出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/01/11 03:03:43」(JST)
ノロウイルス属 | |||||||||
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ノーウォークウイルスの透過型電子顕微鏡写真(スケールバー50nm)
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分類(ウイルス) | |||||||||
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種 | |||||||||
ノーウォークウイルス |
ノロウイルス(Norovirus)は、非細菌性急性胃腸炎を引き起こすウイルスの一属である。感染者の糞便や吐瀉物、あるいはそれらが乾燥したものから出る塵埃を介して経口感染するほか、河川を経由して蓄積された貝類の摂食による食中毒の原因になる場合もある。ノロウイルス属による集団感染は世界各地の学校や養護施設などで散発的に発生している。「NV」や「NoV」と略される。
ノロウイルスは約7,500塩基を持つ、プラス鎖の一本鎖RNAウイルスに分類されるエンベロープを持たないウイルスの属名である。ウイルス粒子は直径 30-38nmの正二十面体であり、ウイルスの中では小さい部類に属する。
通常、ウイルスについての詳細な研究を行うには適切な動物培養細胞を探して感染させ、ウイルスを増殖させることが必要であるが、ヒトに感染するノロウイルスについては実験室的に増殖させる方法がまだ見つかっていない。このため、検査や治療方法に対する研究が他のウイルスと比べて格段に遅れているのが現状である。乾燥した状態でも、4℃では8週間程度、20℃で3~4週間生存するとされている[1]。
ノロウイルスのゲノムはプラス鎖の一本鎖RNAで、長さは7.3~7.5キロ塩基である。5'末端はVPgタンパク質と共有結合しており、3'末端はポリアデニル化されている。「非構造タンパク質(ORF1)」「構造タンパク質1 (VP1)」「構造タンパク質2 (VP2)」の3つのタンパク質コード領域が存在し、このうちORF1は翻訳後にウイルス由来のプロテアーゼによって6つのタンパク質に分断される。VP1とVP2はゲノムRNAから複製されるサブゲノムRNAから翻訳され、ウイルスのカプシドを構成する。[2]
ORF1から生じる6つのタンパク質は5'端側から順に以下の通りである。[2]
なおネズミのノロウイルス(GV)の場合、VP1のコード領域と重なるように第4のコード領域が存在している。これはカリシウイルス科の中でも珍しく、サポウイルスとネズミノロウイルスのみの特徴である。ここから翻訳されるタンパク質VF1は宿主細胞のミトコンドリアに移行し、自然免疫応答を制御している。[2]
ノロウイルス属は、ウイルスの分類上第4群(プラス一本鎖RNAウイルス)のカリシウイルス科に属している。ノロウイルス属にはノーウォークウイルス1種のみが認められているが、おそらく種に相当するであろうジェノグループ5つが認識されている。ヒトに感染するのはGI、GII、GIVの3種類で、GIIIはウシやヒツジ、GVはネズミに感染する。またGIIはヒト以外にブタにも感染する。[3]
現在はVP1領域およびORF1のポリメラーゼ領域それぞれの遺伝子型を使って、詳しく分類されている。VP1領域はGIで9つ、GIIで22の遺伝子型がある。またGII.4型は多様性に富んでおり、それをさらに詳しく分類することも行われている。 [4][5]
ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)はヒトに経口感染して十二指腸から小腸上部で増殖し、伝染性の消化器感染症(感染性胃腸炎)を起こす。毒素は分泌せずに十二指腸付近の小腸上皮細胞を脱落させ[7]、特有の症状を発生させる。死に至る重篤な例は稀であるが、苦痛が極めて大きく、稀に十二指腸潰瘍を併発することもある。特異的な治療法は確立されていない。感染から発病までの潜伏期間は12時間~72時間(平均1~2日)で、症状が収まった後も便からのウイルスの排出は1~3週間程度続き、7週間を越える排出も報告されている[8]。年間を通じて発症するが、11~3月の発症が多く報告される。
2007年5月に報告された厚生労働省食中毒統計による2006年の食中毒報告患者数は、71%がノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)感染症である[9]。ヒトへの感染においては血液型で感染率に差があり、血液型抗原であるH(O), A, Leb型抗原に吸着されやすいことから、O型は罹患しやすくB型は罹患しにくいことが報告されているが、これはウイルス株の各遺伝子型によって様々であることが明らかになっており、日本も含め世界中で流行しているGII/4遺伝子型株などは、H(O), A, Bの全てを含む多様な抗原に吸着されやすいことが判明している[9]。ヒト以外では発症しないとされ、発症機序を含め十分に解明されていない。
主な症状は、嘔吐・下痢・発熱で、症状には個人差があるが、主な症状は突発的な激しい吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、悪寒、38℃程度の発熱で、嘔吐の数時間前から胃に膨満感やもたれを感じる場合もある。これらの症状は通常、1、2日で治癒し、後遺症が残ることもない。ただし、免疫力の低下した老人や乳幼児では長引くことがあり、死亡した例(吐瀉物を喉に詰まらせることによる窒息、誤嚥性肺炎による死亡転帰)も報告されている。
また感染しても発症しないまま終わる場合(不顕性感染)や風邪症候群と同様の症状が現れるのみの場合もある。一般に「嘔吐、下痢、腹痛を伴う風邪」という表現があるが、それらが実はノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)による感染症の可能性も低くはなく(エンテロウイルス等の他の原因もある)、単なる風邪ではない場合がある。これらの人でもウイルスによる感染は成立しており、糞便中にはウイルス粒子が排出されているため、注意が必要である。
ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)による感染症は経口感染が原因で、その感染経路から以下に大別できる。
販売あるいは調理提供する食品そのものの衛生管理の(食品衛生学的な)立場からは『飲食物からの感染』のケースが、院内感染などの感染管理の立場からは『ヒトからヒト』のケースが特に問題とされるが、症状や経過には感染経路による違いはない。国立感染症研究所の病原微生物検査情報(2006/2007年の統計)の集団感染事例の集計によると、原因食品が明確ではないケースが約6割を占めており、汚染食品の摂食よりはるかに多い原因となっている。
食の安全 |
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用語 |
食中毒 |
HACCP |
重要な要素 |
FAT TOM |
pH |
水分活性 (Wa) |
病原体 |
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ノロウイルス |
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ブラストシスティス症 |
クリプトスポリジウム症 |
旋毛虫症 |
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ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)による食中毒は、糞便由来のウイルスを含む下水が流れ込む河川や海に生息する動物、とくにカキやアサリ、シジミなどの二枚貝によるものが最も多いと言われてきた。これは、カキを生食する機会は冬場が多いこと、比較的高率でカキからウイルスが検出されたこと、などが理由と考えられている。
ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)は貝類自体には感染しないと考えられている。すなわち、これらの貝の体内でウイルスが直接に増殖することはない。しかしこれらの貝では消化器官、特に食物の細胞内消化を行う中腸腺に海水中から濾過摂食されたウイルスが生物濃縮によって蓄積することが知られており、このことが魚介類由来の食中毒の原因だと考えられている。カキなど貝の汚染源は徐々に解明されつつある、後述の「魚介類の汚染源」を参照。
しかし、ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)感染症の原因食材がカキと特定される割合は年々低下しており、2006年後半にはカキが食材と特定された集団食中毒は発生しなかった。疫学的な知見からは、カキ以外の食材、たとえば最近では外国産の漬物の一部、[12]あるいは直接・間接的なウイルスへの接触による、原因の特定しづらい感染経路が圧倒的であると考えられる。また、二枚貝にウイルスが蓄積するという知識が浸透し、食用生ガキの流通経路においてその対策もとられつつあることがカキを原因とする食中毒の減少にもつながっていると考えられる[13]。2011年5月に千葉県で生シラスが原因と考えられる集団食中毒事例が報告されたが、ウイルスがシラスの体内、体表のどちらを汚染していたのかは判明していない[14]。
ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)はヒトの十二指腸から上部小腸腸壁細胞に感染して増殖し、新しく複製されたウイルス粒子が腸管内に放出される。ウイルス粒子は感染者の糞便と共に排出されるほか、嘔吐がある場合は胃にわずかに逆流した腸管内容物とともに吐瀉物にも排出される。糞便や吐瀉物がごくわずかに混入した飲食物を摂取したり、汚物を処理したときに少数のウイルス粒子が手指や衣服、器物などに付着し、そこから食品などを介して再び経口的に感染する。
またノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)の場合、10から100個程度の少数のウイルスが侵入しただけでも感染・発病が成立すると[15]考えられており、わずかな糞便や吐瀉物が乾燥した中に含まれているウイルス粒子が空気を介して(空気感染で)経口感染することもあると考えられている。すなわち、嘔吐直後にエアロゾルとなったウイルスを直接吸引する、あるいは塵埃に付着したウイルスを吸引して感染することもある。これは、大多数集団感染(院内感染など)の原因として最近、重視されるようになってきた。
発病した人はもちろん、不顕性感染に終わったり胃腸症状が現れなかった人でも無症候性キャリアとして感染源になる場合があり、食品取り扱い時には十分な注意が必要である。また、症状消失後も1週間から1ヶ月間ウイルスを便中に排出することがある[13]事から、3~5日程度の営業停止になった飲食店が、営業再開後に再び食中毒事件を発生させることも多い。
ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)はその培養(増殖)方法がまだ見つかっていないため、糞便中のウイルス粒子を直接(増やさずに)検査する必要がある。
下記手法が主に診断に用いられている。
かつては、電子顕微鏡法が利用されていたが、現在では RT-PCR が主流となっている。
研究用検査試薬としては、イムノサーチ®NVが上市されている。糞便中のノロウイルス抗原をイムノクロマト法により検査し、15分で結果が出る。臨床検査としては「クイックナビ-ノロ」が上市され、保険適用となっている。[18]ただし健康保険では、3歳未満または65歳以上などの制約がある。
ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)に有効な抗ウイルス薬は存在しない。下痢がひどい場合には水分の損失を防ぐために輸液などを対症療法的に用いる場合がある。また止瀉薬(下痢止め)の使用については、ウイルスを体内にとどめることになるので用いるべきでないと言う専門家もいる。医師の指示がなく、仕事等の生活上でも特に必要でない場合は下痢止めの服用は避けるのが賢明だという説もある。日本国厚生労働省は止瀉薬使用を望ましくないと記載しているが、ここまでに明言しているのは米国FDAとは対照的である[19]。
しかし、臨床の現場ではコンプロマイズドホスト(易感染宿主、免疫力の著しく低下した患者)の死因は重症下痢に起因する症例も散見されるため、重症例においては患者の電解質データなどを含め、止瀉薬の使用の是非は総合的に判断すべきである。ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)は主に小腸上皮細胞で増殖することはわかっているが、止瀉薬は主に大腸に作用する。実験室レベルではまだウイルスの大腸細胞での増殖は成功していない。このため、止瀉薬が本当に大腸でのウイルスの生存を促すかは不明である。また、ウイルスの大腸での寿命に関するデータは得られていない。
家庭においては、経口補水液またはスポーツドリンクを人肌に温めてから飲むことが推奨される。これらが無い場合は0.9%の食塩水(100 mlに食塩0.9gを溶かしたもので、いわゆる生理食塩水である)を調製し、人肌に温めて飲むことが推奨される。電解質を含まない湯冷まし、お茶などは水分の吸収が遅いので推奨できない。
上述した感染経路を考慮すると、特に飲食物を扱う人が十分な衛生管理を行うことが効果的な感染予防につながる。ワクチンによる感染予防は、2010年現在ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)に対する有効なワクチンが開発されていないため期待できない。また、このウイルスに対する免疫は感染者でも1~2年で失われるといわれている。原因は免疫抗体価低下説やウイルスの遺伝型が変化するため抗原性が変化するなどの説があるが、まだ確証は得られていない。このためワクチンの開発には困難が予想される。
遺伝子型GI.1を標的とする経鼻型ワクチンが開発中で、18~50歳の98人を対象とした臨床試験によれば発症を半分近くに抑える効果がある[20]。
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特に調理者が十分に手洗いすること、そして調理器具を衛生的に保つことが重要である。ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)はエンベロープを持たないウイルスではあるが、逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)、消毒用エタノールなどが一般的な感染症対策として用いられる。[21]また、PHを酸性にしたエタノールを有効成分とするアルコール除菌スプレーや手指殺菌消毒剤も効果的である。
また、ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)は60℃30分の加熱では感染性は失われず、85℃以上1分間以上の加熱によって感染性を失うため、特にカキなどの食品は中心部まで充分加熱することが食中毒予防に重要である。生のカキを扱った包丁やまな板、食器などを、そのまま生野菜など生食するものに用いないよう、調理器具をよく洗浄・塩素系漂白剤による消毒をすることも大事である。
洗浄と消毒の順番については第1に洗浄(と十分なすすぎ)、第2に消毒である。この順番を逆にすると効果が弱くなってしまう。
厚生労働省ノロウイルス食中毒予防対策リーフレットによれば、一般家庭では吐瀉物や汚物の付いた衣類の消毒には次亜塩素酸ナトリウムの0.1%水溶液(1000ppm、塩素系漂白剤5%液の50倍希釈、例えば500mlPETボトルに水500mlと塩素系漂白剤5%液10mlを混和)への浸漬が、また食器、カーテン、ドアノブ、スイッチ、トイレの便座表面などの消毒には0.02%水溶液(200ppm、塩素系漂白剤5%液の250倍希釈、例えば500mlPETボトルに水500mlと塩素系漂白剤5%液2mlを混和)のスプレー使用が勧められている[22]。
生食用カキの食品衛生法の規格基準においてノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)に関する基準は設定されていないので、「生食用」と表示された場合でも「ウイルスがいない」という保証があるわけではない。消費期限内であるか否かにかかわらず感染源となる場合もありうる。ただし、自主的に検査を行っている水産加工業者などもかなり増え、カキの生食が一律に危険というわけではない。過剰な反応に対しては風評被害という指摘もされている[23]。もちろん、検査義務が法制化されているわけでも全ての業者が自主検査を行っているわけでもない。そして、自主検査におけるサンプリングの妥当性および出荷見合わせの有効性は確認されていない。よって、一律に安全なわけでもない。厚生労働省や保健所もカキの生食用販売を積極的には禁じていないがカキ等の二枚貝については充分加熱した後に食べるよう呼びかけている。
乾燥した糞便や吐瀉物から飛散したウイルスを吸い込んだり、または接触することにより感染するため、感染者の糞便や吐瀉物を処理、便器を清掃する場合は、手袋・マスクを使用し直接手で触れないよう注意し、作業後は手をよく洗うよう心掛ける。汚染物は飛散せぬよう袋に密閉し処分する。汚染された場所を消毒する際、前出のようにウイルスは逆性石鹸や消毒用エタノールに対する抵抗力が強いため、これらによる消毒はほとんど効果がない。現在細胞を用いても培養方法が存在しないため消毒つまりウイルス不活化に対する確証は得られていないが、次亜塩素酸ナトリウムに対する抵抗力は比較的弱いのではないかと想像されている。感染者のいる場合、トイレ・ドアノブ・蛇口・手すりなどは汚染しやすい箇所であるため、汚れを落とした後に消毒する。また、なるべく直接手で触れない方が良い[24]。ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)は症状が消失した後も3~7日(場合によっては2週間以上)はウイルスが排出されることに留意しなくてはならない。消毒対象が布などの耐熱性のあるものの場合、スチームアイロンの活用も有効である。
また、病院やデパート、ホテル、駅、等の不特定、多数の利用があるトイレでは、便器の洗浄水に洗浄、消毒剤を添加させるサニタイザーが取付けられ、便器を洗浄する度に便器から消毒剤が一定量出て薬剤で洗浄される為に便器からの飛沫による感染予防にも有効となる。
2000年代は遺伝子型「GⅡ/4」と呼ばれる特定のノロウイルスが世界各地で流行し、集団発生を起こしている。厚労省の食中毒統計(平成17年度版)によると全食中毒患者の33%を占めており患者数では最大であり、日本での流行は冬(11月~2月)に多いが、流行年によっては流行時期には偏りがある[25]。2006/07流行年は、当時過去最悪と言われる1000万人規模の報告患者数を記録し[26]、以後患者数は減少していたが、2012/13流行年は2006/07流行年に匹敵する患者数が予測されている[27]。 この、2012/13流行年の患者数の増加は遺伝子型「GⅡ/4」の変異株によると考えられている[28][29]。
2014年後半から主要流行株に変化がありヨーロッパ、アメリカ、日本で検出例の少ない遺伝子型「GII.17型 Kawasaki variant」が流行している[5][31]。また国立感染症研究所は免疫をもつ人が少ないため2015年は 「GII.17型 Kawasaki variant」が大流行するおそれがあるとした[32][33][34]。
日本では、カキなど魚介類の汚染源は下水道の処理水に由来していると考えられる[35]。それは、感染性胃腸炎の流行時期(主に冬期)に、下水処理場(下水道)や海に流入するウイルスの数が増加[36]し、下水処理システムでは処理水中のウイルスの無力化(不活化)を目的とした処理がされていない為である。従って、結果的に下水処理場で処理しきれなかったウイルスは海や上水道の取水施設に流入する[35]。なお、上水道用水の浄化方法として多く用いられている急速濾過と塩素消毒を組み合わせた方法では大腸菌やウエルシュ菌などの病原性細菌の除去は出来るが、「クリプトスポリジウム」原虫や「ノロウイルス」等の塩素耐性の強いウイルスは、除去出来ていない[37][38]。
一方、下水汚泥や糞尿の海洋投入(海洋投棄)が行われている場合、水域全体がウイルスにより汚染されている場合がある。2012年6月にはアメリカ合衆国の食品医薬品局が大韓民国(韓国)からのカキ、二枚貝、ムール貝の衛生基準が不十分であるとして市場からの回収要請を出している[39]。 国内でも、昭和40年代まで主に瀬戸内海に於いて、畜舎排水、し尿の海洋投棄が一般的であった[40]。汚濁の影響は平成に入ってからも残っている[41]。
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