出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/03/04 20:10:15」(JST)
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医薬品(いやくひん)とは、飲んだり(内服)塗ったり(外用)注射したりすることにより、人や動物の疾病の診断、治療、予防を行うための物である。医療用医薬品と、薬局・薬店で誰でも購入できる一般用医薬品とに大別される。
以下、特筆なき限り日本における医薬品の扱いについて解説する。
個々の代表的な医薬品に関しては、医薬品一覧を参照。
目次
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日本の薬事法第2条では、次のように定義される。
国内で医薬品として譲渡を含め流通させるには、厚生労働大臣による製造販売承認が必要である。承認のないもので医薬品、医薬部外品、化粧品もしくは医療機器に該当しないものは「効能」「効果」をうたうことはできない。保健機能食品でその認められた範囲内で標榜する場合を除き、医薬品としての効能効果を謳った製品は、「未承認医薬品」として処罰の対象となる。
食品中の成分の薬理作用の研究が進んだ結果、疾病の予防などの効果をうたった健康食品が出現し、医薬品との区別があいまいになってきた。そこで食品と医薬品を明確に区分する必要が生まれた。
1971年、「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発第476号、厚生省薬務局長通知)が出され、医薬品と食品の区分が明示された。(通称46通知)
まず食品に分類されるものとして
そして上記に該当しないものは、次の4つの要素から医薬品か食品かを判断する。
上記の4つの要素のうち1つ以上を満たしているものが医薬品に分類され、薬事法による規制を受ける。
2001年、厚生労働省医薬局長 「医薬品の範囲に関する基準の改正について」(医薬発第243号平成13年3月27、厚生労働省医薬局長)で、錠剤やカプセルなど医薬品のような形態でも食品であることを明記すれば、形状だけでは医薬品と判断しないと基準が緩和された。
医師等によって使用され又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品をいう。ただし法的な定義がある訳ではなく、医療用医薬品であっても処方せん医薬品に指定されている医薬品でなければ、処方せんがなくても、薬局や医薬品販売業者で誰でも購入できる。
詳細は「一般用医薬品」を参照
一般用医薬品以外の医薬品をいう。いわゆる医療用医薬品及び薬局製造販売医薬品(承認許可を取ることで薬局の調剤室での製造が認められる製剤)。一般人へは薬局において薬剤師が対面で情報提供した上で販売するとされている。
「専ら動物のために使用されることが目的とされている医薬品」と定義されており、農林水産大臣が定めたものをいう。
医師等の処方せんがなければ、一般の人は購入できない医薬品。入手するには医療機関を受診し、医師または歯科医師の処方箋が必要になる。
詳細は「処方せん医薬品」を参照
日本薬局方に収載された医薬品をさす。第一部医薬品、第二部医薬品に大別される。薬局方は約5年に一度大改定されるが、その間2年に一度程度追補版が発行され、収載医薬品が見直されている。最新版は、2011年3月24日に、第十六改正日本薬局方が公表された。
日本薬局方医薬品は使用方法、効果、作用機序などがはっきりしたもののみを収載してきたが、米国薬局方等と比べ収載医薬品数やその内容で現状の医薬品を踏まえていないとの指摘から、積極的に新医薬品の収載を行うようになってきている。ただし、薬価やその扱いなどで、問題が若干残っている。
なお、第二部に収載されたショウガ、蜂蜜などは食品として利用されているものもある。
医薬品は誰でも販売できる訳ではなく、原則として都道府県知事より許可を受けた以下のような場所でのみ販売できる。診療所や病院などで医薬品が扱えるのは、医師法あるいは歯科医師法の例外規定が根拠になっている。
薬事法では、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤業務を行う場所を、薬局と定義している。調剤室以外での調剤は、薬剤師法の規定により原則として認められていない。ただし、在宅医療などの場合は例外がある。
処方箋に基づいて調剤をおこなう薬局を調剤薬局と呼ぶこともあるが、薬局であれば原則調剤ができるので不自然な呼び方であり、「薬局」と「調剤薬局」が別の形態であるかと誤認されるのを防ぐため、法的強制力は無いが新規の薬局には「調剤薬局」という名称を避けることが求められている。
詳細は「薬局」を参照
医薬品販売業のうち店舗において一般人へ一般用医薬品を販売する業態で,一般用医薬品以外の医薬品は扱うことができない。いわゆる調剤を行わない薬店やドラッグストアと呼ばれている業態。従来の一般販売業及び薬種商販売業は経過措置により2012年5月までは店舗販売業とみなされ営業できる。
2009年施行の改正薬事法で新たに設けられた業態。
詳細は「店舗販売業」を参照
配置販売業とは、配置員(販売員)が消費者の家庭を訪問し、医薬品の入った箱(配置箱)を配置し、次回の訪問時に使用した分の代金を精算し、集金する仕組み(「先用後利(せんようこうり)」という。)の医薬品配置販売業である。配置販売される医薬品は、置き薬ともいわれる。以前は、配置販売業の配置員は薬剤師などの資格を必要としなかったが、2009年の改正法による配置販売業では、薬剤師または登録販売者の資格を持たない配置員は、代金回収や補充以外の医薬品販売の業務ができないこととされた。配置販売に従事するに際しては都道府県知事の身分証の交付が必要となる。
医薬品販売業のうち医療機関や薬局などに医薬品を卸売りする業態であり倉庫が主体で店舗は持たない。自治体にワクチンを納めるなど特殊な例を除き、医療関係者以外に直接医薬品を販売することは禁じられている。
新たな医薬品(先発医薬品・新薬)の開発には長い期間(十数年)と巨額の費用(数十億から数百億円)を必要とするほか、製品化できないリスクも他の業界に比べて高い。さらに厚生労働大臣の承認を得るというプロセスが必要となる。一方、新薬の特許は申請後原則20年で切れる(特許庁に特許延長願いを出し認められれば、最大5年間の延長が特許法で認められている)。そのため上市した後の特許保護期間は、他の製品に比べ短くなることから、常に新たな医薬品の研究・開発が必要とされる。以上のことから、医薬品業界は世界的に再編が進み、世界的な超大手企業に集約されつつある。日本でも例外ではなく、医薬品メーカーの再編が急激に進んでいる。
期間の切れた特許で作られた医薬品は後発医薬品(ジェネリック医薬品、ゾロ)と呼ばれ、後発品専門の医薬品メーカーも存在する。既に先発メーカーで実績のある成分を用いる事から、開発期間も短く、新たな投資が少なくて済むため、先発品よりもコストが安い。ジェネリック医薬品の多用により、中小の新薬メーカーは開発費が回収困難になる懸念が持たれている(詳細は後発医薬品を参考のこと)。また大企業でも、2010年前後に大型医薬品が一斉に特許切れを迎えるため(2010年問題)、収益の確保が可能かどうか懸念が持たれている。
医薬品の製造には薬事法により医薬品製造業許可が必要とされている。また、製造した医薬品を上市するには、上市する医薬品の種類に応じて(第1種、第2種)医薬品製造販売業許可が必要である。
日本内外で薬害の問題がある。特に副作用について十分な知識が出回っていなかった頃は医薬品として使われていたものが、後に医薬品の副作用や中毒作用の強さや、重大な副作用による医療訴訟が起こるようになって規制されるようになったものも多い。
また煙草や飲酒をしている人は薬の効き目が弱かったり消されてしまったり、副作用が強く出る場合がある。および禁忌となる飲み合わせをした場合、最悪の場合飲んだ人が死亡することもある。
日本固有の問題としては、まず使われる薬の量の多さが挙げられる。
日本における医薬品の売り上げは年間で7兆3000億円を超え、日本人はアメリカに次ぐ世界2位の「薬好き」とすら言われる[1]。それを証明するようにサプリメント(栄養補助食品)の売り上げも多い。
この背景には2つの側面があり、1つは患者が薬を出される、およびそれを服用すること自体で安心感を持つためである。時には医師が薬は必要ないと判断した場合でも薬を処方することがあるが、それは「念には念を」の意味と、安心感を持たせる意味がある。安心すると言うことは精神衛生の面で大切である。
しかしこの傾向が強くなりすぎると、患者が「薬がありさえすればいい」と思って精神的に薬に依存する。また薬を出すと病院も診療報酬が受け取れるためと患者が安心すると言うことで「とりあえず薬を出す」と思うことがあり、この悪循環が日本で薬を氾濫させた原因の1つである(もちろん他にも原因はたくさんある)。
ただ日本では医療保険によって、通常であれば薬価の3割(障害者や老人の場合は2割や1割に減額される)を払うことになっていて、残りの7割は国庫から支払われる。このため大量に薬が使われればそれだけ国庫の負担も増す。最近になって高い先発医薬品から、同等の効果を持つ後発医薬品(ジェネリック医薬品)を国が認可しようとしている要因の1つに、薬による国庫の負担を軽減する目的がある[2]。
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