- 英
- dissecting aortic aneurysm DAA, dissecting aneurysm of the aorta DA
- 同
- 剥離性大動脈瘤、大動脈解離
- 関
- 急性大動脈解離, 解離性動脈瘤
分類
病因
- 1. 動脈硬化性
- 2. 嚢胞性中膜壊死:特に若年者で、かつ Marfan(マルファン)症候群を合併していることが多い。
症状
- PHD.354 HIM.1565
- 突発性、激烈な前胸部痛(Stanford A型)・背部痛(Stanford B型)。移動性。
- 血管の閉塞症状(頚動脈:意識障害、麻痺、上腸間膜動脈:悪心・嘔吐、上腹部痛、下血、腎動脈:乏尿、血尿、腸骨動脈:下肢痛、チアノーゼなど)
- 循環器症状:血圧↑ ← 狭窄部より近位の血圧が増大する(IMD.474)
- 消化器症状:悪心・嘔吐(痛みから交感神経刺激)
- 腎臓:乏尿(腎血流減少、交感神経興奮)、血尿
- 全身症状:疼痛と共にショックを起こす、発汗(交感神経刺激)
- ARをきたした場合:(急性ARによる)呼吸困難、血痰、動悸
- DeBakey I型・DeBakeyI II型(Stanford A型):大動脈弁閉鎖不全、脳卒中発作、鎖骨下動脈閉塞による上肢の疼痛(身体所見として左右上肢の血圧差)
- DeBakey III型(Stanford B型):III型では肝・腎不全、消化器症状、(大動脈分岐部)背部痛、下肢の阻血(下肢の疼痛)
検査
血液検査
画像検査
- 胸部単純X線写真 + 胸部造影CT/胸部CT
- 心電図
- 胸部単純X線写真:縦隔陰影の拡大や胸腔内血液貯留。縦隔の拡大、カルシウムサインを認める。カルシウムサイン(血管内腔のカルシウム沈着部位)と外膜の関係から内腔の大きさを推定できる。
- 胸部CT/胸部造影CT:解離の部位・広がり・大きさ
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- Stanford B急性大動脈解離
- 胸部大動脈にしか解離腔を認めない。
- 経胸壁:上行大動脈瘤については解離の有無、内膜亀裂の位置、解離腔に血流があるかどうか、ARの有無や心嚢液貯留の有無(IMD)
- 経食道心エコー検査:下行大動脈における解離腔の広がりや血流の状態(IMD)
- 大動脈造影:大動脈弁閉鎖不全症や解離の範囲を評価できる。
治療
- Stanford A:緊急手術
- Stanford B:降圧療法
国試
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/05/26 20:21:22」(JST)
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大動脈解離 |
分類及び外部参照情報 |
左鎖骨下動脈起始部 (3) から腹部大動脈 (4) に至る大動脈解離。上行大動脈 (1) および大動脈弓 (2) には及んでいない。
|
ICD-10 |
I71.0 |
ICD-9 |
441.0 |
DiseasesDB |
805 |
MedlinePlus |
000181 |
eMedicine |
emerg/28 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
テンプレートを表示 |
大動脈解離(だいどうみゃくかいり、英: Aortic dissection)とは、3層構造を作っている大動脈のうち真ん中の層の膜(中膜)に、なんらかのきっかけによって血流が入り込んでしまい、層構造が別々に剥がれていく(解離してしまう)疾患。
尚、解離性大動脈瘤(dissecting aneurysm of the aorta)と混同しないように注意。大動脈解離は特に瘤形成を認めないことも多く、径が拡大して瘤形成を認めた場合にのみ「解離性大動脈瘤」と呼ばれる[1]。
目次
- 1 病態
- 2 分類
- 2.1 Stanford分類
- 2.2 Debakey分類
- 3 症状
- 4 検査・診断
- 5 治療・予後
- 6 脚注
- 7 参考文献
- 8 関連項目
- 9 外部リンク
病態
正常な層構造が壊れた大動脈は弱くなり、最悪の場合破裂してしまう。また、大動脈の出発点である大動脈起始部(バルサルバ洞)から心臓にかけて解離が進めば、そこから出ている冠動脈の血流を阻害して心筋梗塞を起こしたり、大動脈弁輪拡張に伴い大動脈弁を壊したり(大動脈弁閉鎖不全症)、心臓を包む心嚢という袋の中に出血を起こしたりすると心タンポナーデを起こす。これらの合併症は死に至るものであり、大動脈解離が危険な病気である所以といえる。
また、急性大動脈解離においては破裂や心タンポナーデのみが危険ではない。解離によって偽腔が重要血管を閉塞すると脳梗塞、脊髄梗塞、腸管などの消化管虚血、下肢の虚血を引き起こす。重要臓器に対する虚血が起きた場合の救命率は手術を行い得た場合でも70%以下であり、血管疾患の中でも特に重要なものである。
分類
各種分類
|
|
|
|
頻度 |
60% |
10–15% |
25–30% |
分類 |
DeBakey I |
DeBakey II |
DeBakey III |
Stanford A |
Stanford B |
近位 |
遠位 |
Stanford(スタンフォード)分類、DeBakey(ドゥベイキー)分類が用いられる。
Stanford分類
- Stanford A
- 上行大動脈に解離が及んでいる状態
- Stanford B
- 上行大動脈に解離が及んでいない状態
Debakey分類
- DeBakey I
- 上行大動脈に入口部があり、腹部大動脈まで解離が及ぶ状態
- DeBakey II
- 上行大動脈のみ解離している状態
- DeBakey IIIa
- 下行大動脈に入口部があり、腹部大動脈に解離が及ばない状態
- たとえ上行大動脈に解離があっても下行大動脈に入口部があれば、DeBakey IIIとなる(逆行性大動脈解離)。ちなみにこの場合、Stanford分類ではA型となる。
- DeBakey IIIb
- 下行大動脈に入口部があり、腹部大動脈に解離が及ぶ状態
症状
強烈な痛みは患者の96%に見られ、解離の場所を推定するのにも重要な症状である。心不全症状を起こすこともあるほか、初発症状が突然死であることもある。また、解離によって血圧の上昇または低下が起こるほか、胸水の貯留が見られることもある。
検査・診断
激痛から大動脈解離を疑う。胸部X線で大動脈陰影や上縦隔の拡大が見られることがあるが、特に所見が見られないこともあるため、基本的にCTやMRIで診断する。
- CT
- 静脈内に造影剤(ヨウ素系)を注入して造影する撮影法が基本である。真腔、偽腔、フラップの検出が可能で、感度は83~87%、特異度は87~100%と高い。最近登場したヘリカルCTはより正確な診断が可能であり、感度は96%、特異度は100%にも及ぶ。
また、近年の多チャンネルヘリカルCTでは造影CTではなく単純CTで診断可能な場合も希では無い。
- MRI
- さまざまな断面で鮮明な画像を得られるのが特徴である。解離の範囲や状態を正確に把握するのに適している。感度・特異度はともに96%。
- 心エコー
- 内膜フラップを検出できれば確定できる。また、Stanford A型解離では心タンポナーデ(エコーフリースペースとして見える)をきっかけに解離を診断するケースもある。
治療・予後
予後はStanford AであるかStanford Bのどちらかによって大きく異なる。Stanford Bの場合、脳に血流を送る腕頭動脈、左総頚動脈が保たれるため、保存的に治療が行われる。ただし、腹腔動脈、両側腎動脈、上腸間膜動脈に解離が及んだ場合は手術適応となりえる。また、腸骨動脈が解離によって閉塞された場合も下肢の筋壊死を引き起こすため、ステントや非解剖学的バイパスなどの手術治療が行われる場合がある。この場合、閉塞した時間が長ければ、筋腎代謝症候群(MNMS:MyoNephrotic Metabolic Syndrome)を引き起こし、これにより命を失う場合もある。Stanford Aの場合、腕頭動脈、左総頚動脈に血流が減少し脳死の危険が高いので、緊急手術適応となる場合が多い。ただし、早期血栓閉塞型であれば保存的に治療を行う。大動脈弁に解離が及んで大動脈弁閉鎖不全、心筋梗塞、心タンポナーデを起こした場合、予後は非常に悪い。
なお、大動脈解離に伴うAMIに対して血栓溶解療法や抗凝固療法、IABP(Intra Aortic Balloon Pumping:大動脈内バルーンパンピング)が禁忌であるのは有名で、医師国家試験などにもよく出題されるが、実際の診療の場においては、医師の慎重な判断の下にIABPが行なわれることがある。
脚注
- ^ 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011 年改訂版)
参考文献
関連項目
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末梢動脈血行再建術 | 末梢静脈血行再建術 | 静脈抜去術(en) | 静脈血栓摘除術(en) | 内シャント作成術
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内科的治療
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循環作動薬
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抗不整脈薬
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Ia群: プロカインアミド, キニジン
Ib群: リドカイン, フェニトイン
Ic群: フレカイニド(en), プロパフェノン(en)
II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
III群: アミオダロン, ソタロール(en)
IV群: カルシウム拮抗剤(ベラパミル, ジルチアゼムなど)
|
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心不全治療薬(en)
|
利尿薬 | 血管拡張薬 | 強心配糖体 | 強心剤 | PDEⅢ阻害薬
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狭心症治療薬
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利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン系 (ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬(en)) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
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Japanese Journal
- P2-12-4 妊娠34週で発症したマルファン症候群を合併しないStanford A型解離性大動脈瘤の1例(Group90 合併症妊娠(症例)4,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 伊藤 充彰,鈴木 克尚,鈴木 徹平,平光 志麻,松川 哲,古井 俊光,木下 吉登
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 761, 2011-02-01
- NAID 110008509706
- 自己血管標準内シャント感染から大動脈グラフト感染,感染性大動脈瘤,大動脈食道瘻をきたした血液透析患者の1剖検例
- 山口 裕輝子,深水 圭,那須 誠,薗田 和弘,甲斐田 裕介,安達 武基,春日 朱門,若杉 大輔,永野 真喜雄,田中 将博,柴田 了,楠本 拓生,吉村 潤子,上田 誠二,奥田 誠也
- 日本透析医学会雑誌 44(3), 261-268, 2011
- … 症例は73歳,女性.腎硬化症による腎不全のため1999年より維持透析を開始.2000年,無症候性解離性大動脈瘤に対して上行弓部大動脈置換術,下行大動脈ステントグラフト内挿術を施行した.2006年3月26日に発熱を認めたため,当院を受診.左上肢シャント部に悪臭を伴う膿性の浸出液を認めたため,シャント感染症の診断にて入院となった.血液,シャント部膿瘍の培養からStaphylococcus aureusを認め,抗生剤による治療を …
- NAID 130000674564
- 半固型経腸栄養剤の投与により高度の代謝性アルカローシスと高カリウム血症を呈した維持血液透析患者の1例
- 花村 菊乃,柴垣 有吾,木戸 亮,里中 弘志,土井 研人,花房 規男,野入 英世,藤田 敏郎
- 日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy 43(2), 215-219, 2010-02-28
- … 症例は4年前より軽度腎機能障害を認めていた72歳,男性.07年7月精巣上体炎に伴う感染後糸球体腎炎により血液透析導入となった.透析導入後,解離性大動脈瘤の破裂に対し緊急手術が施行され,維持透析に移行した.術後の経口摂取不能に対しリーナレン®,K-4S®による経腸栄養を開始.11月に胃瘻造設し,誤嚥防止のため経腸栄養剤を半固型製剤であるメディエフ®プッシュケアに変更したところ,高カリウ …
- NAID 10026316486
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- 大動脈は、外膜、中膜、内膜の3層構造となっており、十分な強さと弾力を持っていますが、なんらかの原因で内側にある内膜に裂け目ができ、その外側の中膜の中に血液が入り込んで長軸方向に大動脈が裂けることを大動脈解離といい ...
- 解離性大動脈瘤は大動脈瘤の一種であり、痛みがひどく、死亡する確率も高い病気です。原因は完全に明らかになったわけではありませんが、動脈硬化と高血圧が主な原因と考えられています。解離性大動脈瘤についてまとめたので ...
- こんにちは、一般病棟に勤務する2年目の看護師です。先週、夜中に腰痛で入院した70歳代の男性が、解離性大動脈瘤で緊急手術になりました。夜中に腰痛が強くなり、その変化に気づいた先輩看護師が、ドクターへコールして緊急CTを...
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- 次の文を読み、47、48の問いに答えよ。
- 48歳の男性。夜間の呼吸困難のため救急車で搬入された。
- 現病歴 : 4年前に狭心症と診断され、アスピリンと亜硝散薬とを服薬していたが、半年前から中断していた。3か月前から通勤途中の駅の階段を昇るとき軽度の胸痛を感じていた。2か月前から、就眠前の安静時にも軽度の胸痛が出現するようになった。2週前の夕方、勤務中に冷汗を伴う前胸部絞扼感を感じたが、30分ほど安静にしていると軽快した。昨夜、就寝後1時間ほどで呼吸困難のため覚醒した。横になると呼吸困難が再発するので眠れず、午前3時に来院した。
- 既往歴 : 8年前に健康診断で糖尿病を指摘されたことがある。
- 現症 : 意識は清明。身長169cm、体重68kg。呼吸数28/分。脈拍92/分、整。血圧122/88mmHg。頚静脈の怒張と下腿の浮腫とを認める。心雑音はない。両下肺にcoarse crackles を聴取する。右季肋部に圧痛を認める。
- 検査所見 : 尿所見:蛋白1+、糖1+。血液所見:赤血球430万、Hb14.2g/dl、Ht42%、白血球6,500、血小板30万。血清生化学所見:血糖150mg/dl、HbA1c6.8%(基準4.3~5.8)、総蛋白7.0g/dl、尿素窒素17mg/dl、クレアチニン0.9mg/dl、総コレステロール204mg/dl、トリグリセライド129mg/dl(基準50~130)、総ビリルビン0.5mg/dl、AST22単位(基準40以下)、ALT34単位(基準35以下)、LDH320単位(基準176~353)、CK40単位(基準10~40)、Na 148mEq/l、K4.6mEq/l、Cl103mEq/l。入院時の心電図を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [098F046]←[国試_098]→[098F048]
[★]
- 79歳の男性。急激に生じた胸痛と嘔吐のため搬入された。救急隊接触時の血圧は80/56mmHgであった。高血圧症で治療中である。来院時、胸痛は軽快しており、意識は清明。脈拍72/分、整。血圧184/96mmHg。頚静脈の怒張はなく、全身状態は安定している。血液生化学所見と心電図とに明らかな異常を認めない。胸部造影CT(別冊No.16A、B)を別に示す。
- まず行うべき治療はどれか。
[正答]
A
- Stanford A偽腔閉塞型急性大動脈解離/解離性大動脈瘤(Stanford A型):偽腔は閉鎖しており、解離腔は大動脈壁肥厚のように見える。心嚢への出血は少量認められる。本例は解離腔が閉鎖して症状が寛解した状態である。まずは降圧をはかる。
※国試ナビ4※ [105I058]←[国試_105]→[105I060]
[★]
- 28歳の初産婦。妊娠39週で自然陣痛が起こり入院した。身長158cm、体重83kg、脈拍80/分、整。血圧120/80mmHg。分娩経過観察中であったが、子宮ロ5cm開大で分娩進行が停止した。胎児心拍数異常も出現したので緊急帝王切開術が行われた。児は2,450gの女児、出血量は680 g、手術時間は45分であった。術後48時間のベッド上安静後、歩行を開始したところ、トイレで排尿後に突然激しい胸痛と呼吸困難とを訴え、チアノーゼが出現した。最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [095C013]←[国試_095]→[095C015]
[★]
- 74歳の女性。右変形性股関節症に対する人工股関節置換術後で入院中である。手術後2週目の歩行訓練中に突然、胸部の不快感を自覚した。意識レベルはJCS II-10。脈拍120/分、整。血圧150/80mmHg。呼吸数24/分。 SpO2 89%(room air)。呼吸音に異常を認めない。動脈血ガス分析(自発呼吸、 room air) :pH7.50、PaCO2 32Torr、 PaO2 51Torr、 HCO3- 24mEq/L。胸部エックス線写真に異常を認めない。
- 診断として最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106I048]←[国試_106]→[106I050]
[★]
- 54歳の男性。2時間前に始まった胸背部痛を主訴に来院した。10年前から高血圧で治療中である。服薬は不規則で降圧薬を飲み忘れることが多い。30年前からタバコを毎日20本吸っている。顔貌は苦悶状で全身の冷汗を認める。血圧は右上腕で160/100mmHg、左上腕で140/80mmHgである。心尖部に2/6度の拡張期雑音を聴取するが、呼吸音に異常は認めない。最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097F005]←[国試_097]→[097F007]
[★]
- 75歳の女性。突然の背部痛を主訴に来院した。高血圧のため投薬を受けている。胸部造影CT(別冊No、5)を別に示す。
- 合併する病態として考えにくいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [104A022]←[国試_104]→[104A024]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [112A011]←[国試_112]→[112A013]
[★]
- 英
- pulmonary thromboembolism, PTE
- 同
- エコノミークラス症候群
- 関
- 肺塞栓症、肺動脈血栓症
概念
- 肺動脈内腔に1次性に形成された血栓により閉塞された病態を肺血栓症、静脈系から肺動脈へ流入した物質により肺動脈が閉塞された病態を肺塞栓症という。
- 両者をまとめて肺血栓塞栓症と呼ぶが、臨床的には肺塞栓症が大半である。
- 塞栓物質として静脈系血栓、腫瘍、脂肪、羊水、空気、造影剤などが挙げられるが、頻度として下肢および骨盤の深部静脈血栓が80%と圧倒的に多い(深部静脈血栓症 DVT)。
- 肺動脈の閉塞により末梢肺組織が出血性壊死に陥ったものを特に肺梗塞と呼ぶ。
疫学
- 発症率は人口 10万人に対して 2.8人(1996年統計)。
- 男女比は1:1.3。あらゆる年齢層に発症するが、60-70歳代がピーク。
- 死亡率は14%。心原性ショックを呈した症例では30%(うち血栓溶解療法を施行された症例では20%、施行されなかった症例では50%)、心原性ショックを呈さなかった症例では6%である。
産婦人科
産科
- 産褥期、特に帝王切開術を経た患者に多い。(G10M.318)
症状
急性肺血栓塞栓症
- 参考1
症状
|
長谷川ら (n=224)
|
肺塞栓症研究会 (n=579)
|
呼吸困難
|
171(76%)
|
399/551(72%)
|
胸痛
|
107(48%)
|
233/536(43%)
|
発熱
|
50(22%)
|
55/531(10%)
|
失神
|
43(19%)
|
120/538(22%)
|
咳嗽
|
35(16%)
|
59/529(11%)
|
喘鳴
|
32(14%)
|
記載なし
|
冷汗
|
19(8%)
|
130/527(25%)
|
血痰
|
記載なし
|
30/529(6%)
|
動悸
|
記載なし
|
113/525(22%)
|
症状と病態との関係
- 1. 頻度の高い症状:急に発症する呼吸困難(約70-80%)、胸痛(約40-50%)。
- 2. 広範な塞栓の場合にみられる症状:不整脈(約30%)、狭心症様の胸部重苦感(約10%)、失神(約10%)、右心不全によるショック(10%以下)。
- 3. 肺梗塞・肺水腫を伴う場合に多い症状:胸膜炎様胸痛(約30%)、咳嗽(約10-40%)、発熱(約10-50%)、血痰(約5-10%)。
- 4. 特徴的発症状況:安静解除直後の最初の歩行時、排便・排尿時、体位変換時。
検査
- 参考1
-
- 胸部単純X線写真
- 心電図(右側胸部誘導の陰性T波、洞性頻脈、SⅠQⅢTⅢ、右脚ブロック、ST低下、肺性P、時計方向回転)
- SⅠQⅢTⅢ:Iでs waveがあり、IIIでQ waveがあり、なおかつT waveが陰転
- 肺動脈造影
- 肺シンチグラフィ(換気, 血流)
- CT
- MRA
- 経食道心エコー
診断
- 頻呼吸、頻脈、低酸素血症、胸痛など肺血栓塞栓症が疑われる症状があれば、酸素投与、ルート確保、血液検査(動脈血液ガス検査)、胸部XP、胸部CT、12誘導心電図を速やかに施行する。
- 可能であれば、ベットサイドエコーで右心不全徴候、特に右室が左室を圧排していないかどうか確認する。
- Dダイマーが高値であれば、PTEの尤度を上げることができる。
- 下肢のcompression testが陽性であれば、有無を言わさず胸部造影CTをやるしかない。
- 速やかに検査が可能であり、確定診断が可能なのは胸部造影CTである。
鑑別診断
- 胸痛や呼吸困難を来す疾患が鑑別となる。
合併症
治療
- 方針:呼吸管理(酸素投与)、循環管理(昇圧薬(ドパミン、ドブタミン、ノルエピネフリン))
- 抗凝固療法:ヘパリンから始め、ワルファリンの内服を開始。
- 抗血栓溶解療法:右心不全例(抗凝固療法に加えてウロキナーゼやtPA(モンテプラーゼ)を投与)
- (急性循環不全)カテーテルインターベンション、外科的血栓摘除術
- 経皮的心肺補助装置:循環が保てなくなった場合
ガイドライン
参考
- 1. 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_andoh_h.pdf
- 2. 学際領域の診療 Interdisciplinary Practice 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症 - 日産婦誌
- http://www.jsog.or.jp/PDF/56/5610-382.pdf
- 3. E.婦人科疾患の診断・治療・管理 10.10)深部静脈血栓症・肺塞栓症 - 日産婦誌61巻11号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/61/6111-591.pdf
- 4. LITFL ≫ ECG Library ≫ ECG Basics ≫ T wave
- http://lifeinthefastlane.com/ecg-library/basics/t-wave/
国試
[★]
- 英
- aortic dissection
- 関
- 解離性大動脈瘤
大動脈解離の病態
ガイドライン
- 1. 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_takamoto_h.pdf
文献
- 腹部大動脈瘤の血管内手術と開腹手術、長期死亡率に差なし
- 腹部大動脈瘤(AAA)の修復を血管内手術または開腹手術によって受けた患者の転帰を8年間にわたって調べた試験(EVER1)で、両者の全死因死亡率、動脈瘤関連死亡率に差はないことが明らかになった。また、開腹手術が適用にならないAAA患者を対象に、血管内手術を受けた患者と介入なしの患者の長期的な転帰を比較した試験(EVER2)では、両者の全死因死亡率にも差はないことが明らかになった。
- Endovascular repair of aortic aneurysm in patients physically ineligible for open repair.
- N Engl J Med. 2010 May 20;362(20):1872-80. Epub 2010 Apr 11.
- United Kingdom EVAR Trial Investigators et al.
- PMID 20382982
- Endovascular versus open repair of abdominal aortic aneurysm.
- N Engl J Med. 2010 May 20;362(20):1863-71. Epub 2010 Apr 11.
- United Kingdom EVAR Trial Investigators et al.
- PMID 20382983
- Long-term outcome of open or endovascular repair of abdominal aortic aneurysm.
- N Engl J Med. 2010 May 20;362(20):1881-9.
- De Bruin JL et al.
- PMID 20484396
国試
- 105I059:Stanford A偽腔閉塞型急性大動脈解離。ガイドライン1では内科的治療が良いか外科的治療が良いかはどちらともいえないと記載がある。いずれにせよ、早急な降圧が重要である。
[show details]
[★]
- 英
- blood pressure, BP
- 同
- 動脈圧 arterial pressure AP
- 関
- 血圧測定
成人の血圧
- 至適血圧:<120mmHg かつ <80mmHg
- 正常血圧:130mmHg かつ 85mmHg
- 正常高値血圧:130~139mmHg または 85~89mmHg
- I度高血圧(軽症):140~159mmHg または 90~99mmHg
- II度高血圧(中等症):160~179mmHg または 100~109mmHg
- III度高血圧(重症):≧180mmHg または ≧110mmHg
- 収縮期高血圧:≧140mmHg かつ <90mmHg
糖尿病性腎症
- 管理目標: 130/80 mmHg
- 尿蛋白1g/日以上:125/75 mmHg
冠血管と血圧
- In the normal state, autoregulatory mechanisms adjust coronary tone tomatch myocardial oxygen supply with oxygen requirements. In the absence of obstructive coronary disease, thesemechanisms maintain fairly constant rate of coronary flow, as long as the aortic perfusion pressure is approximately 60 mmHg or greater.
血圧の異常
血圧の上肢における左右差
- 大動脈炎症候群:腕頭動脈、鎖骨下動脈の狭窄・閉塞を生じる
- 動脈硬化:鎖骨下動脈領域の病変があるとき、左右の脈拍差や皮膚温の違いを生じる
血圧の上下肢の差(下肢>上肢)
- 大動脈炎症候群:大動脈弓部が冒されやすいが、鎖骨下動脈が冒された場合に上肢の血圧が低下。
- 解離性大動脈瘤:解離腔に生じた血腫が鎖骨下動脈を圧迫すると、上肢の血圧が低下
- 大動脈閉鎖不全症:Hill徴候
収縮期血圧のみ高い。拡張期血圧は高くない
- 拡張期に動脈血流が減少する病態(血流が体循環に押し出されないか、心収縮力のみ上昇している状態?(体循環の血管抵抗が上がっていない?))
- 脈圧が上昇する
- 1. 大動脈基部の血流が逆流やシャントにより減少する場合
ショック
非侵襲的な血圧測定法による血圧の上肢・下肢の差
- 血圧を測定するために駆血帯で血流を遮断する必要がある。このとき、下肢の動脈の方が深部を走行しているため上肢より強く駆血帯で圧迫する必要がある。強く圧迫を要する分だけ下肢の血圧が高く測定されてしまう。
心血管とその周囲の血圧 YN.C-29
- see also PHD.61
中心静脈
|
|
肺動脈楔入圧
|
4~8
|
8~20
|
右心房
|
左心房
|
1~4
|
8~20
|
右心室
|
左心室
|
8~20
|
120~20
|
肺動脈
|
大動脈
|
8~20
|
120~70
|
臓器移植における脳死判定の除外
- 脳死判定#脳死判定の除外規定、臓器の移植に関する法律施行規則#第二条第四項
- 収縮期血圧が以下で定められる数値未満の場合には脳死判定ができない。
- 1歳未満の者 65
- 1歳以上13歳未満の者 年齢x2+65
- 13歳以上の者 90
国試
[★]
- 英
- chest pain, thoracodynia, pectoralgia
- 同
- 胸部痛
- 関
- 胸壁痛。胸部圧迫感
鑑別疾患
- 診断エッセンシャルズ新訂版
救急疾患
その他
鑑別診断
- DIF.84
胸痛の質
- 圧迫されるような痛み:狭心症、心筋梗塞
- 刺すような痛み:心膜炎、胸膜炎、肋間神経痛
胸痛と呼吸困難
- 参考1
- 気胸、肺炎、胸膜炎、慢性閉塞性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患の悪化、肺癌などの肺疾患、心不全
診察
【現病歴】
誘因、発生様式(突発、緩徐)、経時的変化(一定、動揺、増悪/寛解傾向)、部位(一番痛い部位、放散する部位)、軽快因子、増悪因子、(反復するエピソードあれば)前回との比較、随伴症状
【既往歴】基礎疾患(DM, HT, DL)
【嗜好】smoking, alcohl
【服用薬】
【職業】
【身体所見】
Appearance: Face anguish, Diaphoresis, Cyanosis
Vital:
Consciousness:
BT , BP / , HR (L Arm/R Arm, Lower Extrimity), RR , SpO2
Lymphnode: swollen/no swollen, breath sound →/↑/↓
Chest
Heart:Is →/↑/↓, IIs →/↑/↓, IIIs(±)/IVs(±), murmur, friction rub ±
Lung: crackle/rale
Abdomen: soft/hard, tenderness
Extremity: cold/pulse/edema
Skin: dry/wet/hot/cold
【検査】
ECG: ST segment change
Blood test:
biochemistry: CK-MB, Troponine T, AST, LDH, H-FABP
Blood count: WBC
Arterial blood gas: PaO2 torr
A-aDO2 = 150 - PaCO2/ 0.8 (torr) - PaO2 (normal below 20 Torr)
Chest XP:
Heart echography:
参考
- 1. 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_andoh_h.pdf
[★]
- 英
- β-blocker, beta-blocker, beta-antagonist, β-adrenoceptor blocking agent, β-adrenergic blocking agent, beta-adrenergic blocking agent, beta-adrenergic blocker, beta-adrenergic antagonist, beta-adrenergic receptor antagonist, β adrenergic receptor blocker, β adrenergic receptor antagonists
- 同
- β遮断薬、β阻害薬、βアドレナリン遮断薬、βアドレナリン拮抗薬、アドレナリンβ受容体拮抗薬、βブロッカー、βアドレナリン受容体遮断薬
- 関
- アドレナリン受容体
β受容体遮断薬
適応
禁忌および慎重投与
YN.C-57
- 平滑筋拡張が求められる病態、酸素供給を減らせない病態では使ってはいけないということ?
注意
- 突然休薬すると離脱症候群として、狭心症や高血圧発作が生じることがある(高血圧治療ガイドライン2009)。
- β2受容体遮断作用のある薬剤では、β2受容体を介した膵臓のインスリン分泌促進作用がブロックされる(アドレナリン受容体#アドレナリン受容体)ので、糖尿病患者に投与する場合には注意が必要、らしい。
各論
慢性心不全
[★]
- 英
- aortic aneurysm, aneurysm of the aorta
- 関
- 動脈瘤、大動脈弁輪拡張症 AAE
概念
分類
部位
病理
疫学
好発部位
- 腎下部腹部大動脈瘤 60%
- 上行大動脈瘤 16%
- 弓部下行大動脈瘤 7%
- 腎上部腹部大動脈瘤 5%
- 胸腹部大動脈瘤 2%
腹部AAと胸部AAの比較 (YN.C146)
病因
- YN.C-145
ガイドライン
- 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_takamoto_h.pdf
治療
- 胸部AA > 5cm、腹部AA > 6cmで破裂のリスクが高まる。
手術療法
- 同
- 動脈瘤
[★]
- 英
- dissociation、dissection、detachment、unbinding、maceration、dissociate
- 関
- 解体、解剖、精査、切開、脱離、剥離、分離、解離性障害、郭清、浸軟、結合解除、ダイセクション、解離反応、遁走
精神医学
- PSY.53
- 自我の同一性の障害により出現。
- 不安にさらされて圧倒されると心理的防衛機制が働き、適応不能に陥られないようにする。
- 心因性の健忘、遁走、ガンザー症候群、小児症、多重人格などで見られる。
- KPS.222
- 情動的苦悩を避けるために、自分の人格・独自性を、一時的かつ徹底的に一部変更すること。
- 遁走、ヒステリー転換反応はよく見られる解離の現象。
- 対抗恐怖的振る舞い、解離性同一性障害、薬物使用による高揚感、宗教的歓喜などでも見られる
参考
- http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/dissociation_example.htm
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A7%A3%E9%9B%A2_(%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6)
[★]
- 英
- aorta (Z), Ao
- 関
- 大動脈弁
- 大動脈径:胸骨左縁アプローチで左室長軸断面を得て、心エコーMモードで評価。
[★]
- 英
- aneurysm, arterial aneurysm
- 関
- 大動脈瘤、真性動脈瘤、仮性動脈瘤
[★]
- 英
- artery (Z)
- ラ
- arteria
- 関
- 静脈