出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/09/19 08:38:05」(JST)
自動体外式除細動器(じどうたいがいしきじょさいどうき、Automated External Defibrillator, AED)は、心室細動の際に機器が自動的に解析を行い、必要に応じて電気的なショック(除細動)を与え、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器。除細動器の一つだが動作が自動化されているので施術者は医師である必要がない。
日本で現在承認されている製品は薬事法上の、類別・機械器具12、一般的名称・半自動除細動器あるいは非医療従事者向け自動除細動器に該当する。海外の一部製品にあるような、完全に自動化された除細動器ではない。
使い方は、電源を入れ、電極パッドを胸に貼り付けると心電図を解析して電気ショックを与えるべきかを調べる(心室細動・非常にテンポが速い心室頻拍(一部機種では上室性頻拍も適応)の場合のみ電気ショックの適応。心臓が完全に停止した場合(心静止)などでは電気ショック不要)。電気ショックが必要と解析した場合には、機械の指示にしたがってスイッチを押すと電気ショックを与える。従来の除細動器は医師などの専門家が使用することを想定されているため手動式であるが、空港などに公共の場に配備されている自動体外式除細動器 (AED) は、操作を自動化して医学的判断ができない一般の人でも使えるように設計されている。操作はいたって簡単で、AEDの発する指示音声にしたがってボタンを押すなど2 - 3の操作のみで、取り付けもピクトグラムで分かりやすく説明されており、医療知識や複雑な操作なしに電気的除細動が実行される。AEDによる除細動の施行と併せて、そばにいる者が胸骨圧迫(心臓マッサージ)・人工呼吸を継続して行うことも救命のために不可欠である。
実際にAEDを一般市民が使うケースは非常に多いと考えられる。日本では救急車が現場到着するまで平均で約7分を要するが、心室細動の場合、一刻も早く電気的除細動を施行することが必要とされており、7分も待つわけにはいかない(カーラーの救命曲線によれば心停止3分で死亡率はおよそ50%)。救急車の到着以前にAEDを使用した場合には、救急隊員や医師が駆けつけてからAEDを使用するよりも救命率が数倍も高いことが明らかになっている[1][2]。こうしたことから、AEDをなるべく多数配置するとともに、一人でも多くの住民がAEDに関する知識を有することが非常に重要だとされている。また現在では子供用のAEDパッドが認可され、1歳以上の子供なら使用できるAEDが増えている。AEDが登場し始めた当初は一セットあたり100万円以上だったが、2007年には30万円程度になっている。心停止に陥る可能性の高い疾患の家族を抱える家庭では自家所有している例もある。レンタルだと1機5000円程度。
収納スタンドは蓋を開けるとサイレンやブザー鳴動・赤ランプの点滅で緊急事態発生を周囲に告げる他、使用された事を示す信号が施設の防災センターに送られるようになっているものもある(これにより防災センターは警備員を現場に向かわせ対応する)。
AEDの使用方法については、総務省消防庁のサイト (PDF)や日本心臓財団のサイトを参照のこと。
空港や飛行機内、ホテルなどの公共施設に広く設置され、消火器などと同様に、万一の事態が発生した際にはその場に居合わせた人が自由に使えるようになっている。かつて日本では、医師しか使用が認められていなかった。
2003年になって、ようやく救急救命士に使用(医師の指示なく)が認められ、2004年7月からは一般市民も使えるようになり、空港や学校、球場、駅などの公共施設に設置されることが多くなった。2005年に開催された愛知万博ではAEDを多数配置しており、これによって助かった人が少なからずいる。また2006年7月には大手鉄道事業者の中で初めて、東京都交通局が都営地下鉄全101駅へのAED設置を完了した。2006年にはJR東日本の新幹線全駅にAEDが設置されたほか、JR東海も新幹線全駅と在来線主要駅に設置[3]、小田急電鉄が2008年3月15日から営業運転を開始した60000型電車「MSE」に列車内で初めて設置されるだけでなく、そのほかのすべての特急ロマンスカーにも2008年10月22日に設置完了するなど、鉄道事業者でもAEDの導入が進んでいる。
Jリーグではすべての試合会場にAEDを設置することを義務付けている。
変わったところでは、2007年1月20日より運行を開始した東京都清瀬市の清瀬市コミュニティバス「きよバス」車内にはAEDが搭載されている。AED取扱代理店、バス車体製造会社、運行会社の協議・検討により、バス走行中の振動にも耐えられる様に勘案されている。また、6月8日には国際自動車が保有する観光バスの一部車両にAEDが搭載された。
日本で、一般市民がAEDを使用できるようになった背景には、アメリカ心臓協会 (AHA: American Heart Association) が中心となって策定した救急蘇生国際ガイドラインによりAEDの高い有効性が実証されたことと併せて、2002年に高円宮憲仁親王がスポーツ活動中の心室細動により急逝したことの影響も大きいとされている。
2007年から千葉県市川市議会議員(現 千葉県議会議員)を務めているものまねタレントのプリティ長嶋は、2004年8月に自らが役員を務め、息子が所属する少年野球チームのライバルチームの選手が試合中胸に打球を受け心臓発作(心臓震盪)を起こし、治療の甲斐なく死亡したため「AEDがあれば救える命がある」との思いから、AEDの普及を自身の政策に掲げている[4]。
高校野球では、2007年4月に行われた春季近畿地区高校野球大会大阪府予選で、飛翔館高等学校の投手に打球が直撃して心肺停止状態に陥り、AEDなどの救命処置によって一命を取り留める事故があった[5]。2009年に、この出来事を題材としたAED普及広告が日本心臓財団によって出されている。
JR東海とJR西日本は、2008年12月より東海道・山陽新幹線の全編成でAEDを設置すると発表した[6]。さらにJR東日本も所有する新幹線の全編成に2009年2月以降AEDを設置すると発表[7]。JR九州でも2009年3月1日より九州新幹線の6編成すべてに設置すると発表した[8]。
2009年3月22日に開催された東京マラソン2009にて、ランナーとして出場していたタレントの松村邦洋がスタート地点から約15kmの港区高輪二丁目付近で突然倒れ、一時心肺停止 (CPA) 状態になった。伴走していた救護班がAEDを使用するなど対応が早かったため意識はすぐに回復し、命に別状はなかった。松村の所属事務所の発表によると原因は急性心筋梗塞による心室細動であったという[9]。東京マラソンでは2013年2月24日に開催された大会でも、参加ランナーが約23kmの水天宮前交差点で突然倒れ、近くを走っていた松山市役所勤務の参加ランナーなどが心臓マッサージや近くの交番から持ってきたAEDによる処置を行い、一命を取り留めたことがある[10]。
テレビ東京系列で放送されているバラエティ番組「開運!なんでも鑑定団」の収録スタジオ内に、2010年からAEDが設置された。特定のテレビ番組のためにAEDを設置した初めての事例で、これは同番組の性格上、高齢もしくは心臓に何らかの持病がある出演者(依頼人等)が、鑑定結果にショックを受けて、万が一の事態が発生した場合等を考慮したものである。
静岡県三島市では、平成22年7月1日から「あんしんAEDステーション24設置事業」を実施して市がAEDを購入し、市内の24時間営業のコンビニエンスストアやガソリンスタンドなどに協力を仰ぎ、AEDを設置してもらっている。この事業で42台のAEDが市内のあらゆる場所に設置された[11]。
2010年4月、大阪府大阪市で心肺停止状態の男性に救急隊員が救命処置を行おうとした所、救急車に取り付けられたAEDが故障により作動しないと言う事態が起こった(男性は搬送先の病院で死亡)。製造元の調査により部品の欠落が原因と発表されたが部品が欠落した原因は不明、これに伴う自主回収などは行われていない[12]。
2011年から綜合警備保障株式会社 (ALSOK) が完全屋外対応のAED収納ボックス「AEDプローブボックス」を発売し、アミューズメント施設、公園やゴルフコース内、住宅街等、屋内にとどまらないAEDの設置が実現されるものと期待されている[13]。
4か国語対応の取り扱い説明も備わるスタンド型(日本光電製)
京橋駅 (大阪府)に設置された緑色のランプ付きのタイプ
難波駅の千日前線と四つ橋線ホームに設置(日本光電製)
龍谷大学に設置されているAED搭載の自動販売機(AEDは日本光電製)
JR西日本、ひかりレールスター(700系7000番台)6号車に設置(フィリップス製)
JR九州、800系4号車に設置
出典:日本心臓財団[15]
変わったところでは、プロ野球球団に入団したばかりの新人選手に対して救命講習会を行った例がある。[16]
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