出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/02 06:37:35」(JST)
医薬品(いやくひん)とは、ヒトや動物の疾病の診断・治療・予防を行うために与える薬品。使用形態としては、飲むもの(内服薬)、塗るもの(外用薬)、注射するもの(注射剤)などがある(剤形を参照)。日本では法的に、医療用医薬品と、薬局・薬店で誰でも購入できる一般用医薬品とに大別される。
以下、特筆なき限り日本における医薬品の扱いについて解説する。
個々の代表的な医薬品に関しては、医薬品一覧を参照。
日本の医薬品医療機器等法第2条では次のように定義される[1]。
国内で医薬品として譲渡を含め流通させるには、厚生労働大臣による製造販売承認が必要である。承認のないもので医薬品、医薬部外品、化粧品もしくは医療機器に該当しないものは「効能」「効果」をうたうことはできない。保健機能食品でその認められた範囲内で標榜する場合を除き、医薬品としての効能効果をうたった製品は、「未承認医薬品」として処罰の対象となる。
食品中の成分の薬理作用の研究が進んだ結果、疾病の予防などの効果をうたった健康食品が出現し、医薬品との区別があいまいになってきた。そこで食品と医薬品を明確に区分する必要が生まれた。
1971年、「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発第476号、厚生省薬務局長通知)が出され、医薬品と食品の区分が明示された(通称46通知)。
まず食品に分類されるものとして
そして上記に該当しないものは、次の4つの要素から医薬品か食品かを判断する。
上記の4つの要素のうち1つ以上を満たしているものが医薬品に分類され、医薬品医療機器等法による規制を受ける。
2001年、厚生労働省医薬局長 「医薬品の範囲に関する基準の改正について」(医薬発第243号平成13年3月27日、厚生労働省医薬局長)で、錠剤やカプセルなど医薬品のような形態でも食品であることを明記すれば、形状だけでは医薬品と判断しないと基準が緩和された。
医師等によって使用され又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品をいう。ただし法的な定義がある訳ではなく、医療用医薬品であっても処方せん医薬品に指定されている医薬品でなければ、処方せんがなくても薬局で購入できるが、実際に販売している薬局は一部の薬局に限られている。
一般用医薬品以外の医薬品をいう。いわゆる医療用医薬品及び薬局製造販売医薬品(承認許可を取ることで薬局の調剤室での製造が認められる製剤)。一般人へは薬局において薬剤師が対面で情報提供した上で販売するとされている。
「専ら動物のために使用されることが目的とされている医薬品」と定義されており、農林水産大臣が定めたものをいう。
医師等の処方せんがなければ、一般の人は購入できない医薬品。入手するには医療機関を受診し、医師または歯科医師の処方せんが必要になる。
日本薬局方に収載された医薬品をさす。第一部医薬品、第二部医薬品に大別される。薬局方は約5年に一度大改定されるが、その間2年に一度程度追補版が発行され、収載医薬品が見直されている。最新版は、2011年3月24日に、第十六改正日本薬局方が公表された。
日本薬局方医薬品は使用方法、効果、作用機序などがはっきりしたもののみを収載してきたが、米国薬局方(en:United States Pharmacopeia, USP)等と比べ収載医薬品数やその内容で現状の医薬品を踏まえていないとの指摘から、積極的に新医薬品の収載を行うようになってきている。ただし、薬価やその扱いなどで、問題が若干残っている。
なお、第二部に収載されたショウガ、蜂蜜などは食品として利用されているものもある。
医薬品は誰でも販売できるわけではなく、原則として都道府県知事より許可を受けた以下のような場所でのみ販売できる。診療所や病院などで医薬品が扱えるのは、医師法あるいは歯科医師法の例外規定が根拠になっている。
医薬品医療機器等法では、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤業務を行う場所を、薬局と定義している。調剤室以外での調剤は、薬剤師法の規定により原則として認められていない。ただし、在宅医療などの場合は例外がある。 処方せんに基づいて調剤をおこなう薬局を調剤薬局と呼ぶこともあるが、薬局であれば原則調剤ができるので不自然な呼び方であり、「薬局」と「調剤薬局」が別の形態であるかと誤認されるのを防ぐため、法的強制力は無いが新規の薬局には「調剤薬局」という名称を避けることが求められている。
医薬品販売業のうち店舗において一般人へ一般用医薬品を販売する業態で,一般用医薬品以外の医薬品は扱うことができない。いわゆる調剤を行わない薬店やドラッグストアと呼ばれている業態。従来の一般販売業及び薬種商販売業は経過措置により2012年5月までは店舗販売業とみなされ営業できる。2009年施行の改正薬事法で新たに設けられた業態。
配置販売業とは、配置員(販売員)が消費者の家庭を訪問し、医薬品の入った箱(配置箱)を配置し、次回の訪問時に使用した分の代金を精算し、集金する仕組み(「先用後利(せんようこうり)」という)の医薬品配置販売業である。配置販売される医薬品は、置き薬ともいわれる。以前は、配置販売業の配置員は薬剤師などの資格を必要としなかったが、2009年の改正法による配置販売業では、薬剤師または登録販売者の資格を持たない配置員は、代金回収や補充以外の医薬品販売の業務ができないこととされた。配置販売に従事するに際しては都道府県知事の身分証の交付が必要となる。
医薬品販売業のうち医療機関や薬局などに医薬品を卸売りする業態であり倉庫が主体で店舗は持たない。自治体にワクチンを納めるなど特殊な例を除き、医療関係者以外に直接医薬品を販売することは禁じられている。
新たな医薬品(先発医薬品・新薬)の開発には長い期間(十数年)と巨額の費用(数十億から数百億円)を必要とするほか、製品化できないリスクも他の業界に比べて高い。さらに厚生労働大臣の承認を得るというプロセスが必要となる。一方、新薬の特許は申請後原則20年で切れる(特許庁に特許延長願いを出し認められれば、最大5年間の延長が特許法で認められている)。そのため上市した後の特許保護期間は、他の製品に比べ短くなることから、常に新たな医薬品の研究・開発が必要とされる。以上のことから、医薬品業界は世界的に再編が進み、世界的な超大手企業(多国籍企業)に集約されつつある。日本でも例外ではなく、医薬品メーカーの再編が急激に進んでいる。
期間の切れた特許で作られた医薬品は後発医薬品(ジェネリック医薬品)と呼ばれ、後発品専門の医薬品メーカーも存在する。既に先発メーカーで実績のある成分を用いる事から、開発期間も短く、新たな投資が少なくて済むため、先発品よりもコストが安い。ジェネリック医薬品の多用により、中小の新薬メーカーは開発費が回収困難になる懸念が持たれている。また大企業でも、2010年前後に大型医薬品が一斉に特許切れを迎えるため(2010年問題)、収益の確保が可能かどうか懸念が持たれている。
医薬品の製造には医薬品医療機器等法により医薬品製造業許可が必要とされている。また、製造した医薬品を上市するには、上市する医薬品の種類に応じて(第1種、第2種)医薬品製造販売業許可が必要である。
臨床試験の期間は不十分であり、安全性の検証は限られたものであるが、現在では、製薬産業界またその間接的な影響にある患者団体が薬の承認までの期間の短縮を求めて、監督庁に圧力をかけている傾向にある[2]。しかしながら、グローバル化によって超国家的に薬の売り出しを行っており、国際化されていない有害反応監視システムが手を打つ前に有害反応(副作用)の影響が広がる可能性がある[3]。
医薬品の有害反応(副作用)の監視が適切に組織化されておらず、そして有害反応に関する情報は非公開とされていることもあり、その少ない情報における患者からの副作用の報告が監督庁に容認されないことすらある[4]。今まで処方箋医薬品であったものが、一般医薬品となる傾向もあり、副作用を把握する体制の弱体化ともなる[5]。
処方箋医薬品の不正として、その有効性や副作用を詐称して販売することが一般化しており、深刻かつ反復的な犯罪であるとされる[6]。アメリカでは近年、違法に医薬品を販売したことによって、各製薬会社で罰金最高額を更新し合っており、一度で数十億ドルの罰金に達している[7]。
後に医薬品による死者が何百人と出て市場から撤退して問題が生じた際にも、監督庁による原因調査が徹底されておらず、そのような失敗から学ぶということが十分に成されていない[8]。
病気喧伝が行われているのは特に新しい薬においてであり、必要性が限られているものをより多くの人々に売り出すためのマーケティングを行っている[5]。典型的には「医師に相談を」で締めくくられる広告である[9]。日本においても、血圧の基準値の操作や、うつ病キャンペーンにより、健康な人を病人に仕立てる動きがあるが、これは世界的な流行である[5]。
日本固有の問題としては、まず使われる薬の量の多さが挙げられる。
日本における医薬品の売り上げは年間で7兆3000億円を超え、日本はアメリカ合衆国に次ぐ世界2位の「薬好き」とすら言われる[10]。それは薬漬け医療の問題の反面を持つ[11]。これは飲酒の影響なども加えた薬物相互作用によって深刻な事態となることがある。医薬品の過剰摂取による死亡は、英米でも交通死亡者数を上回り懸念となっている[12][13]。2010年のアメリカでは、過剰摂取による死亡の原因の過半数が処方せん医薬品であり、全体の74.3%が意図しない死亡である[14]。
日本の医療保険制度においては、患者の自己負担は薬価の3割(障害者や高齢者の場合は2割や1割に減額される)であり、残りの7割が医療保険から支払われる。そのため、大量に薬が使われればそれだけ医療保険の負担も増すことになる。国は最近になって、先発医薬品に比べ薬価が低く同等の効果を持つとされる後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進に取り組んでいるが、その目的の1つに、医療保険財政の改善がある。
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年齢区分 | 1回用量 |
6歳未満 | 20mg |
6歳以上12歳未満 | 40〜80mg |
12歳以上 | 100mg |
国試過去問 | 「107F001」 |
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