出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/12/10 14:14:01」(JST)
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生物発光(せいぶつはっこう)とは、生物が光を生成し放射する現象である。化学的エネルギーを光エネルギーに変換する化学反応の結果として発生する。英語ではバイオルミネセンス(Bioluminescence)と言い、ギリシア語のbios(生物)とラテン語のlumen(光)との合成語である。生物発光はほとんどの場合、アデノシン三リン酸(ATP)が関係する。この化学反応は、細胞内・細胞外のどちらでも起こりうる。
バクテリアにおいては、生物発光と関係する遺伝子の発現はLuxオペロンと呼ばれるオペロンによってコントロールされる。
生物発光は、進化の過程で、何回も(およそ30回)独立に現れた[1]。
生物発光は、海棲および陸生の無脊椎動物と魚類、また、原生生物、菌類などにも見られる。他の生物に共生する微生物が生物発光を起こすことも知られている(共生発光)。
生物発光はルミネセンスの一種である。「冷たい発光」とも言われるが、これは放射する光の20%以下しか熱放射を起こさないためである。 生物発光を蛍光や燐光、光の反射と混同してはならない。発光は暗黒条件下で生物のエネルギーによって光を放つものである。たとえばヒカリモやヒカリゴケは反射光を強く放つものであり、発光ではない。
光る仕組みは、化学反応によるもので、ルシフェリン - ルシフェラーゼ反応と呼ばれる。発光する生物の多くは、これを自力で合成するが、発光する生物を共生させ、それによって光るものもある。また、発光生物をえさとして食べ、それによって得られた成分を、自分の発光に使う例も知られている。
いくつかの場合、生物発光が見える(行われる)のは、概日リズムの働きにより、夜に限られる。
生物発光の能力をもつのは、海棲生物が中心である。特に深海生物の大多数は何らかの方法で発光し、その目的も多岐にわたることが知られている。調査に基づく概算では、500m以深に住む魚類の90%、十脚類(エビ・カニ類)の40-80%(水深500-1,000m)、オキアミ類の99%(表層-1,000m)、カイアシ類の20-30%(表層-1,000m)が生物発光すると見積もられている(すべて種数ではなく個体数での割合)[2]。ほとんどの場合、深海生物による発光色は青か緑の波長であり、この波長は海水をよく通過する。しかし、一部のワニトカゲギス目魚類は赤色や赤外線波長の光を発するし、多毛類の Tomopteris 属は黄色の生物発光を行う。
陸上生物では生物発光はそれほど一般的ではなく、比較的限られた種類にとどまる。陸上で生物発光をする生き物としてよく知られているものには、ホタルやツチボタル(ヒカリキノコバエ)、フェンゴデス科(甲虫の一種)の仲間などがある。他の昆虫(幼虫を含む)、環形動物、また菌類の一部にも生物発光を行う能力があることがわかっており、発光色には様々な種類のものをみることができる。
それに対して、淡水には発光生物はほとんど知られていない。日本のホタルの幼虫が淡水産なのもごく例外的なものである。深海のように深い部分を持つ湖からも、発光するものは知られていない。また、深海と同様に、暗黒環境である洞穴生物にも、発光するものはほとんどいない(羽根田、(1972)p.8-9)。
発光する部位は、生物によって様々である。特に場所を特定せず、全体に光るものもあるが、特に決まった場所だけが光るものもある。また、体内で光るものと、発光物質を体外に放出するものがある。
生物が光る仕組みは、古くから注目されていた。ロバート・ボイルは1667年に、発光バクテリアやキノコを容器に入れ、真空ポンプを使って空気を抜くと光らなくなり、空気を戻すと再び光ることを確認し、発光に酸素の必要なことを示した。また、スパランツァーニはウミボタルやクラゲを用いて、乾燥させたものを水に戻して、それによって光ることを示した。これは、発光が化学物質の反応により、必ずしも生命の存在を必要としないことを意味するものである(羽根田、(1972)p.12)。
より具体的な分析は、1883年のデュボアの研究にまでさかのぼる。彼は、ヒカリコメツキを用いて、発光には二つの物質が関わっていることを示した。この昆虫の発光器から抽出した成分は、光を放つが、しばらく放置すると光が消える。他方、これを加熱しても光が消える。そして、この二つを加え併せると、光が生じた。このことから、彼はこの昆虫の発光に、熱に強い成分と、熱で分解する成分の二つが関わっていると見なし、前者をルシフェリン、後者をルシフェラーゼと名付けた[3][4]。
以下の5つの理由が、生物発光の特性の進化の理由として主に考えられている。
擬態を参照。
生物発光は、獲物を誘うルアーとして、チョウチンアンコウなどの深海魚に使用されている。魚の頭部から伸びた誘引突起(背鰭が変形したもの)を揺らすことで、小魚や甲殻類を攻撃範囲内に引きつけるのである。ただし、ルアーが発光しない場合もある。
ダルマザメは生物発光を擬態に使用しているが、下腹部の一部のみを暗いままに残してあり、大型の捕食魚に対し、小さな魚の影に見せかけている可能性がある[5]。それらが「小さな魚」を捕食しようと近寄ってきたとき、ダルマザメに体の一部分を食べられるのである。
渦鞭毛藻類は、生物発光をひねった使い方をしている。捕食者であるプランクトンを水流により感知したとき、渦鞭毛藻は発光する。これは、さらに大きい捕食者を引きつけ、渦鞭毛藻の天敵を捕食するように仕向けるのである。
生物発光は、交配相手を誘引する機能も持つ。これはホタルの行動に見られ、断続的な発光が腹部から発せられ、交配相手を引きつける行動が繁殖期に見られる。海中では、甲殻類貝虫亜綱の行動のみが詳しく記録されている。これは、長距離の伝達にはフェロモンを使用し、短距離においては発光によって目標を表していると思われている。
ある種のイカと、小型の甲殻類では、発光する化学物質や、発光バクテリアを含む液を、普通のイカの墨のように使用する。煙幕のように発光することで、捕食者を混乱させ撃退する。その間にイカや甲殻類は安全に逃げる。ホタルの幼虫はすべて、敵を撃退するための発光を行う。
生物発光は、バクテリアにおいても、直接的にコミュニケーションの役割を果たしていると考えられている(クオラムセンシングを参照)。バクテリアが共生生物に取り込まれることを助け、またコロニーを招集する役目を果たしている。
海棲生物のほとんどの発光色は青か緑だが、ワニトカゲギス目に属する一部の魚(ホテイエソおよびホウキボシエソの仲間)は、赤い光を放つ[6]。赤色光は海水中で速やかに吸収され深海にはまったく届かないため、ほとんどの深海生物の眼は赤色を認識する能力をもたないか、あるいは著しく低い。このため、赤色光を放出するとともに、自身で赤い光を認識することもできるワニトカゲギス類は、獲物や他の捕食者に気づかれることなく周囲を探索することが可能になる[7]。
生物発光を起こす組織は、多くの研究の題材となっている。ルシフェラーゼ系は遺伝子工学においてレポーター遺伝子としてよく使われている。また、ルシフェラーゼ系は生物医学的検査のバイオルミネセンスイメージング(bioluminescence imaging)でも使われている。
ビブリオ属の菌は、数多くの海棲無脊椎動物や魚類と共生している。ハワイ産のダンゴイカ(Hawaiian Bobtail Squid Euprymna scolopes)は、重要なモデル生物として、共生、クオラムセンシング、生物発光の研究に使われている。
生物発光を起こす器官である発光器の構造は、インダストリアルデザインに応用されている。
生物発光の工学的利用方が、いくつか提案されている[要出典]:
すべての細胞が何らかの生物発光を起こして電磁波を発するが、ほとんどの場合は肉眼では確認不可能である。それぞれの生物の発光は、固有の周波数、持続期間、リズムやパターンを持っている。以下に挙げるリストは、視認可能な発光を起こす生物の例である。
発光する生物は、非常に広範囲の分類群に見られる。それらは独立に発光を獲得したと考えられる。しかし、発光する種が多い群、少ない群はある。たとえば、植物では発光するものはない。動物でも、魚類には発光するものが多いのに、四肢動物には全くない。しかし、これらの事実にどのような意味があるかは不明である(羽根田、(1972)p.10)。
発光バクテリアによる共生発光を行う主な魚類は以下の通り。
以下は自力発光を行う主な魚類である。中層遊泳性の深海魚が大半を占める。
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