Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/09/11 11:25:32」(JST)
[Wiki ja表示]
疲労骨折(ひろうこっせつ)は、一度では骨折に至らない程度の応力が、骨の同一部位に繰り返し加わることにより発生する骨折である。また、この骨折は女性運動選手の3主徴とされる、骨粗鬆症、無月経、摂食障害の徴候とされている。
目次
- 1 概要
- 2 原因
- 3 症状
- 4 診断
- 5 治療
- 6 参考文献
- 7 出典
- 8 脚注
- 9 外部リンク
概要
転倒や強打が原因になることは無く、短期的に集中的なトレーニングを行ったときに生じることが多いのも特徴である。つまり、繰り返し加わる小さな負荷によって生じる骨の異常。いわば、骨に生じた金属疲労の様な状態で、軽度な場合は骨に細かなひびが生じる程度であるが、重症化すると強くない応力で外傷性骨折の様な断裂に至ることもある。早期に発見し治療を開始することで、スポーツ現場への早期復帰が可能になる[1]が、重症化した場合では選手引退後の日常生活に支障を生じる場合もある[2]。
スポーツ選手の場合、疲労骨折が見つかった場合は直ちに練習は中止し、治療を開始する必要がある。治療開始後は、3週間から8週間ほど練習を中止してから医師の指導の下徐々に再開をする。その間はプールなどを使用して心肺機能を維持し筋力低下を抑制することが望ましいとする見解もある。また、後遺症防止の為にも学校、学校検診医師、専門医間の連携が重要視されている[3]。
原因
スポーツにおける主原因は、負荷の継続(跳躍や長時間の疾走[4])、筋力不足、未熟な技術、体の柔軟性不足、衝撃吸収力に欠ける靴や用具および装具の使用[5]など。しかし単一の要因だけでは無く、継続した激しい運動による体重低下やカルシウム摂取量の不足[6]や、それに伴い生じる骨密度(骨塩量)の低下が副次的な原因となり得る。
特に、女子選手は無月経で骨密度が低下しやすく[7]疲労骨折を生じやすいとされている[8]。つまり、疲労骨折を繰り返す女性は体重低下による無月経により誘発される骨粗鬆症の可能性が高いとする見解がある[2][6][9]。
体操などの跳躍系の競技、陸上競技、駅伝・マラソンなどの長距離競技、野球、サッカー、バレーボールなどが上位を占めるが多岐に渡る。
症状
明らかな外傷は無く、運動直後のみ痛みが出現するものから安静時でも痛みがつづくものまで、病状によりさまざまである。圧痛部位は大腿骨以外は限局されており腫脹や硬い隆起が触れることもある。
典型的な初期症状は、運動中の痛みで運動を止めると消失する特徴がある。症状が進行すると痛みの発現が次第に早まるともに常に運動を妨げる程度の痛みを生じ、体重がかかっていないと状態でも痛みが持続する。
好発部位
スポーツ種目により発生しやすい部位は異なり、
- 中足骨(第2中足骨)
- 脛骨
- 腓骨
- 肋骨[10]
などの下肢の負荷の集中する部位に多いが、まれに、大腿骨、膝蓋骨[11]、骨盤[12]、踵骨[13]などにも発生する。
診断
画像診断の単純X線撮影では、初期には異常が見られないことも多いが2-3週間後に再検査すると骨膜反応等の異常が見つかることも多い。一方MRI、骨シンチグラフィーは早期診断に有用である。
治療
通常ギプス包帯や装具は選択されず安静を保つ(骨折があり転位をしているもの以外は外固定の必要はない)。治癒には、3週間から12週間必要とされている。そして疲労骨折に至った原因(骨塩量減、偏平足や過回内足、柔軟性の低下など)を除去する必要がある。ただし大腿骨や脛骨の疲労骨折では外科的手術による治療が選択されることもある。
後遺症
発生部位が大腿骨の場合、骨折完治後も歩行困難な状態が解消しない[14]が報告されている。
参考文献
- 『標準整形外科学』 医学書院、2008年 ISBN 978-4-260-00453-4
- 社団法人全国柔道整復学校協会・教科書委員会『柔道整復学ー理論編(改訂第5版)』、南江堂、2009年
出典
- 疲労骨折 松田整形外科記念病院
- 中足骨疲労骨折 メルクマニュアル18版 日本語版
脚注
- ^ 益田赤十字病院整形外科:当科におけるスポーツによる疲労骨折の現状 中国・四国整形外科学会雑誌 Vol.6 (1994) No.2 P397-399
- ^ a b 我が国の女子マラソンランナーの月経異常
- ^ プライマリ・ケア医のためのスポーツ傷害 上肢 日本プライマリ・ケア連合学会誌 Vol.35 (2012) No.3 p.245-248
- ^ 高校駅伝選手に発生した多発性疲労骨折の1例 整形外科と災害外科 Vol.41 (1992) No.1 P285-288
- ^ スポーツ用装具総論 日本義肢装具学会誌 Vol.10 (1994) No.4 P256-259
- ^ a b スポーツ競技者における疲労骨折の傾向とその病態 整形外科と災害外科 Vol.46 (1997) No.3 P618-627
- ^ MD/MS法による女子スポーツ選手の骨密度評価 体力科学 Vol.42 (1993) No.2 P183-188
- ^ 大学女性スポーツ選手における種目別の身体組成と骨密度に関する研究 整形外科と災害外科 Vol.62 (2013) No.4 p.694-696
- ^ 高校女子長距離ランナーの月経異常・ランニング障害の発生状況
- ^ 野球によって生じた肋骨疲労骨折の3症例 整形外科と災害外科 Vol.45 (1996) No.2 P478-481
- ^ 膝蓋骨疲労骨折の一症例 整形外科と災害外科 Vol.46 (1997) No.3 P605-608
- ^ スポーツに起因した骨盤疲労骨折の2例 整形外科と災害外科 Vol.37 (1988-1989) No.1 P182-185
- ^ 踵骨疲労骨折の一例 整形外科と災害外科 Vol.32 (1984) No.3 P645-647
- ^ 成長期スポーツ傷害の最近の特徴 -過去10年間のスポーツ外来より- 整形外科と災害外科 Vol.47 (1998) No.1 P273-277
外部リンク
- 疲労骨折 日本整形外科学会
- http://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip10.html 日本骨折治療学会 (一般の人向けのページ、疲労骨折) ]
- 足の疲労骨折
- 右足舟状骨疲労骨折を罹患した大学女子中距離ランナーの障害発生機序について-身体機能評価データと歩行並びに走動作評価をもとに (PDF) スポーツパフォーマンス研究 3, 122-137, 2011
- 体育大学女性スポーツ選手における競技種目別の骨塩量分析について 整形外科と災害外科 Vol.61 (2012) No.4 p.785-787
- 女性アスリートと月経
スポーツ障害 |
|
頭・脳の障害 |
脳挫傷 - 脳震盪 - パンチドランカー
|
|
首の障害 |
外傷性頸部症候群 - バーナー症候群
|
|
肩の障害 |
ベネット損傷 - SLAP損傷 - 野球肩(三角筋炎 - 腱板炎 - リトルリーガーズショルダー) - 水泳肩 - テニス肩 - ゴルフ肩 - バレーボール肩 - バドミントン肩 - 投擲肩
|
|
上腕の障害 |
上腕二頭筋長頭腱炎
|
|
肘の障害 |
離断性骨軟骨炎 - 野球肘 - テニス肘 - ゴルフ肘 - 水泳肘 - 岩登り肘 - バドミントン肘 - 卓球肘 - 投擲肘
|
|
前腕の障害 |
コーレス骨折 - ボウリング腕
|
|
手の障害 |
腱鞘炎(ド・ケルバン病) - キーンベック病 - TFCC損傷
|
|
腰の障害 |
腰椎分離症 - 腰椎すべり症 - 椎間板ヘルニア - 梨状筋症候群 - 筋筋膜性腰痛 - 卓球腰 - サーフィン腰 - スノーボード腰 - サイクリング腰 - スキー腰
|
|
大腿の障害 |
大腿骨頭すべり症 - 筋断裂 - 肉離れ
|
|
膝の障害 |
離断性骨軟骨炎 - ランナー膝(オスグッド・シュラッター病 - 腸脛靭帯炎 - 棚障害 - 鵞足炎) - ジャンパー膝 - サッカー膝 - 平泳ぎ膝 - バレーボール膝 - バスケットボール膝 - テニス膝 - ジョギング膝 - ウォーキング膝 - サーフィン膝 - スノーボード膝 - 卓球膝 - スキー膝 - 膝蓋骨脱臼 - 半月板損傷 - 靭帯損傷(外側側副靭帯損傷 - 内側側副靭帯損傷 - 前十字靭帯損傷 - 後十字靭帯損傷) - 関節軟骨損傷
|
|
下腿の障害 |
シンスプリント - コンパートメント症候群 - アキレス腱炎(アキレス腱周囲炎 - アキレス腱滑液包炎) - アキレス腱断裂
|
|
足の障害 |
フットボール足 - サッカー足 - フットサル足 - サイクリング足 - スケート足 - テニス足 - 足底筋膜炎 - 踵骨骨端症 - 捻挫 - モートン病
|
|
その他の障害 |
疲労骨折 - 筋痙攣 - イップス - ハンガーノック
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 長距離通学により生じたと考えられる6歳児の疾走型脛骨疲労骨折の1例
- 石井 一誠,西里 徳重,松下 任彦
- 日本臨床スポーツ医学会誌 = The journal of Japanese Society of Clinical Sports Medicine 16(3), 435-438, 2008-08-25
- NAID 10021949939
Related Links
- 下腿部には脛骨、腓骨と 言う二本(二つを総称して下腿骨とも呼びます)の骨があり(図 1)両者共に疲労骨折の中では発生頻度が高く、一度起こすとスポーツ ... 脛骨疲労骨折 脛骨の疲労骨折には大きく分けて跳躍型、失踪型と呼ばれる二つのタイプがあります。
- シンスプリントと脛骨疲労骨折). 今回はランニングしている方に多く見られる疾患 について述べていきます。 走った後、下の写真の矢印で示した部分が痛くなったことは ありませんか? この部分が痛くなる疾患には「シンスプリント」という疲労からくる骨膜 周辺の ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- fracture
- 関
高齢者における骨折の好発部位
- 参考1
多い
- 上腕骨頚部:転倒して手を伸ばしてついた、直接方外側を打った場合に外科頚骨折しやすい。特に高齢者、特に女性に多い。
- 橈骨遠位部:コーレス骨折(Colles骨折)は10歳前後の小児と骨粗鬆症を有する老人に多い。
- 椎骨(椎体圧迫骨折):骨粗鬆症を生じている女性に多い。
- 大腿骨頚部
やや多い
- 肋骨
- 上腕骨遠位部
- 坐骨?
- 大腿骨遠位部
- 脛骨近位部
- 脛骨位部
小児の骨折
- →小児骨折
骨折による骨癒合しにくい部位
- 血流が乏しいことによる
- 大腿骨頚部内側骨折、手根骨舟状骨骨折、脛骨中下1/3骨折、距骨骨折
骨折による出血量
- SOR.631
診察
- 1. 皮下骨折/開放骨折
- 2. 血管損傷の有無
- 3. 末梢神経損傷の有無
- 4. 軟部組織の損傷
- 5. 受傷部位周辺臓器の損傷
- 6. 受傷後の時間経過
参考
- http://www.biomech.mech.nagoya-u.ac.jp/iplweb/impact_bio/pdf/1st/Harada.pdf
[★]
- 英
- stress fracture, fatigue fracture
- 関
- 行軍骨折 march fracture
- ストレス骨折、骨折、脛骨過労性骨障害
- 第2中足骨幹部:多い
- 第3中足骨幹部:多い
- 第4中足骨幹部:次いで多い
- 第5中足骨幹部:ジョーンズ骨折
[★]
- 英
- shank bone, shin bone
- ラ
- tibia
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
[★]
- 英
- fatigue
- 関
- 筋疲労、慢性疲労、慢性疲労症候群