- 英
- renal clearance
- 関
- クリアランス
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医学においてクリアランス英: clearanceは腎臓などによる排泄能力の大きさを表す。クリアランスには腎臓以外の器官が関与していることもあるが、一般にクリアランスは腎クリアランスもしくは血漿クリアランスとほぼ同義に用いられる。個々の物質はろ過特性によって、固有のクリアランスを示す。クリアランスは、糸球体によるろ過、傍尿細管毛細血管からネフロンへの分泌、ネフロンから傍尿細管毛細血管への再吸収からなる機構である。
目次
- 1 定義
- 2 式の導出
- 3 微分方程式の解
- 4 腎クリアランス
- 5 脚注
- 6 関連項目
定義
腎機能について述べている場合、クリアランスは、体積流量[体積/時間]の次元を持つことから、腎臓により処理を受けた血液から濾し取られた液体の総量、もしくは単位時間に精製された血液の総量、とみなすことができる。しかし、「腎臓は、通過する全血漿から、ある物質を完全に除去しているわけではない」 [1] ので、クリアランスとは何か実質的な値を表しているわけではなく概念上算出される、あるいは平均の数値である。物質移動と生理学の観点とからすると、(透析装置や腎臓への)体積流量は、血液の濃度とある物質の体内からの排出量を決定する多くの要因のうちの1つに過ぎない。その他の要因としては、物質移動係数、血液透析における透析液流量と透析液再循環量、腎臓に関しては糸球体濾過量とネフロンでの再吸収率などがある [2]。 (定常状態の)クリアランスの生理学的解釈は排出量と血液中(もしくは血漿中)濃度の比率である。その定義を表した微分方程式からは、指数関数的減衰曲線が得られ、腎機能と透析装置機能のモデル化に用いられる。
ここで:
- は物質の生成率であり、一定と仮定され、時間の関数ではない。体外からの異物や薬物の場合はゼロになる。[mmol/min]または[mol/s]。
- t は透析時間または物質や薬物が注入されてからの時間。[min]または[s]。
- V は分布容積もしくは全身水分量。[L]もしくは[m3]。
- K はクリアランス。[mL/min]または[m3/s]。
- C は物質の濃度。[mmol/L]または[mol/m3/s](しばしばアメリカでは[mg/mL])。
上の定義から、dC/dt は時間に関する濃度の一次導関数、すなわち時間に対する濃度の変化であり、物質収支から導き出される。時として、クリアランスは物質の除去率を分布容積(または全身水分量)で割って(すなわちK/V で)表されることがある。さらにその逆数を時定数ということがある。定常状態において、クリアランスは物質の生成率(この場合除去率と等しい)を血中濃度で割ったものと定義される。
式の導出
式(1)は以下の物質収支の式(2)から導かれる。この式の意味するところは、
- ある経過時間Δt での体内における異物の物質量の変化Δm は、その摂取と生成を合算したものからその除去を差し引いたものである。
ここで、
- Δt は経過時間
- Δmbody は体内でΔt の間に変化した異物の物質量
- は異物の摂取率、
- は異物の除去率、
- は異物の生成率
を表す。
ところが、
であることから、式(2)は次のように書き換えられる。
摂取と生成を一まとまりにして、と表し、両辺をΔt で割ることで、次の差分方程式となる。
ここで、Δt → 0 の極限をとると微分方程式が得られる。
左辺はライプニッツの法則を用いて、以下のように書き換えられる。
全身水分量V の変化量はほぼ無視できるので、となり、式(1)が導かれる。
微分方程式の解
微分方程式(1)は解析的に解くことができて、一般解は以下に示される: [3] [4]
ここで、
- C0は透析開始時点の初期濃度、または薬物の(全身に分配された時点での)初期濃度([mmol/L]もしくは[mol/m3])。
定常状態の解
無限時間後(定常状態)において式(9)は、
となり、これを書き換えると、
となる。式(10b)を見ると、物質の除去とクリアランスの関係が明確になる。物質生成が一定である条件下では濃度とクリアランスは互いに反比例する。クレアチニンを例にとると、血清クレアチニン濃度が2倍になるとクリアランスは半減し、クレアチニン濃度が4倍になるとクリアランスは1/4になる。
腎クリアランス
腎クリアランスは一定時間中の尿を採取し、その組成を分析することで求められる。腎クリアランスK [mL/min]は式(10b)から導かれる以下の式で算出される[5]。
ここで、
- CU は尿中の物質の濃度[mmol/L](または[mg/mL])
- Q は単位時間あたりの尿量[mL/min](または[mL/24時間])
- CB は血漿中の物質の濃度[mmol/L](または[mg/mL])
クレアチニンはろ過によってのみ除去される内因性化合物なので、クレアチニンクリアランスを測定することで、ほぼ糸球体濾過量を知ることができる。現在では糸球体濾過量の指標としては、より厳密なイヌリンクリアランスに比べ簡便なクレアチニンクリアランスが用いられることが多い。
脚注
- ^ Seldin DW (2004). "The development of the clearance concept". J. Nephrol. 17 (1): 166–71. PMID 15151274.
- ^ Babb AL, Popovich RP, Christopher TG, Scribner BH (1971). "The genesis of the square meter-hour hypothesis". Transactions - American Society for Artificial Internal Organs 17: 81–91. PMID 5158139.
- ^ Gotch FA (1998). "The current place of urea kinetic modelling with respect to different dialysis modalities". Nephrol. Dial. Transplant. 13 Suppl 6: 10–4. doi:10.1093/ndt/13.suppl_6.10. PMID 9719197. Retrieved 2010-10-26.
- ^ Gotch FA, Sargent JA, Keen ML (2000). "Whither goest Kt/V?". Kidney Int. Suppl. 76: S3–18. doi:10.1046/j.1523-1755.2000.07602.x. PMID 10936795.
- ^ 式(11)は定常状態にのみ適用されうる。物質の血漿中濃度が一定でない場合はクリアランスK は一般式(9)から算出されなければならない。
関連項目
- クレアチニンクリアランス
- 薬物動態学
- 糸球体濾過量
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Japanese Journal
- 30P2-140 がん病態下におけるMRSA治療薬バンコマイシンの腎クリアランス上昇機構の検討 : 血漿中内因性物質の影響(薬物動態(TDM・投与設計等),医療薬学の扉は開かれた)
- 松下 良,八田 志乃,岩田 知恵子,横川 弘一,木村 和子,宮本 謙一
- 日本医療薬学会年会講演要旨集 16, 427, 2006-09-01
- NAID 110006961696
- 7.ヒトにおけるペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の腎クリアランスと種着の血中濃度に及ぼす影響(第44回近畿産業衛生学会)
- 原田 浩二,井上 佳代子,森川 亜紀子,吉永 侃夫,齋藤 憲光,木村 みさか,新保 愼一郎,小泉 昭夫
- 産業衛生学雑誌 47(1), 48, 2005-01-20
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- 早産児の原発性無呼吸におけるテオフィリンの薬物動態
- 成井 研治,井上 真理,水谷 佳世,岩崎 順弥,田中 大介,竹内 敏雄,飯倉 洋治,梅田 陽,高橋 晴美
- 昭和医学会雑誌 63(2), 154-162, 2003
- … 濃度を求め, さらに以下の計算式から, THPの全身クリアランス (以下CLとする) , 排泄「腎クリアランス」 (以下CL<SUB>R</SUB>とする) およびそれらの差である代謝「肝クリアランス」 (以下CL<SUB>H</SUB>とする) を求め日齢, 修正週数, 尿量との相関について検討を行った.◇全身クリアランスCL (ml/kg/min) = (投与量 (μg/kg) /投与間隔 (min) ) /血中THP濃度 (μg/ml) ◇腎クリアランスCL<SUB>R</SUB> …
- NAID 130001822154
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- clearance
- 同
- 清掃値、浄化値
定義
- 1. ある物質について、単位時間あたりどれだけの量の血液をきれいにできるか。
- 2. ある物質が排泄されるために必要な単位時間あたりの血漿量
- 3. ある物質が単位時間に腎によって完全に除去(清掃)される血漿の量 (生理学実習1 実習テキスト p.4,SP.777-778)
- 4. it is defined as the rate of elimination of the drug from the body relative to the concentration of the drug in plasma
(PPC.42) [(amount/time)/(amount/volume)]
- 5. clearance is the rate at which plasma would have to be cleared of the drug to account for the observed kinetics of change of the total amount of drug in the body, assuming that all the drug in the body is present at the same concentration as that in the plasma.(PPC.42)
意味
- クリアランス↑→物質の排出能が高い、排出されやすい、再吸収されにくい
- クリアランス↓→物質の排出能が低い、排出されにくい、再吸収されやすい
式
- UX: Xの尿中濃度
- V : 尿量~
- PX: Xの血漿濃度~
- CX: クリアランス(前述の定義参照)
- UX・V = PX・CX
- CX= V・UX/PX
- Clearance = (amount/time)/(amount/volume) = 血漿からの薬物の除去速度 / 血中薬物濃度 = 単位時間あたり尿量 x 尿中薬物濃度 / 血中薬物濃度
- 上記の式は定常状態(単位時間あたりの薬物濃度が変化しなくなった状態)における血中薬物濃度を規定する式に変形できる。定常状態では単位時間に排泄される薬物量と単位時間に取り込まれる薬物量が等しくなった状態であるから、以下の通りとなる。(PPC.44)
- 血中薬物濃度 = 血漿からの薬物の除去速度 / クリアランス = 薬物の血漿への投与速度 / クリアランス = bioavility x dose / (dosing interval x clearance)
- これによれば、同一の投与間隔でdoseを2倍量にすれば、血中濃度が2倍になるということが分かる。
備考
- 一般的にクリアランスはGFRと正比例の関係にある(TP.469)。
- クリアランスは尿細管での再吸収や分泌と関係するので、対象とする物質の血漿濃度により変化する(TP.469)。
[★]
- 英
- kidney、renal
- 関
- 腎性、腎臓
漢方医学
機能
- 1. 成長、発達、生殖能を維持する
- 2. 骨、歯牙の形成と維持に関与
- 3. 水分代謝を調節する
- 4. 呼吸脳を維持する
- 5. 思考力、判断力、集中力を維持する
失調
- 症状:性欲減退、骨の退行性変化、歯芽の脱落、毛髪の脱落、夜間頻尿、浮腫、口渇、息切れ、精神運動の低下、視力・聴力の低下、不眠、四肢の冷え・ほてり、しびれ、小腹不仁
- 治療方剤
[★]
- 英
- clear
- 関
- 明らか、清澄、明白、明瞭