すると良い、と言う人もいる。また、(上の節で指摘したような)母子のアタッチメント(愛着)が強化されるという利点に着目して、授乳することが発育を妨げず母子にとって楽しい行為であるうちはそのまま乳を併用すればよく、断乳を急ぐ必要はない、と言う人もいる[4]。
離乳が完了した後でも、乳幼児はすぐには食卓の上の食べ物を自分で口に運ぶことができるようになるわけではなく、養育者が助けてやる必要がある[4]。またこの時期は、少食や、むらのある食べ方や、《遊び食べ》の問題が生じやすい[4]。
離乳後の栄養に関して重要な点は、
という2点だと澤田は述べた[4]。
2歳近くなってくると、膀胱が大きくなり、尿を溜める働きがほぼ完成し、2時間ぐらいはオムツが濡れないことが多くなる。この時期において態度で教えられるようになっており、オマルやトイレの便座に座ることを嫌がらなければ、トイレット・トレーニングを始めるタイミングである。うまくできたら大いにほめ(英語版)、失敗しても叱らないことが重要であるとされる。
一人で家事、育児をおこなうことで親が極度に疲弊して追い詰められることがある。ワンオペから派生して「ワンオペ育児」と呼ぶ[8][9]。
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