出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2020/05/16 05:55:34」(JST)
アケビ | |||||||||||||||||||||||||||
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Akebia quinata
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Akebia quinata (Houtt.) Decne.[1] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
Akebia quinata | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
アケビ(木通、通草、山女) | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
chocolate vine, five-leaf Akebia | |||||||||||||||||||||||||||
品種 | |||||||||||||||||||||||||||
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アケビ(木通、通草、山女、丁翁)は、アケビ科の蔓性落葉低木の一種(学名: Akebia quinata)であるが、アケビ属(学名: Akebia)に属する植物の総称でもある。本記事ではこの種の方を扱う。
アケビの名の由来は、秋に楕円形の果実がつき、熟すと縦に割れて白くて甘い果肉と黒い種子を覗かせる様子から、「開け実」の意味で名付けられたものである[2]。アケビは、地方によりアケビカズラ[3]、アクビ[3]などの方言名でもよばれている。中国植物名(漢名)は、木通(もくつう)と称される[3]。
日本の北海道を除く、本州から九州に分布し[4]、日当たりのよい山野に自生する[2][5]。
つる性の落葉性の本木(低木)で[2][3]、茎は蔓になって左巻きに他の植物などに巻き付き[5]、古くなると木質化する。葉は、短い柄を持つ楕円形の小葉が5枚集まって掌状につく複葉で、長い葉柄をつけて蔓(茎)に互生する[2][5]。
花期は春(4 - 5月)[4]、雌雄同株であるが雌雄異花で花色は淡紫色。春先に伸びた新芽に、新葉と共に長い花序が垂れ下がり、柄の基部に1 - 3個の濃紫色で大きな雌花、柄の先端に多くの淡紫色で小さな雄花が咲く[2][5]。雌花に長い花柄があり、暗紫色の萼片(花被)が3枚つき、花弁はない[5]。雄花の中央部には6本の雄しべがミカンの房状に、雌花の中央部にはバナナの果実のような6 - 9本の雌しべが放射状につく。雌花の柱頭(先端部)には、甘みを持った粘着性の液体が付いており、花粉がここに付着することで受粉が成立する。雌雄異花で蜜も出さないので、受粉生態にはよくわかっていない点が多いが、雌花が雄花に擬態して、雄花の花粉を目当てに飛来する小型のハナバチ類を騙して受粉を成功させているのではないか、とする仮説がある。ハエ類が甘みを持った粘着質を舐めに来る際に受粉していると考えられる。
受粉に成功した個々の雌しべは、成長して果実(液果)となり、1果柄に2 - 3個集まってつき[2][5]、長楕円形で10センチメートル前後まで成長する。9 - 10月に熟して淡灰紫色に色づく[5]。成熟した果実の果皮は心皮の合着線で縦に裂開し、内部に乳白色で柔らかい果肉(胎座)と、そこに埋もれた多数の黒い粒状の種子を裸出する[5]。種子は黒色の径5 - 6ミリメートル (mm) の偏楕円形で、エライオソームがつく[4]。この胎座の部分は甘くて可食でき[5]、様々な鳥類や哺乳類に食べられて[4]、種子散布に寄与する。
茎
葉
花
白花(雄花)
果実
種子
アケビを食樹として利用する昆虫として、ヤガ科の大型のガであるアケビコノハが知られる。幼虫がアケビ類の葉を食べて育つが、静止時や外敵の刺激を受けたときに、背を丸めて胸部の眼状紋を誇示する独特の防御姿勢をとることが知られている。成虫は口吻が硬化しており、ブドウやナシなどの果実にこれを突き刺して果汁を吸う、重大な果樹園害虫とされる。
他にアケビにつく昆虫で目立つのは、カメムシ目ヨコバイ亜目キジラミ科の小型昆虫であるベニキジラミである。幼虫がアケビの展開前の若い葉に寄生すると、小葉が二つ折りのまま展開できずに肥厚して虫癭となる。幼虫はこの中で吸汁して育ち、羽化して成虫になると外に出て自由生活を送る。成虫は体長2ミリメートルほどで、セミを小さくしたような姿。非常に鮮やかな紅色で、アケビの植物体上にいるとよく目立つ。
アケビは、ミツバアケビ同様に蔓、葉、根、果実には薬草としての効能があると言われている。葉や果実、若芽は食用にする[5]。成熟した蔓は、籠を編むなどして工芸品の素材として利用される。
秋に開裂した果実を採って、中の白い部分(種子を包む胎座)が、昔から山遊びする子供の絶好のおやつとして親しまれてきた。味は、白い果肉はとろりとした爽やかな甘みがあり、黒い種子は苦味があるので除かれる[6]。果皮はほろ苦く、内部にひき肉を詰めて油で揚げたり、味噌を詰めて焼いたり[6]、刻んで味噌炒めにするなど、こちらは山菜料理として親しまれている。主に山形県では、農家で栽培され、スーパーで購入することができる。
東北地方などでは、春の新芽[注釈 1]や、4月ころの若い葉を摘んで山菜として利用し、塩ひとつまみ入れた湯で軽く茹でて、お浸しや和え物などにする[6]。その他、民間では葉を乾燥させてアケビ茶にする[5]。
岩手県や秋田県ではアケビの種子を搾油し、食用油としていた地域がある。アケビは油分が豊富で、種子20リットルから油3リットルが採れていた[7]。かつては「食用油の王様」と呼ばれる高級品であったが、昭和初期には安価な食用油が広まり衰退した。2017年からは旧西木村(現仙北市)が中心となり復活が試みられ、2017年にふたたび商品化されるに至った[8]。[9]。
挿し木で繁殖することができ、棚を作り、アーチ状に仕立てる[5]。
商業栽培では、品質に優れたミツバアケビ由来の品種が多く用いられる。安定した結実のため、人工授粉を行うことがある。自家不和合性があり、他品種との混植などが必要である。アケビとミツバアケビは交雑しやすいため、ミツバアケビ由来の品種に対し、アケビを授粉樹として用いることもある。3葉種と5葉種では熟期が2 - 4週間程度異なる。
茎(蔓)、果実ともに内臓の熱を取って尿を出す薬草である[3]。ただし、妊婦や胃腸が冷えやすい人への使用は禁忌とされる[3]。木質化した蔓には、配糖体のアケビンやカリウムイオンなどを含んでおり、カリウムイオンが人間の体内に残ったナトリウムイオン(塩分)を排除するとともに、尿の出をよくする利尿作用があることが知られており、利尿薬として用いる[6]。
つる性の茎を輪切りにして乾燥させたものは、漢方で木通(もくつう)という生薬である[5](日本薬局方に記載の定義による)。葉が落ちる11月頃に、直径1 - 2 cmの太さに木質化した蔓を採集して、厚さ2 - 3ミリメートル (mm) ほどに輪切りにして天日で乾燥させて調製される[6][5]。木通は、利尿作用、抗炎症作用、通乳作用などがあり、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)などの漢方方剤に使われる[10]。民間療法では、熱感があるときの急性腎炎、妊娠腎、脚気、膀胱炎など、身体にむくみがあるようなときに、木通1日量5 - 20グラムを水500 - 600 ccで半量になるまで煎じて、食間3回に分けて服用する用法が知られている[6][5]。
果実は8 - 9月に成熟したものを採って天日乾燥したものが、八月札(はちがつさつ)と称される生薬になる[3]。民間療法では、熱感がある尿管結石、睾丸腫瘍に対する薬効が期待されて、乾燥果実1日量10グラムを水600 ccに入れて煎じ、3回に分けて服用する用法が知られる[3]。また果実は、果実酒にもなる[6]。熟した果実から果肉だけを取り出して、35度の焼酎720ミリリットルに対して果実300グラム分の果肉と、1個分の果皮を漬け込んで3か月密封保存して果実酒をつくり、1日盃1杯ずつ飲むと、利尿や頭痛に効果があるといわれている[2]。
木通とまぎらわしいものに関木通(かんもくつう)というものがある。これはアケビ類とは別の植物(ウマノスズクサ属)であり、腎臓障害を起こすおそれのある成分アリストロキア酸が含まれている。名前が似ている上、中国などでは関木通を「木通」としていることもあるので十分な注意が必要である。「木通」を利用する場合は日本薬局方のものが無難である。
同属のものとしては日本には以下のものがある。
ホザキアケビ
ミツバアケビ
ゴヨウアケビ
また、日本には、アケビ属以外のアケビ科植物として、常緑のムベ(ムベ属)が知られている。
[脚注の使い方] |
ウィキスピーシーズにアケビに関する情報があります。 |
ウィキメディア・コモンズには、アケビに関連するメディアおよびカテゴリがあります。 |
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小島木通M
リンク元 | 「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」「五淋散」 |
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