出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/05 23:40:22」(JST)
この項目では、植物について説明しています。葉を燃やした煙を吸引することについては「喫煙」を、加工品については「たばこ」を、フィリピンの都市については「タバコ市」をご覧ください。 |
タバコ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Nicotiana tabacum L. | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
タバコ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
cultivated tobacco common tobacco |
タバコ(たばこ、煙草、Nicotiana tabacum)は、ナス科タバコ属の多年草[1]の亜熱帯性植物である。
葉の成分として有毒で習慣性の強いニコチンを含む[2]。
日本の法令上は「タバコ属の植物」を「たばこ」といい(たばこ事業法2条1号)[3]、「たばこの葉」を「葉たばこ」(たばこ事業法2条2号)という。そして、「葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、かみ用又はかぎ用に供し得る状態に製造されたもの」を「製造たばこ」と呼ぶ(たばこ事業法2条3号)。日常語の「たばこ」は、「製造たばこ」に該当する。
以下、植物のタバコについて解説する。
タバコの直接の語源は、スペイン語やポルトガル語の"tabaco"である。
タバコ自体は紀元前5000〜3000年ごろ南米のアンデス山脈で栽培されたのが起源で、15世紀にアフリカ大陸からヨーロッパに伝えられたものであるが、それ以前からスペインでは薬草類を"tabaco"と呼んでいた。しばしばアメリカ・インディアンの言葉が語源であると言われるが、それは誤りである。
スペイン語の"tabaco"は、古いアラビア語で薬草の一種を示す"tabaq"という言葉が語源であるとみられている。
この単語が、フランス語では"tabac"、ドイツ語では"Tabak"、英語では"tobacco"となった。日本ではポルトガル語の音に近い「タバコ」として広まった。漢字の当て字としては「多巴古」、「佗波古」、「多葉粉」、「莨」、「淡婆姑」などが用いられる事があるが、「煙草」と書かれる事が最も多い。中国語では「香煙」と呼ぶ。なお、山口県の一部地域には「煙草谷」(たばこたに)という姓がある。
タバコはナス科タバコ属(Nicotiana)の多年草である。タバコ属には約50の種が含まれるが、大規模に栽培される種は、タバコの他とNicotiana rusticaの2種に限られる。
タバコの種子の形状は回転楕円体である。質量は約50μg。植物の種子が発芽するためには、適切な温度、湿度が必要である。また種によっては太陽光が当たらなければならない。タバコの種子は光を感知するため、発芽には太陽光が必要である。発芽温度は25℃である。生育条件が適切である場合、種によって異なるが茎の高さ50cmから250cmまで成長する。茎は太く最大5cmに達する。
葉は30枚から40枚が着生し、このうち、葉たばことして採取するのは約6割である。これは位置によってニコチンの含有量が異なるためである。日本国内では葉を5種類に区別し、上から上葉・本葉・合葉・中葉・下葉と呼ぶ。上葉は6%程度、下葉は1%程度のニコチンを含む。葉の長さは20cmから60cm、幅は10から30cm程度である。葉の表面には液を分泌する細胞があり、特有の臭気を帯びる。また、葉には腺毛が多数あり、空気中のポロニウム210を吸着することが知られている[4]。
タバコの花は茎の先端部分に群生する。形状は漏斗に似ており、端が五裂する。色は種類によって異なるが、栽培種では根元が白く、先端がピンク色のものが多い。果実1つ当り3000粒程度の種子を含む。
茎は繊維質で、薪などの代わりとして炊事などに利用されてきたが、電気やガスの普及に伴い利用価値は無くなり、現在ではそのまま次期の肥料として畑に廃棄される。
葉がタバコに似ているところから名付けられたものに以下のようなものがある。
この節はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点からの説明がされていない可能性があります。ノートでの議論と記事の発展への協力をお願いします。(2013年8月) |
栽培種として重要な特性は、強健性、葉の産出力、病気に対する抵抗性、細胞組織が持つ弾力性、香料との親和性である。このため[要説明]約100の品種に分かれる。それらの品種を大別すると、火力乾燥を行い葉が黄色い状態で乾固させる黄色種、褐色になるまで空気乾燥を行うバーレー種、葉巻種およびオリエント種が主なものであり、その他、地域の喫煙文化と歴史的なかかわりを持つ地域固有品種も数多く、日本国内でこれらは在来種と呼ばれている。
この節の加筆が望まれています。 (2014年5月) |
慶長6年(1601年)に肥前国平戸(長崎県平戸市)に来航したフランシスコ会員ヒエロニムス・デ・カストロが平戸藩主松浦鎮信にタバコの種子を贈呈している(これを記念して平戸城跡である亀岡神社には「日本最初 たばこ種子渡来之地」の石碑が建てられている)[5]。慶長10年(1605年)には長崎の桜馬場で初めてタバコの種が植えられたとされている[6]。
日本ではタバコの栽培は自由化されたものの、葉たばこを原料とした「製造たばこ」の製造はたばこ事業法8条により日本たばこ産業(JT)以外には禁止されている。原料用国内産葉たばこの生産に際しては同法3条の定めによって葉たばこをすべてJTに売り渡す予定の耕作者とJTがあらかじめ契約をし、契約農家にはJTから種子が無償で配付される。また、たばこ事業法は原料として使用できないものを除き、農家が売り渡す葉たばこ全量の購入をJTに義務づけている。
なお、JTと栽培農家の契約では取引価格体系の違いによって、黄色種は第1黄色種から第4黄色種、バーレー種は第1バーレー種と第2バーレー種に区分されている。
日本各地に、主に栽培農家が信仰するたばこ神社(葉たばこ神社)がある。
日本では、ブライトエロー、バージニア、コーカー、MC、つくばなどの黄色種と、バーレー21、たいへい、みちのくなどのバーレー種が栽培されている。両切りたばこや刻みたばこの時代に主流を占めていた在来種は現在、熊本県を中心とする九州山地一帯、福島県、栃木県、茨城県、徳島県で、5品種が僅かに栽培される程度である。
黄色種はバージニア・ブレンドと呼ばれるタイプの製品で、たばこの味や香りの主体となるものである。また、バーレー種は、アメリカン・ブレンドと呼ばれるタイプの製品で、香料を吸着保持してたばこのブランドイメージを作り出す重要な役割を担う。その他、特殊な加工を施した原料が、弾力性や香り、味を調和させるために使われている。
葉たばこは畑に種子を播いて育てるのではなく、種は親床と呼ばれる育苗施設に蒔かれ、長さ2 - 3センチの葉が3 - 4枚に成長した段階で、さらに子床と呼ばれる苗床に仮に移植され、その後約1ヶ月成長を続けた後に初めて畑に移植される。種まきの時期は沖縄県の12月に始まり、順次北上して東北地方では3月となる。畑への移植時期は沖縄の2月上旬に始まり、九州では3月、東北では5月が一般的である。
成長に伴い4月から6月に花芽が現れるが、開花直後に芯止めと呼ばれる摘芯作業を行い、花芽は摘み取られる。これはわき芽の除去とともに、原料として利用する葉の成熟にとっては欠かせない、重要な作業である。また、品種によってはこの時期にニコチン成分の少ない下葉を除去して、上葉から中葉の熟成を促す栽培法を取る農家もある。
芯止め作業と前後して最初の収穫作業が始まる。葉はニコチン成分の少ない下葉から上位の着位の葉に向かって成熟が進むため、成熟した順に葉の着位ごとに区分をして収穫してゆく。黄色種では本葉と上葉8から10枚程度を最後まで残して、十分に成熟が進んだ時点で一斉に収穫する、総がきという収穫作業が行われるが、農家によっては畑毎の成長差や天候状況などにより、順次収穫・乾燥している場合も多い。
黄色種は、断熱パネルで構成された面積2 - 6坪(6.6 - 19.8m2)程度のコンテナ状のバルク乾燥機に吊込まれ、石油バーナーで加熱した温風〜熱風を循環させて約1週間をかけて乾燥(正確には脱水過程としてのDryingではなく、内容成分の熟成を伴うCuring)させ、選別、圧縮を経て7月から10月頃にJTへと出荷される。
バーレー種は、ハンガー・バインターや連縄に挟んだ葉を、遮光したビニールハウスや屋内に吊って、約3週間から1ヶ月かけて自然乾燥する乾燥方法が一般的であるが、本葉と上葉を幹ごと刈り取って幹ごと35℃から40℃に保たれた乾燥室に吊り下げる幹干しと呼ばれる乾燥方法が行われている地域もある。幹干しは、JTが農家の労力削減のために一時期推奨したこともあって普及したが、幹がついたまま収穫しなくてはならないため、高齢化が進むたばこ農家にとっては重労働であるとして、普及率は下がっている。
農家からJTへの出荷は、以前はすべての葉を一度に出荷していたが、現在は早い時期に収穫・乾燥が済んだ葉を先に出荷する早期買入(販売)を行い、その後収穫した葉をもう一度出荷する方法が一般的である。
ナス科の植物なので同じ畑で連続して栽培すると連作障害を起こし収量が減る。
タバコの葉の屑は、窒素1%、リン酸1%、カリウム5%程度を含み肥料として使われることがある。園芸店やホームセンターで「たばこくず肥料」などの商品名で扱われ、普通に購入可能である。ただし養蚕においては桑の施肥中にタバコ屑が加えられると桑にニコチンが残りカイコの飼育に悪影響が出る可能性が富山県告示第244号「肥料取締法第21条の規定に基づく肥料の施用上の注意等の表示命令について」などに示されている。
タバコにはタバコモザイクウイルスが付着していることがあるので、タバコを触った手で、栽培しているトマト、キュウリ、ピーマン(トウガラシ)を触ってはならない[要出典]。
FAOの統計によると、全世界の葉たばこの生産量は、635万トン(2002年)であり、全体の3割以上を中国1国で生産している。中国国内では、雲南省、貴州省、河南省、湖南省、四川省の順に生産が多い。雲南省の生産量は66万トンと、世界2位のブラジルよりも多い。
大陸別の生産量はアジアが6割、南北アメリカがそれぞれ1割ずつ、ヨーロッパとアフリカが1割弱という比率になる。たばこで有名なキューバの生産量は3.2万トンと数量としては多くない。日本の生産量は約5万トン。主な産地は黄色種が南九州、バーレー種が北東北であり、2004年における生産量の上位は宮崎県、熊本県、岩手県、鹿児島県、青森県の順である。
1991年時点の生産量は766万トンであり、約10年間で葉たばこの生産量が100万トン以上減少したことが分かる。当時の生産国を生産量順に並べると、中国、アメリカ、インド、ブラジル、トルコ、イタリア、ジンバブエ、ギリシャ、インドネシアとなる。最も生産が減少したのは中国の70万トン、次にアメリカの35万トン、トルコの10万トンが続く。上位10カ国のうち、生産が増加したのは、唯一ブラジルであり、約25万トン増えた。アルゼンチンも生産量が増加している。
国際連合の統計資料「United Nations Industrial Commodity Statistical Yearbook 2001」によると、2001年の全世界の紙巻たばこの生産本数は5兆4710億本である。葉たばこの最大生産国である中国が、紙巻たばこにおいてもシェア3割を超える最大の生産国となっている。
葉たばこの生産量と比較すると、アメリカ、ロシア、日本、北ヨーロッパ諸国が原料の輸入国であること、インドネシア、ギリシャ、トルコは農業生産と国内の加工業までが一貫していることが分かる。
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