出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/01/23 05:25:58」(JST)
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産前産後休業(さんぜんさんごきゅうぎょう)は、女性労働者が母体保護のため出産の前後においてとる休業の期間である。産休(さんきゅう)とも称される。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
産前においては、使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない(労働基準法第65条1項)。起算日は原則として自然分娩の予定日である。実際の出産日が予定日後である場合、休業期間はその遅れた日数分延長される。なお、出産当日は「産前」に含まれる。女性が請求しなければ、出産日まで就業させて差し支えない。
産前6週間や休業の有無にかかわらず、使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない(労働基準法第65条3項)。この「軽易な業務」については、他に軽易な業務がない場合において新たに軽易な業務を創設してまで与える義務はない。また軽易な業務がないためにやむを得ず休業する場合においては、休業手当を支払う必要はない。
産後においては、使用者は、産後8週間を経過しない女性を、就業させることができない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない(労働基準法第65条2項)。起算日は、1項とは異なり、現実の出産日である。この場合の「出産」には、妊娠第4月以降の流産、早産及び人工妊娠中絶、並びに、死産の場合も含む。
なお、船員には労働基準法は適用されないが(労働基準法第116条)、妊娠中の女子を船内で使用することは原則禁止される(船員法第87条)。産後8週及び軽易な作業については船員についても労働基準法と同様である。
使用者は、産前産後休業期間中、及びその後30日間は、当該労働者を解雇してはならない(労働基準法第19条)。懲戒解雇の場合であっても同様である。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合には、行政官庁(所轄労働基準監督署長)の認定を受けた上で解雇制限が解除される。違反者は6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる(労働基準法第119条)。船員にも同様の規定がある(船員法第44条の2)。
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を請求し、又は産前産後休業をしたこと等を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならず、妊娠中及び産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効となる。ただし、事業主が当該解雇がこれらを理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない(男女雇用機会均等法第9条)。男女雇用機会均等法に罰則の定めはないが、厚生労働大臣は、違反した事業主に対して勧告することができ、事業主が勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる(男女雇用機会均等法第29条、第30条)。
産前産後休業期間中の賃金の支払については、労働基準法上は産前産後期間中の賃金保障を義務付けておらず、各企業の就業規則等による。そのために賃金の支払を受けられない者に対して、健康保険等の被保険者であって所定の要件を満たす者は、出産手当金として休業1日につき標準報酬日額の3分の2相当額が支給される。詳細は出産手当金の項目で。
法改正により、平成26年4月30日以降に産前産後休業が終了となる被保険者については、 産前産後休業期間中の健康保険・厚生年金保険の保険料が、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも免除される。この申出書は、産前産後休業期間中に事業主が日本年金機構に提出する。被保険者が産前産後休業期間を変更したとき、または産前産後休業終了予定日の前日までに産前産後休業を終了したときは、速やかに「産前産後休業取得者変更(終了)届」を日本年金機構へ提出する。
産前産後休業の終了日が平成26年4月1日以降の被保険者を対象に、産前産後休業終了日に当該産前産後休業に係る子を養育している被保険者は、一定の条件を満たす場合、産前産後休業終了日の翌日が属する月以後3ヶ月間に受けた報酬の平均額に基づき、4ヶ月目の標準報酬月額から改定することができる。つまり、休業による賃金の低下に即応して標準報酬月額を減額改定できる(健康保険・厚生年金保険の保険料を安くできる)のである。被保険者が事業主を経由して、「産前産後休業終了時報酬月額変更届」を日本年金機構へ速やかに提出する。ただし、産前産後休業終了日の翌日に育児休業を開始している場合は、この申出はできない。
労働基準法上は産前産後休業は労働者の権利として認められていて、事業主は産前産後休業の請求に応じなければならないが、日本の企業社会には、「男と女は異なる社会的役割がある。男は社会で働き家族を養う収入を得る。女は専業主婦として家事や育児をする。」という考えや、「産前産後休業を取得されたら、同じ職場で働く人にとっても、経営者にとっても迷惑でしかない。」という考えを持ち、法違反を承知で結婚・妊娠した女性を、様々な方法で退職に追い込む事業主も存在する(マタニティハラスメント)。結婚・妊娠した女性の側も、そのような職場を見限って、自分や家族の利益を守るために退職・転職する事例も見られる。その結果、日本では、結婚・出産以前や、子供の成長により育児負担が少なくなる以後と比較して、結婚・出産から子供が小学校低学年の育児期の女性の就業率が低くなっている。このことは、女性の労働力率を示す指標において、いわゆる「M字カーブ」と呼ばれる現象に如実に現れている[1]。
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第六章の二 妊産婦等
(坑内業務の就業制限)
(危険有害業務の就業制限)
(産前産後) 産前休業、産後休業について定めている。
(育児時間)
(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
第七章 技能者の養成
(徒弟の弊害排除)
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