コルチゾール
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/03/22 16:44:29」(JST)
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コルチゾール |
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IUPAC名
11β,17,21-トリヒドロキシプレグナ-4-エン-3,20-ジオン
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識別情報 |
CAS登録番号 |
50-23-7 |
KEGG |
D00088 |
特性 |
化学式 |
C21H30O5 |
モル質量 |
362.465 |
特記なき場合、データは常温(25 °C)・常圧(100 kPa)におけるものである。 |
コルチゾール (cortisol) は副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドの一種であり、ヒドロコルチゾン (hydrocortisone) とも呼ばれる。炭水化物、脂肪、およびタンパク代謝を制御し、生体にとって必須のホルモンである。3種の糖質コルチコイドの中で最も生体内量が多く、糖質コルチコイド活性の約95%はこれによる。ストレスによっても発散される。分泌される量によっては、血圧や血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらす。
また、このホルモンは、過剰なストレスにより多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが、近年PTSD患者の脳のMRIなどを例として観察されている[1]。海馬は記憶形態に深く関わり、これらの患者の生化学的後遺症のひとつとされている。
目次
- 1 医薬品としての利用
- 2 コルチゾールの生合成
- 3 参考文献
- 4 関連項目
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医薬品としての利用
コルチゾール(日本薬局方にはヒドロコルチゾンの名称で収載)はステロイド系抗炎症薬(SAID)の1つとして臨床使用される。ステロイド系抗炎症薬は炎症反応を強力に抑制し、炎症の全ての過程に作用する。急性炎症、慢性炎症、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、ショック、痛風、急性白血病、移植片拒絶反応などの治療に使用される。副腎皮質機能不全、クッシング症候群、胃潰瘍などの副作用が現れる場合もある。
コルチゾールの生合成
コルチゾールの前駆物質のコルチゾンは、コレステロールからプレグネノロンを経て生合成される。 プレグネノロン (pregnenolone) は、プロゲステロン、コルチコイド、アンドロゲン、およびエストロゲンのステロイド生成にかかわるプロホルモンである。プレグネノロンは体内であらゆるホルモンに変換されるプロホルモンである。プレグネノロンは、コレステロールから合成される。この反応では、C20とC22との間にヒドロキシル化反応が起こる。この反応を起こす酵素シトクロムP450sccはミトコンドリアにあり、脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンによって制御されている。
コルチゾンとアドレナリンは人体がストレスに対して反応する際に放出される主なホルモンである。これらは血圧を上昇させ、体を闘争または逃避反応 (fight or flight response) に備えさせる。 活性体であるホルモンであるコルチゾールの前駆体であり、コルチゾン自体は不活性である。11-β-ステロイド脱水素酵素と呼ばれる酵素の働きによって、11位のケトン基がヒドロキシル化されることで活性化する。このため、コルチゾールはヒドロコルチゾンと呼ばれることもある。類似のステロイドであるコルチゾールよりも重要性は低い。糖質コルチコイドがもたらす作用のうち95%はコルチゾールによるものであり、コルチゾンの寄与は4%–5%に過ぎない。コルチコステロンはさらに重要性が低い。
プレグネノロンからコルチゾールの前駆物質のコルチゾンへ
参考文献
- 伊藤勝昭ほか編集 『新獣医薬理学 第二版』 近代出版 2004年 ISBN 4874021018
- ^ 山脇成人(2005年). page 8,9.
関連項目
- ステロイド
- コルチゾン
- プレドニゾロン
- メチルプレドニゾロン
- デキサメサゾン
- 非ステロイド系抗炎症薬
- ステロイド系抗炎症薬
- ステロイド外用薬
副腎皮質ホルモン |
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アルドステロン - コルチゾン - コルチゾール - デスオキシコルチコステロン - デヒドロエピアンドロステロン - コルチコステロン
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内分泌器:ホルモン(ペプチドホルモン、ステロイドホルモン) |
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視床下部 - 脳下垂体 |
視床下部
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GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH
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脳下垂体後葉
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バソプレッシン - OXT
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脳下垂体中葉
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インテルメジン
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脳下垂体前葉
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αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - MSH - エンドルフィン - リポトロピン)
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副腎 |
副腎髄質
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副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン - ドーパミン)
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副腎皮質
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副腎皮質ホルモン(アルドステロン - コルチゾール - DHEA)
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甲状腺 |
甲状腺
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甲状腺ホルモン(T3 - T4 - カルシトニン)
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副甲状腺
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PTH
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生殖腺 |
精巣
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テストステロン - AMH - インヒビン
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卵巣
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エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時)
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その他の内分泌器 |
膵臓
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グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン
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松果体
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メラトニン
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内分泌器でない器官 |
胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - EPO - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - BNP - ET - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:CCK - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:サイモシン - サイモポイエチン - サイムリン - STF - THF - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) - 耳下腺:バロチン - 末梢神経系:CGRP - P物質
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誘導タンパク質 |
NGF - BDNF - NT-3
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ステロイド |
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前駆体 |
スクアレン · ラノステロール
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一般 |
コレステロール · プレグネノロン · 17-ヒドロキシプレグネノロン · DHEA · アンドロステンジオン · アンドロスタンジオール
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性ホルモン |
エストロゲン
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エストラジオール · エストリオール · エストロン
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アンドロゲン
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テストステロン · デヒドロテストステロン · アンドロステロン
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プロゲストーゲン
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プロゲステロン · 17-ヒドロキシプロゲステロン · プロゲスチン
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副腎皮質ホルモン |
糖質コルチコイド
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コルチゾール · プレドニゾン
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鉱質コルチコイド
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アルドステロン
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フィトステロール |
スチグマステロール · ブラシカステロール
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エルゴステロール |
エルゴステロール · エルゴカルシフェロール
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主要な生体物質
ペプチド - アミノ酸 - 核酸 - 炭水化物 - 脂肪酸 - テルペノイド - カロテノイド
テトラピロール - 補因子 - ステロイド - フラボノイド - アルカロイド - ポリケチド - 配糖体 |
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- Recombinant Human Growth Hormone Replacement in a Japanese Man with a Novel PROP1 Gene Mutation (R112X)
- Ogo Atsushi,Maruta Tetsushi,Ide Chiharu,Sakai Yoshiyuki,Matoba Yuka,Hiramatsu Shinsuke,Usui Takeshi,Naruse Mitsuhide,Shimatsu Akira,小河 淳,丸田 哲史,井手 千晴,酒井 義之,的場 ゆか,平松 真祐,臼井 健,成瀬 光栄,島津 章,オゴウ アツシ,マルタ テツシ,イデ チハル,サカイ ヨシユキ,マトバ ユカ,ヒラマツ シンスケ,ウスイ タケシ,ナルセ ミツヒデ,シマツ アキラ
- 福岡医学雑誌 102, 277-283, 2011-09-25
- Congenital combined pituitary hormone deficiency (CPHD) is associated with deficiencies of anterior pituitary hormones. PROP1 gene mutations are often responsible for CPHD, but few such cases have bee …
- NAID 120003413057
- 抑うつ傾向の高い女性でのコルチゾールと炎症性サイトカインの変化についての検討
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- cortisol
- 同
- コルチゾル
- 関
- 副腎皮質ホルモン、糖質コルチコイド
コルチゾールの合成
コルチゾールの合成に関係する酵素の局在 HBC.446
基準値
- (血漿) 4.0-18.5 μg/dl (臨床検査法提要第32版) ・・・血中コルチゾール
- (尿) 30-100 μg/日 (臨床検査法提要第32版) ・・・尿中コルチゾール
変動
代謝産物
生理作用
- リンパ球↓、好酸球↓、多核白血球↑ (YN.N-15)
[★]
- 英
- sol
- 同
- コロイド溶液 colloidal solution
- 関
- ポリメチルメタクリレート polymethyl methacrylate、コロイド