- 英
- anterior pituitary gland、anterior pituitary
- 関
- 下垂体前葉
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/05/22 13:07:21」(JST)
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脳下垂体前葉 |
下垂体の全体像
左の色の濃い方が前葉
|
ラテン語 |
lobus anterior hypophyseos |
英語 |
Anterior pituitary |
グレイの解剖学 |
書籍中の説明(英語) |
動脈
|
上下垂体動脈
|
静脈
|
下垂体静脈
|
前駆体
|
口腔粘膜 (ラトケ嚢)
|
MeSH |
Anterior+Pituitary+Gland |
ヒトにおいて脳下垂体前葉(英:pars distalis, anterior pituitary)は脳下垂体のうち前部で、多くのホルモンの分泌を行っている内分泌器官である。視床下部でホルモンを作り軸索を通じて分泌する後葉と異なり、下垂体前葉のホルモンは前葉にある細胞で作られる。こうした細胞は、視床下部から下垂体門脈を通ってくる各種のホルモンにより刺激・抑制される。
目次
- 1 由来
- 2 分泌
- 3 疾患
- 4 関連項目
- 5 参考文献
由来
下垂体は腺上皮と神経組織という全く異なる由来のものがくっついてできたものであるが、このうち前葉と中葉は腺上皮に由来している。これらは、はじめ口窩と呼ばれる原始の口腔のうち、天井の外胚葉性部分が上へ陥入してラトケ嚢という構造をつくる。そして、脳側から伸びてきた漏斗と呼ばれる部分に接触する。このラトケ嚢と漏斗が下垂体となり、ラトケ嚢のうち漏斗と接する壁面が中葉に、ラトケ嚢の主たる部分が前葉になる。こうした由来のために、下垂体前葉と中葉は腺性下垂体と呼ばれる。発達するにしたがい、ラトケ嚢の茎部は退縮し口腔側から分離されて蝶形骨に覆われるようになる。
分泌
前葉は、腺上皮なのでここにある細胞自身がホルモンを産生している。前葉の細胞には染色の違いから酸好性細胞(acidophil)と塩基好性細胞(basophil)と色素嫌性細胞(chromophobe)の3つに分けることができる。染色性の違いは細胞が蓄えているホルモンの酸性・塩基性を反映している。酸好性細胞はペプチドホルモンを作り、塩基好性細胞は主に糖タンパク質ホルモンを作っていて、色素嫌性細胞はホルモンを出してしまった後の細胞などである。下垂体前葉で分泌される主なホルモンを以下に示す。
ホルモン |
英語名 |
略称 |
構造 |
染色性 |
作用器官 |
効果 |
副腎皮質刺激ホルモン |
Adrenocorticotropic hormone |
ACTH |
ポリペプチド |
好塩基性 |
副腎 |
糖質コルチコイドの分泌 |
β-エンドルフィン |
Beta-endorphin |
|
ポリペプチド |
好塩基性 |
オピオイド受容体 |
痛覚の緩和 |
甲状腺刺激ホルモン |
Thyroid-stimulating hormone |
TSH |
糖タンパク質 |
好塩基性 |
甲状腺 |
甲状腺ホルモンの分泌 |
卵胞刺激ホルモン |
Follicle-stimulating hormone |
FSH |
糖タンパク質 |
好塩基性 |
性腺 |
生殖系の調節 |
黄体形成ホルモン |
Luteinizing hormone |
LH, ICSH |
糖タンパク質 |
好塩基性 |
性腺 |
性ホルモンの分泌 |
成長ホルモン |
Growth hormone |
GH, STH |
ポリペプチド |
好酸性 |
肝臓, 脂肪組織 |
成長の促進(主に肝臓でIGF-1を作らせることによる)と脂肪・炭水化物の代謝 |
プロラクチン |
Prolactin |
PRL |
ポリペプチド |
好酸性 |
卵巣, 乳腺 |
エストロゲンの分泌と乳汁の合成 |
(卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンはまとめて性腺刺激ホルモンと総称される。)
下垂体前葉には下垂体門脈系(hypophyseal portal system)という静脈性の門脈系がある。前葉でのホルモン分泌を促す放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモンや成長ホルモン放出ホルモンなど)や抑制する放出抑制ホルモン(ソマトスタチンなど)は視床下部の神経分泌細胞で作られた後、下垂体との境界付近の正中隆起にある一次毛細血管網に放出されるが、これらはいったん門脈に集められた後、前葉の中に再び二次毛細血管網として広がり特定の標的細胞のホルモン産生を調整する。この一方で後葉は神経分泌細胞が直接軸索を伸ばしてきている。
疾患
下垂体腺腫と呼ばれる良性の腫瘍があると、上に述べたようなホルモンの分泌異常が起こることがある。その中でも多く見られるのはプロラクチン産生腺腫と成長ホルモン産生腺腫である。前者は無月経や不妊を、後者は巨人症や先端肥大症を引き起こす。また下垂体腺腫は、拡大すると直下の視神経交叉部(視交叉)が圧迫され視覚・視野に障害が起こることがある。
関連項目
参考文献
- A.L.Kierszenbaum、組織細胞生物学 ISBN 978-4-524-23676-3
内分泌器:ホルモン(ペプチドホルモン、ステロイドホルモン) |
視床下部 - 脳下垂体 |
視床下部 |
GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH
|
脳下垂体後葉 |
バソプレッシン - オキシトシン
|
脳下垂体中葉 |
MSH(インテルメジン)
|
脳下垂体前葉 |
性腺刺激ホルモン - αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - エンドルフィン - リポトロピン)
|
|
副腎 |
副腎髄質 |
副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン - ドパミン)
|
副腎皮質 |
副腎皮質ホルモン( 鉱質コルチコイド - 糖質コルチコイド - アンドロゲン)
|
|
甲状腺 |
甲状腺 |
甲状腺ホルモン(T3 - T4 - カルシトニン)
|
副甲状腺 |
パラトルモン
|
|
生殖腺 |
精巣 |
テストステロン - AMH - インヒビン
|
卵巣 |
エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時)
|
|
その他の内分泌器 |
膵臓 |
グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン - 膵ポリペプチド(英語版)
|
松果体 |
メラトニン
|
|
内分泌器でない器官 |
胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - エリスロポエチン(EPO) - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - BNP - ET - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:コレシストキニン - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:サイモシン - サイモポイエチン - サイムリン - STF - THF - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) - 耳下腺:バロチン - 末梢神経系:CGRP - P物質
|
誘導タンパク質 |
NGF - BDNF - NT-3
|
|
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- ドーパミンD2受容体は両生類脳下垂体前葉からのTRH誘導性PRL放出に対するドーパミンの抑制作用を仲介する
- 中野 真樹
- 比較内分泌学 = Comparative endocrinology 36(139), 276-277, 2010-12-01
- NAID 10027129694
- 雄生殖器におけるプロラクチンの機能--異所性および異型プロラクチンの観点から
- 石田 充代,針谷 敏夫
- 明治大学農学部研究報告 57(4), 143-149, 2008-03
- … プロラクチン(PRL)は全ての脊椎動物において、脳下垂体前葉で合成・分泌される分子量約23kDaのポリペプチドホルモンの一種である。 …
- NAID 120005258961
- マウス乳頭・乳腺組織におけるプロラクチン遺伝子発現の解析
- 小泉 稔,堀口 幸太郎,冨田 陽子,加藤 幸雄,針谷 敏夫
- The Journal of reproduction and development 49(6), 465-472, 2003-12-01
- … 脳下垂体前葉で生産・分泌されるプロラクチン(PRL)は、脊椎動物全般に広く分布し、多種多様な生理作用を示すことが知られている。 …
- NAID 10026620270
Related Links
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- 下垂体前葉機能低下症。下垂体前葉機能低下症とはどんな病気か 脳下垂体は、前葉(ぜんよう)と後葉(こうよう)とに分けられます。このうち、前葉でつくられる種々のホルモンの分泌が障害されて起こる病気です。下垂体前葉ホルモン ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- pituitary gland (Z), hypophysis (Z)
- ラ
- glandula pituitaria
- 同
- 脳下垂体
- 図譜では矢状断のものしか載っていないが、前頭断で見ると意外に横に長い、みたい。
発生学(L.413)
- 胎生第4週に下垂体前葉と下垂体後葉が接する。Rathke嚢の細胞は、活発に分裂して前葉を形成し、内腔は殆ど閉鎖する。成人ではコロイドを満たした小嚢胞として前葉と後葉の間に認められる。
画像
- MRI T1:(高信号)下垂体後葉 > 下垂体前葉 ← 脂肪濃度を反映しているのですかね?軸索が多いでしょ?
[★]
- 英
- anterior pituitary (Z), anterior lobe of pituitary gland (N), anterior lobe of hypophysis, anterior lobe (KH)
- ラ
- lobusanterior hypophyseos
- 同
- 腺性下垂体
- 関
- 下垂体
[★]
- 英
- (植物)leaf、leaves、plant leaf、plant leaves、blade、(動物)lobe、lobus、foliage、foliar
- 関
- 葉状、刃、ローブ
[★]
- 英
- anterior lobe
- ラ
- lobus anterior