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放射性廃棄物(ほうしゃせいはいきぶつ)とは、放射性物質を含む廃棄物の総称。これらは主に、原子力発電所および核燃料製造施設、核兵器関連施設などの、核関連施設または放射性同位体 (RI) を使用する実験施設や病院の検査部門から出るガンマ線源の廃棄等で排出される。
日本において放射性廃棄物の扱いは原子力基本法に規定されている。環境基本法等の環境法令において放射性物質は規制目的から除かれており、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に該当する産業廃棄物ではない。最終処分事業は原子力発電環境整備機構 (NUMO) が担っている。
原子力発電所から出る放射性廃棄物の場合、原子炉で燃焼した燃料棒(使用済燃料)や、作業員が使用した衣服(→放射線防護服)やこれの除染に用いた水など多岐に渡る。使用済燃料は一時保管した後、再処理工場に運ばれる。再処理工場からは、燃料棒の部品(ハル・エンドピース)、また燃料棒のペレットに含まれる核分裂反応による生成物(核分裂生成物)や、湿式によるウラン・プルトニウムの分離抽出の過程で発生した廃液などの放射性廃棄物が発生する。さらに運用終了した原子力発電所の解体時には、放射化により放射能を持った原子炉そのものが放射性廃棄物となってしまう。
軍事分野では、同様の廃棄物として、核兵器製造過程で生じた廃棄物や、耐用年数を過ぎ廃棄処分となった核兵器、耐用年数を過ぎ廃艦処分となった原子力潜水艦や原子力空母などがある。
原子力施設や核兵器関連施設以外にも、原子力の研究施設や大学、医療分野や民間産業分野、農業分野などでも放射性物質を使用する場合があるので、放射性廃棄物は発生する。
3%濃縮ウラン燃料 1t が燃える前の組成はウラン238が 970kg、ウラン235が 30kg であるが、燃焼後は、ウラン238が 950kg、ウラン235が 10kg、プルトニウム 10kg、生成物 30kg となる。
詳細は「再処理工場」を参照
核燃料は、燃焼するとともに核分裂性のウラン235やプルトニウムが減少して中性子発生数と発熱量が低下し、中性子を吸収してしまう核毒となる核分裂生成物 (FP) が増加して、核分裂の燃えやすさ(余剰反応度)が低下する。
再処理では、使用済核燃料から核分裂性のウラン235やプルトニウム、マイナーアクチノイド (MA) を抽出し、非核分裂性ウラン238に3-5%程度混ぜ、中性子を吸収する核毒のない新しい燃料を製造する。非核分裂性ウラン238は反応を穏やかにしてコストを下げ、中性子の作用で新たな燃料を発生させるために用いられる。燃えないウラン238が炉内中性子照射で燃えるウラン235やプルトニウムに変わり核燃料として利用できるようになる。核毒部分は高レベル放射性廃棄物 (HLW) として排出される。
使用済み燃料を再処理しないでそのまま/ガラス固化し、地中のコンクリート構造物で保管する方法をワンススルーと呼ぶ。 再処理コストがかからないので 0.7円弱/kwh コストが安い。米国はコスト追求と、他国に再処理をやめるように勧告するためにワンススルー政策をとる。この方法で処分される放射性廃棄物は放射能の低いウラン238が大部分を占めるために、再処理で濃縮された高レベル廃棄物よりは初期の質量あたりの放射能は小さい。ただし半減期数万年の MA やウランやプルトニウムが混じっているので半減期は長い。
再処理してウラン235とウラン238とプルトニウムを取ったあとの高レベル放射性廃棄物をガラス固化して地上管理施設で冷却・保管し(30年-50年)、その後地層処分して数万年以上に渡り隔離・保管する方法で、日本はこの方針である。1t の使用済み核燃料から、高レベル放射性廃棄物は最終的に (30~50)kg+α まで減らせるが[要出典]、大量の低レベル放射性廃棄物が出てしまう。また、高レベル放射性廃棄物はガラス固化するものの、半減期数万年の MA と高発熱量 FP が混入しているため、冷却しながら30年、その後数万年の保管が必要になる。
再処理で出てきた高レベル放射性廃棄物 (HLW) を更に群分離して、超長半減期の MA(アメリシウムなど)と長半減期核分裂生成物 LLFP(ヨウ素など)を、高速炉や加速器駆動未臨界炉で中性子照射して核分裂させ、すべて短半減期の同位体に核種変換(消滅処理)する。さらに群分離により、高発熱量核分裂生成物(ストロンチウム・セシウム)を分離して熱利用・放射線利用に振り向け、有用高価な白金族やレアメタルを回収する。残った残渣の「低発熱・短半減期核分裂生成物」だけをガラス固化して 100-500年保管し、天然ウラン並みに放射線が低下した時点で再利用または廃棄する。
工程は複雑になるが、数万年も監視する必要はなくなり、100-500年の監視で天然ウラン並みに放射線が低下して廃棄/資源利用が可能になる。FP から熱を蒸気発生用に回収でき、低温になったガラス固化体は稠密に保管でき貯蔵スペースを大幅に節減できるとして日本でオメガ計画として技術開発が進められている。
放射性廃棄物は、放射能濃度により、高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物に分類することができる。また、発生別により、再処理工場から発生する使用済燃料の被覆管の切断片、ヨウ素を閉じ込めるための廃銀吸着剤、二次廃棄物(MOX燃料施設から発生するものも含む)等の内、超ウラン元素 (TRans-Uranium) を含む廃棄物はTRU廃棄物と呼ばれる。ウラン燃料を加工する施設から発生するウランで汚染された廃棄物は特にウラン廃棄物と呼ばれる。
放射性廃棄物を含め、放射性物質はある程度の時間(半減期)が経過すると放射能が弱くなり、やがては大部分が安定した物質に変化する性質を持つ。半減期と単位時間当たりの放射線量は反比例し、半減期の長い物質は単位時間当たりの放射線量は少ない。半減期は放射性核種により異なる。
過去には、放射性廃棄物の処分に関しては深地層注入や海洋投棄も実施され、宇宙空間に投棄する方法(宇宙処分)や氷床中への埋設なども検討されたが、21世紀初頭においては地中埋設処分が各国で採用されている。詳細は次節の「放射性廃棄物の処分方法」を参照。
一般的には、高レベル放射性廃棄物は使用済み燃料であり、日本では使用済み核燃料を再処理した際の廃液およびそれを固化したガラス固化体のことを指す。核分裂生成物 (FP) と超ウラン核種 (TRU/MA) が主なもので、前者は強い放射線を放ち、後者は長期間放射線を放出する。
これらの廃棄物は、半減期の長い長寿命核種(特に、マイナーアクチニド (MA) のネプツニウム、アメリシウム、キュリウムには、半減期が数万年に及ぶものもある)が含まれており、時間経過による減衰は考慮できないため、短寿命で放射線量の多い放射性物質の減衰を目的として、一定期間の管理を行ったうえで、人間界から隔絶するために地下深くに埋設して処分する地層処分が、主に関係する諸国で検討されている。
ドイツでは既に地下の岩塩層や廃鉱跡地に埋設処理することで具体的な対策を検討中である。 フィンランド、ユーラヨキのオルキルオト島(フィンランド語版)のOnkalo廃棄物貯蔵施設が2020年から100年間稼働予定で建設中である[1][2]。原子力発電施設を持つ各国では建設地の設定が急がれている。
また、核分裂生成物の30年減衰保管管理はコストがかかり、半減期の長い長寿命核種を数億年も管理はできないので、高速増殖炉/加速器駆動未臨界炉で中性子を当てて核分裂させ半減期の短い物質に変えて燃やしてしまう処理方法も研究されている。
特に加速器駆動未臨界炉の場合、例えば80万kwの加速器駆動未臨界炉ではMAを60%以上含む燃料を装荷して、軽水炉10基分のMAを纏めて焼いて短半減期に変えてしまう事ができるため、有望視されて研究が急速に進んでいる。これを核種変換(消滅処理)という。
以上の如く放射性廃棄物の最終的な処分対策・技術は必ずしも確立しているとは言えない状況であり、これは時として「トイレ無きマンション」などと表現される。だがこれに対しては、技術蓄積の無い計画初期の段階で最終処分技術まで確立すると言った事は非現実的であり、運用で技術を蓄積した末に最終処分技術が確立するのがむしろ当然であるとの反論もある[3]。
低レベル放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物に比べ比較的低い放射能を持つ廃棄物である。放射線管理区域などで中性子を吸収して放射性物質になったものや、放射性物質が付着したもの、炉心付近の資材などがこれに当たる。低レベル放射性廃棄物のうち、人体に影響を与えるレベルのものは、浅地中処分、コンクリートピット処分、余裕深度処分等の濃度に応じた埋設処分が行われ、一定期間地中に閉じこめておくことで、生活圏への影響をなくすこととしている。
「TRU廃棄物」も参照
超ウラン元素を含むTRU廃棄物は、前述の高レベル放射性廃棄物と異なり、化学形態、放射能濃度も様々である。これらについては、現在、原子炉等規制法及びその施行令により、核種毎の放射能濃度により、第1種放射性廃棄物(炭素14が10PBq/t以上、塩素36が10TBq/t以上、テクネチウム99が100TBq/t以上、ヨウ素129が1TBq/t以上、α線放出核種が100GBq/t以上のうちのいずれかの条件を満たすもの)、第2種放射性廃棄物(炭素14が87TBq/t以上、塩素36が96GBq/t以上、Tc99が1.1TBq/t以上、ヨウ素129が6.7GBq/t以上、α線放出核種が8.3GBq/t以上のうちのいずれかの条件を満たすもの)、それ以外に分類され、分類に応じた処分がなされることとされている。
TRU廃棄物は超長寿命核種 (MA) を大量に含むため上述のように加速器駆動未臨界炉で焼いて、短半減期にして、ストロンチウムなど高発熱核分裂生成物を分離して、低発熱・短半減期のものを保管して、天然ウラン以下の放射線になったところで廃棄する方策が検討されている。
放射性のある廃棄物のなかで放射能がクリアランスレベル(しきい値)以下のものは、法定上は放射性廃棄物とはみなされず産業廃棄物として処理される。
原子力安全委員会は1997年からクリアランスレベルの検討を始め、2009年に放射性廃棄物の放射能のクリアランスレベルを1Bq/gm (1000Bq/Kg) と決定した。 これは放射性廃棄物の再利用や非遮蔽廃棄による公衆への影響が、上限0.01 mSv (10 μSv)/年、もしくは低確率の被曝の場合は1 mSv/年、皮膚の外部被曝のみの場合は50 mSv/年を基準として放射能を算出したものである[4]。
ウラン取扱施設のおけるクリアランスレベル以下の廃棄物は、平成62年度末(2051年3月末)には約10万トン、その内7.9万トンは金属と想定されている。(福島原発事故による廃棄物は含まれていない)これらの金属の発生源はウラン濃縮工程の遠心分離機や燃料加工施設の焙焼・還元装置、成形加工装置、焼結装置、研削機械などである。金属の再利用の際の溶融では、放射性核種の内超ウラン元素は99.4~99.8%がスラグへ濃縮されると報告されている。例外はMn54、Fe55、Co60、Ni63、Zn65[5]、Nb94等でこれらの同位元素は大半がインゴットに残留する[6]。
原子力発電の核燃料サイクルにおいては、様々な放射性廃棄物が各工程で発生する。その内比較的低レベルの放射性廃棄物の一部は処分に付されているが、大半は最終処分待ちの状態で各原発、核燃料施設、研究施設などで保管されている。以下は2007年時点での日本における放射性廃棄物の在庫である[7]。
なお、以下の数値に関しては誤報が頻発している状況なので、随時確認・更新が必要である[8]。
資源エネルギー庁による集計値 平成19年度 (2007)
L1 使用済み核燃料 14,870トン
L2 放射性廃棄物の貯蔵量
L2.2 発電所廃棄物
L2.3 長半減期低発熱放射性廃棄物
L2.4 ウラン廃棄物
L2.5 研究施設等での廃棄物
L2.5.2 廃棄業者が保管している廃棄物
放射性廃棄物の処分については様々な方法が検討された。海洋投棄(かつて各国で実施されたが1993年に全面禁止)、地上施設による長期保管(未実施、ただし一時的な中間貯蔵施設は除く)、氷床処分(禁止)、宇宙処分(大気圏外にロケットで打ち上げ太陽系の引力圏外に放出する、もしくは太陽の重力に引き寄せさせる方法。かつて米が検討したがコストと不確実性から不採用)、地中直接注入(米、ソが実施)などが検討され、このうち海洋投棄と地中直接注入処分は実施された[9]。
地中直接注入 (Direct injection) とは、液体もしくは粉体を混ぜた流体の放射性廃棄物を、処分に適した地中に高圧で注入する処分方法である。1957年にソ連が調査を開始し、深度400mと1400m砂岩層、石灰岩層へ40年に渡り数千万立方メートルの低レベルから高レベル放射性廃棄物を注入処分した。アメリカでも、1970年代に10年間に渡りテネシー州のオークリッジ国立研究所の地下300mに7500立方メートルの低レベル放射性廃棄物が注入処分したが、環境汚染への懸念から中止した。高レベル放射性廃棄物の処分も検討されたが、これも汚染への懸念から計画は断念された[9]。
詳細は「海洋投入#放射性廃棄物の海洋投棄」を参照
核開発の初期においては各国で廃炉になった原子炉、使用済み核燃料等の高レベル放射性廃棄物を含めた固体・液体の放射性廃棄物が海洋投棄された。海洋投棄は1946年のアメリカによる北東太平洋への投棄に始まり、1975年には高レベル放射性廃棄物の海洋投棄が禁止され、1993年に全面禁止となる迄に日本(1955~69年の間に実施)を含む13ヶ国による海洋投棄が報告されている。海洋投棄は太平洋北東部、大西洋北西部と北東部、北極海、太平洋北西部で行われ、それらの放射能の総量は8.5x1016ベクレル (Bq) と推定されている[10]。
海洋投棄については環境汚染の懸念からロンドン条約が締結され各国が批准している。同条約は75年の改定で高レベル放射性廃棄物の海洋投棄禁止、1993年には全て放射性廃棄物の海洋投棄が禁止となった。
1993年には、ロシアによる日本海への放射性廃棄物投棄が明らかになり、国際世論の批判を招いた[13][14]。
なお、バーゼル条約により、締結国は有害な廃棄物の輸出・入は厳しく制限され、政府開発援助と抱き合わせで発展途上国に引き取らせるなどの方法は禁止されている[15]。環境上適正な処分について可能な限り国内の処分施設の確保が求められている。
放射性廃棄物の最終処分に関しては「高レベル放射性廃棄物」は深地層への「地層処分」が計画されている。「低レベル放射性廃棄物」ではそれらの物性により三段階の「浅地中処分」およびTRU廃棄物などは「地層処分」される[16]。
「地層処分」と「浅地中処分(トレンチ処分を除く)」はいずれも遮断型処分ではあるが、人工構造物(人工バリア)による完全な放射能の遮断を管理期間中継続させることは困難である。放射能の漏洩による影響を最小限にするために場所(地質・地層、水脈など)および地中深度などが考慮され処分基準となっている。「浅地中トレンチ処分」は遮断手順を伴わない処分であるが、処分場の管理は埋め立て後50年間継続される。
また原子力発電所などで発生する廃棄物の内、放射能がクリアランスレベル以下の物は放射性廃棄物とはみなされず、一般の産業廃棄物として再利用・処分される。
日本においては使用済み核燃料は再処理の方針により廃棄物には分類されないが、再処理の方針をとらない国では高レベル放射性廃棄物に区分される。
「低レベル放射性廃棄物」の「浅地中処分」には「余裕深度処分」「浅地中ピット処分」「浅地中トレンチ処分」の三段階の処分方法がある。
一部のTRU廃棄物を除く低レベル放射性廃棄物はそれらの放射能レベルに応じて三段階の「浅地中処分」される[17]。
「最終処分場#処分場の区分と構造」も参照
廃棄物の種類 | 廃棄物の例 | 発生源 | 処分方法 | |
---|---|---|---|---|
高レベル放射性廃棄物 | ガラス固化体 | 再処理施設 | 地層処分 | |
低レベル 放射性 |
高レベルの物 | 制御棒、炉内構造物、 放射化金属 |
原子力発電所 | 余裕深度処分 |
低レベルの物 | 廃液、フィルター、廃器材、 消耗品等を固形化 |
浅地中ピット処分 | ||
レベルの極めて低い物 | コンクリート、金属等 | 浅地中トレンチ処分 | ||
超ウラン核種を含む廃棄物 (TRU廃棄物) |
燃料棒の部品、 廃液などプロセス廃棄物、 |
再処理施設 MOX燃料加工施設 |
特性に応じトレンチ処分以外の3段階 | |
ウラン廃棄物 | 消耗品、スラッジ、廃器材 | ウラン濃縮 燃料加工施設 |
特性に応じ全4段階の処理 | |
研究所廃棄物 | 大学・企業等 研究機関 |
|||
放射性同位体(RI) 廃棄物 |
医療機関等 |
処分方法 | 廃棄物の例 | 封入容器 | 人工構造物 | 深度 | 管理期間 |
---|---|---|---|---|---|
地層処分 | 高レベル放射性廃棄物 およびTRU廃棄物 |
ガラス固化体キャニスター | 多重人工バリア 鉄筋コンクリート構造物 |
300m以深 | 数万年以上 |
余裕深度処分 | 制御棒、炉内構造物 放射化金属および加工・再処理における |
200リットルドラム缶等 | 鉄筋コンクリート構造物 | 50~100m | 数百年、 管理内容未定 |
浅地中ピット処分 | 廃液、フィルター 廃器材、消耗品等 |
セメント等で固化した廃棄物を入れた 200リットルドラム缶等 |
鉄筋コンクリート構造物 | 十数m | 約300年 |
浅地中トレンチ処分 | コンクリート、金属等 | 廃棄物のまま | 人工構造物無し | 約50年 |
日本では、地震や火山噴火等に耐える強固な施設でなくてはならず、地下水にも汚染がないよう地下300mの箇所に多重バリアを引いて処理する手法が提示されているが、場所の選定からして大変であり、候補地の目途すら立たない状況にある。地層処分#施設検討・応募状況も参照。
岐阜県瑞浪市のJAEA瑞浪超深地層研究所では2007年11月現在、将来の高レベル放射性廃棄物の処分地を決める上で必要となる技術を研究するために、地下深く縦穴(立坑)を掘っている。2本の1,000mの穴を掘り、100m毎に地下水の動きや地震の影響を記録する装置を設置する予定である[19]。北海道幌延町でもJAEAにより同様の施設の建設が進んでいる[20]。
地層処分施設およびその周辺の管理期間に関して原子力委員会は1998年(平成10年)の報告の中で、広大な国土(人口密度は北海道の1/20[21])にウラン鉱脈を持つカナダではガラス固化体は「一万年後にはウラン鉱と同レベルの放射能になる」、「地中のウラン鉱脈が地表に影響を与えていない」等から、当時は一万年を管理期間としていたことから日本もそれに習い一万年を管理期間とするよう勧告していた[22]。
アメリカ合衆国でもネバダ州(人口密度は北海道の1/7[21])のユッカマウンテンに計画されていた地層処分施設の管理期間を当初一万年としていたが、2009年には管理期間を百万年に変更した。ヨーロッパ各国では地層処分施設の管理期間を十万年としている。
ガラス固化体一本(直径約40cm、高さ約130cm)の放射能は約4x1015ベクレルで、1万年後に1/2000の約2x1012ベクレル、10万年後に1/6000の約7x1011ベクレル、100万年後に1万分の1の約3.5x1011ベクレル[23]。(注意:記述の放射能の減衰の数値は原典のグラフを目測したもので正確な数値ではない。)
高レベル放射性廃棄物は1996年3月時点でガラス固化体に換算して1万2千本相当が溜まっており、2030年には7万本相当になると試算されており地層処分施設では5.6~7km2の用地を必要と見積もられている[22]。
2009年時点ではガラス固化体1692本と処理待ちの380立方メートルの高レベル放射性廃液の在庫があった。
ガラス固化後の高レベル放射性廃棄物がウラン鉱石と同じ放射能レベルになるには長期間かかる。長寿命核種の分離変換(群分離・消滅処理)をすればこれが数百年以下に短縮されるが、地層処分の必要性を変えるものではないと考えられている[22][24]。
現在、放射性廃棄物からはコバルト60 (60Co)、セシウム137 (137Cs) が医療用ベータ線源及びガンマ線照射用として、テクネチウム99m (99mTc)、ヨウ素131 (131I) がシンチグラフィ及び放射線医療用に単離され用いられている。またストロンチウム90とセシウム137が高レベル廃棄物の発熱の大きな原因になっているので、これらを分離して熱源/放射線発生源として利用し、発熱の少ない核分裂生成物だけガラス固化して保管場所を節約する案も検討もされているほか、触媒用の白金族やジスプロシウムなどの高価な希少金属の回収も検討もされている。放射性廃棄物の再利用はメリットもあるが、後述の通り軍事転用の問題があり、また環境汚染リスクもある。また放射性廃棄物の再利用には限界があり、すべて利用できるわけではない。
放射性廃棄物の問題は、扱っている対象が放射能を持つ放射性物質であるという事実である。
放射性物質の中には、半減期が極めて長いものも存在する。放射性物質の量は半減期を経過すると元の半分になるが、残った放射性物質がさらに半分(つまり元の1/4)になるのにも、同じだけの期間が掛かる。たとえば、半減期が約12年であるトリチウムの場合、24年後に崩壊が終わり消失するわけではない。12年後に元の量の50%、24年後に25%、36年後に12.5%…と量が減り限りなくゼロに近づくのみで、同時にトリチウムが崩壊してできる安定同位体、ヘリウム3が生成されていく。ウラン等の原子番号の大きい物質は、崩壊後の物質も放射性物質(娘核種)になるため、含まれる全ての放射性元素が崩壊を終え、鉛などの安定同位体に落ち着くまでは、非常に長い期間を要するものもある。
劣化ウラン弾も参照
劣化ウランはウラン鉱石を精製した後の純粋ウランから、ウラン濃縮を行い核燃料としての低濃縮ウラン燃料が得た後に残る残渣の廃棄物であり、原子力発電所から発生する廃棄物とは発生経路が異なる。成分はいくつかの放射性同位体が混ざった純粋ウランである。もともと天然ウランであるので半減期が数億年〜数十億年と長く、そのため放射能は弱い。
劣化ウランは、入手可能で安全に扱える物質の内では比重が最も大きいので、空中を飛翔した後に目標物を貫通するタイプの銃砲弾の材料に適している。この高性能銃砲弾を劣化ウラン弾という。アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ロシア、中国、カナダ、スウェーデン、ギリシャ、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、ヨルダン、バーレーン、エジプト、クウェート、パキスタン、タイ、台湾、韓国、などが劣化ウラン弾を兵器として保有している。
劣化ウラン弾の金属ウランは、目標命中時の変形エネルギーで微粉末化され、空中で直ちに酸素と結合して激しく燃焼して周囲に拡散するため、被害者が戦闘員だけに限定されず、付近に人や動物が居れば呼吸器から容易に吸い込まれる。わずかであるが残留している放射性同位体(234Uなど)による内部被曝を起こしているとして、国際的な社会問題になっている。重金属としての化学毒性もある。
劣化ウラン弾が生まれる以前の高性能な銃砲弾はタングステン弾が一般的であり、現在でも、欧州(イギリス・フランス・ロシア・スウェーデン・ギリシャを除く)や日本ではタングステン弾を使用している。米英露中が劣化ウラン弾を製造し使用するのは、単純に性能が高いためであると軍事専門家は述べている[25][26]。また、タングステンは資源が極端に中国に偏在しているという問題もある。 銃砲弾だけでなく戦車などの装甲車両の装甲板の内部に劣化ウランを内蔵させて、防御性能を高める場合もあり、追加装甲などに用いられている。
「民生原子力発電の使用済み核燃料から核兵器を作る」という誤解に基づく話は、一般に広く流布しているが、商用軽水炉の使用済み核燃料は燃焼度が高く核兵器を作るためには特別な処理を必要とする。この方法は原理的には可能であるが、きわめて高価で時間がかかるため、核兵器の製造方法としてはまったく現実的ではない。他方、黒鉛炉で短期間使用した核燃料からは比較的容易に核兵器を作れる。プルトニウムにはさまざまな同位体(質量数 238、239、240、241、242、244)があり、このうち使用済み核燃料では 239Puと240Pu が主体で 241Pu と 242Pu も少し生まれる。241Pu と 242Pu はともに核兵器の爆発には影響しない。241Pu は半減期14.4年で 241Am へ崩壊するため比較的早期に減少し、Am が発熱するのであまり多く含むと完成した核兵器に放熱が必要になってしまう。242Pu は体積をとるだけである。核兵器を製造するために必要なプルトニウムの同位体は 239Pu であり、240Pu は核分裂を起こさずに中性子を吸収してα崩壊等をおこすため「汚染物質」とまでいわれる。核兵器製造時には 240Pu は少なければ少ないほうが良い。軽水炉の使用済み核燃料に含まれるプルトニウムには 240Pu が全プルトニウム中の20%から40%も含まれる。すなわち、軽水炉の核燃料を効率よく燃やすので、兵器の原料となる残りかすが少ない。その逆に黒鉛炉はプルトニウムをうまくもやせないので、兵器に利用できる残りかすがある。
核施設を空爆される恐れがない場合においては、ウランの濃縮作業に大量の電力を消費するより、239Pu を生産するための兵器級プルトニウム生産炉(黒鉛炉)を構築し発電しながら核兵器を作ったほうが、安価に大量の核兵器を生産できる。しかしながら、発電しながらでは高品質のプルトニウムの生産効率が今ひとつ悪いため、戦略核兵器用に短時間で大量の核弾頭を生産するには不利である。そのため、発電を放棄し兵器級プルトニウム生産に特化した黒鉛炉(パイルと呼ばれる)が使用される。ウラン原爆は経年劣化がなく取り扱いやすい優秀な兵器が作れる半面、ウラン濃縮に大変な電力と時間が必要されるため、核兵器を大量に作るには不適切である、というより非実用的である。そのため、5大国の核兵器は実験用を除くほとんどすべてがプルトニウム爆弾であり、北朝鮮も黒鉛炉で兵器級プルトニウムを生産している。しかし、一般の民生発電用の沸騰水型原子炉や加圧水型原子炉の使用済み核燃料を再処理工場で処理して取れるプルトニウムは(特別に燃料棒を早く抜き出さない限り)240Pu 含有量が高すぎる。そのため、濃縮技術で 239Pu 含有量を高め、240Pu 含有量を9%以下にするなどの特別な処理をしない限りは核爆弾を作っても不完全核爆発を起こす。そのため、爆弾はサイズだけは巨大化するが爆発力はせいぜい1キロトン止まりなので、兵器としては現実的でない。一般的な兵器用プルトニウムの生産では、パイルとよばれる専用の黒鉛炉で新しいウラン燃料を使って短期間(おそらく数か月など)燃焼させた核燃料を取り出して利用する。必要なプルトニウム 239Pu がある程度できており、反面、不要なプルトニウム 240Pu が非常に少ない。このためIAEAは商用原子炉の核燃料交換作業に非常に注意を払っている。
高速増殖炉からは、炉心の周囲のブランケット部分で、240Pu が非常に少なく、239Pu が97%以上の兵器級プルトニウムを生産できる。
テロリズムの手段として、放射性廃棄物の撒布(汚い爆弾)が考えられており、放射性廃棄物の管理を厳重に行なわれなければならない理由のひとつとされる。IAEAにより国際規制物資として監視下にある。
イタリアではマフィア型犯罪組織による核廃棄物の不法投棄が問題視されてきた[27][28]。 1980年代から確認されてきた問題で、その主犯はカラブリア地方を本拠地とするンドランゲタであるものと目され、イタリア国内を始めヨーロッパ中から持ち込んだ放射性廃棄物を、船に満載したうえで船ごと沈めるという方法でカラブリア地方の周辺海域(地中海等)を主とするイタリア国内の海中や、インド洋のソマリア沖に投棄してきたものと見られている[29]。 2004年に発生したスマトラ島沖地震はソマリアの海域に津波を発生させたが、この際ソマリアの浜に大量の核廃棄物やその他の毒性の高い化学物質を含む廃棄物やコンテナの破片が打ち上げられるという事態が起こった。不法投棄されたものであるとして国連環境計画がそれらについての報告書を作成している[30]。
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国試過去問 | 「109H003」 |
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