出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/05/26 06:33:08」(JST)
精神科医 | |
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基本情報 | |
職種 | 専門職 |
業種 | 医療 |
詳細情報 | |
適性能力 | 分析力、忍耐力、寛容力 |
必須試験 | 医師国家試験 |
就業分野 | 精神科 |
関連職業 | 麻酔科医、神経科医、内科医、臨床心理士、作業療法士、言語聴覚士、音楽療法士、精神保健福祉士、医療ソーシャルワーカー、カウンセラー、看護師、薬剤師 |
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精神科医(せいしんかい、英: Psychiatrist)は、精神医学を専門とする医師であり、精神障害・精神疾患・依存症の治療を専門的に診察する医師免許を持つ[1]。
精神疾患の治療は、OECD諸国においては主にプライマリケアを担当する総合診療医が担っている[2]。日本ではプライマリケアは整備途上であるため、プライマリケア医との連携が今後の課題である[3]。厚生労働省は「G-Pネット」としてプライマリケア医と精神科医の連携を進める政策を取っている[4][5]。
専門とする精神医学には、児童精神医学、老年精神医学など人間の発達年齢別の分野のほか、犯罪精神医学、司法精神医学など特定の集団を扱う分野がある[6][7]。また、精神科医や臨床心理士が他科の患者の心理的ケアを行うなど、チーム医療活動に力点を置いた分野にリエゾン精神医学がある[8][9][10]。
精神科医の業務には、精神疾患の診療、精神疾患の予防、精神衛生の普及がある。これらの中でも中心的業務となる診療業務は、外来のみの診療を行う精神科クリニック、入院施設を有する精神科病院、総合病院内の一診療科としての精神科など、各医療機関において主に行われる。近年では、医療機関名を「心療クリニック」「メンタルクリニック」、診療科名を「心療内科」「メンタルヘルス科」と標榜するなど、精神疾患や精神科医療に対する心理的な抵抗の軽減を目指し、早期の治療を実現させるための試みが行われていることもあり、精神疾患受療率は増加している[11]。
一般的に精神科医になる為の要件は、諸外国では充実しているが、国によって異なる[6][12]。
アメリカ合衆国とカナダにおいては、学士号(M.D.、D.O.)を保持した後、精神科レジデントとして4年間の研修を経なければならない(カナダでは5年間)。すべての精神科レジデントは認知行動療法、サイコドラマ、支持的精神療法の技能を有することが要求される。
イギリスにおける精神科医は、医学士号を保持する必要がある[13] 。
精神科医 | |
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英名 | Psychiatrist |
実施国 | 日本 |
資格種類 | 国家資格 |
分野 | 医療 |
試験形式 | マークシート(医師国家試験) ケースレポート(精神保健指定医申請) |
認定団体 | 厚生労働省 |
後援 | 日本精神神経学会 |
等級・称号 | 精神科医 |
根拠法令 | 医師法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、医療法 |
ウィキプロジェクト 資格 ウィキポータル 資格 |
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日本においては、6年制医学部を卒業し「学士(医学)」または「医学士」の学位を有する。
学会認定専門医として精神科専門医があり、日本精神神経学会が認定する。
精神科医療の臨床現場では、特に病識(自分が病気であるという認識)が無い精神疾患患者の場合、患者本人および患者の周囲の人間の生命・身体などに、甚大な損失を招く可能性(自傷他害の恐れ)が認められることがある。そのような場合などは、たとえ当該患者本人の意にそぐわずとも、患者の「医療を受ける権利」を擁護するため、患者に適切な医療や処遇を強制する必要性が生じる。このように、人権と医療との間の微妙なバランスへの配慮を迫られる臨床現場において、その全責任を負う存在として、精神保健指定医がある[14]。
精神保健指定医は、専門医などのように学会が認定する民間資格ではなく、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第18条に基づき厚生労働大臣が指定する法的資格である。従って、上記の様に一歩間違えれば人権侵害の恐れもあるが「病識の欠如」「自傷他害の恐れ」「医療を受ける権利を擁護する必要性」が認められる場合などでは、精神保健指定医の診察・判定をもって精神疾患患者に入院などを強制できることが法的に担保されており、同時にその裏返しとして、強制的な処遇には精神保健指定医の診察・判定が法的に義務づけられている。例えば、措置入院、緊急措置入院、医療保護入院、応急入院、退院制限などを行うには、精神保健指定医の診察・判定を要する。また、保護室への隔離や身体拘束などの行動制限を行う時にも、一般の精神科医よりも精神保健指定医の法的な権限は大きい[15]。
20世紀半ばから生物学的精神医学や精神薬理学が急速な進歩を遂げた現代に至っても、いまだヒトの高次心理過程の研究は途上の段階にある。従って、特に精神医学分野は他の医学分野に比べ、根拠に基づいた医療が不十分とされることがある[16][17]。
このような課題に対処するため、現在の臨床現場で主に用いられる診断基準の精神障害の診断と統計マニュアル(アメリカ精神医学会発表)」、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(世界保健機関発表)」は、共に「操作的診断基準」を採用している[18][19]。すなわち、従来の診断基準のように「患者の臨床的症状をもとに、各精神科医が病因を分析し診断するための基準」ではなく、統計学的に導かれた根拠に基づく医療の元、「患者の臨床的症状に合致する精神疾患を、各精神科医が診断するための基準」が「操作的診断基準」である[18]。
これにより、例えばある患者が、違う精神科医の診療を受けるたびに、カルテに記載される精神疾患の診断名が異なるといった、従来の診断基準に由来する問題は少なくなり、精神医学・精神科医療の科学的発展に大きく貢献したとされる[20][21]。一方、あくまでも問診時に患者から訴えられる症状に応じて診断が行われるため、あらかじめ診断基準を知っていれば症状を偽れる可能性があり、科学的な診断法と称しながらも、そもそも詐病などとの弁別が難しいという根本的問題も同時に指摘されている[20][21]。
軽度の抑うつの場合や、向精神薬を用いた薬物治療などの対症療法に抵抗がある場合、あるいは心因性精神疾患など薬物の効果が現れにくい場合や、発達障害・慢性化精神疾患など急激的な改善が期待されにくい場合を中心に、精神療法や心理カウンセリング、または作業療法や言語療法など、化学的アプローチではない治療法を患者が希望することがある[22][23]。
また、特定の精神疾患患者に限らず、薬物治療などの対症療法と並行して、一定の診療時間を確保した精神療法や心理カウンセリングなどの原因療法により、自分の認知や性格の傾向を見つめ直したいと患者が希望することも多い[22][23]。しかし現実には、精神科医だけでなく医師全般が、特に外来患者へ対応する場合、限られた時間内に多数の患者へ診療を行うことが迫られるため、いわゆる「3分診療」「5分診療」のみに終始することが多いとされ、中でも精神科医療においては、上記のような操作的診断基準に関わる問題や[20][21]、数分間では充分な精神療法などを行うことが難しいという問題などから、短時間の診療形態には問題があると指摘されている[24][25]。
また、精神療法は主に臨床心理士が担当することが多い現在の臨床現場において[22][26]、実践的な精神療法を担える精神科医は現実的には少なく[22][27][28]、そのような専門性を持った精神科医もおらず臨床心理士・作業療法士・言語聴覚士などにも人件費を割かない医療機関では、経営上薬物治療のみを行っている所も多い[24][25]。
このような現状から、2010年には精神療法の一種である認知療法・認知行動療法に関して、「入院中ではない患者」について「当該の療法に習熟した医師」が「30分以上を診療に要した」場合「16回までに限り」保険適用になると診療報酬が改定され、注目された[28]。しかし、上記のように、臨床現場において精神療法は主に臨床心理士が担当することが多く[22][26]、その一種である認知療法・認知行動療法に「習熟した」精神科医を含む医師の絶対数が少ないこと[22][27][28]、および、そもそも臨床心理士は専門職大学院等の指定大学院修了を課す高度な専門資格であるものの、現状では民間資格であるため、診療報酬規定に明記できないことなど[22][29]、精神科医療の本質的な問題は棚上げにされたままの制度改定との指摘もある[22][29]。
一方、多くの精神科医らが所属する日本精神神経学会・日本精神神経科診療所協会・精神科七者懇談会は、2005年当時には「臨床心理士及び医療心理師法案」をめぐって、それまでは両資格の法案一本化に合意し推進していたにも関わらず、国会上程の土壇場で反対に回るという一件があったものの[30][31]、近年は日本心理学諸学会連合らからなる心理職国家資格化推進三団体との意見交換会に臨むなど、精神科医療にとっての転換点である心理職国家資格創設に向けて肯定的に関わっており[32]、こうした精神科医関連団体の協力姿勢に歓迎と期待の視線が注がれている[32]。
長崎大学名誉教授の中根允文は「適切な治療を受けているうつ病患者は全体の4分の1に過ぎない」とし、不適切な治療を続け治療期間が長引き完治が望めなくなる患者が増えていると指摘する。うつ病などの適切な治療法を知らない医師が多く、精神科医の養成の為の研修は急務だとしている[33]。うつ病や不安障害などの患者が訪れるのは、外来専門の診療所が殆どであり、大学や派遣される精神科病院の関連病院では、これら疾病の新規の患者を診る機会が少なく、外来治療で必要な、トレーニングを十分積まずに一人前になる医師が多いなどが原因として挙げられている[34]。
体系化された研修システムが、医学部を含め不十分である、診断法や治療法が標準化されておらず、個人や指導医の直感に頼らなければいけない、臨床医学で必要な、鑑別診断が精神科においては、実質的にほとんど行われていない、他科に比べ、客観的検査所見での診断がつきにくいことや、死亡などの医療事故(自殺以外)及び訴訟が少ないことで、誤診に対する意識が低いなども、精神科医の水準低下に関与している[34]。
アメリカ合衆国では、医学部卒業後、義務付けられたプログラムを3 - 4年かけ修了し、学科試験に合格しなければ、精神科医として認められない。日本では、殆ど教えられることのない、認知療法を含むエビデンス(根拠)に基づく、複数の個人精神療法を実践し、学習する事も求められる。イギリスでは、6年間のプログラムの前半3年間で、精神療法を学ぶなど、精神療法の習得は大半の国で必須義務化されている。さらに指導者も、日本の様に、医局独自のやり方を教えるというのは少数派で、18ヶ国で指導者資格を定めている[35]。
また、エビデンスのない多剤大量処方、十分量を投与しない、効果が出ない薬剤を切り替えず、漫然と延々に使い続けるなど、適切な薬物療法が出来ない医師も増えている。医学部で教授などが教育指導する場合でも、精神薬理や薬のメカニズムのみで、臨床的な使い分けを習わない医師が多いという[34]。
防衛医科大学校精神科学講座教授の野村総一郎は、適切な薬物療法の指針として、
の6条件を挙げている[33]。
また診療報酬の7割を占めるのは、通院・在宅精神療法と呼ばれる、いわば「問診」に対する診察報酬であるが、初診は500点(1点10円)、再診では30分以上の診察で400点、5分以上30分未満は330点であり、30分以上時間をかけても、診療報酬は僅か700円しか違わない。この事から、病院経営を考えると、短時間で大量に診療を行い、大勢の患者を診察し、患者の回転率を上げる事につながりやすい反面、患者側からは診察に対する不満だけが募り、ドクターショッピングに陥る。獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授の井原裕は「7割の診療報酬収入を精神療法から得ているのだから、精神科医は技術料に見合うだけの意味のある面接をするべきではないのか」と語る[36]。
「精神科では入院患者あたりの医師の数が、他科の3分の1・看護職員は3分の2で良い」とする、旧厚生省による、50年以上前の通達(いわゆる精神科特例)が、2014年(平成26年)現在も続いている事に示されるように、日本における精神科医療の基盤は極めて脆弱であり、診療報酬体系の見直し及び人的資源の確保などは、診療の質や、患者の人権侵害や社会的入院の改善につながるとされる[37]。
この項目は、医学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:医学/Portal:医学と医療)。 |
国試過去問 | 「099C027」「110G024」「110C009」 |
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