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食餌療法(しょくじりょうほう、食事療法とも、medical diet)とは、食事の量やバランス、また成分を調節することによって、病気の療養をはかったり、病気の臓器を守り健康管理をはかること。糖尿病、腎臓病、高血圧症などで行われる。
[誰?] 栄養の評価は体重、上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)、上腕周囲長(AC)、血清アルブミン値、その他ラピッドターンオーバープロテインなどで評価されることが多い。アルブミンは肝臓で合成されるため肝障害時、また炎症を伴う場合、アルブミン以外の蛋白合成がされるため栄養状態の尺度とならないこともある。
項目 | アルブミン | トランスサイレチン (プレアルブミン) |
トランスフェリン | レチノール結合蛋白 | リンパ球 |
---|---|---|---|---|---|
半減期 | 約21日 | 3〜4日間 | 7〜10日間 | 12〜16時間 | |
高値群 | 脱水 | 腎不全、甲状腺機能亢進症、妊娠 | 鉄欠乏性貧血、妊娠 | 慢性腎不全、過栄養性脂肪肝 | |
低値群 | 栄養障害、肝障害、ネフローゼ症候群、感染症、悪性腫瘍 | 栄養障害、肝障害、感染症 | 栄養障害、肝障害、ネフローゼ症候群、感染症、膠原病 | 栄養障害、肝障害、感染症、ビタミンA欠乏症、甲状腺機能亢進症 | |
栄養正常 | 3.5g/ml以上 | 2000以上 | |||
軽度栄養障害 | 3.1-3.5 | 1200〜2000 | |||
中等度栄養障害 | 2.1-3.0 | 〜120 | 800〜1200 | ||
高度栄養障害 | -2.0 | 〜800 |
主に糖尿病の治療目的に用いられる食事である[誰?]。2型糖尿病の場合は肥満によるインスリン抵抗性を改善するため、エネルギーを制限することが望ましいと考えられている。1日あたりの総エネルギー量の目安は、
で計算し、食事量を決める。エネルギー量の計算は、80kcalを1単位として計算する方法が簡単で、一般的である。例えば、デスクワークの多い成人男性では、1500kcal〜1600kcal(約20単位)ということになる。
『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2004年版』には以下のような記載がある。
食生活の気をつける点としては[誰?]
などがあげられる。
なお、インスリン導入後は低血糖の防止のため補食するのも可能であり、補食の場合はインスリンを打たないこともよくある。しかし食事をとらなかった場合も基礎分泌を保つため定時に通常の半量〜2/3量のインスリンの注射が必要である。
糖尿病の食事療法は必ずしも総エネルギー量制限を主とする療法のみではない。血糖を上昇させる主たる栄養素は糖質である事から、炭水化物(糖質)制限食を導入する動きが広がっており、成果をあげている[2]。しかし、日本の糖尿病学会は、2013年にも腎臓への影響からの糖尿病合併症への懸念から通常の炭水化物の比率を推奨している[3]。
糖尿病でない閉経前の女性の体重の管理のために、12ヶ月の期間では、低炭水化物のアトキンスダイエットのほうが高炭水化物の食事療法より原料の効果が見られ、この期間では低炭水化物に起因する代謝への悪影響は明らかとはならなかった[4]。肥満者で、低炭水化物食は、通常の炭水化物量の地中海食同様に効果があった[5]。
その代表例がアトキンスダイエットである。一般に、高血糖状態におかれている場合、血管に与えるダメージを軽減する必要性から血糖値を下げることは非常に重要であるが、炭水化物からとる分のカロリーを蛋白質・脂質から摂取するようにした場合、腎機能が低下している、もしくはその徴候の認められる患者に対して糖質制限食は慎重を要する。最近は、糖質制限食でアディポネクチンが増加するという報告がある[6]。日本でも研究は始まっている[7]。2008年の日本の論文では、低炭水化物食の指導が、肥満を伴う糖尿病患者には驚くほど有効であると記されている[8]。
世界保健機関の2007年の報告では、タンパク質の多い食事は腎臓疾患や糖尿病性腎不全を悪化させる[9]。世界保健機関の2003年の報告は、肥満や糖尿病を予防する原因に全粒穀物を挙げている[10]。国際糖尿病連合は、糖尿病の治療には低いグリセミック指数の食品を挙げており、これは全粒穀物などがあてはまる[11]。ハーバード大学公衆衛生学教室の調査[12]では、20年間の調査で冠疾患の増加リスクはないとされている。日本の糖尿病学会は2013年に、たんぱく質の腎臓への影響による糖尿病合併症への懸念から、炭水化物は通常の食事摂取基準で示される60%程度の比率を推奨している[3]。
高血圧、心不全、慢性腎臓病(CKD)や肝不全といった浮腫性疾患の治療の際に用いられる治療食である。
腎不全、透析の際に用いられる食事である。
甲状腺の疾患の際に用いられる食事である。
C型肝炎の際に用いられる食事である。
基本的にはエネルギー調整食を心掛ければよい。糖尿病の食品交換表、ダッシュダイエット、カーボカウント、糖質制限食なども提唱されている。
窒素制限(実際には蛋白制限)が必要となることがある。
叢法滋によると血糖値上昇を抑制させる作用のある食物には、次がある[14][要高次出典]。
エネルギー (kcal/kg/day) |
蛋白質 (g/kg/day) |
食塩 (g/day) |
カリウム (g/day) |
水分 |
---|---|---|---|---|
35〜40 | 0.5〜0.8 | <7 | 血清K値が5.5mEq/l以上で制限 | 尿量+不感蒸泄量+腎以外の経路の喪失量 |
急性腎不全は原因によって病態が著しく異なる。そのため上記の図は参考にすぎない。状況によって変えていくべきである。急性期で消化器症状が強い場合はIVH管理になることが多い。蛋白制限量は内科的疾患の時は0.5〜0.8g/kg/dayであるが、外科的な疾患の場合は、特に腎後性腎不全の場合は0.7〜1.0g/kg/day程度になる。また急性腎不全で透析療法を併用している場合は0.9〜1.2g/kg/dayの制限でよい。また高カリウム血症は急性腎不全の予後を決定する因子のひとつである。血清K値が5.5mEq/l以上で制限食に切り替え、血清K値が6.5mEq/l以上でカリウム交換樹脂の併用を行う。
エネルギー (kcal/kg/day) |
蛋白質 (g/kg/day) |
食塩 (g/day) |
カリウム (g/day) |
水分 | リン (mg/day) |
---|---|---|---|---|---|
35 | 0.6〜0.7 | <7 | 血清K値が5.5mEq/l以上で制限 | Ccr15ml/min以下のとき制限 | 尿中P排出量500mg/day以上で制限 |
Ccr70ml/min以下の保存期慢性腎不全患者においては低蛋白食を中心とした食事療法が推奨されている。一日の蛋白摂取量の目標値は健康成人の最低蛋白摂取量である理想体重当たり0.6gとし0.7g未満であれば目標は達成である。また高血圧が増悪因子であることから食塩制限も行い、一日食塩7gの制限とする。Ccr71ml/min以上の患者でも将来腎機能が低下し、末期腎不全に進行する可能性がある場合は低蛋白食に移行してもかまわないとされている。こういった場合は0.8〜1.0g/kg/dayの蛋白制限から始める場合が多い。日常の食生活を調べ、一般の蛋白摂取量を1.3g/kg/dayを超えることがないように指導しなければならない。カリウムやリンに関しては基本的には低蛋白食ができていれば、通常は制限の必要はないとされている。しかし検査値に異常がみられる場合は新たに制限を加えることがある。カリウムならばバナナなどカリウムを多く含む食品を避けて、野菜をゆでて食べるようにすればある程度摂取量を減らすことができる。リンに関してはタンパク質に付随して摂取されることが多く、制限が不要なことが多いが、レバー、チーズ、豆腐、アーモンド、ソフトドリンクなどに多く含まれていることからこれらを避けるようにすることが望ましい。Ccrが低値であったりネフローゼ症候群が見られる場合は水分も制限する。その場合は尿量と不感蒸泄分のみの摂取となる。エネルギー制限に関しては35kcal/kg/dayでは高齢者や女性では多すぎることがあるため28〜40kcal/kg/dayの幅がある。これらを目安とするには高エネルギー低蛋白とするという保存期腎不全の原則のために設けられている。
維持透析には血液透析と腹膜透析に大別される。透析患者の平均余命が改善したことを受けて、透析患者の食事も変わりつつある。 週3回の血液透析の場合。
総エネルギー (kcal/kg/day) |
蛋白質 (g/kg/day) |
食塩 (g/kg/day) |
カリウム (g/day) |
食事以外水分 (ml/kg/day) |
リン (mg/day) |
カルシウム (mg/day) |
---|---|---|---|---|---|---|
30〜35 | 1.0〜1.2 | 0.15 | 1.5 | 15 | 700 | 600 |
食塩に関しては0.15g/kg/dayが原則であるが残腎尿量100mlにつき0.5g/dayの増量が可能である。また食事以外の水分に関しても15ml/kg/dayが原則だが残腎尿量分の増加が可能である。
持続式携帯型腹膜透析の場合。
総エネルギー (kcal/kg/day) |
蛋白質 (g/kg/day) |
食塩 (g/day) |
カリウム (g/day) |
食事以外水分 (ml/day) |
リン (mg/day) |
カルシウム (mg/day) |
---|---|---|---|---|---|---|
29〜34 | 1.1〜1.3 | CAPD除水量(l)×7.5 | 2.0〜2.5 | CAPD除水量 | 700 | 600 |
CAPDの場合は食塩摂取量はCAPD除水量(l)×7.5g/dayであるが残腎尿量100mlにつき0.5g/dayの増量が可能である。また食事以外の水分に関してもCAPD除水量が原則だが残腎尿量分の増加が可能である。なお総エネルギーは透析液からの腹膜吸収分を含む。
病期 | エネルギー (kcal/kg/day) |
蛋白質 (g/kg/day) |
食塩 (g/day) |
カリウム (g/day) |
水分 |
---|---|---|---|---|---|
乏尿期 | 35 | 0.5 | 0〜3 | 血清K値が5.5mEq/l以上で制限 | 前日尿量+不感蒸泄量 |
利尿期 | 35 | 0.5 | 0〜3 | 血清K値が5.5mEq/l以上で制限 | 前日尿量+不感蒸泄量 |
回復期 | 35 | 1.0 | 3〜5 | 制限せず | 制限せず |
乏尿期と利尿期に関しては食事療法は変化しない。急速進行性糸球体腎炎も食事療法では急性腎炎症候群に含まれる。
経腸栄養剤には天然濃厚流動食、人工濃厚流動食、病態別経腸栄養剤がある。人工濃厚流動食には半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤が存在する。天然濃厚流動食、半消化態栄養剤は窒素源が蛋白質であるが、消化態栄養剤はオリゴペプチドであり成分栄養剤はアミノ酸である。細かくなるほど流動性、残渣という点では好ましくなるが、味、香りの面で劣りまた高浸透圧となるため管理が難しくなってくる。細かくなると腸管免疫の維持という点では好ましくなくなると考えられている。ラコール、ツインラインはビタミンKが60μg以上含まれているために抗凝固療法では注意が必要である。
天然濃厚流動食としてはオクノス流動食やファイブレンYHなどがこれに該当する。正常な消化吸収能が必要であるため、パーキンソン病患者など、経口摂取障害、嚥下障害で用いられる。粘度が極めて高いため太い経管栄養チューブが必要である。浸透圧が高いため開始後に下痢を起こしやすい。
半消化態栄養剤としては多少の消化機能を要するが易吸収性で適応範囲は極めて広い。浸透圧が低めで下痢を起こしにくく、味も栄養剤の中では比較的良い。栄養成分の添加もされており欠乏症のリスクは低い。エンシュアリキッド、エンシュアH、ラコール、ハーモニックM、ハーモニックFなどが有名である。腸管安静が必要な病態や消化管機能が高度に障害されている場合は適応はない。術前術後の栄養管理、熱傷、神経因性食欲不振症、意識障害など中枢神経疾患、悪性腫瘍による化学療法や放射線療法の施行時や口腔、咽頭、食道の狭窄や機能障害の時に用いられる。エンシュアリキッドやエンシュアHは高濃度経腸栄養剤と言われ、水分制限が必要な時や異化亢進時に好まれる傾向がある。
消化態栄養剤ととしてはツインラインが非常に有名である。食品としてはエンテルードなどが知られている。小腸機能まで障害された際によく用いられる。短腸症候群、放射性腸炎、蛋白アレルギー、吸収不良症候群などに適応がある。流動性が高いため細いチューブで投与可能だが、腸管免疫の低下、腸管機能の低下、浸透圧性下痢、味、香りがよくないといった欠点がある。また菌交代症による敗血症も起こる可能性がある。
成分栄養剤としてはエレンタール及び小児用のエレンタールPが知られている。脂肪が著しく少ないため必須脂肪酸欠乏症に注意が必要である。それ以外の注意事項は消化体栄養剤と殆ど同内容となるが、更に程度は強い。クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸手術の前処置として用いられることがある。
GFO®はグルタミン、食物繊維、オリゴ糖の頭文字から命名された。グルタミンが小腸を栄養し、食物繊維とオリゴ糖が大腸を栄養する。GFOの投与によって腸管の免疫能を促進する方法をGFO療法という。
ARDSに対して使用される免疫調節経腸栄養剤である。抗動脈硬化作用、抗炎症作用の知られるEPAなどが含まれている。
ビーフリード®やイントラリポス®を用いることで末梢静脈から1000Kcal以上の投与が可能である。ビーフリード2000ml(840Kcal)と20%イントラリポス200ml(400Kcal)の投与で1240Kcalの投与となる。
必須脂肪酸欠乏、代謝性アシドーシス、微量元素欠乏、肝機能障害といった合併症が知られている。
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リンク元 | 「食事療法」「dietetics」「alimentary therapy」「食事療法学」 |
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