Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/05/22 20:45:52」(JST)
[Wiki ja表示]
燃えるSt. Johanniskircheの塔(ゲッティンゲン)
放火罪(ほうかざい、英: arson、独: Brandstiftung)とは、故意または悪意をもって建造物や自然保護区等に火を放つ犯罪である[1]。自然発火や山火事のような、他の原因とは区別される。普通は他人の財産または保険金目的で自分の財産に対して故意に生じさせた火災をいう[2]。
目次
- 1 法律上の定義
- 1.1 コモン・ロー
- 1.2 アメリカ
- 1.3 イングランドとウェールズ
- 1.4 スコットランド
- 1.5 日本
- 2 脚注
- 3 参考文献
- 4 関連項目
法律上の定義
コモン・ロー
放火罪(Arson、スコットランドではfire-raising[3])は、コモン・ローでは、「他人の住居を故意に燃やすこと」と定義される[4]。
要件は、
- 故意に (malicious)
- 他人の
- 住居を (dwelling)
- 燃やすこと
である。
- 故意 - コモン・ローの解釈上、「故意 (malicious)」とは、燃焼の重大な危険を引き起こす行為を意味する。犯人が、住居を燃やすため、故意に (intentionally) またはわざと (willfully) その行為をしたことを要しない。
- 他人の - 自分の住居を燃やすことは、コモン・ロー上の放火罪を構成しない。ただし、コモン・ロー上の放火罪の解釈上、所有権ではなく占有が「その住居は誰のものか」を決定する[5]。したがって、自分が借りている家を燃やした場合、コモン・ロー上の放火には該当せず[5]、他方、家主が他人に貸している家を燃やした場合、放火罪に該当する。
- 住居 - 「住居」とは、居住する場所をいう。空室の建物を破壊する行為は放火罪ではなく、「放火罪は、住居を保護するためのものであり、空室の建物を燃やすことは放火罪を構成しない」とされる。コモン・ローでは、建造物は最初の居住者が入居するまで住居にはならず、居住者が再び居住する意図もなくその建物を去ることで住居ではなくなる[6]。住居は、建物及び宅地内にある離れを含む[5]。住居は家に限られない。住居として占有されていれば、物置きも放火罪の対象となりうる。
- 燃やす - コモン・ローでは、住居の一部を焦がすだけでこの要件を満たす。住居に重大な損傷を与えることを要しない。他方、煙によって変色したというだけでは足りない。建材に対する現実の毀損が必要であり、カーペットや壁紙等の表面のカバーの損傷では足りない。放火罪は、木造建築物を燃やすことに限られるわけではない。熱や炎によって生じた建造物の損傷であれば足りる。
さらに、「保険金のために、自己の住居を燃やすことは、コモン・ロー上の放火罪を構成しない。初期イングランドにおいて、一般的に、人は、自己の財産をいかなる手段によっても破壊する権利を有すると考えられていたからである[7]」とされる。
アメリカ
アメリカ合衆国では、法域によって、コモン・ローの放火罪の要件はしばしば変化する。例えば、「住居 (dwelling)」は、多くの州で要求されておらず、承諾なく、あるいは違法な意図により、いかなる不動産を燃やす行為も放火罪となる[8]。放火罪は、申し立てられた違反の重大さに応じて起訴される[9]。第一級放火 (first degree arson)[10] は、一般的に、火災によって死傷者が出た場合であり、第二級放火 (second degree arson) は、財産に重大な損壊が生じた場合に成立する[11]。放火罪は、軽罪 (misdemeanor)[12] である器物損壊として起訴されることもある[13]。もし、放火が破壊と侵入を伴っていたら、不法侵入罪も成立する[14]。殺人の手段として放火罪が成立した場合、死刑が言い渡されることもある。
イングランドとウェールズ
英国法では、放火罪はコモン・ロー上の犯罪[15]であり、近年、1971年器物損壊法により再定義及び成文化された[16]。
スコットランド
スコットランド法では、「arson」ではなく「fire raising」という語がつかわれているが、どちらも意味は同じである。
日本
日本の刑法では、放火に関する規定は第9章の放火及び失火の罪に定められている。日本では、放火罪の保護法益が社会的法益であると考えられており、また、放火の対象によって成立しうる犯罪類型が異なる。
詳細は「放火及び失火の罪」を参照
脚注
- ^ Kumar, Kris (February 2008). “Deliberately lit vegetation fires in Australia”. Trends and issues in crime and criminal justice (Lynnwood: Australian Institute of Criminology) (350). ISBN 978 1 921185 71 7. ISSN 0817-8542. オリジナルの2008-07-22時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20080722133206/http://www.aic.gov.au/publications/tandi2/tandi350.html 2009年1月9日閲覧。.
- ^ arson. Dictionary.com. The American Heritage Dictionary of the English Language, Fourth Edition. Houghton Mifflin Company, 2004. Accessed: January 27, 2008)
- ^ “Annual Report of Her Majesty's Chief Inspector of Constabulary for Scotland 2005/2006”. 2008年10月6日閲覧。
- ^ 4 Blackstone, Commentaries (21st ed.) p. 220
- ^ a b c Boyce & Perkins, Criminal Law, 3rd ed. (1992) at 281.
- ^ Boyce & Perkins, Criminal Law, 3rd ed. (1992) at 280&81.
- ^ “Arson: Legal Aspects - Common Law Arson”. Law Library - American Law and Legal Information. 2008年5月10日閲覧。
- ^ See U.S. v. Miller, 246 Fed.Appx. 369 (C.A.6 (Tenn.) 2007); U.S. v. Velasquez-Reyes, 427 F.3d 1227, 1230-1231 and n. 2 (9th Cir.2005).
- ^ “Campus Crime: Crime Codes and Degree of Severity”. California State University, Monterey Bay. 2008年5月10日閲覧。
- ^ See U.S. v. Miller, 246 Fed.Appx. 369 (C.A.6 (Tenn.) 2007)
- ^ Garofoli, Joe (2007年9月1日). “Suspect in Burning Man arson decries event's loss of spontaneity”. San Francisco Chronicle: p. A8. http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2007/09/01/MN8LRTBBN.DTL 2008年5月11日閲覧。
- ^ “Reason for Referral”. Nebraska Commission on Law Enforcement and Criminal Justice. 2008年5月11日閲覧。
- ^ “Man accused of arson pleads to misdemeanor charges”. The Salina Journal. (2008年1月25日). http://www.saljournal.com/rdnews/story/Salinan_pleads_no_contest_to_misdemeanor_charges_1_25_08 2008年5月11日閲覧。
- ^ 3 Charles E. Torcia, Wharton's Criminal Law § 326 (14th ed. 1980)
- ^ William Blackstone (1765–1769). “Of Offenses against the Habitations of Individuals [Book the Fourth, Chapter the Sixteenth]”. Commentaries on the Laws of England. Oxford: Clarendon Press (reproduced on The Avalon Project at Yale Law School). http://www.yale.edu/lawweb/avalon/blackstone/bk4ch16.htm 2008年6月1日閲覧。 .
- ^ “Criminal Damage Act 1971”. www.opsi.gov.uk. 2010年3月24日閲覧。
参考文献
- Karki, Sameer (2002) (PDF). Community Involvement in and Management of Forest Fires in South East Asia. Project FireFight South East Asia. http://www.asiaforests.org/doc/resources/fire/pffsea/Report_Community.pdf 2009年2月13日閲覧。.
- White, J. & Dalby, J. T., 2000. Arson. In D. Mercer, T. Mason, M. McKeown, G. McCann (Eds) Forensic Mental Health Care. Edinburgh: Churchill Livingston. ISBN 0-443-06140-8
関連項目
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 衝撃スクープ! 殺人警察官が本誌に送りつけた「犯行声明文」全文公開 : 人を二人も殺めてしまったことに弁解の余地がないことは十分判っておりますが、格差社会の歪みにはまり、憎悪を増幅させてしまった… 富山資産家夫婦放火殺害
- 非行類型に応じた少年事件調査の充実に向けて(8)調査支援ツール(放火非行)を活用した調査の在り方について
Related Links
- Yahoo!ニュースに掲載された放火に関する記事を、過去にさかのぼって閲覧可能。重要なニュースを記録する日本最大級のアーカイブです。 ... 1 放送続行の芦田愛菜ドラマ ついに“犠牲者” 東スポWeb 1月23日(木) 12時4分 2 KAT―TUN ...
- 八戸・小中野放火 現場立ち木にも燃え跡 一連の手口と類似(デーリー東北新聞社) 26日 - 9時17分 放火未遂容疑で男逮捕 別の火災2件関与か 静岡(@S[アットエス] by 静岡新聞) 26日 - 7時42分 全焼住宅に2時間前まで…放火 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 同
- 精神喪失者等医療観察法?、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律、医療観察法、心神喪失者医療観察法
- 関
- 法令
概念
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(しんしんそうしつとうのじょうたいでじゅうだいなたがいこういをおこなったもののいりょうおよびかんさつとうにかんするほうりつ)は、日本の法律。制定は2003年(平成15年)、施行は2005年。
- 目的は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することにある(1条1項)。
立法の経緯
- 重大な他害行為(殺人、重大な傷害、強盗、強姦、放火)を行い、心神喪失により不起訴または無罪判決となった場合、従来は措置入院制度の適用が検討されてきた。しかし、措置入院制度は、症状によって他害のおそれがなくなった場合には、ただちに症状消退の届出をすることが義務づけられており、症状が出現してはすぐに消えるといった場合には対応できていなかった。附属池田小事件の元死刑囚に措置入院歴があったこともきっかけとなり、心神喪失で重大な他害行為を行った者については、裁判官と精神科医師による合議で審判を行い、処遇を決定するという制度および法律がつくられた。なお、この制度は日本で初めての参審制ともいわれる。
- → 犯罪を犯した全ての精神障害者が対象とならない。
審判手続
検察官は、以下の場合は、明らかに医療を受けさせる必要がない場合を除いて、申立てをしなければならない。
- 被疑者が対象行為を行ったが、心神喪失ないし心神耗弱を理由に不起訴処分としたとき
- 心神喪失を理由に無罪となる確定裁判があったとき
- 心神耗弱を理由に刑が減軽された確定裁判があったとき(執行すべき刑期がある実刑判決は除く)
裁判所での手続は、裁判官と精神保健審判員(精神医療の学識経験者)各1名の合議体で取り扱う(11条)。対象者には、弁護士である付添人が必ず付けられる(35条)。
裁判所は、申立てがあった場合、明らかに医療を受けさせる必要がない場合を除き、鑑定や医療観察のための入院を命じなければならない(34条、鑑定入院命令)。そして、裁判所は、明らかに不要な場合を除き、医療を受けさせるために必要か否かを鑑定しなければならない(37条)。
裁判所は、対象者に、対象行為を行ったこと、心神喪失者ないし心神耗弱者であること、対象行為を行った際の精神障害を改善しこれに伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため医療を受けさせる必要性があることのいずれもが認められれば、入院決定、通院決定を行い、そうでない場合は医療を行わない決定を行う(42条1項)。このほか、対象行為を行っていない場合、心神喪失者や心神耗弱者ではない場合、申立て自体が不適法である場合は、却下決定がなされる(40条、42条2項)。決定の裁判は、合議体2名の一致により行われる(14条)。
処遇
処遇は、入院と通院に分けられており、保護観察所に配置された社会復帰調整官(精神保健福祉士)を中心に、医療観察を行う枠組みがつくられた。ただ、この制度によっても、精神障害者の犯罪では、十分に責任能力が検討されないままであるという問題が本質的に解決されたわけではない。また精神障害者が裁判を受ける権利(訴訟事実について争う権利)を奪うものだとの批判もある。
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E7%A5%9E%E5%96%AA%E5%A4%B1%E7%AD%89%E3%81%AE%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%81%A7%E9%87%8D%E5%A4%A7%E3%81%AA%E4%BB%96%E5%AE%B3%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%A3%E3%81%9F%E8%80%85%E3%81%AE%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%8F%8A%E3%81%B3%E8%A6%B3%E5%AF%9F%E7%AD%89%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B
- http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO110.html
- 3. 厚生労働省:障害者福祉:心神喪失者等医療観察法
- [show details]
- http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sinsin/gaiyo.html
[★]
- 英
- firesetting behavior
- 関
- 放火癖
[★]
- 英
- pyromania
- 関
- 放火行動