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対数(たいすう、英: logarithm)とは、任意の数 x に対して x = ap(底を a とする指数関数)と表したときの冪指数 p である。a > 0, a ≠ 1 のとき p は x (と a)に対して一つに決まり、底を a とする x の対数(英: logarithm of x to base a; base a logarithm of x)といい、記号で p = loga x と表される。x を真数といい、a > 0, a ≠ 1 のとき x > 0 である(真数条件)。
数 x に対して、対数を与える関数を対数関数と呼ぶ。対数関数 loga x は指数関数 ax の逆関数である。この性質はしばしば対数関数の定義として用いられるが、歴史的には対数の出現の方が指数関数よりも先である[1][注 1]。
対数により、積の計算を、より簡単な和の計算に置き換えることができる。いくつかの例外を除き、有限の手順では対数の値を厳密に求めることはできないため、対数の計算には近似値を用いる。予め定めた近似の精度に応じて有効数字が決定される。対数の近似計算は計算量が多く高価であるため、対数を含んだ計算には基本的に数表が用いられる。この対数値を列挙した数表を対数表という。対数表には限られた数しか値が載っていないため、対数表から対数値を参照する場合にはしばしば補間公式が用いられる。
2つの正の実数 x, y の積を求めたいとする。別の正の数 a ≠ 1 に対して、
という置き換えがいつでも可能であり、指数法則
が成り立つことより、以下の手順によって積 xy を求めることができる。
対数の概念は、16世紀末にヨスト・ビュルギ(1588年)やジョン・ネイピア(1594年)によって考案され、便利な計算法として広まった。天文学や航海学では膨大な数値計算がすでに必要とされており、三角関数表についてはヒッパルコスのころから存在していたとされ[2]、ティコ・ブラーエは三角関数表を応用して掛け算を足し算に変換して計算する手法を使用していた[3]。ネイピアは、20年かけて対数表を作成し1614年に発表した。対数の値を長さに換算した目盛りを持つ物差しを使用して、以上の計算手順を簡単に行えるようにしたものが対数計算尺である。対数は煩雑な計算にかける労力を大幅に減らし、ヨハネス・ケプラーによる天体の軌道計算をはじめとして、その後の科学の急激な発展を支えた。
対数表の近似精度を高めることはネイピア以降もしばしば行われ、産業政策にも利用された。1790年にフランスで ガスパール・ド・プロニー が失業中の理髪師たちを集めて雇用し計算させたのをはじめに、チャールズ・バベッジの階差機関への挑戦(1827年)や20世紀初頭アメリカ・ニューディール政策における公共事業促進局の実施する対数表プロジェクト (Mathematical Tables Project) において精度向上の試みが行われた。
指数関数的に変化する量を対数に変換してみると線型性などの綺麗な性質が浮かび上がったり、双曲線の面積を求める時などに用いる積分 ∫ x−1 dxに現れたりするなど対数は簡便な計算法以上の意味を持つことも多く、いろいろな場面で現れ、詳しく研究されてきた関数の一つでもある。
一般には複素数でも定義されるが、その解説は自然対数の項目にゆずる。
正の実数 a ≠ 1 および任意の正の実数 x に対し
を満たす実数 p がただ一つ定まる。この p を x の a を底(てい、英: base)とする対数という。またこのとき数 x は真数(しんすう、英: anti-logarithm)と呼ばれる。x に対して a を底とする対数 p を与える関数を loga x と書く。これにより、対数 p は以下のように書き換えることができる。
この対数の定義は、オイラーによる。(1728年)
正の実定数 a ≠ 1 について、正の実数 x を変数にとる実数値連続関数 fa(x) として
を満たすものを
と書き、この関数 fa(x) を a を底とする対数関数という。
1 以外の正の実数であれば底に何を用いてもよいが、分野によって慣例的によく用いられる底があり、底が省略されることも多い。
のように底が省略されている場合は、前後の文脈や扱われている分野によって底が何か判断される。
底を a = 10 とした対数は常用対数(英: common logarithm)あるいはブリッグスの対数(英: Briggsian logarithms)と呼ばれ、実験などの測定値に用いることが多い。他の対数と区別するために "Log" などのように大文字を用いることがある。ヘンリー・ブリッグスは、1617年に 1000 未満の整数について8桁、1624年には1~2万と9万~10万の整数についての14桁の常用対数表を出版した。他の対数と区別するために "lg" という記号を用いることがある (ISO 31/XI)。
底を a = e(ネイピア数) とした対数を自然対数(英: natural logarithm)あるいはネイピアの対数(英: Napierian logarithm)という。名前に用いられているもののジョン・ネイピア自身とは関係ない。微積分などの計算が簡単になるため、数学などの理論分野で用いられることが多い。他の対数と区別するために "ln" という記号を用いることがある。
底を a = 2 とした対数は二進対数 (英: binary logarithm) といい、情報理論の分野で情報量などを表現するのに用いられることが多い。他の対数と区別するために "lb" という記号を用いることがある (ISO 31/XI)。
正の実数 x に対して
を満たす実数 p がただ一つ定まる。この p のことを ネイピアの対数(英: Napierian logarithm)という。ネイピアは、1594年に対数の概念に到達し、この定義を用い20年間計算を続け 7 桁の数の対数表を作成し1614年に発表した。
正の実数 x に対して
を満たす実数 p がただ一つ定まる。この p のことをビュルギの対数という。ビュルギは、ネイピアよりも早い1588年に対数の概念を発見したが、1620年まで公表しなかったため、対数の発見者としてはネイピアが称えられることが多い。
三角関数において例えば の意味で と書くのと同様に、対数関数に対しても(2 以上の整数 n に対して)logn x という表記が使われることがある[4][5]。
逆数の対数
を a を底とする余対数(よたいすう、英: cologarithm)と呼ぶ。
以下の節において、a, b は 1 ではない正の実数、x, y は正の実数、p は実数、ln x は自然対数を表す。
定義より
が成り立つ。
積の対数は(底が等しい)対数の和に等しい。
p乗の対数は(底が等しい)対数のp倍に等しい。
逆数の対数は(底が等しい)対数の反数に等しい。
商の対数は(底が等しい)対数の差に等しい。
底を a から b へ替えるには、
より
となる。これを底の変換という。正の実数 x が 1 でないならば、b = x とすることにより
を得る。
底の逆数は、対数の符号を反転させる。
底の値によらず、真数が 1 のとき対数は 0 である。
a > 1 の場合、対数は狭義単調増加
であり、
が成り立つ。
0 < a < 1 の場合、対数は狭義単調減少
であり、
が成り立つ。
対数の発散は「とても緩やか」であり p > 0 に対して
が成り立つ。
微分に関する公式
マクローリン展開
積分に関する公式(以下の不定積分において C は積分定数とする)
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