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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/11 08:45:21」(JST)
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アルコール発酵 (アルコールはっこう、ethanol fermentation) は、グルコース、フルクトース、ショ糖などの糖を分解して、エタノールと二酸化炭素を生成し、エネルギーを得る代謝プロセスであり、酸素を必要としない嫌気的反応である。酵母は酸素がないところで、糖を用いてアルコール発酵する代表的な生物である。その応用範囲は、燃料としてのエタノール(バイオエタノール)の大量生産やアルコール飲料、パンなど食品の生産など多岐に渡る。
酵母によらない発酵は、「カーボニック・マセレーション」と呼ばれる反応であり、高濃度の二酸化炭素または窒素ガス中(低酸素雰囲気)に置かれたブドウの果実中で起こる嫌気的反応で、酵素の作用により糖がアルコールに変化する。この手法はボジョレー・ヌーヴォーの醸造の際に用いられている。
化学的変化
アルコール発酵全体を通してみると、反応は以下の化学式で示すように、1分子のグルコースからエタノールと二酸化炭素が2分子ずつできる。この反応は大きく三つの段階に分けることが出来る。
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- C6H12O6 → 2 C2H5OH + 2 CO2
第一段階で、1分子のグルコースが解糖系の複数の酵素によって2分子のピルビン酸に分解される。この反応は、同時に、正味2分子のADPをATPに、2分子のNAD+をNADHに変換する。この段階は、動物や植物の解糖経路と同じで、酸素呼吸の経路とも共通している。
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- C6H12O6 + 2 ADP + 2 H3PO4 + 2 NAD+ → 2 CH3COCOOH + 2 ATP + 2 NADH + 2 H2O + 2 H+
第二段階からがアルコール発酵特有の反応になる。1分子のピルビン酸から1分子の二酸化炭素が取り除かれ、アセトアルデヒドがつくられる。この反応は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.1)が触媒する。
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- CH3COCOOH → CH3CHO + CO2
その後、アセトアルデヒドは還元型NADHの電子によって速やかに還元されエタノールとなる。この反応は、アルコール脱水素酵素(EC 1.1.1.1)が触媒する。
-
- CH3CHO + NADH + H+ → C2H5OH + NAD+
多くの酵母では、アルコール発酵は嫌気条件でのみ進行し、酸素があるとピルビン酸を完全に分解して水と二酸化炭素に変える(酸素呼吸)。しかし、よく使われるパン酵母(Saccharomyces cerevisiae)や分裂酵母(S. pombe)は酸素があっても発酵を好むため、適当な培養条件を選ぶと好気条件でもエタノールを生産する。
酵母による発酵の結果、糖度計による計測糖度の値の約半分の値のアルコールが生成される。つまり、糖度20度ならば、アルコール度数は約10度になると言うことである。
利用方法
- アルコール飲料
- ほとんど全てのアルコール飲料の生産には、酵母によるアルコール発酵を用いるが、この酵母はデンプンを糖に分解できない。ワインとブランデーは、ブドウに含まれる糖の発酵によって作られる。一方、ビール、ウィスキー、日本酒などは穀物からつくられるが、そのためにはまずデンプンの糖化が必要である。ビールでは、麦芽に含まれる酵素(アミラーゼ)によって糖化する。日本酒では、米を精米するためアミラーゼを含む胚芽は除去されるので、コウジカビの作用で糖化する。この後、酵母によってアルコール発酵を行う。
- パン
- パンはパン酵母(イースト菌)のアルコール発酵によって、パン生地を膨らませる。イースト菌は、パン生地に含まれる砂糖を分解し、エタノールと二酸化炭素を作る。分解時に発生する二酸化炭素によってパン生地を膨らませる。また、ほとんどのエタノールは加熱などによって生地から蒸発する。
- バイオエタノール
- バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビをアルコール発酵させエタノールを作る。バイオマスエタノールは、再生可能な自然エネルギーであること、および、その燃焼によって大気中の二酸化炭素量を増やさない点から、エネルギー源としての将来性が期待されている。他方、生産過程全体を通してみた場合の二酸化炭素削減効果、エネルギー生産手段としての効率性、食料との競合、といった問題点も指摘されている。
- バイオマスエタノールの項目が詳しい。
関連項目
代謝: 炭水化物代謝 |
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発酵 (アルコール発酵, 乳酸発酵) - 解糖系/糖新生 - グリコーゲン合成/グリコーゲンの分解 - ペントースリン酸経路 - 光合成 (炭素固定) - 炭水化物異化 - 細胞呼吸
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- P-44 高効率アルコール発酵のためのキシロース資化性酵母Pichia stipitisの改良(セルロースエタノール,Poster Session)
- 西田 孝伸,進藤 昌,佐々木 美希子,柏谷 香織,三橋 秀一
- バイオマス科学会議発表論文集 (9), 140-141, 2014-01-08
- Clotrimazole-tolerant mutant CTM-2 was obtained by mutation in Pichia stipitis and adaptation of P stipitis against clotrimazole and ethanol. CTM-2 had tolerance against some kind of stress such as et …
- NAID 110009820205
- バイオマス研究の10年を振り返る(10)エタノール変換技術(1)バイオマス原料のエタノール発酵と草本系材料の糖化前処理技術
- 3P-044 出芽酵母のアルコール発酵調節におけるTORシグナリングの意義
- 渡辺 大輔,中沢 伸重,水野 恵,周 延,赤尾 健,下飯 仁,前田 達哉
- 日本生物工学会大会講演要旨集 65, 199, 2013-08-25
- NAID 110009737992
Related Links
- 酸素が少ないと発酵が行われる 酵母菌は嫌気状況(酸素の少ない状況)ではアルコール発酵を行って,ブドウ糖をピルビン酸を経由してエタノール(エチルアルコール)と二酸化炭素(炭酸ガス)に分解し,生存や増殖に必要なエネルギーを ...
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★リンクテーブル★
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- 英
- pyruvate decarboxylase, pyruvic decarboxylase
- 同
- ピルビン酸脱炭酸酵素
- 関
- ピルビン酸、ビタミンB1
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- 英
- alcohol
- 関
- エタノール
アルコールによる酩酊の分類
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- 0.5 mg/ml 以上で酒気帯び → 道路交通法(0.5 mg/ml以上で運転能力の低下、1.5 mg/ml以下では著しい低下。1.5-2.0 mg/mlがもっとも危険。これ以上では運転できない)
- 血中アルコール濃度と酩酊の状態
- 0.0-0.5 mg/ml::殆ど無症状か、わずかな熱覚、味覚や嗅覚の低下
- 0.5-1.0 mg/ml:弱度酩酊:顔面紅潮、抑制からの解放、陽気、多幸感、不安や緊張の緩和、反応時間の延長など
- 1.0-1.5 mg/ml:軽度酩酊:多弁、大胆、感覚の軽度麻痺、気分爽快、多弁など
- 1.5-2.5 mg/ml:中程度酩酊:眠気に襲われる、言語不明瞭、平衡感覚が鈍麻し、千鳥足になる、理解・判断力鈍麻など
- 2.5-3.5 mg/ml:強度酩酊:歩行困難、顔面蒼白、悪心、嘔吐、感覚麻痺、精神運動性興奮、言語不明瞭、諸反射の消失など
- 3.5-4.5 mg/ml:重度酩酊、泥酔:意識消失、筋力消失、呼吸困難、体温低下、昏睡状態
- 4.5- mg/ml:呼吸麻痺、心機能不全などで死亡する。
アルコールの慢性症状
- アルコール中毒の患者において、脳神経でchromatosisが見られるが、ニューロンの脱落は末期まで見られない。小脳では虫部のニューロンが優先的に脱落する。大脳辺縁系の乳頭体に強い病変が見られる → ウェルニッケ・コルサコフ症候群と関連
- 振戦譫妄
- アルコール幻覚症
- コルサコフ症候群
- アルコール痴呆
- アルコールてんかん
アルコールによる非精神症状
アルコールによる疾患
- 身体疾患:アルコール性肝疾患(脂肪肝)、膵炎(急性膵炎、慢性膵炎)、大腿骨頭壊死症、末梢神経障害
- 精神疾患:急性アルコール中毒、慢性アルコール中毒、アルコール依存症、アルコール精神病
- (国試)100B077、095B075
アルコールの摂取と疾患
- ホジキンリンパ腫:掻痒症を呈する患者もいるが、そのばあい飲酒をすると当該部位に痛みが出現する(APT.83)
- 急性膵炎:増悪
アルコールの胎児への影響
- SUB.260
アルコールの摂取量
- 21世紀における国民健康づくり運動の目標値では節度ある適度な飲酒とは1日平均純アルコールで20g程度としている。 → ビール(5%) 400ml、日本酒(15%) 133.3ml
- 脳卒中治療ガイドライン2009ではクモ膜下出血の発症予防には過度の飲酒(1週間に150g以上)を避けることが推奨されている。
アルコールの単位
- アルコール摂取量の基準とされるお酒の1単位とは、純アルコールに換算して20g。